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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

分類不能腸炎

Inflammatory bowel disease unclassified

別名
IBDUIBD-U
臓器系
消化器免疫・膠原病
科目
Internal MedicinePathology
トピック
内科学 G-03:炎症性腸疾患病理学 C/40:炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
上位概念
炎症性腸疾患
鑑別疾患
クローン病潰瘍性大腸炎
症状
下痢腹痛

🧠 全体像:inflammatory bowel disease unclassified(IBDU)は、のうち大腸に限局した炎症を認めるが、ともとも決められない状態に付ける暫定的な臨床診断名である。「二つの疾患の」ではなく、情報が出そろえば再分類されうる保留ラベルだと理解するのが幹である。⚠️ 混同しやすいが、病理医がを見てもなお判別できないときに使う indeterminate colitis(IC)とは別の用語であり、IBDUは臨床診断・ICはという使い分けを押さえる。の「」はこの2つをまとめた総称なので、どちらを指すかが問題になる場面では英語術語のまま扱う。

用語の使い分け

⚠️ この2つを同じ意味で使うと、外科医と内科医の間で話が食い違う。

日本消化器病学会のガイドラインは、ともとも鑑別できない腸炎症例をでまとめてと呼び、その内訳として次の2つの英語術語を置いている1。⚠️ の「」はの総称であって、どちらを指すかまでは決めていない——ここが用語の落とし穴である。

項目 inflammatory bowel disease unclassified(IBDU) indeterminate colitis(IC)
誰が付けるか 臨床医(消化器内科・病理・画像を総合) 病理医
いつ付けるか 病歴・内視鏡・・画像を検討した時点(は無い) などのを検討してもなお判別できない時点
位置づけ 生きた患者の暫定的な臨床診断 標本に基づく用語

のはIBDUを「病歴、内視鏡所見、多部位の組織所見、適切な画像検査を踏まえても、・・その他の大腸炎のいずれとも判別できない少数例に用いる用語」と定義し、ICを限定の病理用語として明確に区別している2。

💡 区切りの本質は「手元にがあるか」の一点である。標本が無い段階の保留がIBDU、標本を見てもなお決まらない保留がIC。だから同じ患者が、を経てIBDUからICへ呼び名を変えることがありうる。

臨床像

⭐ IBDUに固有の症状は無い。 大腸に限局したとしての症状、すなわち下痢・・腹痛が中心で、症状だけからIBDUを疑うことはできない——「判別できないこと」が定義なのだから当然である。診断は症状ではなく、内視鏡・生検・画像を尽くしてもなお決まらないという手続きの結果として付く。

IBDU 37例と・各74例を比べたでは、診断時の症状は腹痛78.4%、体重減少73.0%、64.9%、貧血62.2%、発熱59.5%であった3。💡 この並びはきれいに中間的である:は(90.5%)より少なく(8.1%)よりはるかに多く、一方で貧血・発熱は寄りに出る。所見が混在するという定義が、そのまま症状の頻度分布に現れている。

⚠️ 合併症は、腸閉塞32.4%、消化管出血32.4%、29.7%、瘻孔24.3%、穿孔13.5%で、瘻孔・穿孔・はいずれもより有意に高頻度であった3。大腸限局であっても的な合併症が一定割合で起こるという事実は、後述するIPAAの適応判断に直結する。

なお同研究では、発症年齢の中央値は27歳、症状出現から診断までの期間の中央値は24か月であった3。

炎症性腸疾患の下位型判別の中でのIBDU

の判別表(罹患部位・・深さ・肉芽腫・瘻孔/狭窄・喫煙の影響・)は、とのどちらの所見が優位かを整理するための軸である。IBDUは、この軸のいずれについてもらしい所見(性・・瘻孔傾向)とらしい所見(・粘膜限局)が混在して見え、初診時点で優位性を決め切れない症例に相当する。特に小児例で報告が多い。

flowchart TD
    A["大腸に限局した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory bowel disease, IBD'>炎症性腸疾患</span>"] --> B["病歴・内視鏡・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple-site biopsy'>多部位生検</span>・画像を総合評価"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Crohn disease, CD'>クローン病</span>か<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulcerative colitis, UC'>潰瘍性大腸炎</span>のいずれかに判別できるか"}
    C -->|"できる"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Crohn disease, CD'>クローン病</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulcerative colitis, UC'>潰瘍性大腸炎</span>として治療"]
    C -->|"できない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory bowel disease unclassified'>分類不能腸炎</span>(IBDU)として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='working diagnosis'>暫定診断</span>"]
    E --> F["大腸限局性を前提に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulcerative colitis, UC'>潰瘍性大腸炎</span>に準じた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='treatment strategy'>治療方針</span>で経過観察"]
    F --> G{"経過中に判別所見が明確になったか"}
    G -->|"瘻孔・狭窄・回腸病変などが出現"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Crohn disease, CD'>クローン病</span>へ再分類"]
    G -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='total colectomy'>大腸全摘</span>で根治しうる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='continuous'>連続性</span>病変が確定"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulcerative colitis, UC'>潰瘍性大腸炎</span>へ再分類"]
    G -->|"未確定のまま"| F

経過中の再分類

⭐ IBDUは固定した診断ではなく、経過を追う中で相当数が再分類される。37例を中央値79か月追跡したでは、24.3%がへ、21.6%がへ再分類され、への再分類は発症から約50か月以内、への再分類は約90か月以内に起こる傾向があった3。💡 この時間差は、を示す所見(瘻孔・狭窄・病変など)がを示す所見より遅れて顕在化しやすいことを反映していると考えられる。半数以上はIBDUの診断のまま経過することも押さえておく。

治療とIPAAの適応判断

大腸限局性という前提から、寛解導入・維持はに準じた・生物学的製剤を中心に個別化することが多い。ただし、を示唆する所見が出現すれば速やかにを見直す。

⚠️ (IPAA)の適応判断はIBDUで特に難しい。 ・IPAAはでは根治的だが、では・瘻孔などの合併症を高頻度に来し、根治的ではない。IBDUは術前の時点でどちらの経過をたどるか確定できないため、適応の可否そのものが不確実性を伴う判断になる。術前にIBDUと分類された患者を含む334例の前向き追跡(術後中央値26か月)では、急性16%、慢性11%、de novo12%を認めた。この頻度は単独の術前診断群と有意差がなかったが、いずれもできない水準であり、IPAA後も長期的な再分類・・様変化のリスクを見込んだ経過観察が必要である4。

まとめ

  • IBDUは、病歴・内視鏡・・画像を踏まえてもともとも判別できない大腸限局のに付ける暫定的な臨床診断名である。
  • でのみ判定できない場合に病理医が用いる indeterminate colitis とは別の用語であり、IBDU=臨床診断、IC=という使い分けを混同しない。の「」は両者をまとめた総称である。
  • 固有の症状は無く、下痢・・腹痛が中心。症状・合併症の頻度はとの中間に分布し、瘻孔・穿孔・がより多い点はに影響する。
  • 経過中に相当数がまたはへ再分類されるため、IBDUという診断で経過を固定しない。
  • 治療は大腸限局性を前提にに準じることが多いが、IPAAの適応判断は難しく、術後の・de novoのリスクを踏まえた長期経過観察を要する。

出典

  1. 1.炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)(日本消化器病学会・2020)潰瘍性大腸炎ともクローン病とも鑑別できない腸炎症例を日本語で「分類不能腸炎」と総称し、その内訳として、外科手術標本が得られていない段階で臨床経過・内視鏡所見・組織学的検査を合わせても診断が困難な場合に用いる inflammatory bowel disease unclassified(IBDU)と、外科手術標本で潰瘍性大腸炎とクローン病の両方の特徴を併せ持つ場合に用いる indeterminate colitis の2つの英語術語を置く閲覧 2026-08-19
  2. 2.Third European Evidence-based Consensus on Diagnosis and Management of Ulcerative Colitis. Part 1: Definitions, Diagnosis, Extra-intestinal Manifestations, Pregnancy, Cancer Surveillance, Surgery, and Ileo-anal Pouch Disorders(European Crohn's and Colitis Organisation (ECCO)・2017)病歴・内視鏡所見・多部位生検の組織所見・画像を踏まえても潰瘍性大腸炎ともクローン病とも判別できない大腸限局の炎症性腸疾患を「IBD-unclassified(IBDU)」と呼ぶ臨床診断名とし、切除標本を検討してもなお判別できない場合に病理医が用いる「indeterminate colitis(IC)」とは別の用語として区別する閲覧 2026-08-19
  3. 3.Clinical features of inflammatory bowel disease unclassified: a case-control study(BMC Gastroenterology・2024)IBDU患者37例の中央値79か月の追跡で、24.3%が潰瘍性大腸炎へ、21.6%がクローン病へ再分類され、UCへの再分類は発症から約50か月以内、CDへの再分類は約90か月以内に起こる傾向があった。診断時の発症年齢中央値は27歳、症状出現から診断までの中央値は24か月で、症状は腹痛78.4%・体重減少73.0%・粘液膿性血便64.9%・貧血62.2%・発熱59.5%、合併症は腸閉塞32.4%・消化管出血32.4%・肛門病変29.7%・瘻孔24.3%・穿孔13.5%であり、粘液膿性血便は潰瘍性大腸炎(90.5%)より少なくクローン病(8.1%)より多かった閲覧 2026-08-19
  4. 4.A Prospective Evaluation of the Long-Term Outcome of Ileal Pouch-Anal Anastomosis in Patients with Inflammatory Bowel Disease-Unclassified and Indeterminate Colitis(Diseases of the Colon & Rectum・2009)術前にIBDUと分類された患者を含む回腸嚢肛門吻合術(IPAA)334例の前向き追跡(術後中央値26か月)で、急性回腸嚢炎16%、慢性回腸嚢炎11%、de novoクローン病12%を認め、いずれの頻度も潰瘍性大腸炎単独の術前診断群と有意差はなかった閲覧 2026-08-19