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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

古典型ガラクトース血症(GALT欠損症)

Classic galactosemia (GALT deficiency)

別名
古典的ガラクトース血症ガラクトース血症I型ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症GALT欠損症
臓器系
内分泌・代謝
科目
Medical BiochemistryPediatrics
トピック
生化学 4/5:フルクトース・ガラクトース・ラクトースの代謝(病的側面);グリコーゲンの代謝小児科 2-09:新生児・乳児で疑う遺伝性疾患の特徴
上位概念
先天代謝異常症
鑑別疾患
チロシン血症1型遺伝性フルクトース不耐症糖原病
合併症
白内障敗血症急性肝不全
症状
嘔吐黄疸肝腫大
検査値
低血糖ビリルビン

🧠 全体像:は、乳糖の代謝経路()でGALT酵素が働かないために起こる。要点は3つ——①乳糖を摂り続ける限り進行するため、(NBS)陽性で数値が著明なら精査の結果を待たずに乳糖除去を始める、②未治療では大腸菌によるという他のにはあまり見られない特異的な合併症を来し致死的になりうる、③を生涯続けても長期合併症(発達・言語の問題、女性の卵巣機能不全)は完全には防げない——という点である。ただしだけは例外的にへの反応がよく、開始が早いほど頻度が低い。

病態:Leloir経路のどこが止まるか

乳糖は小腸でグルコースとに分解され、は(GALK)でになる。ここから先、GALTがとを、とへ変換する。GALTが欠損すると、この一段階だけが止まり、上流の・・(の還元産物)が蓄積する。

flowchart TD
    A["乳糖(母乳・乳製品)"] --> B["消化管でグルコース+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='galactose'>ガラクトース</span>に分解"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='galactose-1-phosphate'>ガラクトース-1-リン酸</span>(GALKによる)"]
    C --> D{"GALTは働くか"}
    D -->|"正常"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucose-1-phosphate'>グルコース-1-リン酸</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='UDP-galactose'>UDP-ガラクトース</span><br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycolysis'>解糖系</span>・糖タンパク合成へ合流"]
    D -->|"欠損(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='classic galactosemia'>古典型ガラクトース血症</span>)"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='galactose-1-phosphate'>ガラクトース-1-リン酸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='galactose'>ガラクトース</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='galactitol'>ガラクチトール</span>が蓄積"]
    F --> G["腎・肝・脳・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lens'>水晶体</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parenchymal cell'>実質細胞</span>障害<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='galactitol'>ガラクチトール</span>は浸透圧活性を持つ)"]
    G --> H["低血糖・肝障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular injury'>尿細管障害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cataract'>白内障</span>・<br>大腸菌などによる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='severe infection'>重症感染症</span>"]

💡 の機序だけ他と毛色が違う。 肝・腎・脳の障害はそのものの毒性によるが、はが内に蓄積し浸透圧的に水を引き込むことで生じる——酵素毒性ではなく物理化学的な機序である点を区別しておくと、なぜ乳糖除去だけでが改善しうるかが理解しやすい。

病型分類

の酵素欠損部位によって4病型に分かれ、臨床的重症度と生化学パターンが異なる。

病型 GALT活性 血中 血中
I型(・本項) GALT 低下 増加〜著増 著増
II型(欠損) GALK1 正常 著増 検出なし、または低値
III型(欠損) GALE 正常 正常〜増加 増加〜著増
IV型(欠損) GALM 正常 増加〜著増 検出なし、または低値

⚠️ 「」とひとくくりにしない。 臨床的に重篤なのはI型(・本項の対象)で、II〜IV型は重症度・管理方針が異なる。血中との両方が著明に上昇する組み合わせがI型に特徴的である。

臨床像

急性期(新生児期)

哺乳開始後から不機嫌・・下痢・嘔吐などの消化器症状、体重増加不良、採血後の止血困難がみられる。低血糖、、、肝障害(黄疸・肝脾腫・上昇)、凝固異常、溶血性貧血を来し、大腸菌などによる敗血症や髄膜炎などの重症細菌感染症を併発することが多い。乳糖除去を行わなければ致死的である。

⚠️ 未治療の症候性新生児のおよそ10%が敗血症を発症し、その起因菌の大半が大腸菌であるという報告があり1、原因不明の新生児大腸菌敗血症を見たら本症を鑑別に挙げる価値がある。逆に、既に診断され乳糖制限が適切に行われている児では、以降にこの種のを起こすことは通常ない。

慢性期(治療を継続しても残りうる合併症)

急性期を脱して乳糖制限を継続しても、・・振戦・・卵巣機能不全などの長期合併症を発症することがある2。海外のコホートでは次の頻度が報告されている1。⚠️ 4つの数字は同じ集団のものではない。分母が項目ごとに違う。

合併症 頻度 分母(原著の限定)
30% 314例
卵巣機能不全 81% 女性47例
発達遅滞 45% 6歳以上で、以外に発達遅滞の明らかな医学的原因を持たない177例
56%(136/243) 3歳以上の243例

⚠️ この30%は「をしても防げなかった30%」ではない。 同じ314例では、の約半数が軽症・一過性・のものでにより消退し、手術を要したのは8例にとどまる。さらにを認めた群の開始は平均生後77日、認めなかった群は20日で、開始の遅れと相関している1。はの浸透圧効果による物理化学的な機序(上述)なので、負荷を断てば可逆性がある。ただし早期治療例でもは長期予後に含まれうるとされ、皆無になるわけではない。

💡 治療開始時期と相関するかどうかは、合併症ごとに違う。 原著は「治療と転帰のあいだに有意な関連は認められなかった——ただし生後2か月を過ぎてから治療を開始した群では発達遅滞の頻度が高かった」とし、そのうえで「IQスコアは治療開始年齢とはあまり相関しなかった」と付け加えている1。つまり発達遅滞の頻度は開始の遅れと相関する(IQの値は相関しない)、・卵巣機能不全は開始時期と関連が示されていない、は開始が早いほど少ない、という三者三様である。

「を守れば治る病気」ではなく、「で急性期の致死的合併症を防ぎつつ、慢性合併症を管理し続ける病気」として説明する必要がある。

新生児マススクリーニングと診断

日本ではののとして、で血中・血中・血中総が測定される。ただし測定項目・は自治体によって異なる。では、血中と血中のいずれもが40〜50 mg/dL以上と著明に上昇し、がより高値になることが多い。ただしやを使用している場合、罹患者でも以下になりうる点に注意する2。

補助的になどで赤血球中のGALT活性(定性)を測定する。⚠️ は()を含む酵素反応を利用するため、欠損症ではGALT活性が見かけ上低下する(偽陽性)。 逆に後は偽陰性になりうる。確定診断には、著明な生化学異常とGALT活性低下またはGALT遺伝子のの確認を要する。

⭐ 数値が待てないほど異常なら、確定診断を待たずに動く。 血中値・値が著明に上昇し、かつなどでGALT活性が低下していた場合は、精査受診を待たずにただちに乳糖除去を開始する(推奨度B)2。GALT活性が正常な場合は、他病型・他疾患(などの+低血糖を来す疾患、1型(確定診断は血中スクシニル)、、など)との鑑別を進める。

治療

  1. 乳糖除去を直ちに開始する: 母乳・普通の育児用ミルクを中止し、または(除去フォーミュラなど)に切り替える。診断確定を待つ必要はない。
  2. 生涯にわたる: 確定診断後は乳糖制限を生涯続ける。乳製品・乳糖を制限するが、果物・野菜・豆類・非発酵の大豆食品、熟成したチーズ(含量が低いもの)は制限しない。
  3. 特異的な薬物療法はない: 合併症に応じた対症療法を行う。乳糖がのに使われることがあるため、処方箋に乳糖禁の記載をするなどの注意を要する。
  4. への対応: 不可逆的な肝硬変・肝不全を来した場合はを検討する。

経過観察

成長(身長・体重)、血中・(1歳までは3〜4か月ごと、以降は半年〜1年ごと。目標は4〜5 mg/dL以下)を定期的に確認する。眼科でのフォロー、骨密度(8〜10歳以降)、発達スクリーニング(生後7〜12か月・2歳・3歳・5歳)を行い、女児では思春期の(12歳での不十分・14歳でのなしなど)を・エストラジオールでスクリーニングする。本疾患はであり、必要に応じて遺伝カウンセリングを行う。

まとめ

  • (I型)はのGALT欠損により、・・が蓄積する疾患で、日本でのはおよそ出生100万人に1人である。
  • 急性期は消化器症状・低血糖・・・肝障害・凝固異常・溶血性貧血に加え、大腸菌などによるを高率に併発し、乳糖除去なしでは致死的である。
  • で血中・がかつGALT活性低下なら、精査を待たずただちに乳糖除去を開始する。
  • を生涯継続しても、発達・言語の問題、女性の卵巣機能不全などの慢性合併症は完全には防げず、定期的な多面的を要する。
  • II〜IV型(GALK・GALE・GALM欠損)とは重症度・生化学パターンが異なり、「」を一律に扱わない。

出典

  1. 1.Classic Galactosemia and Clinical Variant Galactosemia(GeneReviews(University of Washington, Seattle)・2021)未治療の症候性新生児270例の調査で敗血症を10%に認め、その起因菌の内訳が大腸菌26例・Klebsiella 3例・Enterobacter 2例ほかであったこと(10%は敗血症全体の割合で大腸菌に限った値ではない)、生後3〜10日以内に乳糖除去食を開始すれば急性期症状は速やかに改善すること、早期の適切な治療を行っても長期予後に白内障・言語障害・成長障害・知的機能低下・錐体外路症状を伴う神経学的欠損・女性の卵巣機能不全が含まれうることを確認した。長期合併症の頻度は母集団が項目ごとに異なる——白内障は314例中30%、そのうち約半数は軽症・一過性・新生児期のもので食事療法により消退し手術を要したのは8例のみで、白内障を認めた群の食事療法開始は平均生後77日、認めなかった群は20日であった。卵巣機能不全は女性47例中81%、発達遅滞はガラクトース血症以外に明らかな医学的原因を持たない6歳以上の177例中45%、言語障害は3歳以上の243例中56%(136例)である閲覧 2026-08-10
  2. 2.新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025 ガラクトース血症I型(ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症)(日本先天代謝異常学会・2025)日本での有病率が出生約100万人に1人であること、急性期の主要症状(消化器症状・低血糖・尿細管障害・白内障・肝障害・凝固異常・溶血性貧血・大腸菌などによる重症細菌感染症の併発)、GALT欠損症では血中ガラクトースと血中ガラクトース-1-リン酸がいずれも40〜50 mg/dL以上に著明上昇すること、血中ガラクトース・ガラクトース-1-リン酸値が著明上昇しBeutler法などでGALT活性が低下していた場合は精査受診を待たずただちに乳糖除去を開始する方針(推奨度B)を確認した閲覧 2026-08-10