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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)

Inflammatory bowel disease (Crohn disease and ulcerative colitis)

別名
IBD
臓器系
消化器免疫・膠原病
科目
Internal MedicinePathologyPediatrics
トピック
内科学 G-03:炎症性腸疾患病理学 C/40:炎症性腸疾患小児科 3-43:炎症性腸疾患
鑑別疾患
免疫関連有害事象
症状
下痢腹痛体重減少発熱関節痛急性前部ぶどう膜炎上強膜炎強膜炎直腸炎
検査値
C反応性蛋白(CRP)アルブミン血算
画像所見
仙腸関節炎
下位分類
クローン病潰瘍性大腸炎
元疾患
糖原病
原因となる疾患
強直性脊椎炎
禁忌薬
アカルボース

🧠 全体像は、・環境因子・粘膜免疫の相互作用によって生じる慢性性の腸炎という共通の土台の上に、病変分布パターンという一つの軸でが分かれるである。は「口腔から肛門までどこでも・性・」、は「直腸から連続・大腸に限局・粘膜主体」——この対比を軸に、内視鏡・組織・画像の使い分けと、腸管外合併症・手術の意味の違いまで説明できる。両者は消化器領域で最も比較が問われる疾患ペアであり、初診時にどちらとも判別できないが一定の割合で存在することも押さえておく。各疾患の重症度別レジメン・生物学的製剤の選択・外科適応の詳細は子ノートに譲る。

分類の軸

IBDの分類軸は、罹患部位のと炎症の深さという2つの病変分布パターンである。

項目
分布パターン 性()、口腔〜肛門のどこでも生じうる 、直腸からへ進展し大腸に限局
炎症の深さ 主に粘膜層
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic predisposition'>遺伝的素因</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gut microbiota'>腸内細菌叢</span>+環境因子+粘膜免疫の破綻(共通の土台)"] --> B["病変分布パターンで分類"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='discontinuous (skip lesions)'>非連続</span>性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transmural'>全層性</span>"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='continuous'>連続性</span>・粘膜限局"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Crohn disease, CD'>クローン病</span>"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulcerative colitis, UC'>潰瘍性大腸炎</span>"]
    B --> G["初診時にどちらとも判別できない例"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IBD-U'>分類不能大腸炎</span><br>経過とともに再分類されることが多い"]

💡 分布パターンがそのまま合併症の種類を決める。の炎症を貫いて周囲組織へ達するため、線維化による狭窄、瘻孔・膿瘍という「壁を越える」合併症を生む。一方、粘膜限局の炎症は表層の脆弱な粘膜が容易に出血・びらんするため、血性下痢が前景に立ち、瘻孔は特徴的でない(ただし重症例では炎症が壁深部へ及び、・穿孔を来しうる)。

⚠️ は連続的なスペクトラムではなく、機序・予後・手術の意味が異なる別個の疾患単位である。ただし初診時、特に小児例では所見が出そろわず、両者の特徴が重なって見えることがあり、この場合はとして経過を追いながら再評価する。

共通の初期アプローチ

病変分布パターンにかかわらず、次の順序で評価を進める。

  1. 感染の除外:便培養・分子検査、Clostridioides difficile 毒素検査を新規・増悪例で必ず行う。IBDは感染症ではないため、をルーチンの寛解導入には用いない。
  2. 炎症・の評価:血算、CRP、アルブミン、鉄・B12を測定する。CRPが正常でも活動性を否定できない点は両者に共通する。
  3. :腸管炎症の検出と治療反応・評価に有用だが、感染やNSAIDs使用でも上昇しうる。
  4. を含む+多部位生検:病変部・正常部の両方から生検し、分布パターン(性か)と深さ(粘膜か全層か)を直接観察する——これが分類軸を確定する中心的検査である。
  5. 小腸・合併症の画像評価を疑う所見(狭窄、瘻孔、膿瘍)があればまたはを追加する。で分布が大腸に限局していれば、通常は小腸画像を要さない。
  6. 血清抗体(pANCA・ASCA)は補助所見にとどめる:確定診断や病型の単独決定には用いない。
flowchart TD
    A["4週以上の下痢・血便・腹痛・体重減少"] --> B["便培養・C. difficile毒素で感染を除外"]
    B --> C["血算・CRP・アルブミン・鉄/B12・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fecal calprotectin'>便中カルプロテクチン</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='terminal ileum'>回腸末端</span>を含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colonoscopy'>大腸内視鏡</span>+多部位生検"]
    D --> E{"分布パターン・深さ"}
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='discontinuous (skip lesions)'>非連続</span>性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transmural'>全層性</span>"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Crohn disease, CD'>クローン病</span>を疑う所見(狭窄・瘻孔・膿瘍)を画像で評価"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='continuous'>連続性</span>・粘膜限局"| G["範囲(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proctitis'>直腸炎</span>/左側/広範大腸炎)を確定"]
    E -->|"判別困難"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IBD-U'>分類不能大腸炎</span>として経過観察"]
    F --> I["症状+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Biomarkers'>バイオマーカー</span>+内視鏡で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Goals'>治療目標</span>を追跡"]
    G --> I
    H --> I

下位型の判別

の判別表は消化器領域で最も出題頻度の高い比較の一つであり、罹患部位・・深さ・腫・瘻孔/狭窄・喫煙の影響・腸管外合併症の7項目を軸に整理する。

項目
罹患部位 口腔から肛門までどこでも生じうる。・大腸に多い 大腸に限局し、直腸からへ進展する
性()、正常粘膜を挟む 、病変の間に正常粘膜を挟まない
深さ 主に粘膜層(急性重症例では壁深部へ及ぶことがある)
内視鏡所見 の狭窄 、びまん性潰瘍、
を認めることがある 典型的には認めない
瘻孔・狭窄 全層炎を反映し高頻度(狭窄、瘻孔、腹腔内・ 瘻孔は特徴的でない。狭窄はまれで、あれば悪性を疑う
喫煙の影響 発症・・術後再発リスクを上げる 発症リスクとの関係は逆方向とされるが、治療として喫煙を勧めることはない
腸管外合併症 、ぶどう膜炎・(活動性と並行しやすい) 同上に加え、との関連が特に強い(腸炎活動性とは独立して経過)
手術の意味 合併症(狭窄・瘻孔・膿瘍)を治療するが、腸管病変そのものは再発しうる(根治的でない) で大腸炎を根治しうる

⚠️ :上記の判別が初診時にはつかない例が一定の割合で存在する(特に小児例で報告が多い)。大腸に限局した炎症で、らしい性・の所見と、らしいの所見が混在して見える場合などが該当する。IBD-Uは両者の「中間病型」ではなく、経過中に瘻孔・狭窄・回腸病変などを示す所見、あるいはで根治しうる範囲の病変などを示す所見が明確になった時点で再分類されることが多い、暫定的な分類である。

総論としての治療原則

  • は両者に共通して、症状改善だけでなく内視鏡的なであり、症状・CRP/・内視鏡を組み合わせてに確認する。
  • 副腎皮質ステロイドは両者とも寛解導入の短期治療に限り、維持療法にしない——この原則はで共通する。
  • の位置づけが大きく異なるでは病変範囲に応じた経口・直腸5-ASAが軽症〜中等症の寛解導入・維持の中心となるが、では5-ASA・を一般的な寛解導入・維持の中心に据えない。
  • 生物学的製剤・、IL-12/23またはIL-23阻害薬、JAK阻害薬、など)は両疾患で共通の選択肢群であり、中等症〜重症・高リスク例では早期導入を検討する点が共通する一方、個々の薬剤選択は活動性・既治療・感染や血栓などのリスク・罹患範囲で個別化する。
  • の意味が対照的で大腸炎そのものを根治しうるのに対し、の手術は狭窄・瘻孔・膿瘍などの合併症を治療するものであり、腸管病変は他部位に再発しうる。この違いは分布パターンの違い(大腸限局か全消化管かつか)に直結する。
  • 各疾患の重症度別レジメン、急性重症例(急性重症、穿孔・瘻孔を伴う)での救済療法・外科適応の詳細、の間隔は、の各ノートに譲る。

まとめ

  • IBDは遺伝・・環境因子・粘膜免疫異常という共通の土台の上に、病変分布パターン性・ vs ・粘膜限局)で2大疾患に分かれる。
  • は口腔〜肛門のどこでも性・の炎症を起こし、狭窄・瘻孔・膿瘍という「壁を越える」合併症を特徴とする。
  • は直腸から連続する粘膜限局性の炎症で、血性下痢が前景に立ち、で根治しうる。
  • 罹患部位・・深さ・腫・瘻孔/狭窄・喫煙の影響・腸管外合併症の7項目が判別表の中心であり、消化器領域で最頻出の比較の一つである。
  • 両者は連続的なスペクトラムではなく別個の疾患単位だが、初診時に判別できないが一定の割合で存在し、経過とともに再分類されることが多い。