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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

結節性紅斑

Erythema nodosum

臓器系
皮膚免疫・膠原病
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 3-27:血管炎・多形紅斑・結節性紅斑
鑑別疾患
Sweet症候群結節性血管炎結節性多発動脈炎深部静脈血栓症丹毒・蜂窩織炎表在性血栓性静脈炎
治療薬
ナプロキセンインドメタシンヨウ化カリウムコルヒチンプレドニゾロンダプソン
原因薬剤
エチニルエストラジオール+レボノルゲストレルスルファメトキサゾール+トリメトプリム
原因微生物
A群溶血性レンサ球菌結核菌Yersinia enterocoliticaCoccidioides immitis
症状
リンパ節腫脹圧痛関節痛倦怠感発熱皮膚結節
検査値
血算CRP赤沈ASO
元疾患
コクシジオイデス症
原因となる疾患
クローン病サルコイドーシス急性扁桃炎・扁桃周囲膿瘍結核潰瘍性大腸炎

🧠 全体像:は、皮膚そのものの病気ではなく「体のどこかで何かが起きている」として読む。下腿前面に左右対称に生じる熱感と圧痛の強い皮下結節が特徴で、病理は血管炎を伴わないである。感染(・結核)、、、、薬剤、妊娠など多彩な誘因の「最終共通所見」であり、皮疹そのものより背景にある原因検索が診療の中心になる。ただし精査を尽くしても32〜72%は原因不明のままにとどまる1。

病態

は、多彩な抗原刺激に対する過敏反応として生じると考えられており、の隔壁に炎症が起こる。免疫複合体が隔壁のへ沈着するという機序()が提唱され、でが検出されたとする報告がある一方、合併症のないではを認めずIV型(遅延型)過敏反応を想定する報告もあり、単一の機序では説明しきれない1。

では活性化好中球が浸潤し、によると、好中球の動員・活性化に関わるサイトカイン(IL-6・IL-8・IL-12、、 など)の上昇がみられる1。血管そのものを主座とするIgA血管炎などのとは異なり、皮膚生検では血管壁破壊像を伴わないが典型像となる。

💡 好中球が主役だと分かると、治療薬の並びが読める。 ・・はいずれも好中球の遊走や、を抑える薬で、に共通して使われる1。のがこの3剤で占められるのはではない。

疫学

  • 成人では女性に多く、男女比は約1:5である。小児では12歳ごろまで性差を認めない1。
  • 発症頻度は誘因の分布に左右され、地域差・季節差が大きい。スペインでは溶連菌感染の多い年の前半に発症が多く、エジプトではが、スペインではが最多の同定原因として報告されている1。

誘因

同定できる原因として頻度が高いのは、レンサ球菌感染、、、、薬剤、妊娠、である1。

誘因 特徴
感染症 感染(・扁桃炎後に多い)、結核、Yersinia enterocolitica腸炎、など
全身性疾患 (との合併=)、
、
薬剤 (など)、臭素剤、経口避妊薬(など)の関連が最も多い。全症例の2.9〜5%が薬剤性
妊娠 妊娠自体が誘因になり得る
悪性腫瘍 リンパ腫など(頻度は低い)
特発性 32〜72%は精査しても原因が同定されない

💡 の定義は資料によって書き方が違う。 教科書的には「++」の3徴として紹介されることが多いが、 2020のガイドラインはに、および/またはを伴うものと定義している2。つまり状を欠く型も、逆にを欠いて炎だけの型も、いずれもに含まれる(後者は男性に多い)。発熱はどちらの書き方でも定義の構成要素ではない。急性の臨床像として率が高く、同ガイドラインはのようにの臨床的疑いが高い患者ではリンパ節採取を行わないことを提案している(条件付き推奨、エビデンスの質は非常に低い)。ただし採取しない場合は綿密な臨床経過観察を要する2。無症候性のだけの症例については、同ガイドラインは採取の是非を推奨していない(詳細は)。

⭐ では約44%にがみられる1。・・ぶどう膜炎を併せてする。

臨床像

下腿前面に左右対称に出現する、熱感と圧痛の強い径1〜6 cmの紅色皮下結節・局面が典型像である。周囲・大腿・前腕に及ぶこともある。とともにから黄褐色〜緑青色へとに色調変化し(このの見え方を erythema contusiformis と呼ぶ)、通常は1〜6週のうちに潰瘍・瘢痕・萎縮を残さず自然消退する1。同一患者で異なる時期の病変が混在することが多い。発熱、倦怠感、関節痛を伴うことがあり、再発はまれではない。

flowchart TD
    A["下腿前面の左右対称性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='painful subcutaneous nodule'>有痛性皮下結節</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Anamnesis'>病歴聴取</span>:先行する咽頭炎、渡航・結核曝露、消化器症状、薬剤、妊娠"]
    B --> C["胸部画像・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tuberculin reaction (Mantoux test)'>ツベルクリン反応</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interferon-gamma release assay'>IGRA</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='throat culture'>咽頭培養</span>やASO・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pregnancy test'>妊娠反応</span>検査"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bilateral hilar lymphadenopathy'>両側肺門リンパ節腫脹</span>(±<span class='jp-term jp-term-diagram' title='periarthritis'>関節周囲炎</span>)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Löfgren syndrome'>Löfgren症候群</span>として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sarcoidosis'>サルコイドーシス</span>を疑う"]
    C --> F["消化器症状あり"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory bowel disease, IBD'>炎症性腸疾患</span>の評価"]
    C --> H["原因不明"]
    H --> I["特発性として経過観察"]

診断

臨床像(下腿前面の左右対称性有痛性結節、の色調変化)で診断できることが多く、皮膚生検は非典型例や鑑別困難例に限って行う。生検では血管炎を伴わないがみられる。診断が確定したあとの本題は、背景疾患を同定することにある。

初期精査として次を行う1。

  • 血算、、CRP
  • ASO(抗)価・ASK(抗)価と(でもよい)
  • 胸部X線
  • の女性には全例で検査
  • 結核、または胸部X線に異常がある場合は、喀痰・培養とまたは(必須)
  • 下痢・腹痛など消化器症状があれば・培養

💡 ASOを1回測って陰性でもを捨てない。 咽頭のレンサ球菌感染後、皮疹が出るのは感染から2〜3週後で、ASOの抗体反応は急性期の第2〜3週から現れて4〜5週でピークに達する1。皮疹が出た時点の1点測定では上がりきっていないことがあり、で追う。

血液検査そのものにに特異的な異常はなく、炎症反応の上昇は非特異的である。

鑑別診断

主要な鑑別はBazin、、その他のである1。

疾患 鑑別の手掛かり
(Bazin) 下腿後面優位でしやすく、病理で血管炎を伴う。結核関連が多い
の走行に沿った圧痛・・発赤。に触れる血栓が手掛かり
皮下結節に加え、深い潰瘍、末梢神経障害、腎・を伴う中血管炎
蜂窩織炎 通常は片側性で境界不明瞭な紅斑、発熱・悪寒を伴う進行性の経過
片側性の腫脹・圧痛。結節性の多発病変ではない

治療

⭐ そのものは自然消退するので、治療の中心は対症療法と原因治療である。大多数の患者では対症療法で足りる1。

  1. 原因治療 — 感染症の治療、原因薬剤の中止、基礎疾患の管理を優先する。薬剤が誘因と同定されれば、可能な限り中止する。
  2. 支持療法 — 安静・・圧迫が浮腫と疼痛を軽減する。
  3. 疼痛コントロール — NSAIDs(100〜150 mg/日、500〜1000 mg/日)を用いてよい。
  4. 難治例 — 経口300〜900 mg/日を3分割で開始し150 mg/日へする。50〜75 mg/日は反復例・難治例で考慮する。1〜2 mg/日は主にに伴うで用いられてきた。
  5. 重症例 — (換算で40 mg/日相当)を用いる。難治性の個疹には局所注射(アセトニド5 mg/mL)を行う。

⚠️ は「禁忌がなければ第一選択」ではない。に対するの位置づけは疼痛コントロールであって、皮疹の消退を早めるものではない。とくにに伴うではが腸炎を増悪させうるため慎重に用いる1。誘因のにが入る疾患である以上、を出す前に消化器症状を確認する。

⚠️ 全身ステロイドを投与する前に、結核など基礎の感染症と悪性腫瘍を除外する1。感染が主因であればステロイドは病態を悪化させうる。全身・局所ステロイドがに用いられること自体がまれである点も押さえておく。

⚠️ は妊娠中・授乳中は禁忌であり、のある患者では慎重に用いる。では・溶血・・末梢神経障害に注意し、欠損のスクリーニングを検討する1。妊娠が誘因になりうる疾患なので、薬剤選択の前に妊娠の有無を確かめる。

まとめ

  • は下腿前面に左右対称に生じるで、病理は血管炎を伴わないである。成人では女性に多い(男女比約1:5)。
  • 感染(・結核)、、、、薬剤、妊娠など多彩な誘因の「最終共通所見」であり、診療の中心は背景疾患の検索にある。ただし32〜72%は原因不明にとどまる。
  • 初期精査は血算・・・ASO・・胸部X線で、の女性には検査を全例で行う。結核では抗酸菌検査と/が必須である。
  • との組合せはとしてを強く示唆し、予後良好である( 2020の定義ではは必須ではなく、+だけの型も含む)。臨床的疑いが高ければリンパ節採取を行わないことが提案される(条件付き推奨)。
  • 通常は1〜6週で潰瘍・瘢痕を残さず自然消退するため、治療は原因治療と支持療法が中心である。は疼痛コントロールの位置づけで、合併例では増悪させうる。ステロイドは感染・悪性腫瘍を除外した重症例に限る。

出典

  1. 1.Erythema Nodosum: A Practical Approach and Diagnostic Algorithm(American Journal of Clinical Dermatology・2021)全文(PMC7938036)を閲覧。大多数の患者では対症療法で足り、圧迫包帯と患肢挙上を浮腫・疼痛に用いること、疼痛コントロールにインドメタシン100〜150 mg/日またはナプロキセン500〜1000 mg/日を用いてよいが、NSAIDsは炎症性腸疾患患者では病勢を悪化させうるため慎重に用いること、難治例には経口ヨウ化カリウム300〜900 mg/日(3分割、150 mg/日へ漸減)を用いること、コルヒチン1〜2 mg/日は主にBehçet病に伴う結節性紅斑で用いられてきたこと、ダプソン50〜75 mg/日は反復例・難治例で考慮しG6PD欠損のスクリーニングを検討すること、全身および局所ステロイドが結節性紅斑に用いられることはまれでプレドニゾン40 mg/日が重症例に用いられ、投与前に基礎の感染症・悪性腫瘍を除外すべきこと、同定できる原因として最も多いのはレンサ球菌感染・初感染結核・サルコイドーシス・Behçet病・薬剤・妊娠・炎症性腸疾患であり32〜72%は原因不明にとどまること、薬剤性は全体の2.9〜5%でサルファ薬・臭素剤・経口避妊薬の関連が最も多いこと、成人では女性に多く男女比は約1:5、小児では12歳までは性差がないこと、皮疹は径1〜6 cmの結節・局面で通常1〜6週のうちに鮮紅色から黄褐色〜緑青色の打撲様色調へ変化して潰瘍・瘢痕・萎縮を残さず消退すること、初期精査として血算・赤沈・CRP・ASO・咽頭培養・胸部X線を行い妊娠可能年齢の女性には全例で妊娠反応検査を行うこと、結核流行地域および胸部X線異常例では喀痰抗酸菌塗抹・培養とツベルクリン反応またはIGRAが必須であること、咽頭レンサ球菌感染後の皮疹は2〜3週後に出現しASO抗体反応は第2〜3週から現れ4〜5週でピークとなること、Behçet病患者の約44%に結節性紅斑がみられること、主要な鑑別がBazin硬結性紅斑・表在性血栓性静脈炎とその他の脂肪織炎であることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Diagnosis and Detection of Sarcoidosis: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society・2020)全文(PMC7159433)を閲覧。Löfgren症候群が「両側肺門リンパ節腫脹に結節性紅斑および/または関節周囲炎を伴うもの」と定義されていること、Löfgren症候群・lupus pernio・Heerfordt症候群のようにサルコイドーシスの臨床的疑いが高い患者ではリンパ節採取を行わないことを提案する(条件付き推奨、エビデンスの質は非常に低い)こと、ただしリンパ節採取を行わない患者には綿密な臨床経過観察を要すること、無症候性の両側肺門リンパ節腫脹単独例についてはリンパ節採取の是非について推奨を出していないことを確認した閲覧 2026-09-05