病態生理学

病態生理学 · 1-33

全身性エリテマトーデス・全身性硬化症・シェーグレン症候群

SLE, systemic sclerosis and Sjögren's syndrome

応用トピック
全身性エリテマトーデスの臨床像シェーグレン病全身性強皮症全身性自己免疫疾患:全身性強皮症・炎症性筋疾患・混合性結合組織病腎疾患 症例1
疾患
シェーグレン症候群乾燥性角結膜炎全身性エリテマトーデス全身性強皮症
症状
口腔乾燥涙液分泌低下
画像所見
光干渉断層計

🧠 3疾患の“主役の細胞/分子”で区別する: SLE = への抗体+免疫複合体が全身を攻撃。Sjögren = T細胞が/唾液腺を破壊(乾燥)。= 線維芽細胞暴走による線維化(硬化)。

全身性エリテマトーデス(SLE)

病態機序

flowchart TD
  AP["アポトーシス性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nuclear antigen'>核抗原</span>のクリアランス障害+T/B寛容破綻+NETosis"] --> APC["APCが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nuclear antigen'>核抗原</span>を異物と認識"]
  APC --> AB["自己抗体+自己への細胞性免疫"]
  AB --> T2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type II hypersensitivity reaction'>II型過敏反応</span>:抗赤血球・抗白血球・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiplatelet'>抗血小板</span>抗体 → 血球の破壊"]
  AB --> T3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type III hypersensitivity reaction'>III型過敏反応</span>:免疫複合体 → 糸球体(糸球体腎炎)・皮膚(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malar rash'>蝶形紅斑</span>)・血管壁(動脈硬化の加速)"]

自己抗体

分類基準(2019 EULAR/ACR)

現行の分類基準は2019年/ACR基準(旧1997年ACR改訂基準の「11項目中4項目」方式はすでに現行ではない)。1

  • 参入基準(必須): 陽性(で1:80以上、またはそれと同等の陽性検査。過去に一度でも陽性ならよい)。これを満たさなければ分類しない。
  • 参入基準を満たした上で、7つの臨床領域・3つの免疫学的領域から各領域内で最高点の項目のみを加算し、少なくとも1つの臨床項目があり、かつ合計10点以上でSLEに分類する。
  • 加算の約束:SLEより可能性の高い説明がある項目は数えない。1回でも出現すればよく、同時に揃っている必要はない。1
領域 項目(点数)
全身 発熱(2)
血液 (3)/血小板減少(4)/(4)
神経精神 せん妄(2)/精神病(3)/痙攣(5)
皮膚粘膜 瘢痕を残さない脱毛(2)/(2)/または円板状ループス(4)/(6)
漿膜 胸水または(5)/(6)
筋骨格 状(6)
腎 蛋白尿 >0.5 g/24時間(4)/腎生検でクラスIIまたはVの(8)/クラスIIIまたはIV(10)
(免疫学的) ・抗β2GPI抗体・のいずれか(2)
補体(免疫学的) C3またはC4の低下(3)/C3とC4の両方の低下(4)
(免疫学的) 抗dsDNA抗体または(6)

💡 腎生検でクラスIIIまたはIVの(10点)があれば、陽性と合わせてそれだけで分類できる。逆に免疫学的項目だけでは点数が足りても、臨床項目が1つもなければ分類しない。

⚠️ 分類基準は臨床診断そのものを置き換えるものではない。ごくまれに陰性のSLEも存在しうるため、陰性のみを根拠に否定しない。

ループス腎炎

  • 最重症(通常5年以内、10年生存73%)。+、糸球体血栓。:
    • 高血圧
    • GFR↓
    • 蛋白尿
    • 浮腫 →
  • 妊娠:
    • 流産
    • IUGR
    • 早産
    • 25%で
    • 中のみ妊娠

治療の土台:ヒドロキシクロロキン

⭐ は禁忌がない限り、臓器病変の有無や重症度によらず全SLE患者に投与する土台の薬剤(・臓器障害の蓄積・死亡を減らす)。あたり5 mg/kg/日をとする。2

⚠️ のリスクがあり、定期的な眼科スクリーニングが必要。 以下に抑えても長期使用でリスクは残るため、投与開始直後にベースライン検査を行い、以後は年1回のスクリーニングを継続する(⚠️ 有意な危険因子が無ければ最初の5年は延期しうる)。⚠️ 2025年のAAO改訂で一次検査が+広角になり、とは追加のへ移った。3

シェーグレン症候群

⚠️ 3疾患は互いに重複しうる。 SLE・に続発するシェーグレン症候群(続発性、上記40%)は珍しくなく、高力価を伴いSLE様・様の所見が重なる場合は、それ自体が独立した病態である(MCTD)を想定する。

全身性硬化症

は皮膚硬化の範囲で2型に分ける。

種類 特徴
広範な皮膚、急速、早期からの消化管病変
顔/指、晩期の消化管病変 — CREST症候群(・・・・の頭文字)
  • 病態: T細胞異常応答 → サイトカイン(IL-1、、)→ /沈着↑ → 線維化。
  • 臓器への自己抗体沈着なし(SLEのとは機序が異なり、線維化そのものが臓器障害の本体)。
  • 曝露。

自己抗体と臓器病変の対応

自己抗体 関連する病型 対応する
に多い 緩徐進行、晩期の
() に多い
・急速進行例に多い
  • 肺疾患(致死的): Th2/M2 → 線維芽細胞増殖、自己抗体が血管傷害 → → 、。

腎(強皮症腎クリーゼ)

急激な高血圧+の+を来す救急疾患。・陽性・の短い患者で頻度が高い。5

⚠️ 治療はなどの短時間作用型阻害薬を直ちに開始する。 血圧が正常でも強く疑えば開始する。阻害薬は予後を大きく変えた中心的な介入で、1972〜1987年にを起こした108例の追跡では、1年が阻害薬なしで15%、ありで76%だった(1年死亡率に直すと約85%→24%)6。長期管理にはなども用いる。

⚠️ 阻害薬を使っても予後良好とは限らない。 同じ追跡で阻害薬を用いた55例のうち24例(44%)が早期死亡または永続的透析に至り、高齢と心不全がこの不良転帰と関連した。一方、透析を3か月以上生存して阻害薬を続けた20例のうち11例は、3〜15か月後に透析を離脱できた——後も阻害薬を続ける意義を示す結果である6。

⚠️ 逆に、高用量の全身性グルココルチコイドはの誘因として知られており、避ける。 SScでグルココルチコイドを使う場合は必ず血圧を厳密に監視する。

共通する遺伝/環境因子

  • 遺伝的: と関連するが、クラスを取り違えない。
  • 環境因子:
    • バイスタンダー活性化(感染に伴うでが提示され、が破れる)

生物学的製剤

まとめ

項目 SLE シェーグレン症候群
主役 への自己抗体+免疫複合体(II型・) CD4⁺ T細胞による・唾液腺の破壊 線維芽細胞の活性化による線維化(自己抗体の臓器沈着はない)
代表的な自己抗体 抗dsDNA抗体・(特異的)、 抗SS-A/Ro抗体・抗SS-B/La抗体 ()、(・)、(腎クリーゼ)
重要な臓器障害 、血球減少、、妊娠合併症 、B細胞リンパ腫(大半がMALT型) ・、
押さえる基準・治療 2019 /ACR分類基準( 1:80以上+臨床項目1つ以上+10点以上)。は禁忌がなければ全例、スクリーニングを行う 持続する・低C4・はリンパ腫の 腎クリーゼは短時間作用型阻害薬を直ちに開始、を避ける
  • 3疾患は互いに重複しうる(続発性シェーグレン症候群、)。
  • はclass I(B27)とclass II(DR4・DR3)を取り違えない。
  • 生物学的製剤・阻害薬の前にはとB型肝炎をスクリーニングする。

出典

  1. 1.2019 European League Against Rheumatism/American College of Rheumatology Classification Criteria for Systemic Lupus Erythematosus(ACR/EULAR・2019)全文(PMC6827566)と基準の図(Figure 2)で確認した。参入基準はHEp-2細胞でANA 1:80以上またはそれと同等の陽性検査(過去に一度でもよい)で、満たさなければ分類しない。加算基準では、SLEより可能性の高い説明がある項目は数えず、1回でも出現すればよく、同時でなくてよく、各領域で最も重みの大きい項目のみを数え、少なくとも1つの臨床項目と合計10点以上を要する。7つの臨床領域(全身・血液・神経精神・皮膚粘膜・漿膜・筋骨格・腎)と3つの免疫学的領域(抗リン脂質抗体・補体・SLE特異抗体)の各項目の重みは2〜10点。検証コホートでの感度96.1%・特異度93.4%(1997年ACR基準は感度82.8%・特異度93.4%)閲覧 2026-08-14
  2. 2.EULAR recommendations for the management of systemic lupus erythematosus: 2023 update(European Alliance of Associations for Rheumatology(Fanouriakis et al., Ann Rheum Dis)・2023)ヒドロキシクロロキンは禁忌がなければ全SLE患者に実体重5 mg/kg/日を目標用量として投与すること、網膜毒性リスクを踏まえ定期的な眼科スクリーニングを行うことを確認した閲覧 2026-08-14
  3. 3.Special AAO Report: Recommendations on Screening for Hydroxychloroquine Retinopathy (2025 Revision)(American Academy of Ophthalmology(Marmor MF, Ahn SJ, Ehlers JP, Melles RB, Mieler WF, Sarraf D, Yusuf IH/Ophthalmology 2026;133:439-450)・2026)Europe PMC REST で抄録を取得して確認した(PMID 41232611)。2025年改訂で一次スクリーニング検査が "The primary screening tool should be OCT, along with wide-pattern fundus autofluorescence (FAF)." とされ、視野検査と多局所網膜電図が追加の確認検査に位置づけられたこと、ベースライン検査を投与開始直後に行い、危険因子が無ければ最初の5年は年1回検査を延期しうるとされたことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-08
  4. 4.Sjögren's syndrome: a systemic autoimmune disease(Clinical and Experimental Medicine・2022)シェーグレン症候群でB細胞リンパ腫リスクが上昇し、持続する耳下腺腫脹・低補体・クリオグロブリン血症などが警告徴候として精査の契機になることを確認した閲覧 2026-08-14
  5. 5.Scleroderma and Renal Crisis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)強皮症腎クリーゼの予測因子(びまん皮膚型・急速進行性皮膚硬化・抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性・高用量副腎皮質ステロイド)、ACE阻害薬普及による1年死亡率85%→24%への改善、短時間作用型カプトプリルから直ちに開始する治療戦略を確認した閲覧 2026-08-14
  6. 6.Outcome of renal crisis in systemic sclerosis: relation to availability of angiotensin converting enzyme (ACE) inhibitors(Annals of Internal Medicine・1990)抄録で確認した(PMID 2382917、全文は未取得)。大学の強皮症センターで1972〜1987年に強皮症腎クリーゼを起こし前向きに追跡した108例で、1年生存率はACE阻害薬なし15%・あり76%(P<0.001)だった。ただしACE阻害薬で治療した55例のうち24例(44%)は早期死亡または永続的透析に至り、多変量解析では高齢と心不全がこの不良転帰と関連した。透析を3か月以上生存しACE阻害薬を続けた20例中11例(55%)は3〜15か月後に透析を離脱できた(ACE阻害薬なしの透析例は15例中0例)閲覧 2026-09-24