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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

壊死性腸炎

Necrotizing enterocolitis

別名
NEC
臓器系
消化器
科目
PathologyPediatrics
トピック
病理学 A/44:早産に関連する疾患(新生児呼吸窮迫症候群・壊死性腸炎・乳幼児突然死症候群)小児科 3-53:早産の合併症(BPD・ROP・NEC・IVH)
鑑別疾患
ヒルシュスプルング病腸回転異常・中腸軸捻転
続発疾患
新生児敗血症短腸症候群
関連疾患
前期破水
治療薬
アンピシリンゲンタマイシンメトロニダゾールピペラシリンタゾバクタム
原因微生物
大腸菌肺炎桿菌
症状
傾眠血便発熱嘔吐
検査値
血算血小板減少好中球減少乳酸
画像所見
腹腔内遊離ガス
元疾患
早産陣痛・早産
原因となる疾患
動脈管開存症

🧠 全体像は、未熟な腸管粘膜・免疫機構・血流調節を持つ早産児において、(特に人工乳)・虚血の3つが重なり、腸管の炎症性壊死へ至る疾患である。好発部位は〜近位結腸。画像診断の核心は「」であり、これが内で細菌が産生したガスが組織内に入り込んだ証拠——単なる腸管拡張とは意味がまったく異なる。治療は絶食・減圧・抗菌薬による内科的管理が基本だが、穿孔()や内科治療下の悪化は外科的緊急事態として扱う。

病態

NECは、腸管粘膜の未熟性、腸管免疫機構の未成熟、腸管血流調節の不安定性という早産児に特有の基盤の上に、の定着、(特に人工乳)、循環不全・虚血などの因子が相互に作用して発症すると考えられている。単一の原因ではなく、複数因子が重なった結果としての腸管傷害という理解が実践的である。

flowchart TD
    A["早産:腸管粘膜・免疫・血流調節が未熟"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gut microbiota'>腸内細菌叢</span>の定着"]
    A --> C["人工乳による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enteral nutrition, EN'>経腸栄養</span>"]
    A --> D["循環不全・虚血エピソード"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucosal barrier'>粘膜バリア</span>の破綻"]
    C --> E
    D --> E
    E --> F["細菌の粘膜内侵入・過剰な炎症反応"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gut wall'>腸管壁</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulative necrosis'>凝固壊死</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulceration'>潰瘍化</span>"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gut wall'>腸管壁</span>内に細菌産生ガスが侵入<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pneumatosis intestinalis'>腸管壁内ガス</span>)"]
    G --> I["進行すると穿孔・腹膜炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic shock'>敗血症性ショック</span>"]

⭐ 好発部位は、盲腸、右結腸であり、拡張・脆弱・うっ血〜壊疽を呈する。組織学的には、そして特徴的なのガスを認める。

臨床像

  • 哺乳不耐(哺乳量の減少、胃内の増加、しばしば胆汁性の)が初期の手がかりになる。
  • 腹部膨満、血便、嘔吐が進行に伴って出現する。
  • 無呼吸、体温不安定、傾眠、循環不全など、腸管以外の全身徴候を伴うことが多く、局所症状に乏しくても全身状態の変化から疑うことが重要である。

💡 発熱・腹部膨満・血便・循環不全という所見は、の術前後に生じる(HAEC)とも重なる。NECは早産児の未熟な腸管に生じる一次性の疾患であるのに対し、HAECは無神経節部によるが背景にある点でが異なり、既知のや直腸生検歴の有無が鑑別の手がかりになる。

検査所見

  • 血算:血小板減少、好中球減少(重症化の)。
  • 炎症反応の上昇、代謝性アシドーシス、、凝固異常。
  • 血液培養(敗血症の評価・抗菌薬選択のため必須)。

診断(画像)

画像診断の鍵はであり、単なる腸管拡張だけでは非特異的で診断的価値が低い。

腹部X線所見 意味
壊死した内に細菌産生ガスが侵入した所見。NECに特異性が高い
まで達した所見で、重症度が高いことを示唆する
を意味し、緊急外科的評価の対象となる
腸管拡張のみ 非特異的所見で、単独ではNECの診断根拠として十分ではない

腹部超音波は、の血流評価や腹水・遊離ガスの検出において単純X線を補完する検査として、初期評価に併用することが推奨されている。

flowchart TD
    A["早産児の哺乳不耐・胆汁性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric residual'>胃残</span>・腹部膨満・血便"] --> B["血算・炎症反応・血液ガス・血液培養"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plain abdominal radiograph'>腹部単純X線</span>+超音波"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free intraperitoneal air'>腹腔内遊離ガス</span>(穿孔)はあるか"}
    D -->|"あり"| E["緊急外科的評価"]
    D -->|"なし"| F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pneumatosis intestinalis'>腸管壁内ガス</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='portal venous gas'>門脈ガス</span>はあるか"}
    F -->|"あり"| G["NECと診断し内科的集中管理"]
    F -->|"腸管拡張のみ・所見に乏しい"| H["臨床経過を追いながら再評価"]

治療

内科的管理(初期対応の基本)

  1. の中止: 直ちに絶食とする。
  2. 消化管減圧: を留置し持続的に減圧する。
  3. 輸液・循環管理: ・電解質異常を補正し、必要に応じてを用いる。
  4. 抗菌薬: グラム陰性桿菌(大腸菌など)・嫌気性菌を広くカバーする経験的を血液培養採取後に速やかに開始する。アンピシリンを基本とし、穿孔・腹膜炎を疑う、あるいはより広域の嫌気性菌カバーを要する状況ではメトロニダゾールを追加するか、/などの広域薬へ変更する。
  5. 呼吸循環管理: 全身状態に応じて呼吸補助・循環管理を強化する。

外科的治療

  • 適応: )。
  • 内科治療下でも進行する腹膜炎、の悪化、壊死腸管の拡大が疑われる場合も外科的評価の対象となる。
  • 術式は壊死・穿孔部の切除と一時的なが基本だが、など全身状態が不安定な症例では、開腹の代わりに腹腔ドレーン留置のみで初期対応することもある。

⚠️ 腸管拡張だけを根拠に外科的介入を急がない一方で、・進行する腹膜炎・の破綻を見逃さない。 内科的管理と外科的介入の境界を、画像所見と全身状態の両方から総合的に判断する。

予防

  • 母乳栄養(可能な場合は母体由来の母乳、次善としてドナーミルク) は人工乳と比較してNECのリスクを下げるとされ、早産児管理における予防の柱の一つである。
  • 標準化された段階的な栄養増量プロトコルを施設で用いることが、NEC発症率の低減に寄与するとされる。
  • については、複数のでNECリスク低減の報告がある一方、製剤ごとに組成・が異なり、汚染による重篤な感染症のリスクも報告されているため、現時点では早産児への一律・ルーチンな投与は推奨されていない。導入の可否は各施設・各国の・製剤のを踏まえて個別に判断される。

まとめ

  • NECは早産児の腸管粘膜・免疫・血流調節の未熟性に、・人工乳栄養・虚血が重なって生じる腸管の炎症性壊死で、〜右結腸に好発する。
  • 臨床像は哺乳不耐・胆汁性・腹部膨満・血便に加え、無呼吸・循環不全などの全身徴候を伴う。
  • 画像診断の核心はであり、腸管拡張のみでは非特異的。は穿孔を意味し緊急外科的評価の対象となる。
  • 内科的治療は絶食・胃管減圧・輸液循環管理・(アンピシリン+±メトロニダゾール、あるいは/)が基本で、穿孔はの絶対適応。
  • 母乳栄養と標準化された栄養増量プロトコルが予防の柱であり、は有効性が示唆される一方、製剤の品質・安全性の懸念からルーチン投与は推奨されていない。