内科学

内科学 · S-63

一酸化炭素・二酸化炭素中毒

Carbon Monoxide and Carbon Dioxide Poisoning

前提:正常
酸素と二酸化炭素の運搬。ヘモグロビン。低酸素症の種類。電子伝達系の発エルゴン反応とATP産生
疾患
一酸化炭素中毒

🧠 全体像:はhemoglobinとを障害する化学的窒息ガス、は高濃度で酸素を置換しを起こす単純窒息ガスである。両者とも無防備な救助は二次被害を招くが、診断法との役割は異なる。

COとCO₂の比較

項目 CO中毒 CO₂中毒
発生源 不完全、暖房器具、発電機、車両、 発酵槽、silo、dry ice、消火設備、密閉空間
機序 carboxyhemoglobin形成+障害 酸素置換+急性・
症状 頭痛、悪心、、胸痛、失神、痙攣、 、頭痛、、急速な・
診断 血中COHbをco-oximetryで測定 血液ガスでPaCO₂・pH、曝露歴
特異的治療 100%酸素、選択例で 曝露離脱、酸素・換気;の適応なし

一酸化炭素中毒

通常のとPaO₂は正常に見え得るため除外に使えない。通常のーはCOHbをと区別できないので、血液ガス分析装置のCO-オキシメトリでCOHbを測る。COHbは酸素投与やで低下し、濃度と重症度が必ずしも相関しない。曝露状況、、ECG・、代謝性アシドーシス、妊娠を統合する。1

⚠️ 「COHb何%でこの症状」という表は成り立たない。 へ紹介されたCO中毒1,323例の前向き調査で、約50カテゴリーの症状のうち特定のCOHの範囲と関連したものは一つも無かった。教科書に載る対応表の多くは1923年の米国政府刊行物に由来し、少なくとも一部は低濃度曝露10回における3名の症状に基づく。短時間高濃度曝露では中等度のCOHb上昇でも重篤な神経・心症状を来し、逆に喫煙者や慢性曝露者では基礎値が高い。21

COHbの半減期は空気呼吸で約320分、100%酸素で90分未満、3気圧ので約23分である。常圧酸素は非マスクで100%を直ちに開始し、COHbが約3%に下がるまで、ただし最低6時間続ける。1

flowchart TD
    A["同一環境の複数人に頭痛・意識障害"] --> B["現場離脱+100%酸素"]
    B --> C["COHb・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurological examination'>神経診察</span>・ECG・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='troponin'>トロポニン</span>・血液ガス"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='loss of consciousness'>意識消失</span>/神経障害/心障害/重症アシドーシス/妊娠"}
    D -->|"あり"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperbaric oxygen'>高気圧酸素</span>施設へ緊急相談"]
    D -->|"なし"| F["酸素継続+連続神経評価"]

はCOHb 25〜30%以上、、神経・心筋障害、重症アシドーシスなどで検討し、妊娠ではより低い閾値で専門相談する。退院時はの可能性を説明する。

⚠️ の適応は今も議論が続いており、COHbの閾値から離れつつある。 ACEPの2025年臨床方針は、が常圧酸素と比べて遅発性の(とくに記憶)をわずかに改善しうるとしつつ、推奨度をLevel C(予備的・の出ていない・相反するエビデンス、または委員会合意に基づく)にとどめた。3 ポーランド臨床会の2025年ポジションステートメントは、を全例必須とはせず、常圧酸素にもかかわらず神経・心症状または代謝性アシドーシスが持続する患者にCOHによらず考慮し、妊婦ではCOHb濃度や臨床像によらず常に適応とする。開始は曝露後6時間以内が理想(24時間以内は許容)で、観察研究では200分以内の開始が最も利益が大きいが、根拠が無作為化試験ではなくであるため条件付き推奨である。 9以下と曝露からHBOT開始まで200分超はの危険因子である。1

上に挙げた「COHb 25〜30%以上」という数値は従来から広く用いられてきた目安であり、施設によってはなお運用されている。ただし2025年時点の指針はCOHそのものではなく常圧酸素への反応性を判断の軸に置いている。

二酸化炭素中毒

CO₂は空気より重く、ピット・タンクなど低所に蓄積する。救助者は換気となしに入らない。高濃度曝露では数呼吸でし得る。

安全に救出後、気道確保、酸素投与、必要ならまたはを行う。重症は換気で是正し、合併する低酸素・誤嚥・外傷・を評価する。をCO₂除去目的に用いない。

まとめ

  • COでは通常のSpO₂が正常でも中毒を否定できず、COHbと臨床重症度を分けて考える。
  • CO₂は密閉空間で急速に致死的を起こし、救助者の呼吸保護が最優先である。
  • は選択されたCO中毒で検討するが、CO₂中毒の標準治療ではない。

出典

  1. 1.Management of acute carbon monoxide poisoning – position statement(Polish Society of Clinical Toxicology(Section of Clinical Toxicology of the Polish Medical Society)・2025)通常のパルスオキシメトリーがCOHbとオキシヘモグロビンを区別できないため血液ガス分析装置のCO-オキシメトリによるCOHb測定が不可欠であること、COHb値が臨床重症度を常に反映するわけではなく、短時間高濃度曝露では中等度のCOHb上昇でも重篤な神経・心症状を来し、喫煙者や慢性曝露者では基礎値が高いこと、COHb半減期が空気呼吸で約320分・100%酸素で90分未満・3気圧の高気圧酸素で約23分であること、治療の中心は非再呼吸マスクによる100%常圧酸素の即時開始でCOHbが約3%に下がるまで(ただし最低6時間)続けること、高気圧酸素療法は全例に必須ではなく、常圧酸素にもかかわらず神経・心症状または代謝性アシドーシスが持続する患者にCOHb値によらず考慮すること、妊婦では胎児のCO排出が母体よりおよそ3.5倍遅いためCOHb濃度や臨床像によらず高気圧酸素療法が常に適応となること、高気圧酸素療法は曝露後6時間以内が理想で24時間以内が許容され、観察研究では200分以内の開始が最も利益が大きいこと、この推奨が無作為化試験ではなくコホート研究に基づくため条件付きであること、来院時GCS 9以下と曝露からHBOT開始まで200分超が遅発性神経精神障害の危険因子であることを確認した閲覧 2026-08-25
  2. 2.Symptoms of carbon monoxide poisoning do not correlate with the initial carboxyhemoglobin level(Undersea & Hyperbaric Medicine(UHMS/CDC CO Poisoning Surveillance Group、Hampson NB, Dunn SL)・2012)2008年8月〜2010年7月に高気圧酸素療法へ紹介されたCO中毒患者1,323例の前向き調査で、約50カテゴリーの症状のいずれも特定のCOHb値の範囲と関連しなかったこと、したがって特定の症状を特定のCOHb値に対応づける表という考え方自体が成り立たないこと、よく引用されるその種の表が1923年の米国政府刊行物に由来し、少なくとも一部は低濃度曝露10回における3名の症状に基づくものであったことを確認した閲覧 2026-08-25
  3. 3.A Critical Issue in the Management of Adult Patients Presenting to the Emergency Department With Acute Carbon Monoxide Poisoning: Approved by the ACEP Board of Directors January 22, 2025(Annals of Emergency Medicine(American College of Emergency Physicians)・2025)急性CO中毒に対する高気圧酸素療法の有効性は依然として議論が続いており、2017年版の設問を2025年版が改めて系統的レビューで検討した結果、高気圧酸素療法は常圧酸素と比べて遅発性の神経学的転帰(とくに記憶)をわずかに改善しうるが、症状の重症度と施設の利用可能性から選択した患者に限られ、推奨度はLevel C(予備的・結論の出ていない・相反するエビデンス、または委員会の合意に基づく)にとどまることを確認した閲覧 2026-08-25