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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

麻疹

Measles

別名
はしかRubeola
臓器系
感染症
科目
Medical MicrobiologyPediatrics
トピック
微生物学 3/27:パラミクソウイルス:ムンプス・麻疹ウイルス小児科 23:麻疹、風疹、猩紅熱小児科 3-48:小児の発熱と発疹
鑑別疾患
パルボウイルスB19感染症水痘・帯状疱疹風疹猩紅熱
関連疾患
ムンプス(流行性耳下腺炎)
原因微生物
Morbillivirus
症状
意識障害咳紅斑発熱皮疹鼻汁
検査値
血算
適応薬
MMRワクチン

🧠 全体像:麻疹は「地球上で最も感染力の強いウイルス感染症の一つ」という一言で捉える。し、(R0)は12〜18ときわめて高い(ただし12〜18は慣用的に引用されてきた値で、既存免疫を織り込んだ推定値を集めた系統的レビューではばらつきはこれより大きい)1。ウイルスは呼吸器上皮に感染した後、(F)によるという免疫の武器を使いながらリンパ組織・全身の皮膚粘膜へ拡大し、“4つのC”(咳・・結膜炎・)に続く耳から下降する発疹という特徴的な臨床像を作る。ワクチン接種率の低下した地域では現在も輸入例・が世界的に増加しており、「過去の病気」ではない。

病原体と発症機序

(Morbillivirus)は・エンベロープを持つの一員で、(による伝播)により拡大する。表面の(HA)と(F)を用いて呼吸器上皮に感染し、F蛋白によるで合胞体(syncytia、)を形成しながら細胞外に出ずに隣接細胞へ直接伝播することで、からの攻撃を回避する。

後にウイルスは所属リンパ節、続いて血流を介して全身の皮膚・粘膜・呼吸器・免疫系へ拡大する。免疫系そのものへの一過性の攻撃性(いわゆる)により、感染後数か月にわたり既獲得免疫が減弱し、他の感染症への罹患リスクが上昇することが近年注目されている。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airborne transmission'>空気感染</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='measles virus'>麻疹ウイルス</span>が呼吸器上皮へ"] --> B["F蛋白による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='syncytium formation'>合胞体形成</span>で増殖・免疫<span class='jp-term jp-term-diagram' title='escape'>逃避</span>"]
  B --> C["所属リンパ節→ウイルス血症で全身拡大"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catarrhal stage'>カタル期</span>:発熱・4つのC・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Koplik spots'>Koplik斑</span>"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exanthem stage'>発疹期</span>:耳介から下降する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='confluent'>癒合性</span>発疹"]
  C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune amnesia'>免疫健忘</span>:既獲得免疫の一過性減弱"]
  E --> G["合併症:中耳炎・肺炎・脳炎"]
  C --> H["まれ:SSPE(感染から約10年後)"]

臨床像

曝露から初発症状までは通常10〜14日(範囲7〜23日)で、特徴的な発疹はの2〜4日後に出現する2。症状は7〜10日間持続する。

  • ():発熱に加え“4つのC”(咳 Cough・ Coryza・結膜炎・ Koplik spots)。はに出現する、赤い背景に囲まれた小さな青白色斑点で、発疹に先行する病原体特異的な所見である。
  • :出現の翌日ごろからが耳介・顔面から下方へ体幹・四肢へと拡大し、最終的に癒合する(風疹との鑑別点——風疹の発疹はで速く消退する)。発疹出現とともに傾向に向かうことが多い。
合併症 内容
中耳炎 小児での最も頻度の高い合併症
肺炎() 死亡原因として最も多い合併症。()を特徴とする
脳炎 感染後数日〜2週間以内に発症する急性の中枢神経合併症
(SSPE) 変異・欠損ウイルスが脳内にして起こる慢性進行性の中枢神経変性。感染(多くは2歳未満での罹患)から平均7〜10年後に発症するまれだが致死的な。従来は麻疹1万〜10万例に約1例とされてきたが2、カリフォルニア州の17例の検討では潜伏期は中央値9.5年(2.5〜34年)、発症率は5歳未満での罹患で1:1367、1歳未満での罹患で1:609と、罹患時の年齢が低いほど高く従来の推計より高頻度であった3
既獲得免疫が数か月〜数年にわたり減弱し、他感染症の罹患・重症化リスクが上昇する

⚠️ SSPEは麻疹罹患から何年も後に発症しうる致死的な遅発性合併症。 急性期を無事に乗り切っても、変異ウイルスの中枢神経によりの脳症(→→意識障害→)を発症しうる——「麻疹は治ったら終わり」ではない点が重要である。

診断

  • (4つのC++下降性の発疹)だけで確定せず、呼吸器検体のRT-PCRと血清麻疹特異的IgMで確認する。IgGは主に免疫評価や(急性期・で4倍以上の上昇)に用いる。
  • 時点で患者をマスクし、(陰圧室を含む)を開始してへ速やかに届け出る——確定を待たずに対応する。
  • 血算では・を認めることが多い。

治療

特異的な抗ウイルス治療はなく、支持療法が基本である。

  • 、、安静
  • (中耳炎・肺炎)を疑う場合のみ抗菌薬を追加する
  • 小児では医療者管理下で年齢別用量のを診断時と翌日の2回投与する(生後6か月未満:50,000 IU/生後6〜11か月:100,000 IU/12か月以上:200,000 IUを1日1回2日間、などの眼徴候があれば4〜6週後に3回目を追加)。は過去の投与時期にかかわらず急性期の全例への投与を求めており、麻疹が通常は重症化しない国でも重症麻疹の全例には投与すべきとしている2。
  • 重症の免疫不全患者ではが実験的に使用されることがあるが、確立された適応ではない。

予防

(麻疹・・風疹の弱毒生混合ワクチン)によるが基本で、生後12〜15か月と4〜6歳の2回接種が標準スケジュールである。であるため妊娠中は禁忌であり、者にも投与を避ける。

  • 曝露後予防:曝露後72時間以内であれば接種、曝露後6日以内であれば(ワクチン接種者・生後6か月未満の乳児・妊婦・者には)ヒト免疫グロブリンの投与を検討する2。
  • 感染性期間(発疹出現の4日前〜4日後——この時期に気道内のウイルス量が最も高い)はにより拡大を防ぐ2。

まとめ

  • はの性ウイルスで、R0が12〜18ときわめて感染力が強く、F蛋白によるを介して増殖する。
  • の“4つのC”+に続き、耳から下降する発疹が特徴的な臨床像で、風疹(・速く消退)と対比して覚える。
  • 合併症は中耳炎(最頻)、肺炎(最多の死因)、脳炎、まれに感染から約7〜10年後のSSPEに加え、既獲得免疫が減弱するがある。
  • 診断は・血清IgMで確認し、時点から確定を待たずとを行う。
  • 治療は支持療法と投与が中心、予防は(妊娠中禁忌)と曝露後72時間以内のワクチン/6日以内の免疫グロブリンによる曝露後予防である。

出典

  1. 1.The basic reproduction number (R0) of measles: a systematic review(The Lancet Infectious Diseases・2017)麻疹のR0はしばしば12〜18と引用されるが、既存免疫を計算に織り込んだ一次資料18研究・58推定値を集めた系統的レビューでは推定値のばらつきが12〜18という範囲より大きく、各国は自国のデータでR0を計算するか、それが不可能なら類似の状況の推定値を使うべきであると結論されていることを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Measles vaccines: WHO position paper – April 2017(World Health Organization(Weekly Epidemiological Record 92(17):205–227)・2017)麻疹の潜伏期は曝露から初発症状までが通常10〜14日(範囲7〜23日)で、発疹は前駆症状の2〜4日後に出現すること、患者は発疹出現の約4日前から4日後まで感染性を持ちこの時期に気道内のウイルス量が最も高いことを確認した。ビタミンAは過去の投与時期にかかわらず急性期の全例に投与し、診断時ただちに経口投与して翌日に反復すること、用量は生後6か月未満50,000 IU・6〜11か月100,000 IU・12か月以上200,000 IUで、Bitot斑などビタミンA欠乏の眼徴候があれば3回目を4〜6週後に投与すること、麻疹が通常は重症化しない国でも重症麻疹の全例にビタミンAを投与すべきとされることを確認した。曝露後予防は未接種・不十分接種者への曝露後72時間以内の麻疹ワクチン接種、ワクチン禁忌者(特に妊婦・生後6か月未満の乳児・免疫不全者)への曝露後6日以内のヒト免疫グロブリン投与であること、抗菌薬は二次性細菌合併症が生じた場合を除き推奨されないことも確認した。合併症の頻度は先進国の小児で中耳炎7〜9%・下痢8%・肺炎1〜6%、感染後脳炎が1,000〜2,000例に1〜4例、SSPEが10,000〜100,000例に約1例である。閲覧 2026-09-05
  3. 3.Subacute Sclerosing Panencephalitis: The Devastating Measles Complication That Might Be More Common Than Previously Estimated(Clinical Infectious Diseases・2017)カリフォルニア州1998〜2015年の亜急性硬化性全脳炎17例では診断時年齢の中央値が12歳(3〜35歳)、麻疹罹患からの潜伏期は中央値9.5年(2.5〜34年)であり、麻疹様疾患の既往がある12例は全例が生後15か月未満での罹患であったこと、1988〜1991年に報告された麻疹症例における発症率は5歳未満での罹患で1:1367、1歳未満での罹患で1:609と、罹患時の年齢が低いほど高く従来の推計より高頻度であったことを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)。閲覧 2026-09-05