病理学

病理学 · C/40

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

Inflammatory bowel diseases (ulcerative colitis, Crohn disease)

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炎症性腸疾患炎症性腸疾患炎症性腸疾患炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎、Crohn病炎症性腸疾患の外科的側面Crohn病の外科的側面潰瘍性大腸炎の外科的側面
疾患
クローン病炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)潰瘍性大腸炎分類不能腸炎

🧠 全体像:は、、、、環境因子、の相互作用が破綻する慢性性疾患である。は・、は直腸から連続する粘膜主体の炎症として対比する。

  • いずれも原因不明の慢性再発性炎症性疾患
  • = のある個体で、、、環境因子、の相互作用が破綻して生じる異常な局所免疫反応

発生機序:

  • (微生物、食事抗原)と宿主防御のバランスの喪失
  • 関与:+の破綻+微生物因子
  • 両疾患:MHCクラス2対立遺伝子+IL-23の変異
  • :NOD2変異(細菌への)
  • 主要な傷害因子:CD4+ T細胞、TNFがで重要な役割
  • 部位(回腸・結腸)は抗原刺激を与える細菌に富む
  • 転帰:障害と上皮傷害 → ・腹痛。血性下痢は特にで前景に立つ

A)クローン病(CD)

  • 消化管のあらゆる部位(食道から肛門)を侵しうる、通常は
  • 性疾患で、若年発症が多いが、どの年齢でも発症し得る

形態

  • :病変分節と隣接正常腸の明瞭な境界
  • :長軸方向の深い潰瘍が結節状ので隔てられる
  • 線維化 → 病変分節の狭窄(特に)
  • の進展 → (腸ループ、膀胱、腟、肛門周囲皮膚へ)+腹膜膿瘍

臨床

  • 下痢、差し込むような腹痛、発熱の反復発作、緩徐発症(時に急激)
  • 出血はからまで起こり得るが、ほど血性下痢が前景に立たない。はではなく、なども鑑別する
  • 無症状期と再発の繰り返し

合併症

  • 瘻孔、、・閉塞
  • 腸管外(免疫由来):ぶどう膜炎、、、、、

B)潰瘍性大腸炎(UC)

  • 結腸に限局した潰瘍炎症性疾患で、炎症は主に粘膜にあり、通常は直腸から近位へに進展し、結腸全体を侵しうる。急性重症例では潰瘍・炎症が壁深部へ及び得る
  • 若年発症が多いが、どの年齢でも発症し得る。関節、眼、皮膚、肝胆道などに腸管外病変を伴う

クローン病との主な相違

特徴
部位 消化管全域、 結腸のみ
あり なし
喫煙 現在喫煙は発症リスクを高める(1.76)1。の増悪にも関わるとされる ⚠️ 向きが逆:現在喫煙は発症リスクを下げる方向に働く(0.58)一方、過去喫煙は発症リスクを高める(1.79)。で喫煙を勧めることはしない1
肉芽腫 を認めることがあり他の腸炎に比べ比較的特異的だが、21研究・2236例の統合では肉芽腫を認めたのは47%と半数に満たず、感度は高くない2 典型的には認めない
潰瘍の深さ 主に粘膜。急性重症例では深部へ及び得る
線維化・狭窄 あり ほとんどなし
壁の肥厚 あり 通常は目立たない
癌リスク 大腸病変の範囲・期間・炎症負荷に応じ上昇 大腸病変の範囲・期間・炎症負荷、PSCなどに応じ上昇

臨床分類(モントリオール分類)

病変の広がりと病態は、研究・診療で共通のモントリオール分類で記述する3。

疾患 軸 区分
診断時年齢(A) A1:〜16歳/A2:17〜40歳/A3:40歳超
部位(L) L1:回腸/L2:結腸/L3:回結腸。上部消化管病変を併せ持つときは L4 を L1〜L3 に付け加える
病態(B) B1:非狭窄・非穿通/B2:狭窄/B3:穿通。肛門周囲病変があれば p を付け加える
範囲(E) E1:潰瘍性(直腸に限局)/E2:(より遠位)/E3:広範囲大腸炎(より近位に及ぶ)
重症度(S) S0:/S1:軽症/S2:中等症/S3:重症

💡 の E 分類は「直腸から近位へ連続して広がる」という性質をそのまま区分にしたもので、範囲が広いほど大腸癌リスクが高い(下記)。の B 分類は、上の形態所見のうち線維化による狭窄(B2)と、の進展による瘻孔・膿瘍(B3)に対応する。

💡 病理所見だけでは決着がつかない例が一定割合ある。 大腸まで検討してもなおともとも判別できない例は、にの10〜15%を占めるとされ、この状態は病理医から indeterminate colitis と呼ばれる。多くは経過観察のうちにどちらかの確定診断へ移行し、血清学的マーカーは感度が低いため有用性が限られる4。モントリオール分類はこの語を大腸を検討しても決められない例に限って用い、切除前に臨床・内視鏡・生検で決められない、小腸病変を伴わない大腸の慢性炎症性腸疾患(感染症を除外済み)は「(IBDU)」と呼ぶよう勧めている3。

形態

  • 肉眼:の潰瘍、(潰瘍間で上方に膨隆する浮腫性・充血性粘膜の細い索)
  • 顕微鏡:浸潤 → → 粘膜破壊、 → 異形成

臨床

  • 血性・下痢+差し込み、、下腹部痛、慢性再発性
  • 合併症:、出血・貧血、(生検で検出) → 癌

⚠️ 大腸癌リスクは古い推定より下方修正されている。 ・に応じて上昇するという方向自体は変わらないが、の研究13件・患者161,157例を統合した最新のでは、大腸癌のは1000人年あたり1.47、(SIR)は2.48で、が広範な例ではSIR 3.95と一般人口の約4倍に上がるものの、2001年の代表的な(1000人年あたり3、3.7%)より低い値だった。(PSC)の合併は確立したリスク因子とされるが、今回のでは組み入れた研究で一貫して報告されておらず、定量的な統合はできなかった5。著者らは、旧来のが紹介施設・単一施設など多様な研究を合算していたのに対し今回はの研究に限ったこと、組み入れ研究の多くが・生物学的製剤の普及やの進歩を経た最近のコホートであることを、この推定の位置づけとして述べている5。

💡 異形成の呼び方も変わった。 かつて内視鏡で単一のポリープ状病変として見つかる異形成は「dysplasia-associated lesion or mass(DALM)」と呼ばれ、発見はの適応とされた。2015年のSCENIC国際コンセンサス以降は、境界明瞭で浸潤所見・線維化のない「内視鏡的にvisibleな異形成」であればと継続で対応でき、必ずしもを要しない。「invisibleな異形成(旧・flat dysplasia)」とは区別して扱う6。

💡 ポイント: CD = +++瘻孔+、NOD2。UC = 直腸からの+++高い癌リスク、肉芽腫なし。両者:CD4+ T細胞、(CD)、腸管外 = ぶどう膜炎、、。

まとめ

  • 両疾患は++環境因子+の相互作用が破綻して生じる慢性再発性炎症性疾患である。
  • は消化管のあらゆる部位を性()・に侵し、に好発、・・線維化狭窄を特徴とする。
  • は直腸からに結腸に限局し、粘膜主体の炎症、とを特徴とする。
  • はNOD2変異、両疾患ともMHCクラス2対立遺伝子とIL-23変異が関与する。
  • 腸管外病変にはぶどう膜炎、、、がある。
  • 大腸癌リスクは病変範囲・期間・炎症負荷に応じて両疾患とも上昇する(UCではPSC合併でさらに上昇)。

出典

  1. 1.Smoking and Inflammatory Bowel Disease: A Meta-analysis(Mayo Clinic Proceedings・2006)潰瘍性大腸炎13研究・クローン病9研究を含むメタアナリシスで、現在喫煙はクローン病のリスクを高め(オッズ比1.76、95%信頼区間1.40-2.22)、過去喫煙は潰瘍性大腸炎のリスクを高めた(オッズ比1.79、95%信頼区間1.37-2.34)一方、現在喫煙は潰瘍性大腸炎の発症に対してむしろ防御的に働いた(オッズ比0.58、95%信頼区間0.45-0.75)。喫煙の効果がクローン病と潰瘍性大腸炎で向きが逆であることを確認した最初のメタアナリシス閲覧 2026-08-27
  2. 2.Meta-analysis of the Role of Granulomas in the Recurrence of Crohn Disease(Diseases of the Colon & Rectum・2010)肉芽腫の有無で再発・再手術を比較した1954〜2007年の21研究(非無作為化)・クローン病患者2236例を統合したメタアナリシス(抄録で確認。全文未取得のため、肉芽腫を判定した検体の種類は確認していない)。肉芽腫を認めたのは1050例(47.0%)で半数に満たず、肉芽腫群は非肉芽腫群より再発(オッズ比1.37)・再手術(オッズ比2.38)が多く再発までの期間が短かったが、研究間の異質性が大きく著者らは確認研究が要るとしている閲覧 2026-08-27
  3. 3.The Montreal classification of inflammatory bowel disease: controversies, consensus, and implications(Gut・2006)炎症性腸疾患のモントリオール分類(PMC全文の表1〜3で確認)。クローン病は診断時年齢A1(原表は below 16 y)・A2(17〜40歳)・A3(40歳超)、部位L1回腸・L2結腸・L3回結腸と、上部消化管病変を併せ持つときにL1〜L3へ付け加える修飾子L4、病態B1非狭窄・非穿通・B2狭窄・B3穿通と、肛門周囲病変があるときに付け加える修飾子p で分類する。潰瘍性大腸炎は範囲をE1潰瘍性直腸炎(直腸に限局)・E2左側大腸炎(脾彎曲より遠位)・E3広範囲大腸炎(脾彎曲より近位に及ぶ)に、重症度をS0〜S3に分けること、indeterminate colitis の語は大腸切除後も病理で決められない例に限り、切除前に決められない例は IBDU と呼ぶよう勧めていることを確認した閲覧 2026-09-24
  4. 4.Indeterminate colitis(Journal of Clinical Pathology・2004)indeterminate colitisは元来、大腸切除標本を検討してもなお潰瘍性大腸炎とクローン病を鑑別できない炎症性腸疾患の10〜15%を指す語であり、病理診断単独では一定割合が確定診断に至らないことを示す。現在は内視鏡・生検の段階でも広く使われるようになり、報告頻度が施設間でばらつく一因になっている。血清学的マーカーは感度が低いため有用性が限られること、臨床的にはその多くが経過観察でUCまたはCDの確定診断へ移行することを確認した閲覧 2026-08-27
  5. 5.Colorectal cancer risk in ulcerative colitis: an updated population-based systematic review and meta-analysis(eClinicalMedicine・2025)集団ベースの研究13件・潰瘍性大腸炎患者161,157例を統合した最新のメタアナリシスで、大腸癌の統合罹患率は1000人年あたり1.47、標準化罹患比(SIR)は2.48であり、2001年のEadenらのメタアナリシス(罹患率1000人年あたり3、有病率3.7%)より低い値であることを確認した。罹患範囲が広範な症例に限るとSIRは3.95まで上昇し、原発性硬化性胆管炎の合併など他の確立したリスク因子は組み入れた集団ベース研究で一貫して報告されておらず定量的に統合できなかったこと、序論で旧来のメタアナリシスが単一施設・紹介施設などを含む多様な研究を合算していたと述べ、免疫抑制薬・生物学的製剤の普及とサーベイランスの進歩を更新の理由に挙げていること、考察で組み入れ研究の62%が2016年以降の報告で現在の治療・サーベイランスを反映するとしていることを確認した(全文 PMC12150054)閲覧 2026-08-27
  6. 6.The Evolution of the Management of Dysplasia in Ulcerative Colitis(Cancers・2026)潰瘍性大腸炎の異形成に関する用語は、単一のポリープ状病変を指す「dysplasia-associated lesion or mass(DALM)」を含む複数の呼称から、2015年のSCENIC国際コンセンサスが提唱した「内視鏡的にvisibleな異形成」対「invisibleな異形成」という分類へ移行したことを確認した。境界明瞭で浸潤所見・粘膜下線維化のないvisible dysplasiaは内視鏡的切除とサーベイランス継続で対応でき、必ずしも大腸全摘を要しない閲覧 2026-08-27