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Drug Atlas · B25 Other / その他

ホメピゾール

fomepizole

分類
Other / その他
商品名(EU)
Antizol
科目
Forensic MedicinePediatrics
トピック
法医学 31:一酸化炭素・ヒ素・シアン化物・鉛・メタノール中毒小児科 2-25:小児に多い中毒の徴候と除染
副作用
頭痛悪心めまい皮疹痙攣
監視検査値
動脈血液ガスアニオンギャップクレアチニン
影響検査値
好酸球増多
相互作用
エタノール

🧠 全体像薬である。は、それ自体は比較的無毒でも、ADHを起点とする代謝経路を通ってはじめて→グリコールアルデヒド→)に変換され、代謝性アシドーシスや・腎障害を引き起こす。はADHをよりはるかに高い親和性で奪い、この最初の一段目を止めてしまう。自体を無毒化するのではなく、が作られる前に代謝を凍結させ、排泄やによる除去を待つ時間を稼ぐという発想が理解の軸になる。

薬効群の中での位置づけ

同じADHという機序を持つエタノールと、中毒のとしての地位を争ってきた。

項目 エタノール
ADHへの親和性 より桁違いに高い ADHの基質そのものであり親和性はと競合する程度
なし あり(傾眠・呼吸抑制の原因になる)
不要(体重換算の固定投与でな効果が得られる) 必要(治療域を維持するため頻回に採血しする)
低血糖リスク なし あり(糖新生抑制による。特に小児で顕著)
入手性・費用 高価で施設によっては即時入手できないことがある 安価で入手しやすい
での挙動 透析で除去されるためを短縮する必要がある 透析で除去されるため補充が必要

が第一選択に押し上げられた理由は「中枢抑制がなく、血中濃度を測らなくても効果が読める」という管理のしやすさにある。 エタノールは同じ標的を奪い合うという意味では理屈上同格だが、患者を鎮静させながら目標血中濃度を維持する煩雑さと、小児での低血糖リスクが実務上の弱点になる。入手できない施設や費用のがある場面では、今もエタノールが代替として使われる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methanol'>メタノール</span>摂取"] --> B["ADHが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='formaldehyde'>ホルムアルデヒド</span>へ酸化"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aldehyde dehydrogenase (ALDH)'>アルデヒド脱水素酵素</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='formic acid'>ギ酸</span>へ酸化"]
    C --> D["代謝性アシドーシス・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic neuropathy'>視神経障害</span>"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ethylene glycol'>エチレングリコール</span>摂取"] --> F["ADHがグリコールアルデヒドへ酸化"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycolic acid'>グリコール酸</span>を経て<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Oxalate'>シュウ酸</span>へ"]
    G --> H["代謝性アシドーシス・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcium oxalate crystals'>シュウ酸カルシウム結晶</span>による腎障害"]
    I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fomepizole'>ホメピゾール</span>投与"] --> J["ADHを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive'>競合的</span>に阻害<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methanol'>メタノール</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ethylene glycol'>エチレングリコール</span>より<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high affinity'>高親和性</span>)"]
    J -.阻止.-> B
    J -.阻止.-> F
    J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='toxic metabolite'>毒性代謝物</span>への変換がほぼ止まる"]
    K --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parent compound'>親化合物</span>自体は比較的無毒<br>→自然排泄・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemodialysis, HD'>血液透析</span>による除去を待てる"]

💡 は「を分解する」薬ではない。 すでにできてしまったを除去する力はなく、あくまで「これ以上作らせない」だけの薬である。したがって、投与が遅れて代謝性アシドーシスがすでに進行している症例では、単独では不十分で、による補正やの追加が必要になる。

薬物動態

項目 値・特徴
のみ(30分かけて緩徐に希釈静注する)
分布 約0.6〜1.02 L/kg、全身に分布する
代謝 主に肝でCYP450代謝を受け4-カルボキシピラゾールとなる
消失動態 投与初期は自身の代謝経路が飽和し一定速度で消失する()。投与開始後およそ30〜40時間で自身の代謝を誘導(オートインダクション)し、以降はが上がる
半減期 通常投与時は消失がなため単一の値では表しにくいが、中はに転じ、半減期はおよそ3時間程度と報告される
排泄 代謝物としてで除去されるため、透析中はを4時間ごとに短縮する

適応

領域 使いどころ
中毒治療 中毒・中毒(だけでなく、摂取が疑われ代謝性アシドーシスやを認める例も含む)に対する第一選択の

用法・用量

代表的なレジメンは、初回15 mg/kgを静注(30分かけて)した後、10 mg/kgを12時間ごとに4回投与し、その後は自身のを見込んで15 mg/kgに増量して12時間ごとに継続する。を行っている間は除去が速まるためを4時間ごとに短縮し、透析終了時のタイミングに応じて追加投与を検討する。中止の判断は固定の投与回数ではなく、濃度が検出感度未満または20 mg/dL未満に低下し、かつ患者が無症状でpHが正常化していることを基準にする。実際の用量・は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌または他の薬剤に対する重篤な過敏症の既往
  • ⚠️ エタノールと同じADHを奪い合うため、併用すると互いの消失が遅延する。 同一の酵素をに阻害し合うという機序そのものから生じる相互作用であり、エタノール中止後にの効果が急に強まる、といった逆の見え方をすることもある
  • ⚠️ 中は増量・の短縮を忘れない。 透析はだけでなく自身も除去するため、通常量のまま漫然と継続すると過小投与になり、の産生を再び許してしまう
  • は既に生成された)を分解できないため、によるアシドーシス補正や、腎不全・高度アシドーシス・高濃度曝露例でのを並行して行う
  • として、中毒では葉酸のさらなる代謝を促進)、中毒ではを無毒な経路へ誘導し産生を減らす)を併用する

副作用

頻度 内容
高頻度 頭痛悪心めまい・傾眠・
注意 皮疹好酸球増多、注射部位の、徐脈
重篤・まれ 痙攣

まとめ

  • ADHをし、)に変換される最初の一段階を止める薬。自体は比較的無毒という前提の上に成り立つ発想である。
  • 同じ機序を持つエタノールと比べ、がなくも不要で、体重換算の固定投与でな効果が得られる点が最大の利点。エタノールは安価だが中枢抑制・低血糖・濃度管理の煩雑さが弱点になる。
  • すでにできたは分解できないため、によるアシドーシス補正やとの併用が前提。では葉酸、ではを補助的に併用する。
  • 自身も除去するため、透析中はを4時間ごとに短縮する必要がある。
  • 投与中止は固定回数ではなく、毒物濃度が検出感度未満または20 mg/dL未満に低下し、患者が無症状でpHが正常化していることを基準に判断する。
  • 副作用は頭痛・悪心・めまいが多く、重篤なものとして痙攣・が報告される。