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Disease Atlas · 全身 · 中毒

カドミウム中毒

Cadmium poisoning

別名
カドミウム曝露カドミウム腎症慢性カドミウム中毒
臓器系
全身腎・泌尿器運動器呼吸器
科目
Internal MedicineOncology and Reconstructive Oncoplastic SurgeryPathologyPharmacology
トピック
内科学 S-62:有害物質中毒―エチレングリコール・メタノール・重金属・毒キノコ内科学 S-22:慢性尿細管間質性疾患腫瘍学 II-26:肺癌の疫学と診断病理学 B/18:腫瘍の疫学薬理学 core72:薬剤性有害反応―歯・口腔
鑑別疾患
金属ヒューム熱
合併症
Fanconi症候群尿細管間質性腎炎慢性腎臓病くる病・骨軟化症骨粗鬆症急性呼吸窮迫症候群
続発疾患
肺癌
関連疾患
ヒ素中毒鉛中毒水銀中毒
症状
骨痛咳嗽呼吸困難発熱嘔吐腹痛嗅覚障害
検査値
β2ミクログロブリンクレアチニン血清リンアルカリホスファターゼカルシウム
画像所見
偽骨折

🧠 全体像:はが効かないである。⭐ ・・を「どのを選ぶか」で覚えてきた学習が、ここで通用しなくなる——()は米国添付文書に用いてはならないと明記され、その理由は「生じた複合体が金属単独より毒性が強く、とくに腎に対して強い」ことである1。StatPearlsも「は現在推奨されていない——影響が永続的で進行性でありうるにもかかわらず」と書く2。⚠️ 治療は曝露源から離すことと支持療法しかない。 ⭐ そして標的臓器はである——ここが壊れてリンを失い、二次的にが来る。これを国家規模で示したのがである3。

曝露源と体内動態

経路 曝露源
吸入(職業) ⭐ 溶接・はんだ付け・宝飾加工での。・電池製造2
経口(環境) ⭐ 汚染された土壌で育った作物の摂取2。日本ではこれが汚染水田の米という形で現れた3

⭐ 体内動態がこの中毒のすべてを説明する。 は肝でと結合し、この複合体が肝からゆっくり放出されるため、は少なくとも10年に及ぶ2。

flowchart TD
    A["吸入または経口で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cadmium'>カドミウム</span>が入る"] --> B["肝で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metallothionein'>メタロチオネイン</span>と結合"]
    B --> C["Cd-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metallothionein'>メタロチオネイン</span>複合体が肝からゆっくり放出される<br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biological half-life'>生物学的半減期</span>は少なくとも10年"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal tubule'>近位尿細管</span>で複合体が処理され<br>遊離の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cadmium'>カドミウム</span>イオンが生じる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal tubular injury'>近位尿細管障害</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-molecular-weight protein'>低分子蛋白</span>・グルコース・リン・カルシウム・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bicarbonate'>重炭酸</span>の再吸収低下"]
    E --> F["尿中へのリン喪失 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypophosphatemia'>低リン血症</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteomalacia'>骨軟化症</span>・骨粗鬆症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone deformity'>骨変形</span>・骨折・全身の激痛"]
    E --> H["永続的な蛋白尿(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-2-microglobulinuria'>β2ミクログロブリン尿</span>)"]

💡 は「敵」ではなく「防具」である。 StatPearlsは、は防御的であり、傷害を与えるのは遊離のイオンであると明記する2。⭐ だが防具ごと腎へ運ばれ、そこで外れる——蓄積の遅さと標的臓器の限局が同じ機序から出てくる。

急性中毒

⚠️ 吸入——金属ヒューム熱の顔をして殺しに来る

⭐ ここが救急で最も危険な取り違えである。 StatPearlsは逐語に「は起こりうるし、と驚くほどよく似て見える」と書く2。

発症 合金のはんだ付けから6時間以内に発熱・悪寒・咳・呼吸窮迫2 曝露中止後4〜10時間で発熱
経過 ⚠️ 初診時は元気に見えても、からへ進行しうる2 90%超が軽症、24〜48時間で自然消退
転帰 ⚠️⚠️ 3〜5日で死亡しうる。は生涯にわたるを残しうる2 良性

⚠️ 「初診時は元気に見える」が最大の落とし穴である。 の発熱をとして帰宅させる判断は、この1点でひっくり返る。⭐ を疑ったときの本当の仕事は、吸入の除外である。

💡 の型は曝露の型で分かれる。 ⚠️ 「」と「閉塞性」はする報告ではなく、別の曝露様式の帰結である。 ⭐ 急性の高濃度吸入を生き延びた例のが「生涯にわたる」であり2、⭐ 古典的に語られる肺気腫(閉塞性)は、低濃度を長年吸い続ける慢性ののほうの帰結である4。⚠️ StatPearlsのこの章は肺気腫に触れておらず、慢性吸入のについても「研究上明らかでない」と留保している2——教科書的な「=肺気腫」を確かめたいときは、この章ではなくATSDRの毒性プロファイルに当たる。

経口

  • を来し、⚠️ 高濃度では消化管のとを生じる2。
  • ⭐ 急性の塩摂取は、後述のとおり本症で唯一が「有望」とされうる場面である。

慢性中毒——近位尿細管が標的

⭐ 慢性曝露の中心は腎である。 StatPearlsは「最も多いのは慢性曝露後にみられる永続的な蛋白尿である。より正確には、こうした労働者では尿が見いだされる」と述べる2。

系統 所見
腎 ⭐ 。(・・)・グルコース・リン・カルシウム・の再吸収低下3。・の像をとり、へ進む
骨 ⚠️ 有痛性の。主に閉経後女性でみられる2。くる病・と骨粗鬆症、・骨折・全身の激痛
肺 ⚠️ StatPearlsは「慢性吸入がを起こすかは研究上明らかでない」と留保する一方、「曝露は肺癌を起こす」ことは合意されているとする2。⭐ ATSDRの毒性プロファイルは、肺の炎症を起こす濃度より低い長期のが肺気腫と呼吸困難を起こすと報告されているとし、曝露労働者の肺機能が有意に障害されたこと・気管支炎による死亡の有意なの超過を挙げる4
神経 、、2
腫瘍 ⚠️ 「曝露は肺癌を起こす」2

💡 歯のも慢性曝露の徴候として挙げられる(薬剤・金属によるの表で、=・・・・、=に対して、=)。

💡 発癌が確定しているのは肺である。 肺癌の危険因子として・・クロム・・と並んで挙げられる。病理学の授業では前立腺が対応臓器として教わることが多いが、IARCの部位別一覧でがヒトでの「十分な」証拠を持つのは肺だけで、前立腺癌とは「限定的な」証拠(正の関連は観察されているが・・を排除できない段階)にとどまる5。

イタイイタイ病

⭐ 慢性の最重症型であり、として日本で確立した3。

  • 舞台は富山県の神通川流域。汚染源は隣接する岐阜県上流の神岡鉱山に由来するで、水田が重度に汚染された。
  • 患者の大半は女性農業者で、収穫の米と川の水を通じて高度に曝露された。と全身の激痛(「itai」は「痛い」)、と骨折を来した。
  • ⭐ 2022年までに神通川流域で富山県知事により201名がに認定されている。
  • 神通川流域以外の汚染地域として石川県梯川流域・長崎県対馬・兵庫県市川流域・秋田県小坂町がある。対馬では剖検9例でが組織学的に確認され、市川流域では5例の骨X線で(両側に硬化を伴う透亮な。に特異的)が示された。⚠️ 一方、梯川流域と小坂町ではの患者は報告されたがの徴候は示されなかった3——⭐ 「汚染地域があること」と「が出ること」は同じではない。

病態の順序

⭐ 「骨の病気」ではなく「腎の病気の続き」である。

flowchart TD
    A["汚染米・汚染水による長期の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cadmium'>カドミウム</span>経口曝露"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cadmium nephropathy'>カドミウム腎症</span>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal tubular injury'>近位尿細管障害</span>"]
    B --> C["尿中へのリン喪失"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypophosphatemia'>低リン血症</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteomalacia'>骨軟化症</span>"]
    E --> F["骨粗鬆症を伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone deformity'>骨変形</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple fractures'>多発骨折</span>・全身の激痛"]

⚠️ リン喪失によるがの主因である3。💡 だから治療の標的も「を抜くこと」ではなく、腎からこぼれ落ちるの立て直しになる。

⚠️ 1972年の診断基準

は環境庁(当時)が1972年に定めた基準で診断される3。

要件
(1) 重度汚染地域に居住したことによる環境曝露歴
(2) 思春期以降、⭐ 主に閉経後に生じた(3)(4)の非先天性の臨床状態
(3) ⭐ の確認
(4) X線・生検・剖検で骨粗鬆症を伴うのの確認(萎縮・・など)

⭐ (4)には抜け道が用意されている。 骨所見だけでを確認できない場合でも、・カルシウム・を含む臨床がと一致すれば、を示唆する骨所見に加えてとみなす3。💡 が無いことは除外の根拠にならない。

⚠️ 神通川流域の外にもある

2024年に秋田県大館市の女性農業者(非喫煙・非高血圧・非糖尿病)が、汚染地域における病院ベースのスクリーニングで見つかり、上記4基準をすべて満たしてが疑われると報告された3。

  • 経過は尿中のな上昇そのものだった——81歳で12,600 µg/g cr.、88歳で48,700 µg/g cr.、89歳で178,000 µg/g cr.。
  • 身長は66歳の147.5 cmから86歳の130.7 cmへ短縮した(78歳時135.0 cm)。3+、34.5%(基準80%以上)、 1.10 mg/dL(基準2.5 mg/dL以上)。
  • ⚠️ は3.2 mg/dLで基準内だった。 論文は、糸球体機能の高度低下( 5.7 mL/min/1.73 m²)がを押し上げるため、これを「隠れた」と解釈している3。💡 が合併すると、この病気の生化学的な指標そのものが隠れる。
  • 腎不全の進行に伴いも進行し、最終的に腎不全で死亡した3。

診断

⚠️⭐ 血中と尿中のどちらを見るかは、病期によって答えが逆転する。

出典 主張
StatPearls ⭐ 「血中濃度は急性曝露の確認以外には用途が限られる」「慢性曝露では、体内総量を知るには尿中が選択される検査である」2
の症例報告 ⚠️ 「のように曝露によるが高度に進行した患者では、障害された尿細管細胞の脱落により腎内濃度は予想に反して低く、したがって腎からの排泄も低い。こうした症例では血中濃度が体内蓄積の適切な指標として用いられる」3

⭐ 矛盾ではなく段階の違いである。 尿中は「尿細管が働いていること」を前提にした指標なので、⚠️ 尿細管が壊れきった段階では低く出て、重症度を過小評価させる。 実際、上記の症例は血中11.3 µg/L(高値)に対し尿中5.93 µg/g cr.(低値)という乖離を示した3。

  • のスクリーニング基準(秋田の病院ベース検診):⭐ 尿中10,000 µg/g cr.以上、かつ、血中6 µg/L以上または尿中10 µg/g cr.以上3。
  • 併せて見る所見:(糖尿病のない)、(・)、と、、、whole-PTH3。
  • ⚠️ 鑑別で外すべきもの:の長期投与、、の治療歴といった他のの原因、および消化管・・といった他のの原因3。

⚠️ 治療——キレートが効かない

⭐ これが本症を他のから分ける最大の点である。

薬 扱い
(BAL) ⚠️⚠️ 禁忌に近い明文がある。 米国添付文書は逐語に「鉄・・中毒には用いてはならない。生じた-金属複合体が金属単独より毒性が強く、とくに腎に対して毒性が強いからである」と書く1
(DMSA) ⭐ 唯一の例外候補。 「経過の早期に投与されれば有望な結果が得られるようにみえる」とされる2。⚠️ 主に急性の塩摂取という限られた場面での考慮にとどまる
全般 ⚠️ 「は有望ではあるが、に有用であることが決定的に証明されてはいない」「影響が永続的で進行性でありうるにもかかわらず、は現在推奨されていない」2

⚠️ 「効果が証明されていない」のではなく「害になりうる」場合があることを分けて覚える。 BALについては有効性の欠如ではなく複合体の腎毒性が理由として明記されている1。⭐ 対象金属を誤ると害だけが残る薬である。

💡 との対比で覚えると定着する。 ではや、では先行という明確な手順がある。⭐ にはその手順が無い——曝露源からの離脱と支持療法、合併症の管理がすべてである2。

  • 急性吸入:呼吸不全の管理。⚠️ 初診時に軽症に見えても入院して経過を見る(3〜5日での死亡がありうる)2。
  • 慢性:曝露の遮断。腎障害とはそれぞれの標準治療で管理する。⚠️ すでに生じたは永続的で進行しうる2。

⭐ 公衆衛生が唯一効いた介入である

⚠️ 個人に対する治療が無い以上、この病気の「治療」は集団に対して行われる。

神通川流域を含む汚染地域の住民1,819名を対象とした2025年の研究は、の効果を実測している6。

男性 女性
後の平均生涯摂取量 3.0 g 2.6 g
が無かった場合の推定値 5.1 g 4.6 g
差 ⭐ 約2 g減 ⭐ 約2 g減

⭐ は生涯摂取量・体内蓄積量・尿細管への影響のいずれも有意に減らした6。⚠️ のみの閲覧である。 💡 半減期10年以上・不能・障害は不可逆という3条件がそろうと、介入点は「体内に入る前」しか残らない。

まとめ

  • ⭐⚠️ の要点は「が効かない」ことである。 は米国添付文書に用いてはならないと明記され、理由は「-金属複合体が金属単独より毒性が強く、とくに腎に毒性が強い」こと。⭐ が急性摂取の早期に「有望」とされる以外、は推奨されない。
  • 治療は曝露源からの離脱と支持療法、合併症管理だけである。 ⚠️ すでに生じたは永続的で進行しうる。
  • 体内動態:肝でと結合し、複合体が緩徐に放出されるためは少なくとも10年。⭐ 傷害を与えるのは遊離のイオンで、は防御的である。
  • 急性吸入は⚠️ と驚くほど似て見える。はんだ付けから6時間以内の発熱・悪寒・咳・呼吸窮迫で始まり、⚠️ 初診時に元気に見えてもからARDSへ進み、3〜5日で死亡しうる。 は肺障害を残しうる。⚠️ これは急性吸入のであって、慢性の低濃度が起こすとされる肺気腫(閉塞性)とは別物である。
  • 慢性曝露の標的はで、⭐ 永続的な尿が最も特徴的。⚠️ 有痛性のは主に閉経後女性にみられ、肺癌の原因にもなる。⭐ 慢性の職業吸入では肺気腫・も報告されている(ATSDR)が、StatPearlsは慢性吸入のを「研究上明らかでない」と留保する。神経症状は・・。
  • は慢性の最重症型。⭐ 神岡鉱山由来ので汚染された神通川流域の水田、収穫の米と川の水、女性農業者。2022年までに201名が認定。⭐ 病態は「腎が先、骨が後」で、尿中へのリン喪失によるがの主因である。
  • 1972年のは4項目——①環境曝露歴、②思春期以降・主に閉経後の非先天性の状態、③、④骨粗鬆症を伴う。⭐ が無くても、・カルシウム・が一致すればとして認める。
  • ⚠️⭐ 検体の選び方が病期で逆転する。 慢性曝露の体内総量は尿中が選択される検査だが、尿細管が壊れきった進行例では尿中がかえって低くなり、血中のほうが適切な指標になる。実例では血中11.3 µg/Lに対し尿中5.93 µg/g cr.だった。
  • ⭐ 個人に効く治療が無いぶん、介入は集団に向かう。 汚染地域のは生涯摂取量を男女とも約2 g減らし、体内蓄積量と尿細管への影響を有意に減らした。

出典

  1. 1.BAL in Oil (Dimercaprol Injection, USP) — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2022)DailyMedの添付文書本文(Akorn Operating Company LLC、BL00N Rev. 05/22)を確認した。適応が「BAL in Oil (Dimercaprol Injection USP) is indicated in the treatment of arsenic, gold and mercury poisoning. It is indicated in acute lead poisoning when used concomitantly with Edetate Calcium Disodium Injection USP.」であること、⚠️⭐ カドミウムについて逐語で「It should not be used in iron, cadmium, or selenium poisoning because the resulting dimercaprol-metal complexes are more toxic than the metal alone, especially to the kidneys.」——すなわち生じたジメルカプロール-金属複合体が金属単独より毒性が強く、とくに腎に対して毒性が強いことを理由に用いてはならないと記されていることを確認した。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Cadmium Toxicity(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2023)NCBI Bookshelfのライブページで確認した(Andrew L. Koons, Venkat Rajasurya。Last Update 2023年8月14日)。曝露が職業・環境・趣味の作業を通じて起こり、溶接工・はんだ付け作業者・宝飾加工者が酸化カドミウムヒュームの吸入のリスクを負うこと、現在の曝露源が電気めっき・電池・環境曝露であること、周囲の土壌が汚染されそこで育った食物を摂取することで環境曝露が起こりうること、⚠️ 急性吸入について「Cadmium pneumonitis can occur and look strikingly similar to metal fume fever.」「Within six hours of soldering with cadmium alloys, patients may experience fever, chills, cough, and respiratory distress.」「Patients may appear well on initial presentation but can progress from pneumonitis to acute respiratory distress syndrome (ARDS).」「Death can occur in 3-5 days. Survivors may suffer from lifelong restrictive lung disease.」と記されること、経口摂取では消化管障害を来し高濃度では消化管の出血性壊死と多臓器不全を生じること、⭐ 慢性曝露について「Most commonly, permanent proteinuria is seen after chronic cadmium exposure. More specifically, beta-2-microglobulinuria is found in these workers.」「Painful osteomalacia has been seen mostly in postmenopausal women.」「Exposure causes lung cancer.」とあり、神経障害としてパーキンソニズム・高次皮質機能障害・嗅覚障害が起こりうること、イタイイタイ病について「The name given this condition was 'itai-itai' disease which is 'ouch-ouch' in Japanese since those affected would say this every time they took a step.」と記されること、肝でカドミウムがメタロチオネインと結合しこの複合体が肝からゆっくり放出されるため生物学的半減期が少なくとも10年に及ぶこと、メタロチオネインは防御的でありダメージを与えるのは遊離のカドミウムイオンであること、⭐ 評価について「Cadmium blood concentrations have limited use other than for confirmation in acute exposure.」「In chronic exposure, urinary cadmium is the test of choice to determine total body cadmium burden.」とあること、⚠️⭐ 治療について「Chelators, though promising, have not been definitively proven to be useful in cadmium toxicity.」「However, it appears that if succimer is given early in the course, it has promising results.」「Chelation is not currently recommended for these patients even though the effects can be permanent and progressive.」と記されることを確認した。⚠️ 本章に肺気腫の記載は見あたらず、生存者の後遺症は「restrictive lung disease」と記されている。⚠️ 本章にジメルカプロール(BAL)・EDTAへの言及は見あたらない。閲覧 2026-09-04
  3. 3.A suspected case of "itai-itai disease" in a cadmium-polluted area in Akita prefecture, Japan(Environmental Health and Preventive Medicine(日本衛生学会。Sasaki T, Horiguchi H, Matsukawa T, ら)・2024)Europe PMC経由の全文で確認した(2024;29:40、オープンアクセス)。イタイイタイ病が慢性カドミウム中毒の最も重篤な形であり、20世紀に富山県の神通川流域で流行したこと、汚染源が隣接する岐阜県上流の神岡鉱山に由来するカドミウムであり水田が重度に汚染されたこと、患者の大半が女性農業者で自家収穫の米と川の水を通じて高度に曝露されたこと、骨軟化症・全身の激しい疼痛(「itai」は「痛い」の意)・骨変形と骨折を来したこと、⭐ 骨障害がカドミウム誘発性の近位尿細管障害(カドミウム腎症)に続発し、水・グルコース・低分子蛋白・リン・カルシウム・重炭酸イオンの再吸収低下を特徴とすること、⭐「Hypophosphatemia due to the urinary loss of phosphorus is the main cause of osteomalacia.」であること、⭐ イタイイタイ病が「environmental exposure to Cd, renal tubular dysfunction, and osteomalacia」の3基準で診断されること、2022年までに神通川流域で富山県知事により201名が公式に認定されたこと、神通川流域以外の汚染地域として石川県梯川流域・長崎県対馬・兵庫県市川流域・秋田県小坂町が挙げられ、対馬の剖検9例で骨軟化症が組織学的に確認され市川流域の5例の骨X線でLooser帯が示されたこと、Looser帯(両側に硬化を伴う透亮な骨折線)が骨軟化症に特異的であること、⭐ 1972年の環境庁によるイタイイタイ病の診断基準が「(1)重度カドミウム汚染地域に居住したことによる環境曝露歴、(2)思春期以降、主に閉経後に生じた(3)(4)の非先天性の臨床状態、(3)腎尿細管障害の確認、(4)X線・生検・剖検で骨粗鬆症を伴う骨軟化症の臨床所見の確認。骨所見だけで骨軟化症が確認できない場合でも、血清リン・カルシウム・アルカリホスファターゼを含む臨床検査所見が骨軟化症と一致すれば、骨軟化症を示唆する骨所見に加えて骨軟化症の臨床所見とみなす」であること、⭐ カドミウム腎症のスクリーニング基準が尿中β2ミクログロブリン10,000 µg/g cr.以上かつ血中カドミウム6 µg/L以上または尿中カドミウム10 µg/g cr.以上とされていること、⚠️⭐「Patients with highly advanced renal tubular dysfunction due to Cd exposure, such as itai-itai disease, generally have low Cd concentrations in the kidney unexpectedly due to the loss of damaged renal tubular cells, and, thus, the low renal excretion of Cd. In these cases, the blood concentration of Cd is used as an adequate indicator of the accumulation of Cd in the body.」——すなわち高度に進行した尿細管障害では尿中カドミウムがかえって低くなり血中カドミウムのほうが体内蓄積の適切な指標になること、症例が秋田県大館市の女性農業者(非喫煙・非高血圧・非糖尿病)で81歳時に尿中β2ミクログロブリン12,600 µg/g cr.・血中カドミウム11.3 µg/L・尿中カドミウム5.93 µg/g cr.、88歳時に尿中β2ミクログロブリン48,700 µg/g cr.、89歳時に178,000 µg/g cr.へ急増し、身長が66歳の147.5 cmから78歳の135.0 cm・86歳の130.7 cmへ短縮し、尿糖3+・尿pH 7.0・血清Cl 117.7 mEq/L・リン再吸収率34.5%(基準80%以上)・TmP/GFR 1.10 mg/dL(基準2.5 mg/dL以上)・補正血清カルシウム8.1 mg/dL・骨型アルカリホスファターゼ48.4 µg/L・whole-PTH 204 pg/mLを示し腎不全で死亡したこと、腎糸球体機能の悪化が血清リンを上げるため明らかな低リン血症は認められず「covert hypophosphatemia」と解釈されたことを確認した。閲覧 2026-09-04
  4. 4.Toxicological Profile for Cadmium — Health Effects(Agency for Toxic Substances and Disease Registry(ATSDR, U.S. Department of Health and Human Services)・2012)NCBI Bookshelf版の Health Effects 章(呼吸器影響の節)を取得して確認した。逐語で「Longer-term occupational exposure to levels of cadmium below those causing lung inflammation, however, have been reported to cause emphysema and dyspnea in humans」——すなわち肺の炎症を起こす濃度より低い長期の職業曝露が、ヒトで肺気腫と呼吸困難を起こすと報告されていること、「The lung function of 77 of the men occupationally exposed to cadmium was significantly impaired compared to the unexposed controls」——職業曝露を受けた男性77名の肺機能が非曝露対照と比べ有意に障害されていたこと、「A significant, dose-dependent excess in the ratio of observed to expected deaths from bronchitis…was found among 6,995 men occupationally exposed to cadmium for an average of 11 years」——平均11年の職業曝露を受けた男性6,995名で気管支炎による死亡の観察/期待比に有意な用量依存性の超過が認められたことを確認した。⚠️ 慢性吸入による肺気腫・閉塞性変化は本プロファイルが支える記述であり、StatPearlsのカドミウム章には記載が無い。閲覧 2026-09-04
  5. 5.List of classifications by cancer sites with sufficient or limited evidence in humans, IARC Monographs Volumes 1–141(International Agency for Research on Cancer(IARC)・2026)IARCの部位別分類一覧(第1〜141巻、2026年5月18日更新。表を頁画像で目視確認)で、カドミウムおよびカドミウム化合物がヒトでの「十分な」証拠の欄では肺にのみ挙がり、腎と前立腺では「限定的な」証拠の欄にあることを確認した。閲覧 2026-09-23
  6. 6.Effects of Soil Restoration in Cadmium-Polluted Areas on Body Cadmium Burden and Renal Tubular Damage in Inhabitants in Japan(Toxics(Nogawa K, Sakurai M, Watanabe Y, ら)・2025)Europe PMCの抄録で確認した。カドミウム汚染地域の住民1,819名(男性991・女性828)を解析し、うち土壌復元前から汚染地域に居住していた845名(男性503・女性342)について居住歴と各地域の米のカドミウム濃度から生涯カドミウム摂取量を推定したこと、早朝第一尿で尿中カドミウム(体内蓄積量)と尿中β2ミクログロブリン(尿細管マーカー)を測定したこと、土壌復元後の汚染地域における平均生涯カドミウム摂取量が男性3.0 g・女性2.6 gであったのに対し、土壌復元が無かった場合の推定値が男性5.1 g・女性4.6 gであり、土壌復元により男女とも約2 gの生涯摂取量が減ったこと、土壌復元が生涯カドミウム摂取量・体内蓄積量・尿細管への影響を有意に減らすことを確認した。⚠️ 抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04