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Disease Atlas · 全身 · 中毒

毒性アルコール中毒

Toxic alcohol poisoning

別名
中毒性アルコール中毒毒性アルコール
臓器系
全身神経腎・泌尿器
科目
Internal MedicineTranslational Medicine and PathophysiologyIntensive Therapy and Anesthesiology
トピック
内科学 S-62:有害物質中毒―エチレングリコール・メタノール・重金属・毒キノコ病態生理学 2-16:代謝性酸塩基平衡障害:代謝性アシドーシスとアルカローシス麻酔科学 A-01:ホメオスタシスとその障害
鑑別疾患
アルコール性ケトアシドーシスサリチル酸中毒急性アルコール中毒糖尿病性ケトアシドーシス・高血糖高浸透圧症候群
続発疾患
急性腎障害
治療薬
ホメピゾールエタノール炭酸水素ナトリウムチアミンロイコボリン葉酸
原因薬剤
ロラゼパム
症状
悪心嘔吐腹痛頻呼吸意識障害昏睡痙攣
検査値
アニオンギャップ浸透圧代謝性アシドーシス重炭酸乳酸カルシウムクレアチニン
下位分類
イソプロパノール中毒メタノール中毒

🧠 全体像:は個々の化合物を暗記する主題ではなく、⭐ 「曝露からの時間で、見えるが入れ替わる」という一本の軸で束ねる主題である。飲んだ直後に血中にあるのは未代謝ので、これは浸透圧を上げるが酸ではないから浸透圧ギャップだけが開く。(ADH)が働くにつれは消え、代わりに有機酸が溜まる——このときは縮んでいき、入れ替わりにが開く。⚠️ だからどちらか一方が正常でも除外できない。そして治療の骨格も同じ軸から出てくる。⭐ ADHを止めて「これから作られる毒」を凍結し、既にできた酸とを透析で抜く。

何を「毒性アルコール」と呼ぶか

エタノール以外のアルコール・グリコール類のうち、ADHによるがよりはるかに毒性の強いものを指す。臨床上まとめて扱うのは次の4つである。

化合物 主な曝露源 ADHから先の代謝物 標的臓器
・混和酒、、 → 網膜・視神経、
、ブレーキ液 → → 腎(尿細管)、中枢神経、心肺
化粧品・、一部の製剤、難水溶性薬剤の静注用溶媒 乳酸・ピルビン酸 腎、中枢神経(大量・長時間投与時)
消毒用アルコール(いわゆる「ラビング・アルコール」) (ここで止まる) 中枢神経、

はとへ代謝され、・神経毒性・・死亡を来しうる1。は自体の毒性が比較的低く、を経て生じたが毒性の主役で、その濃度が・死亡率と直接相関する2。詳細はに譲る。

💡 だけが仲間はずれである。 ADHでまで代謝されると、にはが無いのでそこから先へ酸化されない。⭐ 有機酸ができないので、は開かない。 実際、は主にへ代謝されるためやより毒性が低いと位置づけられている3。臨床像は「深いと・ケトン尿があるのにアシドーシスが無い」となり、この組合せ自体が診断の手掛かりになる。

軸——ギャップの時間経過

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='toxic alcohol'>毒性アルコール</span>を摂取"] --> B["血中に未代謝の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parent compound'>親化合物</span><br>(小分子だが電解質ではない)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calculated osmolality'>計算浸透圧</span>に入らない粒子が増える<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='osmolal gap'>浸透圧ギャップ</span>が開大"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alcohol dehydrogenase (ADH)'>アルコール脱水素酵素</span>(ADH)による酸化"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parent compound'>親化合物</span>が減る<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='osmolal gap'>浸透圧ギャップ</span>は縮小していく"]
    D --> F["有機酸(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='formic acid'>ギ酸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycolic acid'>グリコール酸</span>・乳酸)が蓄積"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high anion gap metabolic acidosis'>高アニオンギャップ代謝性アシドーシス</span>"]
    D --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isopropanol (isopropyl alcohol)'>イソプロパノール</span>は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acetone'>アセトン</span>で停止<br>→ 有機酸ができず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anion gap'>アニオンギャップ</span>は開かない"]

⭐ 同じ患者を、曝露からの時間を変えて見ると別の検査像になる。

曝露からの時間 血中に多いもの
早期 未代謝の 開大 まだ正常でありうる
中間 両方が混在 開大 開大
後期 有機酸 正常化しうる 開大

またはの摂取後はが先に現れ、酸性代謝物への変換が進んだあとにが現れる3。

⚠️ エタノールの併飲はこの時計を遅らせる。 エタノールはADHへの親和性が高く酵素をするので、の代謝が進まない。すなわちの開いた時期が長く続き、アシドーシスの出現も遅れる。「酔っているだけ」に見える時間が延びるぶん、診断はかえって難しくなる。

浸透圧ギャップをどこまで信用できるか

は「計算式に入っていない小分子が血中にある」ことしか言わない。⚠️ エタノール・の・・造影剤・重症のでも開くので、開大していること自体はの証明にならない。

⭐ とくには、この鑑別で最も紛らわしい。 あるの24年分ので、の記載・ケトン陽性・14 mmol/L以上の3条件をすべて満たし、が検出されなかった55例では、の中央値が27(18〜36)で、82%が10超、69%が20超、44%が30超、20%が40超であった4。⚠️ 後述するの透析閾値「50超」に迫る値が、を飲んでいない患者でも珍しくない。 同研究は、は安価かつ容易に治療できるのだから、正しく同定すれば高価で侵襲的なの治療を避けられる、としている4。💡 見分けの手掛かりはギャップの大きさではなく、ケトン体が主体かどうかと飲酒・摂食の病歴である。

逆向きの落とし穴のほうが危険である。単施設14年余のでは、とエタノールが測定された20,669例のうちで・グリコール類が検出されたのは84例(43例、19例、15例、7例)で、⚠️ 初回検査のが14以下でありながらが検出された例が7件あった3。同じ検討で20をとしたときの感度は0.82(95%信頼区間0.71〜0.89)、特異度は0.85(95%信頼区間0.82〜0.87)にとどまる3。

💡 一方で、2つのギャップを組にすると取りこぼしは小さくなる。 同検討で初診時にが検出された77例は、いずれもかのどちらか、または両方が上昇していた3。⭐ 片方だけを見ないこと、そして曝露時刻を聴いて「どちらが開いているはずの時期か」を先に決めることが、この主題の実践的な要点である。

疑ったときの進め方

flowchart TD
    A["原因不明の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high anion gap metabolic acidosis'>高アニオンギャップ代謝性アシドーシス</span><br>または説明のつかない<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inebriation'>酩酊</span>"] --> B["曝露時刻と摂取物を聴取<br>血液ガス・電解質・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='measured osmolality'>実測浸透圧</span>・腎機能・Ca・尿所見"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anion gap'>アニオンギャップ</span>開大<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osmolal gap'>浸透圧ギャップ</span>開大"}
    C -->|"どちらか、または両方あり"| D{"ケトン体が主体で<br>アシドーシスが無い"}
    C -->|"どちらも無く曝露も否定的"| E["他の原因を検索<br>(乳酸・腎不全・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='salicylic acid'>サリチル酸</span>など)"]
    D -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isopropanol (isopropyl alcohol)'>イソプロパノール</span>を考える<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Antidote'>解毒薬</span>は不要、支持療法が中心"]
    D -->|"いいえ"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methanol'>メタノール</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ethylene glycol'>エチレングリコール</span>として<br>直ちにADH阻害を開始"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sodium bicarbonate'>炭酸水素ナトリウム</span>でアシドーシスを補正<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='coenzyme'>補酵素</span>を投与"]
    H --> I{"重症の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical signs'>臨床所見</span>・高度アシドーシス<br>高濃度・腎障害<br>⚠️ 閾値は化合物ごとに別"}
    I -->|"あり"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermittent hemodialysis'>間欠的血液透析</span>"]
    I -->|"なし"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Antidote'>解毒薬</span>を継続しギャップを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serial'>経時的</span>に追う"]

⚠️ 血中濃度の結果を待たない。 多くの施設での結果は当日中に返らない。強い疑いとアシドーシスがあれば、その時点でを始める。

補助所見も併せて拾う。では(がカルシウムと結合する)と尿中の、そして遅れてが出る。では視力とを必ず記録する。では呼気のとが手掛かりになる。

治療の共通骨格

段階 何をするか 補足
①毒の生産を止める (代替はエタノール)でADHを ・に適応。には不要(代謝物のが毒の本体ではない)
②アシドーシスを補正する の有機酸を減らして組織移行を抑える意味がある
③代謝物の処理を助ける には()または葉酸、にはと 毒性の弱い代謝物へ振り向けるの補充
④抜く と有機酸の両方を除去する

ホメピゾールとエタノールの位置づけ

⭐ が望ましいである2。ただしその根拠は比較試験ではない。⚠️ の診療指針は「両者の優劣を示した臨床のデータは無い」と明記したうえで、エタノール側の不利——複雑な投与設計、治療濃度の維持の困難、より広範な臨床検査モニタリングの必要、より多い有害事象——を理由にを推している2。💡 逆に言えば、を選ぶ理由は「よく効くから」ではなく「扱いやすく安全だから」である。 同じ指針はの取得費用が比較的高いことも欠点として挙げており2、入手できない施設でエタノールを使うことは今も正当な選択である。

⭐ いつ始めるか——が出てからでは遅い。 については、眼所見や有意なアシドーシスがある患者ではもちろんのこと、⚠️ 臨床毒性の徴候が無い患者でも「まず代謝を阻害すること」が最優先だとされている2。💡 潜伏期の患者にを入れることこそが、この治療の最大のである——毒はまだ作られていないのだから、この時点で止めれば失明も腎不全も起こらない。具体的な開始基準(血中濃度・・pH・の組み合わせ)はに示す。

💡 ①は「解毒」ではなく「凍結」である。 ADHを止めても既にできた有機酸は減らず、も体外へ出ていかない。だから④とセットになる。

透析をいつ行うか

⚠️ ここが「をまとめて扱う」ことの限界である。 EXTRIPはとに別々の勧告を出しており、指標も閾値も終了基準も一致しない。はとで切り、はpHとと血清濃度で切る。⭐ どちらの化合物の話をしているかを決めないまま数値を持ち出さない。

エチレングリコール

では、EXTRIPが12 mmol/L超または27 mmol/L超、昏睡・痙攣・という重症の、およびエタノール使用下で50 mmol/L超または50超のときにを推奨する(使用下の同じ濃度閾値と、8〜12 mmol/L/23〜27 mmol/Lは提案にとどまる。いずれもエビデンスの質は非常に低い)1。様式は多くの状況でが推奨され、利用できなければが次善である1。終了は18 mmol/L未満で推奨され、濃度4 mmol/L未満では提案にとどまる1。

💡 の種類で推奨の強さが変わることに注意する。 濃度・を根拠にする項目では、エタノール使用下は「推奨」なのに使用下は「提案」である1。ADHの遮断がより確実なぶん、を急ぐ必要が下がるという読み方になる。

メタノール

⚠️ には別の勧告があり、閾値はと共有しない。 EXTRIPはの適応として、に帰せられる昏睡・痙攣・新規の、血液pH 7.15以下の代謝性アシドーシス、十分な支持療法とにもかかわらず持続する代謝性アシドーシス、血清24 mmol/L超、血清濃度が使用下で700 mg/L超・エタノール使用下で600 mg/L超・ADH阻害薬なしで500 mg/L超、あるいはを伴う場合を挙げる5。様式はが第一選択で持続的様式も許容される代替、終了は濃度200 mg/L未満かつ臨床的改善が得られた時点である5。詳細はを参照。

⭐ の閾値を並べると差がよく分かる——は27 mmol/L超で推奨、は24 mmol/L超である。⚠️ 片方の数字をもう片方に当てはめると、透析すべき患者を見送る方向にも、不要な透析へ送る方向にも倒れうる。

両者に共通すること

⚠️ 透析はも除去する。 では中にの投与量を調整する必要があるとされ1、では中もADH阻害薬と葉酸/を継続すべきだとされている5。漫然と通常量を続けると過小投与になる。

⚠️ では、中のを避ける。 の発生や重症化を増しうるためである5。

💡 「だから透析」ではない。 同じEXTRIPの検討では、臨床データのある446例の18.7%に対し、12 mmol/L以下(または28 mmol/L以下)の部分集団では死亡率3.6%で、⭐ この部分集団ではを受けた患者の転帰が受けなかった患者より良好ではなかった1。代謝物の負荷と臓器障害の程度で決める。

薬剤の溶媒としてのプロピレングリコール——摂取歴の無い中毒

⚠️ だけは「飲んだ」以外の入り口を持つ。 曝露源として化粧品・・一部の製剤に加えて、・・など難水溶性薬剤の静注製剤の溶媒が挙げられている3。の注射液が溶媒にを使うことは、注射時の血管痛の原因としても知られている。

で鎮静薬を高用量・長時間している患者に、原因のはっきりしない高乳酸血症と開大が出たら、この機序を思い出す。はADHで乳酸・ピルビン酸へ代謝されるため、の上昇は乳酸の上昇として現れる。

⚠️ ただしが開かないことも多い。 前述の検討では7例のうち16以上を示したのは3例だけだった3。摂取歴が無いぶん疑わなければ辿り着かない中毒である。

鑑別

疾患 見分けかた
エタノール単独では高アシドーシスを来さない。⚠️ エタノールが検出されたことはの否定にならない(併飲は珍しくなく、むしろ時計を遅らせる)
ケトン体が主体。⚠️ とその代謝物でも開きうるので、開大をの根拠にしない
著明な高血糖と陽性。高血糖そのものがを上げるが、計算式に糖が入るのでは開かない
と代謝性アシドーシスの混在。・が手掛かり。は開かない
(ショック・薬剤) 乳酸での開大が説明しきれるか。⚠️ はこの群に紛れる

まとめ

  • は、ADHがより毒性の強い代謝物を作る中毒の総称で、・・・を束ねる。
  • ⭐ 軸は時間である。早期はによりだけが開き、代謝が進むとが縮んでが開く。エタノール併飲はこの時計を遅らせる。
  • ⚠️ どちらか一方が正常でも除外しない。14以下でもが検出された例があり、20での感度は0.82にとどまる。一方、2つのギャップを組にすると初診時の症例をほぼ拾えた。
  • はで代謝が止まり有機酸を作らないので、はあってもは開かない。も原則要らない。
  • は静注薬の溶媒として入るため摂取歴が無い。+で疑う。
  • ⚠️ 逆向きの誤りも多い。55例ではの中央値が27・20%が40超で、らしい値まで達していた。開大の大きさでは見分けられない。
  • 治療は①でADHを止め、②で補正し、③(は、は・)を足し、④重症例で。⚠️ 透析中はの投与量を調整する(では阻害薬と葉酸/を継続する)。
  • ⚠️ が望ましいのは「よく効く」からではない。両の優劣を示した臨床のデータは無く、選ばれる理由は扱いやすさと安全性、欠点は費用である。
  • ⚠️ 透析の適応はとで別の勧告である。は12 mmol/L超/27 mmol/L超、はpH 7.15以下・24 mmol/L超・。数値を取り違えない。
  • ⚠️ 透析は「だから」ではなく代謝物の負荷と臓器障害で決める。軽症域ではの効果が示されていない。

出典

  1. 1.Extracorporeal treatment for ethylene glycol poisoning: systematic review and recommendations from the EXTRIP workgroup(EXTRIP Workgroup・2023)エチレングリコールがグリコール酸とシュウ酸へ代謝され、代謝性アシデミア・神経毒性・急性腎障害・死亡を来しうること。エチレングリコールが間欠的血液透析で除去可能(エビデンスレベルB)で、グリコール酸も除去可能(同C)であること。臨床データのある446例の全死亡率が18.7%で、グリコール酸12 mmol/L以下(またはアニオンギャップ28 mmol/L以下)の部分集団では死亡率3.6%であり、この部分集団では体外循環式治療を受けた患者の転帰が受けなかった患者より良好ではなかったこと。体外循環式治療の推奨(いずれもエビデンスの質は非常に低い)が、グリコール酸12 mmol/L超またはアニオンギャップ27 mmol/L超、昏睡・痙攣・急性腎障害という重症の臨床所見、およびエタノール使用下でエチレングリコール50 mmol/L超または浸透圧ギャップ50超で推奨、ホメピゾール使用下の同じ濃度閾値とグリコール酸8〜12 mmol/L(アニオンギャップ23〜27 mmol/L)では提案にとどまること。多くの状況で間欠的血液透析が他の様式より推奨され、利用できなければ持続的腎代替療法が次善であること。終了はアニオンギャップ18 mmol/L未満で推奨されること。体外循環式治療中は解毒薬の投与量を調整する必要があること閲覧 2026-09-03
  2. 2.American Academy of Clinical Toxicology practice guidelines on the treatment of methanol poisoning(Journal of Toxicology - Clinical Toxicology(American Academy of Clinical Toxicology)・2002)メタノール自体の毒性は比較的低く、代謝でホルムアルデヒドを経てギ酸となること。ギ酸の濃度と罹病率・死亡率に直接の相関があり、アシドーシスもギ酸産生に起因すること。摂取後約12〜24時間の潜伏期を経てアシドーシスと視機能障害が現れること。治療が炭酸水素ナトリウムによるアシドーシス補正、ホメピゾールまたはエタノールによる代謝阻害、静注ホリナートによるギ酸代謝の促進、必要に応じた血液透析からなり、ホメピゾールが望ましい解毒薬であること。⚠️ 臨床所見の無い患者でも、まずメタノール代謝の阻害を最優先とすること。⚠️ 両解毒薬の優劣を示した臨床アウトカムのデータは無いが、エタノールには複雑な投与設計・治療濃度維持の困難・より広範な臨床検査モニタリングの必要・より多い有害事象という不利があり、一方でホメピゾールは取得費用が比較的高いこと閲覧 2026-09-02
  3. 3.A retrospective analysis of glycol and toxic alcohol ingestion: utility of anion and osmolal gaps(BMC Clinical Pathology・2012)単施設14年余の後方視的検討で、浸透圧ギャップとエタノールが測定された20,669例のうちガスクロマトグラフィで毒性アルコール・グリコール類が検出されたのは84例で、内訳はエチレングリコール43例・イソプロパノール19例・メタノール15例・プロピレングリコール7例であったこと。初診時に検出された77例はいずれも浸透圧ギャップかアニオンギャップのどちらか、または両方が上昇していたこと。浸透圧ギャップ20をカットオフとしたときの感度が0.82(95%信頼区間0.71〜0.89)、特異度が0.85(95%信頼区間0.82〜0.87)であったこと。初回検査の浸透圧ギャップが14以下でありながらガスクロマトグラフィで毒性アルコールが検出された例が7件あったこと。エチレングリコールまたはメタノールの摂取後は浸透圧ギャップが先に現れ、酸性代謝物への変換が進んだあとにアニオンギャップが現れると述べていること。イソプロパノールは主にアセトンへ代謝されるためエチレングリコールやメタノールより毒性が低いこと。プロピレングリコールの曝露源として化粧品・軟膏・一部の活性炭製剤、およびジアゼパム・エトミデート・ロラゼパムなど難水溶性薬剤の静注製剤の溶媒が挙げられていること。プロピレングリコール7例のうちアニオンギャップ16以上を示したのは3例であったこと閲覧 2026-09-03
  4. 4.Elevated osmol gaps in patients with alcoholic ketoacidosis(Clinical Toxicology・2024)単一の中毒情報センターの24年分を後方視した研究で、①アルコール使用障害の記載、②尿・血清ケトンまたは血中βヒドロキシ酪酸高値、③アニオンギャップ14 mmol/L以上、の3条件をすべて満たす症例をアルコール性ケトアシドーシスと定義したこと(毒性アルコールが検出された例、血液透析またはホメピゾールの複数回投与を受けた例、浸透圧ギャップの記載が無い例、代謝性アシドーシスを来す他の診断がある例は除外)。1,493例を選別して55例が該当したこと。⚠️ この55例の浸透圧ギャップの中央値が27(四分位範囲18〜36)で、45例(82%)が10超、38例(69%)が20超、24例(44%)が30超、11例(20%)が40超であったこと。アルコール性ケトアシドーシスの浸透圧ギャップは毒性アルコール中毒に結び付けられる値にしばしば達し、そのために毒性アルコール中毒と誤診されうると述べていること。⚠️ 出版社サイトが取得できず、以上はいずれも抄録に記載された数値である閲覧 2026-09-05
  5. 5.Recommendations for the role of extracorporeal treatments in the management of acute methanol poisoning: a systematic review and consensus statement(Critical Care Medicine(Extracorporeal Treatments in Poisoning [EXTRIP] workgroup)・2015)⚠️ メタノール中毒の体外循環式治療の適応が、エチレングリコールとは別の指標と閾値で定められていること。すなわちメタノールに帰せられる昏睡・痙攣・新規の視機能障害、血液pH 7.15以下の代謝性アシドーシス、十分な支持療法と解毒薬にもかかわらず持続する代謝性アシドーシス、血清アニオンギャップ24 mmol/L超、または血清メタノール濃度がホメピゾール使用下で700 mg/L超・エタノール使用下で600 mg/L超・アルコール脱水素酵素阻害薬なしで500 mg/L超、あるいは腎機能障害を伴う場合であること。間欠的血液透析が第一選択の様式で、持続的様式も許容される代替であること。メタノール濃度200 mg/L未満かつ臨床的改善が得られた時点で終了できること。重症でなくても濃度が高いだけの場合は、アルコール脱水素酵素阻害が十分であれば体外循環式治療は直ちには必要でないこと。体外循環式治療中もアルコール脱水素酵素阻害薬と葉酸/ホリナートを継続すべきこと。⚠️ 頭蓋内出血の発生や重症化を増しうるため、体外循環式治療中の全身抗凝固は避けるべきこと閲覧 2026-09-05