内科学

内科学 · S-52

インフルエンザ

Influenza

前提:病態
オルソミクソウイルス
疾患
インフルエンザ
症状
乾性咳嗽筋痛

🧠 全体像:インフルエンザは主にA型・B型ウイルスによる急性で、突然の発熱、頭痛、筋痛、倦怠感、咳が典型である。高リスク・重症・入院患者では検査結果を待たず、発症48時間を過ぎていても抗ウイルス性薬を開始する。

ウイルスと臨床像

インフルエンザ Aはとで亜型分類され、に加えてによる(antigenic shift)がの原因となり得る。インフルエンザ Bは季節流行を起こすがは起こさない。C型は通常軽症、D型は主にに感染する。

  • 突然の発熱・悪寒、、、
  • 強い頭痛、筋痛、感
  • 高齢者・免疫抑制者では発熱を欠くことがある
  • 小児では嘔吐・下痢、熱性痙攣もみられる

合併症は原発性、(S. pneumoniae、S. aureusなど)、/喘息・心不全悪化、筋炎、脳症、心筋炎である。いったん改善後に再発熱・が出れば二次性肺炎を疑う。

診断

flowchart TD
    A["流行期の急性発熱性呼吸器症状"] --> B{"入院/重症/高リスク"}
    B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleic acid amplification test, NAAT'>核酸増幅検査</span>を採取し経験的抗ウイルス性治療"]
    B -->|"いいえ"| D["臨床診断または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rapid molecular test'>迅速分子検査</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronavirus disease 2019'>COVID-19</span>等との<span class='jp-term jp-term-diagram' title='co-infection'>同時感染</span>も評価"]
    D --> F["発症≤48時間なら治療を検討"]

が最も感度に優れ、は陰性でもインフルエンザを除外できない。抗ウイルス性治療が必要な患者では検査結果を待たない1。

⚠️ は「陽性なら肯定、陰性でも否定できない」検査である。 159研究ので62.3%(95%CI 57.9〜66.6)に対し98.2%(97.5〜98.7)、34.5・0.38だった2。感度は成人53.9%と小児66.6%で異なり、A型64.6%よりB型52.2%で低い2。成人のB型は半分近く取りこぼすと覚えておく。流行期の典型的な症候で陰性が出たら、に進むか臨床診断で治療する。

治療

状況 治療
入院、重症・進行性、高リスク 経口/経管をできるだけ早く開始。48時間超でも利益があり得る
合併症のない発症48時間以内 、、、から年齢・妊娠・併存症で選択。は重症化高リスクの非重症例に発症48時間以内のを条件付きで推奨する3
妊娠 を優先し、疑い段階で開始

吸入は喘息・でリスクがあり、単剤は妊娠・授乳、重症免疫抑制、入院・進行性疾患では推奨されない1。単回投与という利便性の裏で、単剤治療中にPA遺伝子I38変異による耐性が選択されやすいことがの弱点である。小児・若年者にアスピリンを用いるとのリスクがある。

水分、、酸素化を支持し、を疑う場合のみ抗菌薬を追加する。/は耐性のため季節性インフルエンザには用いない。

予防

  • 年1回の接種。組成は流行予測に合わせ更新される

💡 efficacy(試験での有効性)とeffectiveness(実地での有効性)は一致しない。 に基づく三価の有効性は18〜65歳で統合値59%(95%CI 51〜67)だが、有効性が示されたのは解析した12シーズン中8シーズンにとどまる。は生後6か月〜7歳で83%(69〜91)と高い。一方、観察研究に基づく実地有効性はシーズンごとの変動が大きく、9研究17解析のうち有意な防御を示したのは6解析(35%)だけだった4。ワクチンの数字を引用するときは、それが試験の値か実地の値か、どのシーズンかを必ず添える。

  • 、換気、咳エチケット、医療現場での
  • や重症化リスクの高いでは/またはによる曝露後予防を検討

まとめ

  • インフルエンザは急な全身症と咳が典型だが、高齢者・免疫抑制者は非典型になり得る。
  • 高リスク・重症・入院例は検査や48時間という区切りで治療を遅らせない。
  • 、早期抗ウイルス性薬、年次ワクチン接種が診療の3本柱である。

出典

  1. 1.Influenza Antiviral Medications: Summary for Clinicians(Centers for Disease Control and Prevention・2026)入院・重症・進行性インフルエンザでは検査確定や発症48時間を待たずオセルタミビルを開始し、バロキサビルを入院例・進行性疾患へ定型的に用いないことを確認した閲覧 2026-08-25
  2. 2.Accuracy of rapid influenza diagnostic tests: a meta-analysis(Annals of Internal Medicine・2012)159研究・26種類の迅速インフルエンザ抗原検査をRT-PCRまたはウイルス培養と比較したメタ解析で、統合感度62.3%(95%CI 57.9〜66.6)・統合特異度98.2%(97.5〜98.7)、陽性尤度比34.5・陰性尤度比0.38であったこと、感度が成人53.9%(47.9〜59.8)と小児66.6%(61.6〜71.7)で異なりA型64.6%よりB型52.2%で低いこと、結論として迅速抗原検査はインフルエンザを「肯定(rule in)」できても「除外(rule out)」できないことを確認した閲覧 2026-08-25
  3. 3.Summary of WHO clinical practice guidelines for influenza(World Health Organization(BMJ掲載)・2026)WHO指針では非重症インフルエンザのうち重症化高リスク例に発症48時間以内のバロキサビル、重症例にオセルタミビルを条件付きで推奨することを確認した閲覧 2026-08-25
  4. 4.Efficacy and effectiveness of influenza vaccines: a systematic review and meta-analysis(The Lancet Infectious Diseases・2012)有効性(efficacy)を無作為化比較試験、実地有効性(effectiveness)を観察研究から別々に評価した系統的レビュー・メタ解析で、三価不活化インフルエンザワクチンの有効性が18〜65歳の成人で統合値59%(95%CI 51〜67)、解析した12シーズン中8シーズン(67%)でのみ有効性が示され、弱毒生インフルエンザワクチンは生後6か月〜7歳で統合値83%(95%CI 69〜91)だったこと、一方で実地有効性は季節ごとに大きく変動し9研究17解析のうち有意な防御を示したのは6解析(35%)にとどまったことを確認した閲覧 2026-08-25