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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 疾患

糖原病

Glycogen storage disease

別名
グリコーゲン蓄積症GSD
臓器系
内分泌・代謝小児運動器
科目
BiochemistryNeurologyPediatricsInternal Medicine
トピック
生化学 4/5:フルクトース・ガラクトース・ラクトースの代謝(病的側面);グリコーゲンの代謝神経内科 G1-34:ミオパチー小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価小児科 2-30:低血糖の症状と治療小児科 1-20:小児の肝腫大・脾腫内科学 S-50:筋力低下の内科的原因と鑑別診断
上位概念
先天代謝異常症
鑑別疾患
デュシェンヌ・ベッカー型筋ジストロフィーミトコンドリア病遺伝性フルクトース不耐症古典型ガラクトース血症(GALT欠損症)皮膚筋炎・多発筋炎
合併症
肥大型心筋症横紋筋融解症痛風肝硬変炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)慢性腎臓病肝細胞癌
続発疾患
低血糖(非糖尿病性)
治療薬
アルグルコシダーゼアルファ
症状
筋痙攣筋力低下筋痛痙攣肝腫大
検査値
低血糖乳酸尿酸
適応薬
アルグルコシダーゼアルファ

🧠 全体像は「グリコーゲンの合成・分解のどこか一段階を担う酵素または輸送体が、生まれつき欠損する」という一点で束ねられるである。欠損酵素が主に働く臓器が肝か筋かで、症候は「肝型(低血糖・が前面)」と「筋型(運動不耐・が前面)」に二極化する。欠損酵素で分類してから型ごとの臨床像を対比するのが実戦的な理解の順序で、診断は遺伝学的検査が第一選択になりつつあり、酵素活性測定・は補助へ位置づけが移っている。

概要・分類

のどの段階が障害されるかで病型が決まる。主要な型を次にまとめる。

病型 別名 主たる病態
I型 von Gierke病 肝型・最重症の低血糖
II型 筋型・のなかで唯一の
III型 Cori病/Forbes病 肝型(IIIaは筋・心筋も)
IV型 Andersen病 肝型・肝硬変へ進行
V型 筋型・運動不耐の代表
VI型 Hers病 肝型・軽症
VII型 筋型・溶血を伴う
IX型 肝型・X連鎖性が多い、軽症

は欠損酵素で分類する。 なお「0型」は欠損でむしろグリコーゲンが不足する点で他の型と病態が正反対であり、「=蓄積」というイメージに当てはまらない例外である。

病態

flowchart TD
    A["グルコース-6-リン酸"] --> B["合成:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycogenin'>グリコゲニン</span>→合成酵素→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycogen branching enzyme'>分枝酵素</span>"]
    B --> C["グリコーゲン(肝:血糖維持/筋:ATP産生)"]
    C --> D["分解:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phosphorylase'>ホスホリラーゼ</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='debranching enzyme'>脱分枝酵素</span>"]
    D --> E["グルコース-1-リン酸→グルコース-6-リン酸"]
    E --> F{"肝か筋か"}
    F -->|"肝:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucose-6-phosphatase'>グルコース-6-ホスファターゼ</span>を持つ"| G["血中へグルコースを放出できる"]
    F -->|"筋:この酵素を欠く"| H["血糖には出せず解糖でATP産生のみに使う"]

肝は血糖維持のためにグリコーゲンを貯め、で最終的にグルコースへ変えて血中に放出する。筋はこの酵素を持たず、貯めたグリコーゲンを血糖には出せず自分自身の急速なATP産生()にしか使えない。この違いがそのまま「肝型は低血糖、筋型は運動不耐」という症候の二極化を生む。

肝型の糖原病

低血糖とが前面に立つ型で、絶食時間と血液検査パターンで鑑別する。

病型 欠損酵素・遺伝子 遺伝形式 乳酸・尿酸 特徴
I型 G6PC、Ia型)/輸送体(SLC37A4、Ib型) 高値 重症
III型 AGL 正常〜軽度上昇 蓄積、IIIaは筋・心筋も侵す
IV型 GBE1 正常 異常な長鎖グリコーゲン(様)→肝硬変
VI型 PYGL 正常 軽症
IX型 X連鎖性が多い 正常 軽症、を伴うことがある

I型(von Gierke病) は肝型のなかで最重症である。(Ia型)またはの輸送体であるSLC37A4(Ib型)を欠く。空腹に耐えられず数時間で重篤な低血糖に陥り、これは非糖尿病性の低血糖の代表的な原因の一つである。を伴い、著明なと丸い頬のが特徴で、低血糖から痙攣を来しうる。Ib型では好中球減少・好中球機能異常を伴い、様の腸病変を来す点がIa型と異なる。

III型(Cori病/Forbes病)の欠損で、分枝点の手前までしか分解が進まずが蓄積する。低血糖・はI型より軽く、乳酸・尿酸は正常〜軽度にとどまる点がI型との対比軸になる。骨格筋・心筋も侵すIIIa型では心筋症を来すことがある。

IV型(Andersen病)の欠損で、異常な長鎖グリコーゲンが異物として認識され、進行性の肝硬変・肝不全に至る、肝型のなかで最も予後不良な型である。

VI型(Hers病)・IX型 はいずれも軽症の肝型で、低血糖・は目立たない。IX型は肝の欠損で、サブユニット遺伝子の多くがX染色体上にあるため男児に多い。

筋型の糖原病

運動不耐・が前面に立つ型で、運動時に止まる経路で鑑別する。

病型 欠損酵素 セカンドウィンド その他の特徴
II型 GAA 唯一の。乳児型は
V型 PYGM あり 運動負荷で乳酸がほぼ上昇しない
VII型 PFKM なし 代償性の溶血性貧血を伴う

II型( は他のと病態がまったく異なる。細胞質の酵素ではなくリソソーム内で働くの欠損で、グリコーゲンが分解されずリソソーム内に蓄積する点でのなかで唯一のである。乳児型は・著明なを呈し、無治療ではによる心不全・呼吸不全で死亡する。は近位筋・呼吸筋優位のの筋力低下として成人期にも発症する。組換えヒトによるではなど)が確立し、多くの国・地域での対象にもなっている。

V型(の欠損で、運動開始直後に・運動不耐を来すが、数分の休止・軽い運動継続後に(脂肪酸・血中グルコース利用への切り替えで軽快する現象)が現れるのが特徴である。激しい運動後には筋痛を来しうる。運動では血中乳酸がほとんど上昇しないが、古典的なのリスクがあり、現行のガイドラインは非虚血性の運動を優先し、遺伝学的検査を診断の第一選択とする方向にある。

VII型(の欠損で、V型と同様の運動不耐・を呈するが、を欠く点と、赤血球でも同酵素の活性が部分低下するため代償性の溶血性貧血を伴いうる点でV型と鑑別する。

診断

⭐ 現在は遺伝学的検査を第一選択とし、酵素活性測定・は確定しない場合や表現型確認に補助的に用いる。低血糖・乳酸・尿酸・脂質とCK・筋力低下のパターンが型のあたりをつける手がかりで、+低血糖は代謝疾患を疑う代表的な所見である。日本の自体を対象としないが、は国・地域によって独自にスクリーニング対象へ加えられている。

治療

肝型では頻回の糖質摂取と生コーンスターチによる持続的なグルコース供給が治療の柱で、絶食回避が最優先になる。I型では蛋白食の調整、への対応、腎障害を続ける。筋型では激しい運動を避け、前の糖質補給とセカンドウィンドを利用した運動計画を指導する。II型だけが確立している。

合併症

病型 長期合併症
I型 化しうる)、進行性の痛風
Ib型 好中球減少に伴う様腸病変
III・IV型 肝硬変への進行
II型 (とくに乳児型)
V型 反復するによる

鑑別

運動不耐・筋力低下を呈する筋型は、他の疾患と鑑別する。は同様に絶食・運動で悪化するがが持続しやすい。は進行性でセカンドウィンドを欠き、は炎症所見・皮疹・自己抗体で区別する。肝型はのなかで、など低血糖・を来す他疾患と鑑別する。

まとめ

  • はグリコーゲンの合成・分解のどこかの酵素・輸送体欠損で起こり、肝型(低血糖・)と筋型(運動不耐・に大別してから病型を対比すると理解しやすい。
  • I型は最重症の肝型で乳酸・尿酸が高値、III型は乳酸・尿酸が正常〜軽度、IV型は肝硬変へ進む。
  • II型は唯一のが確立、V型はセカンドウィンドと乳酸不上昇、VII型はセカンドウィンドを欠き溶血を伴う点で鑑別する。
  • 診断は遺伝学的検査が第一選択で、酵素活性測定・生検は補助へ位置づけが変わってきている。
  • 治療は絶食回避(コーンスターチ療法など)が共通原則で、だけがある。