内科学

内科学 · S-53

EBV・CMV感染症

EBV and CMV Infection

前提:病態
ヘルペスウイルス:EBウイルスヘルペスウイルス:サイトメガロウイルス
疾患
バーキットリンパ腫移植後リンパ増殖性疾患上咽頭癌伝染性単核球症

🧠 全体像:Epstein–Barrウイルス()とcytomegalovirus()は初感染後に潜伏するヘルペスウイルスで、いずれも単核球症様症候群を起こす。は咽頭炎・後頸部リンパ節腫大、は免疫不全での臓器病変が重要で、抗体陽性や陽性だけで活動性臓器感染と決めない。

EBV感染

伝播・臨床像

主に唾液で伝播し、思春期以降の初感染ではを起こす。

  • 発熱、著明な咽頭・扁桃炎、後頸部リンパ節腫大、強い倦怠感
  • 肝脾腫、、
  • 血液:絶対、、軽度肝障害
  • アモキシシリン/アンピシリン投与後の全身性発疹

⚠️ 発疹は「ほぼ全例」ではない。 1960年代の報告に由来する80〜100%(アンピシリンで90%)という数字は、小児238例ので見直された。抗菌薬を投与された173例中57例(32.9%)に発疹が出たにすぎず、アモキシシリンでは29.5%(95%信頼区間18.52〜42.57%)で、非投与群の23.1%との差も有意ではなかった1。頻度が下がっても「咽頭炎にを出す前に単核球症を疑う」根拠としては十分だが、発疹が出た症例を一律に真のβラクタムアレルギーと決めつけない。

血清診断

VCA IgM VCA IgG EBNA IgG 解釈
+ + − 急性初感染を支持
− + + 既感染
− − − 未感染またはごく早期

この3項目の組合せで感染のを読む2。(Paul-Bunnell反応・検査)は簡便だが、発症早期と幼児で感度が低く、発症第1週は成人でも偽陰性が起こる3。陰性でも疑いが強ければ特異抗体を用いる。

治療は水分・鎮痛など支持療法が中心で、ルーチンの抗ウイルス薬やグルココルチコイドは用いない3。ステロイドは、重症溶血・血小板減少など限られた合併症で検討する。脾腫・リスクがあるため少なくとも発症後3週間は接触スポーツや重量挙げを避け、復帰は症状・診察と競技リスクで判断する4。

⚠️ 「3週間」は安全宣言ではない。 は発症21日を過ぎてからも報告されており、日数だけで復帰を許可しない5。

は、、、胃癌、などと関連する。

CMV感染

唾液、尿、性行為、血液・移植、母子で伝播する。免疫正常者の初感染は無症候または単核球症様だが、通常は著明な咽頭炎・後頸部リンパ節腫大を欠き、陰性である。

患者背景 主な病態
免疫正常 発熱、倦怠感、肝障害を伴う単核球症様症候群
進行感染 網膜炎、食道炎・大腸炎、神経病変
/ DNAemia、肺炎、消化管疾患、肝炎、障害
妊娠・胎児 先天性:難聴、、など

診断と治療

flowchart TD
    A["免疫不全者の発熱/臓器症状"] --> B["定量<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytomegalovirus'>CMV</span> <span class='jp-term jp-term-diagram' title='polymerase chain reaction'>PCR</span>でDNAemia評価"]
    B --> C{"臓器病変を疑う"}
    C -->|"網膜炎"| D["眼底診察"]
    C -->|"GI/肺など"| E["組織・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchoalveolar lavage'>BAL</span>の病理/局所検査"]
    D --> F["宿主・重症度別に抗<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytomegalovirus'>CMV</span>治療"]
    E --> F

血清IgMは長く残存・再陽性化し得るため、免疫不全者の臓器病変確定には不十分である。移植領域のガイドラインも、特異度が低いことを理由にIgMを血清状態の判定に用いないよう明記している6。血中はモニタリングに有用だが、組織侵襲性疾患は病理・局所所見を組み合わせる。

  • /:第一選択の中心。骨髄抑制と腎機能に注意
  • :耐性・不耐例など。腎毒性と電解質異常に注意
  • 、など:移植領域で予防・難治例に役割が異なるため、適応を区別する。/に不耐の治療例では、とが二次選択になる6

💡 移植では「予防投与」と「」を使い分ける。 ドナー(D)と(R)の IgG血清状態で高リスク(D+/R−)・中間(D+/R+またはD−/R+)・低リスク(D−/R−)に層別し、これが抗ウイルス薬を一律に飲ませる予防投与を取るか、で監視してDNAemiaが出た時点だけ叩くを取るかを決める6。の成人では、移植後14週までの予防投与が24週時点の臨床的に問題となる感染を37.5%へ下げ、の60.6%を下回った7。・腎毒性が系より少ないことが利点だが、これは予防のための位置づけであり、確立した臓器病変の治療は系が中心である。

免疫正常者の軽症単核球症には通常抗ウイルス性治療を行わない。

まとめ

  • 単核球症は咽頭炎・後頸部リンパ節腫大・、は陰性の単核球症様症候群が典型である。
  • 血清学的検査はVCA IgM/IgGとEBNA IgGの組合せでを読む。
  • 臓器病変は免疫背景、、眼底・組織所見を統合し、単なるIgG陽性を治療しない。

出典

  1. 1.Incidence of rash after amoxicillin treatment in children with infectious mononucleosis(Pediatrics・2013)小児の急性伝染性単核球症238例のうち抗菌薬を投与された173例で発疹は57例(32.9%)、アモキシシリンでは29.5%(95%信頼区間18.52〜42.57%)にとどまり、1960年代の報告に基づく80〜100%(アンピシリンで90%)という従来値より有意に低いことを確認した。抗菌薬非投与群の発疹率は23.1%で有意差はなかった。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Serological diagnosis of Epstein-Barr virus infection: Problems and solutions(World Journal of Virology・2012)VCA IgM・VCA IgG・EBNA IgGの出現時期と組合せで初感染・既感染を判定する解釈法と、判定困難例に追加検査を要することを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Infectious Mononucleosis: Rapid Evidence Review(American Family Physician・2023)伝染性単核球症の異好抗体検査は発症第1週には成人でも偽陰性となること、グルココルチコイドをルーチンに用いないこと、発症後3週間は接触スポーツを避け復帰は個別判断とすることを確認した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.American Medical Society of Sports Medicine Position Statement: Mononucleosis and Athletic Participation(Clinical Journal of Sport Medicine・2023)伝染性単核球症後の運動復帰は脾破裂リスクを踏まえ、症状、発症からの期間、競技特性を勘案して個別に判断する必要があることを確認した。閲覧 2026-08-25
  5. 5.Association of Splenic Rupture and Infectious Mononucleosis: A Retrospective Analysis and Review of Return-to-Play Recommendations(Sports Health・2019)伝染性単核球症に伴う脾損傷は発症21日を過ぎてからも起こり得るため、接触・高負荷運動の再開をより慎重に判断すべきことを確認した。閲覧 2026-08-25
  6. 6.The Fourth International Consensus Guidelines on the Management of Cytomegalovirus in Solid Organ Transplantation(The Transplantation Society・2025)移植後CMVのリスク層別はドナー/レシピエントのIgG血清状態で高リスク(D+/R−)・中間(D+/R+またはD−/R+)・低リスク(D−/R−)に分け、これが予防投与・監視・先制治療の選択を決めること、特異度が低いためIgM検査を血清状態の判定に用いないこと、ガンシクロビル/バルガンシクロビルが治療の中心で不耐例の二次選択がマリバビルとフォスカルネットであることを確認した。閲覧 2026-08-25
  7. 7.Letermovir Prophylaxis for Cytomegalovirus in Hematopoietic-Cell Transplantation(The New England Journal of Medicine・2017)同種造血幹細胞移植を受けたCMV血清陽性成人で、移植後14週までのレテルモビル予防投与(480 mg/日、シクロスポリン併用時240 mg/日)は24週時点の臨床的に問題となるCMV感染を37.5%(325例中122例)へ減らし、プラセボの60.6%(170例中103例)を下回った(P<0.001)。骨髄毒性・腎毒性の頻度はプラセボと同等だった。閲覧 2026-08-25