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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

コクシジオイデス症

Coccidioidomycosis

別名
Valley fever渓谷熱
臓器系
感染症呼吸器
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 4/7:コクシジオイデス・イミチス。ヒストプラズマ・カプスラーツム
鑑別疾患
ヒストプラズマ症結核市中肺炎
合併症
結節性紅斑
治療薬
フルコナゾールイトラコナゾールアンフォテリシンB
原因微生物
Coccidioides immitis
症状
発熱咳関節痛皮膚結節項部硬直
検査値
抗体価
画像所見
肺空洞結節

🧠 全体像:は、米国南・中南米の乾燥地帯という地理そのものが診断の入口になる二形性真菌Coccidioides immitis感染症である(俗称「」)。臨床像を掴む軸は病型を分けることに尽きる——大半は一次性肺感染として自然軽快するが、一部が播種性(皮膚・骨・髄膜)へ進み、なかでもは無治療ではほぼ致死的で、治療しても生涯にわたる抗真菌薬の継続を要する。

病態と感染経路

土壌中のを吸入すると肺胞でへ形態転換し、の破裂との再成熟という増幅サイクルを組織内で繰り返す(菌の詳しい形態と病原性の仕組みはCoccidioides immitisを参照)。の大多数は肉芽腫でこの増殖を封じ込めて自然軽快するが、細胞性免疫が働かない、あるいはホルモン・が菌の発育を後押しする宿主では、血行性に皮膚・骨関節・髄膜へ播種する。

flowchart TD
    A["土壌中の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arthroconidia'>分節胞子</span>を吸入"] --> B["肺胞で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spherule'>球状体</span>へ形態転換"]
    B --> C["約60%は無症候のまま自然軽快"]
    B --> D["有症状の一次性肺<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coccidioidomycosis'>コクシジオイデス症</span>"]
    D --> E["大多数は自然軽快<br>(結節・空洞が残ることがある)"]
    D --> F["免疫正常でも一部は<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythema nodosum, EN'>結節性紅斑</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythema multiforme, EM'>多形紅斑</span>・関節痛を伴う"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell-mediated immunodeficiency'>細胞性免疫不全</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='third trimester'>妊娠後期</span>・<br>特定の人種的背景"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated coccidioidomycosis'>播種性コクシジオイデス症</span><br>(皮膚・骨・関節)"]
    G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coccidioidal meningitis'>コクシジオイデス髄膜炎</span><br>無治療ではほぼ致死的"]

疫学・危険因子

  • 主要流行地は米国南の砂漠地帯(アリゾナ州、カリフォルニア州サンホアキンバレーなど)で、中南米の乾燥地帯にも分布する。晩夏〜秋の砂塵が多い時期、地震・砂嵐後の集団曝露で発症が増える。
  • ⚠️ 播種リスクが高い群:妊娠、特に(トリターが進むほど播種率が上昇する)、(/、臓器移植後、生物学的製剤使用中など)、フィリピン系・アフリカ系をはじめとする一部の人種的背景1。

臨床像(病型で分ける)

病型 頻度・特徴
無症候〜自然治癒性肺感染 約60%は無症候。有症状例は発熱・咳・関節痛などで自然軽快する。(俗称「砂漠の」)を伴うことがある
慢性肺 一部で結節・空洞が遷延・残存する
皮膚・骨・関節へ播種しや骨関節痛を来しうる。・・特定の人種的背景でリスクが高い
・頭痛を来す播種性病変の中でも最も重篤な型。無治療ではほぼ致死的

診断

  • 血清学的検査:IgM(沈降反応、早期)、IgG()。補体結合は・播種リスクと相関し、経過観察に有用2。
  • 髄膜炎が疑われる場合は髄液の補体結合を測定する。
  • 培養・も確定診断に有用だが、⚠️ は感染性が非常に強くバイオとなるため、疑う場合は事前に検査室へ申告し、相当の設備で扱う(詳細はCoccidioides immitisを参照)。
  • 胸部X線:病変部以外は清浄だが、局所の結節・空洞を伴う。

⚠️ 見逃してはいけないもの

⚠️ は無治療ではほぼ致死的で、治療しても中止するとしやすい。 他の全身性(など)が治療後に投薬を終了できるのと対照的に、生涯にわたる抗真菌薬の継続を要する2。

⚠️ ・・フィリピン系/アフリカ系という播種リスク群を意識する。 肺外症状(皮疹・骨関節痛・)を伴う場合はこれらの背景を確認する1。

治療

病型 治療
軽症・非性の一次性肺感染(免疫抑制なし) ⭐ 抗真菌薬を使わない。 ・厳重な経過観察・体力回復のための運動療法などの支持療法でよい(強い推奨)。診断時点で症状が軽いか、すでに大きく改善・消失している例が対象である2
抗真菌薬を開始する一次性肺感染 診断時に著しく性の病像がある例、広範な肺病変・糖尿病の併存・加齢やによる虚弱がある例(いずれも強い推奨)。アフリカ系・フィリピン系の家系も適応に含めるがいる2。用いる薬はまたは
重症・播種性 製剤で開始し、改善後にへ移行する
高用量を生涯にわたって継続する。中止するとしやすいため2

妊婦では三半期で方針が変わる

⚠️ 「妊婦は」と一括りにしない。 の催奇形性を避ける必要があるのは主に第1三半期であり、それ以降は方針が変わる。妊娠中に症状のあるが生じたら、まず抗真菌薬の開始を考慮する(強い推奨)。非髄膜型初感染の管理は胎児の成熟度に依存する2。

状況 推奨
第1三半期の非髄膜型初感染 静注(強い推奨・中等度)。ほかに無治療での厳重な監視、または催奇形性を説明したうえでのも選択肢(いずれも弱い推奨)2
第1三半期以降の非髄膜型 ・などのを考慮できる(強い推奨・根拠の質は低)2
第1三半期の (強い推奨・中等度)——静注では髄液に届かないためが変わる2
第1三半期以降の髄膜炎、または第1三半期以降に診断された髄膜炎 を処方できる(強い推奨・根拠の質は低)2

⚠️ 髄膜炎でを内服中の女性が妊娠した場合、催奇形性を避けるため第1三半期はを中止する(強い推奨)。この期間は、特にがあればの開始が一つの方法になる2。

💡 は水溶性が高くが良好なため、髄膜炎を含む本症ではむしろ優先される場面がある一方、かつて用いられたは肝毒性のため現在は推奨されない。

鑑別

肺病変が主体の急性期は・結核と、流行地への曝露歴と自然軽快の経過が鑑別の手がかりになる。組織内形態が異なる全身性としてはが鑑別に挙がるが、地理的分布(米国南の砂漠 vs オハイオ・ミシシッピ川流域)が異なる。

まとめ

  • は米国南・中南米の乾燥地帯に分布するCoccidioides immitis/posadasiiの吸入感染症で、大多数は一次性肺感染として自然軽快する。
  • 播種リスクは・・フィリピン系/アフリカ系などの人種的背景で高まり、皮膚・骨・髄膜へ播種する。
  • は無治療ではほぼ致死的で、の生涯投与を要する点が他の全身性と一線を画す。
  • 診断は血清補体結合(と相関)・培養(バイオのため事前申告が必須)による。
  • 治療は「まず治療するかどうか」から始まる——免疫抑制のない軽症・非性の一次性肺感染は抗真菌薬を使わず経過観察でよい。性の病像・広範な肺病変・糖尿病・虚弱があれば/を開始し、重症・播種性には製剤を用いる。
  • 妊婦は三半期で分けて考える。第1三半期の非髄膜型は静注、同期の髄膜炎は、第1三半期以降はいずれもを考慮できる2。

出典

  1. 1.Risk Factors for Disseminated Coccidioidomycosis, United States(Emerging Infectious Diseases (CDC)・2017)播種性コクシジオイデス症のリスクが妊娠後期・免疫抑制・フィリピン系/アフリカ系などの人種的背景で高まることを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.2016 Infectious Diseases Society of America (IDSA) Clinical Practice Guideline for the Treatment of Coccidioidomycosis(Infectious Diseases Society of America・2016)無症候・軽症の一次性肺コクシジオイデス症の多くは無治療で自然軽快すること、コクシジオイデス髄膜炎はフルコナゾール高用量を生涯にわたり継続する必要があることを確認した。2026-09-27にConsensusの全文抜粋で推奨文を逐語で追加確認(発行元サイトとDOI先はbot判定で読めない):推奨1が「軽症または非消耗性の症状にみえる患者、あるいは診断時点で臨床像が大きく改善または消失している患者には、患者教育・厳重な経過観察・体力回復のための運動療法などの支持療法を推奨する」(強い推奨・根拠の質は低)であり、抗真菌薬の投与を前提としていないこと。推奨2が診断時に著しく消耗性の病像がある患者には抗真菌薬の開始を推奨すること(強い推奨・低)。推奨3が広範な肺病変・糖尿病の併存・加齢や併存疾患による虚弱のある患者には開始を推奨し、アフリカ系・フィリピン系の家系も適応に含める専門家がいるとすること(強い推奨・低)。推奨35が妊娠中に症状のあるコクシジオイデス症が生じたら抗真菌薬開始を考慮すべきとし、非髄膜型初感染の管理は胎児の成熟度に依存するとすること(強い推奨・中等度)。推奨36が第1三半期の非髄膜型初感染には静注アンフォテリシンBを推奨し(強い推奨・中等度)、他の選択肢として無治療での厳重な監視、または催奇形性を説明したうえでのアゾール(いずれも弱い推奨・低)を挙げ、第1三半期以降はフルコナゾール・イトラコナゾールなどのアゾールを考慮できるとすること(強い推奨・低)。推奨37が第1三半期に髄膜炎を発症した場合は髄腔内アンフォテリシンBを推奨し(強い推奨・中等度)、第1三半期以降および第1三半期以降に診断された場合はアゾールを処方できるとすること(強い推奨・低)。推奨40が妊娠時にアゾール内服中の髄膜炎患者では催奇形性を避けるため第1三半期はアゾールを中止すべきとすること(強い推奨・中等度)。閲覧 2026-08-19