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Drug Atlas · B25 Other / その他

ジメルカプロール

dimercaprol

分類
Other / その他
商品名(日本)
バル
科目
Internal MedicineForensic Medicine
トピック
S-62: Intoxications Caused by Toxic Substances: Ethylene Glycol, Methanol, Heavy Metal, and Mushroom Poisoning31: Carbon-monoxide poisoning. Arsenic, cyanide, lead and methanol poisoning
承認適応
鉛中毒
副作用
悪心嘔吐頭痛発熱発汗灼熱痛
監視検査値
クレアチニンアミノトランスフェラーゼ

🧠 全体像(BAL=British Anti-Lewisite)は、第二次世界大戦中に英国で系毒ガス)のとして開発された最古ので、2つので金属を挟み込む発想は後継薬(DMSA)に受け継がれた。水に溶けないために溶かしたでしか投与できず、この一点が適応・禁忌・副作用のほぼすべてを規定する。⭐ では先行投与し4時間以上あけて(CaNa2EDTA)を追加する投与順序が最頻出の要点である。

薬効群の中での位置づけ

項目 (DMSA) CaNa2EDTA
に溶解し 経口 静注・筋注 経口
血液脳関門 通過する 通過しない 通過しない 乏しい
最初に投与する ⚠️ 用いない BALの4時間後に追加 用いない
主な対象金属 ・金、(併用)
主な 筋注の疼痛、落花生アレルギーで慎重投与 消化器症状・好中球減少 単独先行で脳内 以外は無効

血液脳関門を通過できる唯一のという一点で、他薬に置き換えられない。 ・CaNa2EDTAは通過しないため、重症ではが不可欠な先行薬になる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dimercaprol'>ジメルカプロール</span>を筋注"] --> B["2つの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free thiol group'>遊離チオール基</span><br>(-SH)"]
    B --> C["金属イオンと<br>5員環<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chelation'>キレート</span>を形成"]
    C --> D["水溶性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chelation'>キレート</span>として<br>尿中・胆汁中へ排泄"]
    C --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal excretion (renal elimination)'>腎排泄</span>は保たれているか"}
    F -->|"低下"| G["⚠️ 金属が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='redistribution'>再分布</span>し害になる"]
    F -->|"保たれる・尿アルカリ性"| D

💡 は「結合したら終わり」ではない可逆的な平衡反応である。 複合体は酸性尿中で解離しやすく、が保たれていなければ引き抜いた金属がし害になる。尿ので解離を防ぐ理由である1

適応

領域 使いどころ
。有機・無機いずれにも用いる2
中毒 。曝露後1〜2時間以内の開始が有効2
。血小板減少などにも用いる
でCaNa2EDTA併用の唯一の適応。4時間以上先行させる

⚠️ )と、鉄・・銀・ウランの中毒には用いない。 は脳内移行を促進しうる3。他の5金属は複合体が腎毒性を持つか無効21対象金属を誤ると害だけが残る薬である。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収・作用持続 筋注後30分前後でピークに達するが消失も速く数時間で減弱し、を要する
代謝・排泄 肝で代謝され尿中・胆汁中へ排泄。が前提で、尿のが解離を防ぎ腎を保護する1

用法・用量

米国添付文書では重症度に応じ2.5〜5 mg/kgを4〜6時間間隔で反復筋注する2。⭐ では4 mg/kgを4時間ごとに3日間、その後2.5 mg/kgへ減量し1〜4日間継続するのが代表的レジメンで、CaNa2EDTAは別部位に4時間以上あけて追加する3

禁忌・注意

  • 禁忌:重篤な肝機能不全(による黄疸は例外)2
  • 慎重投与:落花生アレルギーの既往(製剤がを含むため。添付文書上は禁忌でなく慎重投与)2
  • ⚠️ を同時投与しない。 鉄と結合し腎毒性を持つ複合体を生じる
  • ⚠️ 急性が出現すれば中止か細心の注意を要する。 体の蓄積・のリスクが高まる。でも溶血に注意する3
  • 治療中は尿のを維持し、クレアチニンアミノトランスフェラーゼを監視する

副作用

頻度 内容
高頻度 一過性の高血圧・頻脈、悪心嘔吐頭痛
注射に伴うもの 口唇・咽頭・眼の発汗、注射部位の疼痛
その他 小児の約30%にみられる発熱の溶血、高用量での痙攣・昏睡3

まとめ

  • は第二次世界大戦中に英国でとして開発された最初期ので、の原点にあたる。
  • に溶かしたでしか投与できず、経口不可・注射時の疼痛・落花生アレルギーでの慎重投与はこの様式に由来する。
  • 血液脳関門を通過できる唯一ので、ではCaNa2EDTAより4時間以上先行させる。他の適応は
  • 、鉄・・銀・ウラン中毒には用いない。対象金属を誤ると害だけが残る。

出典

  1. 1.BAL in Oil (Dimercaprol Injection, USP) — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2022)適応はヒ素・金・水銀中毒、および急性鉛中毒でのエデト酸カルシウムナトリウム併用。落花生油に溶解した製剤で深部筋注のみに用いる。重篤な肝機能不全(ヒ素性黄疸を除く)が禁忌で、鉄・カドミウム・セレン中毒には毒性がまさるため用いない。落花生アレルギー患者への注意、鉄剤の同時投与禁止、高血圧・頻脈などの副作用を明記する。閲覧 2026-08-01
  2. 2.Dimercaprol(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)第二次世界大戦中に英国オックスフォード大学のグループがルイサイト(ヒ素系毒ガス)の解毒薬として開発し、British Anti-Lewisiteの頭文字からBALと呼ばれる。鉛脳症では4 mg/kgを4時間ごとに3日間投与した後、CaNa2EDTAを追加する。慢性の有機水銀曝露にジメルカプロールを投与すると脳内水銀量がかえって増加し、G6PD欠損症では溶血性貧血のリスクがある。閲覧 2026-08-01
  3. 3.Dimercaprol (Poison Information Monograph PIM 193)(IPCS INCHEM (国際化学物質安全性計画)・1990)鉄・カドミウム・テルル・セレン・バナジウム・ウランによる中毒には使用できず、銀中毒に対する有効性も示されていない。尿のアルカリ化はキレート体の解離を防ぎ、腎臓をBAL-金属複合体の毒性から保護する。閲覧 2026-08-01