内科学

内科学 · S-62

有害物質中毒―エチレングリコール・メタノール・重金属・毒キノコ

Intoxications Caused by Toxic Substances: Ethylene Glycol, Methanol, Heavy Metal, and Mushroom Poisoning

前提:正常
糖新生;コリ回路;解糖系と糖新生の調節;アルコールの酸化酸塩基平衡
薬剤
エデト酸カルシウム二ナトリウムサクシマージメルカプロール
疾患
アマトキシン中毒カドミウム中毒ヒ素中毒メタノール中毒鉛中毒水銀中毒毒性アルコール中毒

🧠 全体像:は、のが遅れて臓器障害を起こす。・ではからアシドーシスへ移行する時間軸、では曝露形態、では症状出現までの潜伏時間を読み、検査確定を待たずと治療を開始する。

有毒アルコール中毒

項目
主な曝露 、汚染酒
有毒 glycolate、 formate
特徴的障害 低Ca、、 ・、、基底核障害
共通所見 初期、上昇、遅れて
解毒 第一選択;エタノールは代替 第一選択;エタノールは代替

が正常でも、が代謝された遅発例を否定できない。逆に早期はがまだ開かないことがある。血液ガス、電解質、浸透圧、腎機能、Ca、尿所見、可能なら血中濃度を採取するが、強い疑いとアシドーシスがあれば結果を待たない。

flowchart TD
    A["原因不明の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inebriation'>酩酊</span>/高<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anion gap'>アニオンギャップ</span>アシドーシス"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osmolal gap'>浸透圧ギャップ</span>・血液ガス・電解質・腎機能"]
    B --> C{"有毒アルコールを強く疑う"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fomepizole'>ホメピゾール</span>を直ちに開始"]
    D --> E["補助因子+アシドーシス補正"]
    E --> F{"重症アシドーシス・臓器障害・高濃度"}
    F -->|"あり"| G["緊急<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemodialysis, HD'>血液透析</span>"]

では葉酸/、では・を補助的に用いる。重症アシドーシス、、腎障害、昏睡・痙攣、高濃度などは適応を中毒と判断する。が望ましいとされるのは、エタノールが治療濃度の維持に頻回採血を要し、・低血糖などの有害事象が多いためである。1

💡 の適応はEXTRIPの推奨に具体的な数値がある。 では、に帰せられる昏睡・痙攣・新規の、血液pH 7.15以下の代謝性アシドーシス、と支持療法にもかかわらず持続するアシドーシス、24 mmol/L超、または血清濃度が使用下で700 mg/L超・エタノール使用下で600 mg/L超・阻害薬なしで500 mg/L超が適応である。様式はが第一選択で、200 mg/L未満かつ臨床的改善が得られれば終了できる。透析中もとは続ける。2

では、glycolate 12 mmol/L超または27 mmol/L超、昏睡・痙攣・のいずれか、エタノール使用下で50 mmol/L超または50超ならを推奨し、使用下の同じ濃度閾値、glycolate 8〜12 mmol/Lまたは23〜27 mmol/Lは提案にとどまる。終了は18 mmol/L未満を目安とする。3

⚠️ が使えている軽症例では、透析を足しても転帰は良くならない。 446例の解析で全体の死亡率は18.7%だったが、glycolate 12 mmol/L以下(28 mmol/L以下)の部分集団では死亡率3.6%で、この集団ではを受けた患者の転帰は受けなかった患者より良くなかった。透析は「有毒アルコール中毒だから」ではなく、の負荷と臓器障害の程度で決める。3

重金属中毒

金属 代表所見 検体・治療の考え方
腹痛、便秘、貧血、末梢神経障害、認知・発達障害、重症脳症 ;曝露除去、重症度別にsuccimerやCaNa₂等
tremor、、腎障害、曝露形態別のGI・肺障害 血液/尿を化学種と時期で選び、適切なを専門判断
激しいGI症状、QT延長、神経障害;慢性で皮膚変化 尿は魚介由来を区別;重症例で等
吸入性肺障害、、骨軟化 血液/尿;曝露除去と支持療法、ルーチンのなし

は金属、化学形、濃度、症状で異なり、誤った薬剤は毒性を増す。曝露源の遮断と・評価を優先する。

⚠️ 軽度上昇にしない。 では、曝露を断ったうえで45 µg/dL以上がの開始基準である。20〜44 µg/dLの範囲ではで自体は下がるものの、や行動・神経心理学的影響を改善・軽減することは示されていない。「数値を下げる」ことと「転帰を改善する」ことは別である。4

毒キノコ中毒

摂取6時間以後に始まる嘔吐・はを警戒する。一時的に軽快しても24〜72時間で、低血糖、、、腎障害へ進み得る。摂取から6時間を超えて症状が始まるキノコは重篤で致死的となりうるというのが最も実用的な振り分けで、()を含む種がによる死亡の90%超を占める。尿中のは摂取後36時間以内が最も信頼でき、4日後には血中・尿中とも通常検出できなくなる。5

  • 残品・写真、摂取時刻、同席者を確認し、症状のない同時摂取者も評価
  • 早期の、輸液、電解質・血糖補正を中毒と検討
  • を利用可能なら早期投与し、はとして用いる6
  • 、ブドウ糖、乳酸、肝腎機能を反復し、重症化前から移植施設へ相談

💡 に「確立した」治療指針は無い。 広く受け入れられたガイドラインが存在せず、とされる・・はいずれもによる裏づけを欠く。についても、・死亡を減らすというエビデンスは限られていると評価されている。それでも代替治療が無く有害事象が比較的少ないため、疑わしい症例では検討すべきとされる。65

まとめ

  • 有毒アルコールではギャップの時間変化を読み、正常値1回で除外しない。
  • は検査確定待ちで遅らせず、重症例は早期透析を検討する。
  • は無症候の間に肝不全が進むため、潜伏時間と連続検査が重要である。

出典

  1. 1.American Academy of Clinical Toxicology practice guidelines on the treatment of methanol poisoning(Journal of Toxicology - Clinical Toxicology(American Academy of Clinical Toxicology)・2002)急性メタノール中毒のほぼ全例が経口摂取によること、メタノール自体の毒性は比較的低く代謝でホルムアルデヒドを経てギ酸となること、ギ酸の濃度と罹病率・死亡率に直接の相関がありアシドーシスもギ酸産生に起因すること、ギ酸がシトクロム酸化酵素を阻害し眼毒性の主因であること、摂取後約12〜24時間の潜伏期を経てアシドーシスと視機能障害が現れること、治療が炭酸水素ナトリウムによるアシドーシス補正・ホメピゾールまたはエタノールによる代謝阻害・静注ホリナートによるギ酸代謝の促進・必要に応じた血液透析からなり、ホメピゾールが望ましい解毒薬であることを確認した閲覧 2026-08-25
  2. 2.Recommendations for the role of extracorporeal treatments in the management of acute methanol poisoning: a systematic review and consensus statement(Critical Care Medicine(Extracorporeal Treatments in Poisoning [EXTRIP] workgroup)・2015)メタノール中毒で体外循環式治療(血液透析等)を推奨する適応が、メタノールに帰せられる昏睡・痙攣・新規の視機能障害、血液pH 7.15以下の代謝性アシドーシス、十分な支持療法と解毒薬にもかかわらず持続する代謝性アシドーシス、血清アニオンギャップ24 mmol/L超、または血清メタノール濃度がホメピゾール使用下で700 mg/L(21.8 mmol/L)超・エタノール使用下で600 mg/L(18.7 mmol/L)超・アルコール脱水素酵素阻害薬なしで500 mg/L(15.6 mmol/L)超、あるいは腎機能障害を伴う場合であること、濃度が得られないときは浸透圧ギャップが参考になること、間欠的血液透析が第一選択の様式で持続的様式は許容される代替であること、メタノール濃度200 mg/L(6.2 mmol/L)未満かつ臨床的改善が得られた時点で終了できること、体外循環式治療中もアルコール脱水素酵素阻害薬と葉酸/ホリナートを継続すべきことを確認した閲覧 2026-08-25
  3. 3.Extracorporeal treatment for ethylene glycol poisoning: systematic review and recommendations from the EXTRIP workgroup(EXTRIP Workgroup・2023)臨床データのある446例で全体の死亡率が18.7%であった一方、glycolate 12 mmol/L以下(またはアニオンギャップ28 mmol/L以下)の部分集団では死亡率3.6%で、この集団では体外循環式治療を受けた患者の転帰が受けなかった患者より良好ではなかったこと、推奨(いずれも非常に低い質のエビデンス)が、ホメピゾール使用下ではエチレングリコール濃度50 mmol/L超または浸透圧ギャップ50超で体外循環式治療を提案、エタノール使用下では同じ閾値で推奨、glycolate 12 mmol/L超またはアニオンギャップ27 mmol/L超で推奨、glycolate 8〜12 mmol/Lまたはアニオンギャップ23〜27 mmol/Lで提案、昏睡・痙攣・急性腎障害という重症の臨床所見があれば推奨、というものであること、多くの状況で間欠的血液透析が他の様式より推奨され利用できなければ持続的腎代替療法が次善であること、アニオンギャップ18 mmol/L未満になれば終了を推奨することを確認した閲覧 2026-08-25
  4. 4.Treatment of Lead Poisoning(American Academy of Pediatrics・2025)血中鉛濃度45 µg/dL以上かつ曝露制御後にキレート療法を開始する。20〜44 µg/dLでは血中鉛濃度自体は低下するが、サクシマーによる治療が認知機能障害や行動・神経心理学的影響を改善・軽減することは示されていない。閲覧 2026-08-25
  5. 5.Mushroom poisoning: An updated review(Turkish Journal of Emergency Medicine・2025)摂取から6時間を超えて症状が始まるキノコは重篤で致死的となりうる毒性を示すこと、シクロペプチド(アマトキシン)を含むキノコがキノコ中毒による死亡の90%超を占めること、アマトキシン中毒に広く受け入れられた治療指針は無く、解毒薬としてベンジルペニシリン・セフタジジム・シリビン(シリビニン)・N-アセチルシステインが用いられること、ベンジルペニシリンとシリビニンは肝細胞へのアマトキシン取り込みを阻害し、ビタミンC・シメチジン・N-アセチルシステインは脂質過酸化を止める抗酸化薬として働くこと、活性炭は吸収を減らすだけでなくアマトキシンの腸肝循環を断つためルーチンに使えること、尿中アマニチンのELISAは摂取後36時間以内が最も信頼でき摂取4日後には血中・尿中とも通常検出できなくなること、劇症肝不全例では肝移植が主たる治療であることを確認した閲覧 2026-08-25
  6. 6.Towards evidence-based emergency medicine: best BETs from the Manchester Royal Infirmary. BET 1: Silibinin in suspected amatoxin-containing mushroom poisoning(Emergency Medicine Journal・2016)シリビニンが保存的治療より肝移植・死亡を減らすかを検討した文献の要約で、該当した5研究から得られるエビデンスは限られていると結論したこと、それでもアマトキシン含有キノコ中毒が疑われる患者では代替治療が無く有害事象も比較的少ないことから、一部の患者ではシリビニンを検討すべきとしたことを確認した閲覧 2026-08-25