検査値ノート一覧へ

Lab values · Published

乳酸

Lactate

別名
乳酸値血中乳酸
臓器系
全身内分泌・代謝
科目
Anesthesiology
トピック
麻酔科学 A-03:ショックの病態・分類・診断・治療麻酔科学 B-05:急性肝不全・肝性脳症
関連疾患
D-乳酸アシドーシスアセトアミノフェン(パラセタモール)中毒シアン化物中毒ミトコンドリア病悪性高熱症悪性症候群一酸化炭素中毒壊死性腸炎急性肝不全産褥敗血症・産褥感染循環性ショック(心原性・循環血液量減少性・閉塞性・血液分布異常性)常位胎盤早期剥離先天代謝異常症中毒性巨大結腸症腸間膜虚血(急性・慢性、虚血性大腸炎を含む)糖原病敗血症肺血栓塞栓症腹部コンパートメント症候群腹膜炎・消化管穿孔
監視対象薬
ニトロプルシドナトリウムヒドロキソコバラミンプロポフォールメトホルミン
影響する薬剤
エピネフリン

🧠 全体像:乳酸はで常に産生され、産生と肝・腎での利用の釣り合いを映す。高値は低灌流の重要なだが、痙攣、β₂刺激、エピネフリン、肝での処理低下でも上がるため、「乳酸高値=」ではない。単回値だけで輸液を続けず、臨床像、酸塩基状態、採血条件、推移を一緒に読む。

何を測っているか

解糖で生じたピルビン酸は、により乳酸へ可逆的に変換される。この反応はNAD⁺を再生し、酸素が十分な状態でも進行している。乳酸は肝の糖新生、心筋・骨格筋での酸化、腎での代謝に再利用される。

flowchart TD
    A["ブドウ糖"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycolysis'>解糖系</span>"]
    B --> C["ピルビン酸"]
    C --> D["乳酸+NAD⁺再生"]
    D --> E["肝・腎で糖新生"]
    D --> F["心筋・骨格筋で酸化"]
    G["産生増加"] --> H["血中乳酸上昇"]
    I["肝・腎での利用低下"] --> H

乳酸の上昇は「の量」だけでなく、解糖亢進と処理能力の差を示す。肝不全では産生が増えていなくても高値が遷延し、カテコールアミン刺激では灌流が保たれていても解糖が加速する。

基準値と採血法

成人の目安は静脈血で約0.5〜2.2 mmol/L、動脈血で約0.5〜1.6 mmol/Lだが、分析装置、検体、採血条件で異なるため施設範囲を優先する。1 mmol/L ≒ 9 mg/dLで換算できる。

確認項目 読み方
静脈血と動脈血 静脈血はスクリーニングに使えるが、連続評価では検体種をそろえる
全血ガスと中央検査 装置差があるため、小さな変化は同じ方法で比較する
乳酸上昇 多くの施設で2 mmol/L超を高値とするが、原因・は固定値だけで決めない
低値 通常は臨床的意義が乏しく、治療対象にならない

の定義に用いる「適切な循環評価後もを要し、乳酸2 mmol/L超」は病態定義であり、乳酸単独のではない。

高値の意味

は、低灌流を伴うA型と、明らかなを必須としないB型に整理すると見落としが減る。ただし両者は併存する。

機序 代表例 手掛かり
ショック、、重度貧血、局所虚血 、意識変容、乏尿、、画像・診察
解糖亢進 痙攣、激しい運動、エピネフリン、β₂刺激薬 発症時刻、薬剤、灌流改善後の速い低下
処理低下 、重症肝障害、腎機能低下 肝腎機能、持続性、他の代謝異常
毒物・薬剤 など 曝露歴、、臓器障害
代謝疾患 年齢、栄養、反復性、乳酸/ピルビン酸
で腸内細菌が産生 神経症状、通常のL-乳酸測定が正常のことがある

⚠️ 腹痛が強いのに腹部所見が乏しい、や急な神経症状を伴うなど局所虚血が疑われる場合、全身血圧が保たれていても緊急画像・原因治療を遅らせない。正常乳酸も早期局所虚血を除外しない。

乳酸上昇と乳酸アシドーシス

は同義ではない。乳酸が高くてもや他の代償でpHが保たれることがあり、逆に重い酸血症に別の酸が加わっていることもある。

組合せ 解釈
乳酸高値+pH低下・HCO₃⁻低下 乳酸が酸負荷に寄与。障害も評価
乳酸高値+pH正常/高値 、カテコールアミン、早期病態などを考える
+乳酸軽度上昇 ケトン体、腎不全、毒物など別のも検索
乳酸正常+ショック所見 早期、測定、病型差を考え、ショックを否定しない

測定上の注意

採血後も血球の解糖で乳酸が増えるため、指定採血管、速やかな搬送・分析など施設手順を守る。採血管や装置により許容時間と冷却の要否が異なる。

  • 採血前の激しい運動、泣き、振戦、痙攣は実際の一過性高値を作る。
  • 強い握りし運動や長いは避けるが、高値をだけで説明し切らない。
  • 輸液ラインからの採血では希釈や投与液混入を避け、十分に廃棄採血する。
  • の使用だけで重い持続性を決めつけない。
  • 連続測定は動脈・静脈、ベッドサイド・中央検査をなるべく統一する。

経時変化と次の一手

flowchart TD
    A["乳酸高値を確認"] --> B["気道・呼吸・循環と局所虚血を評価"]
    B --> C{"低灌流または緊急病態か"}
    C -->|"はい"| D["蘇生と原因治療を同時開始"]
    C -->|"明らかでない"| E["痙攣・薬剤・肝腎・毒物・代謝を検索"]
    D --> F["同じ検体種で再測定"]
    E --> F
    F --> G["乳酸+臨床灌流+酸塩基を再評価"]
    G --> H["遷延なら未治療原因・処理低下・採血誤差を再検索"]

Surviving Sepsis Campaign 2021は、敗血症が疑われる成人で乳酸を測定し、高値なら低下方向を蘇生の一指標とする一方、他の上昇原因と臨床文脈を考慮するよう求めている。乳酸が下がらないことだけを理由に輸液を反復すると、・閉塞性病態や既にうっ血した患者を悪化させ得る。

まとめ

  • 乳酸はだけでなく、解糖亢進と肝・腎での利用の差を映す。
  • 高値では低灌流を急いで探すが、痙攣、薬剤、肝障害、毒物も考える。
  • を分け、pH・HCO₃⁻・AGを同時に読む。
  • 検体種、処理時間、運動・薬剤をそろえてを比較する。
  • 数値低下だけをにせず、原因治療との改善を確認する。