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Disease Atlas · 循環器 · 疾患

表在性血栓性静脈炎

Superficial thrombophlebitis

別名
表在静脈血栓症Superficial vein thrombosis
臓器系
循環器皮膚
科目
Internal MedicinePathology
トピック
内科学 L-09:表在静脈血栓症と深部静脈血栓症病理学 A/28:血栓症の原因と種類
鑑別疾患
結節性紅斑深部静脈血栓症
関連疾患
Trousseau症候群
治療薬
フォンダパリヌクスリバロキサバン
症状
圧痛紅斑

🧠 全体像:は、皮下のに沿って触れるの圧痛が診断の入口になる病態である。「表在」という名前から良性・と決めつけると危険で、下肢のは最大4分の1で()を合併し、Doppler超音波でへの進展の有無を確認することが診療の中心になる。同じ「の」という現象でも、部位・背景によって意味づけが全く異なる——下肢では静脈瘤や不動が背景、・乳房ではという良性の、そして特定の部位に一貫しない遊走性の表在はとして悪性腫瘍を疑う所見になる。

病態

、静脈壁の炎症、血液()がに生じ、血栓と血管壁の炎症を来す。下肢では静脈瘤・不動・外傷・が誘因になることが多く、と交通する伏在大腿接合部・伏在接合部の近くに血栓が及ぶと、への進展リスクが高まる。

臨床像と部位による意味の違い

病型 好発部位・背景 臨床的な意味づけ
下肢の 静脈瘤、不動、外傷、術後 の圧痛、発赤。最大4分の1で・肺塞栓を合併しうる1
・乳房(上腹壁静脈が最多)、外傷・乳房手術後 突然出現する軽度の不快感とな物。で通常6〜8週間で軽快する2
遊走性表在() 部位を変えながら反復・多発 悪性腫瘍(特になど腺癌)に伴う傍腫瘍性凝固異常を疑う(詳細は)

⭐ を診たら、「1か所に固定しているか」「反復・移動しているか」を必ず確認する。 固定したは静脈瘤や外傷に伴う通常型を、部位を変えながら繰り返す遊走性のは悪性腫瘍随伴の可能性を示唆する。

診断

⭐ 「表在」だからといって画像評価を省略しない。 下肢のは検査で、血栓の存在確認とへの進展の除外を行う1。

  • 下肢:Duplex超音波で血栓の長さ、伏在大腿/伏在接合部への近接、への進展・同時の有無を評価する。
  • :多くは臨床診断で足りるが、診断が不確実な場合はが第一選択で、罹患の血流消失が所見となる2。
  • 遊走性であれば、悪性腫瘍検索(特に・肺腺癌などの腺癌)を並行する。

鑑別診断

は下腿前面の左右対称性の有痛性結節であり、の走行に沿わない多発性の病変である点で区別する。はのを欠き、下肢全体の腫脹・が主体になる点が異なる。

治療

は部位と範囲で分かれる。

状況 対応
下肢、小範囲・接合部から離れる 歩行、鎮痛(等)、局所管理が基本
下肢、5 cm以上または接合部に近い・リスクが高い 一定期間のを検討する。標準は2.5 mg皮下注1日1回45日間で、主要複合転帰を85%減少させは20、大出血の増加はみられない1
へ進展 に準じて治療する
(・乳房) 温湿布、、刺激性の衣類・活動の回避。通常6〜8週間で自然軽快する2

💡 「接合部から3 cm以内は扱い」という基準は絶対の閾値ではない。 この距離はの合意に基づくもので、CALISTO試験のではこの恣意的な設定のに疑問が生じている1。代替薬として10 mg 1日1回45日間投与も研究されているが、よりな無作為化試験による評価が必要とされる1。

⚠️ のは疼痛緩和であり、血栓そのものを積極的に治療する疾患ではない。 の経過をたどるため、は通常不要である2。

まとめ

  • はに沿うの圧痛が特徴で、「表在」だからといって良性と決めつけない。下肢病変は最大4分の1でを合併する。
  • 部位・背景によって意味づけが異なる:下肢(静脈瘤・不動が背景)、(・乳房、)、遊走性(悪性腫瘍随伴、)。
  • 診断はDoppler超音波でへの進展を評価する。は臨床診断が基本。
  • 下肢病変のは5 cm以上・接合部近接例が対象で、標準は2.5 mg 45日間(CALISTO試験、 20)。は温湿布・で自然軽快を待つ。
  • 遊走性の表在をみたら悪性腫瘍検索を行う。

出典

  1. 1.Treatment of Superficial Vein Thrombosis: Recent Advances, Unmet Needs and Future Directions(Healthcare (Basel)・2024)フランスの地域ベース研究で下肢表在静脈血栓症患者の24%に深部静脈血栓症、4.7%に肺塞栓が併存していたこと、フランスのレジストリ研究では診断後3か月以内の静脈血栓塞栓症発症率が約3〜4%であったこと、圧迫超音波検査で表在静脈の血栓の存在確認と深部静脈系への進展の除外を行うこと、抗凝固療法の主たる根拠が5 cm以上の下肢表在静脈血栓症3002例を対象としたCALISTO試験でありフォンダパリヌクス2.5 mg皮下注1日1回45日間投与が主要複合転帰(死亡・症候性肺塞栓・症候性深部静脈血栓症・進展/再発)を85%減少させ(NNT 20)大出血の頻度は両群とも0.1%で差がなかったこと、代替としてリバーロキサバン10 mg 1日1回45日間が研究されているがより大規模な無作為化試験による評価が必要とされること、血栓頭部が伏在大腿接合部から3 cm以内を高リスクとする従来の基準はCALISTO試験の事後解析でその恣意性に疑問が生じていることを確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Mondor Disease(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Mondor病が1939年にHenri Mondorにより記載された前胸壁静脈の硬化性表在性血栓性静脈炎であり、上腹壁静脈の罹患が最も多く乳房下外象限に触知可能な索状物を形成すること、陰茎背側静脈・腋窩・腹部・腕にも生じうること、原因として外傷(きつい下着、激しい運動、直接損傷)、乳房手術(豊胸術・乳房温存療法)後の続発が挙げられること、臨床像が突然出現する軽度の不快感と触知可能な索状物で発赤・腫脹は軽微であり遠位浮腫を伴わないこと、診断は臨床的に行うが不確実な場合はカラードプラ超音波が第一選択でありその所見は静脈内血流の消失であること、治療は温湿布・NSAIDs・刺激性衣類や活動の回避が中心であること、通常6〜8週間で自然軽快する自己限定性の経過をたどることを確認した閲覧 2026-09-06