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Disease Atlas · 全身 · 先天性疾患

エドワーズ症候群・パトー症候群(18・13トリソミー)

Edwards syndrome and Patau syndrome (trisomy 18 and 13)

別名
Trisomy 18Trisomy 13
臓器系
全身
科目
Pediatrics
トピック
小児科 3-60:生存可能な染色体数的異常と代表的構造異常小児科 06:染色体異常
鑑別疾患
Pena-Shokeir症候群ダウン症候群(21トリソミー)
続発疾患
先天性心疾患(非チアノーゼ性・チアノーゼ性)胎児発育不全臍帯ヘルニア・腹壁破裂全前脳症
関連疾患
馬蹄腎
症状
小眼球症
検査値
染色体検査
組織像
馬蹄腎と18トリソミー馬蹄腎と18トリソミー

🧠 全体像:()と()は、どちらも「全身の多発奇形+重度の生命予後不良」を来す常染色体トリソミーで、()とは対照的に乳児期のうちに大多数が死亡する。両者は合併するや発達遅滞という点で似ているが、身体所見のパターンで区別できる:は(rocker-bottom feet)・指の重なった握りし・が特徴的である一方、は・・(holoprosencephaly)・頭皮のという・中枢神経の異常が前面に出る。どちらも治癒的治療は存在せず、診療の軸は出生前後の正確な診断と、個々の家族の価値観に沿った介入強度のに置かれる。

病態

発生機序とDown症候群との対比

・はいずれも減数分裂時のにより生じる常染色体トリソミーで、大部分は遊離型(それぞれ47,+18/47,+13)だが、一部に型やが存在する。と同様に母体年齢が上がるほど遊離型のリスクが増加するが、若年の母体からも生じうる。転座型が疑われる場合は再発リスク評価のため両親の核型を確認する。では正常の割合に応じて表現型が軽症化し、生命予後も有意に改善する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ovum'>卵子</span>・精子形成時の減数分裂"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nondisjunction'>染色体不分離</span>が起こる"}
    B --> C["18番染色体が3本(遊離型47,+18)"]
    B --> D["13番染色体が3本(遊離型47,+13)"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Edwards syndrome'>エドワーズ症候群</span>"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Patau syndrome'>パトー症候群</span>"]
    E --> G["多発奇形・重度発達遅滞"]
    F --> G
    G --> H["生命予後不良(乳児期の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='survival'>生存率</span>が低い)"]
    I["母体年齢上昇"] -.->|"遊離型のリスク増加"| B

💡 遊離型の大部分は偶発的なで再発リスクは低いが、転座型は片のことがあり再発リスクが大きく異なるため、遺伝カウンセリングでは必ず核型を確認してから説明する。

機序別の再発リスク

機序 頻度の目安 次子の再発リスク
遊離型(47,+18/47,+13) 大部分(90%超) 母体年齢に応じたへわずかにする程度。両親は通常不要
型 少数 親がなら著明に上昇するため両親双方のが必須。なら一般人口相当
少数(では5%未満) 一般に低い。⚠️ 表現型の幅はきわめて広く(早期死亡する完全型と同じ像から、表現型上ほぼ正常な成人まで)、血液・線維芽細胞のトリソミー細胞の比率と重症度は相関しない1

臨床像

両症候群とも(IUGR)、、複数臓器の重を伴う。所見のパターンで鑑別する。

身体所見のパターン

部位 () ()
頭蓋・ 、・変形、後頭部突出、鼻幅が狭い 、、、・、頭皮の、鼻先肥大
口腔 を伴うこともある が高頻度
心臓 、、などが高率 、などが高率
中枢神経 重度発達遅滞、 を含む重度の、重度発達遅滞
四肢・手指 指が重なった握りし(第2指が第3指に、第5指が第4指に重なる)、 、を伴うこともある
腹部・泌尿生殖器 、、腎・尿管奇形 、などの、毛細血管腫
その他

生命予後

⭐ 両症候群とも生命予後は極めて不良である。米国アトランタの調査(1968〜1999年出生)では生存期間中央値が7日・14.5日、いずれも91%が生後1年以内に死亡した2。より新しい欧州13登録のコホート(1995〜2014年出生、252例・602例)でも1年は17%・13%、10年は11%・8%にとどまる。ただし生後4週を越えた児に限れば10年は32%・21%へ上がる3。⚠️ 死因を心疾患に帰しすぎない。 の解析ではの有無は生存期間に影響しないようにみえ2、主体で管理された場合は無呼吸と治療の中止が主要な死因を占めうるとされる1。一方でや部分トリソミーではが明確に改善するため、核型の詳細(完全型か・モザイクか・部分型か)は予後説明に不可欠である。

⚠️ これらのの数値をそのまま国内の予後説明に転用しない。日本の人口動態統計を用いた解析では、外科的介入を受けた児の生存期間中央値が1995〜2005年の61.5日から2006〜2016年には182.5日へ延び、外科的介入を受けた患者の割合も1995年の3.8%から2016年には24.1%へ増え、死亡例に占める1歳以降の死亡の割合も8.9%(1975〜1980年)から17.7%(2011〜2016年)へ増えている(人口動態統計の死亡票を用いた解析で、上記のを分母とするとは分母が異なる)4。

診断

の陽性パターンは()と異なる。

出生前スクリーニング

💡 によるでは、が一般に↓・↓・↑・↑というパターンを示すのに対し、では4マーカーすべてが低下する(↓遊離、↓、↓、↓β-)。第1トリターのでも同様に、はPAPP-A低下+遊離β-上昇であるのに対し、18・はPAPP-A低下+遊離β-低下という共通パターンを示し、これがとの鑑別の手掛かりになる。超音波では両症候群ともIUGR、、多発奇形の所見がの契機となる。

確定検査

NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査、cell-free スクリーニング)は感度・特異度に優れるが、あくまでであり、確定診断にはまたは/(CMA)による・が必要である。出生後は特徴的な身体所見から臨床的に疑い、核型・で確定する。

flowchart TD
    A["妊娠中のリスク因子・超音波異常(IUGR・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyhydramnios'>羊水過多</span>・多発奇形)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='maternal serum screening'>母体血清マーカー</span>・NIPTによるスクリーニング"]
    B --> C{"スクリーニング陽性"}
    C -->|"18・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trisomy 13'>13トリソミー</span>パターン<br>(PAPP-A低下+β-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human chorionic gonadotropin'>hCG</span>低下)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amniocentesis'>羊水穿刺</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chorionic villus sampling (CVS)'>絨毛検査</span>で核型/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescence in situ hybridization'>FISH</span>/CMA確定"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trisomy 21'>21トリソミー</span>パターン<br>(β-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human chorionic gonadotropin'>hCG</span>上昇)"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Down syndrome'>Down症候群</span>を疑い同様に確定検査"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multidisciplinary team'>多職種チーム</span>(産科・小児科・遺伝カウンセリング)で家族と情報共有"]
    F --> G["出生前からの介入方針の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shared decision-making'>共同意思決定</span>"]
    H["出生後の特徴的身体所見"] --> I["核型・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescence in situ hybridization'>FISH</span>で臨床診断を確定"]
    I --> F

治療・管理

・には治癒的治療は存在せず、診療の中心は症状緩和と家族に寄り添った個別化ケアである。従来は「心臓手術など積極的介入は行わず快適ケアのみ」という画一的な方針が広く取られてきたが、近年はこの姿勢が見直されている。

心臓手術適応の考え方の変化

⭐ 米国胸部外科学会(AATS)の2023年コンセンサス文書(J Thorac Cardiovasc Surg 2024年掲載)は、・18にを合併する児への心臓手術について、「トリソミーの存在だけを理由に一律に手術適応外とすべきではなく、心疾患の重症度や他の合併奇形も踏まえて症例ごとに判断すべきである」という枠組みを提示した(9つの推奨、推奨の強さはおおむねClass IIa、エビデンスの質はlevel C)5。実際に合併心疾患に対する手術例では周術期が改善しており、肺高血圧やを要さず体重が十分ある児など好条件が揃う症例では、選択的に手術介入が検討されるようになっている。

💡 この流れは(AAP)の2025年版臨床報告にも引き継がれている。同報告は、13・という遺伝学的診断のみを理由に一律に異なる扱いをすることに倫理的なは無く、どの医学的・外科的介入を提示・拒否・要求するかは最良の根拠に基づいて個々のに合わせるべきで、施設間で大きく異なるべきではないとし、出生前から生涯にわたると家族支援を求めている6。

支持療法と家族中心のケア

  • の時点から、産科・・小児循環器科・・遺伝カウンセリングを含むで家族と情報を共有し、蘇生や外科的介入の希望を出産前に話し合っておく。
  • 呼吸・への支持療法(、気道管理)、感染症の積極治療、疼痛・不快感の緩和を状態に応じて行う。
  • 心臓手術を含む積極的介入を行うかどうかは、心疾患の重症度、他、全身状態、そして何より家族の価値観を踏まえて個別に決定する。「介入する/しない」を出生前・出生時に一括で決めてしまわず、経過に応じて方針を再評価する姿勢が推奨される。
  • では、成長・発達の支援、てんかんなど合併症の管理、家族へのを継続する。

⚠️ 「・18=自動的に快適ケアのみ」という古い一律対応は、現在のコンセンサスとは一致しない56。個々の児の病状と家族の意向に基づく個別化された意思決定を踏むことが重要である。

まとめ

  • ()・()はいずれも減数分裂時のによる常染色体トリソミーで、母体年齢とともに遊離型のリスクが増す。型では両親のが再発リスク評価に必須である。
  • は・指の重なった握りし・、は・・・頭皮のという所見パターンで鑑別する。両者とも高率にを合併する。
  • と異なり生命予後は極めて不良で、生存期間中央値は数日〜2週間程度、1年も17%・13%(欧州コホート)にとどまる。ただし生後4週を越えた児では10年が32%・21%へ上がり、外科的介入が普及した日本では生存期間が明らかに延びている。・部分型でも予後が改善する。
  • では・NIPTのパターンがと異なり(PAPP-A低下+β-低下)、確定診断には核型・・を要する。
  • 治療は治癒的ではなく症状緩和・支持療法が中心だが、AATSの2023年コンセンサスとAAPの2025年版臨床報告に代表されるように「トリソミーの存在のみを理由に一律に介入を除外しない」個別化されたへと考え方が移行している。

出典

  1. 1.The trisomy 18 syndrome(Orphanet Journal of Rare Diseases・2012)モザイク型18トリソミー(全体の5%未満)の表現型が「ranging from complete trisomy 18 phenotype with early mortality to apparently phenotypically normal adults」ときわめて幅広く、「There is no correlation between the percentage of trisomy 18 cells in either blood cells or skin fibroblasts and the severity of clinical manifestations and intellectual disabilities」と、トリソミー細胞の比率と重症度に相関がないと明記していることを確認した。また心奇形の有無が長期生存に影響しないようにみえること、緩和ケア主体の管理では無呼吸と治療中止が主要な死因を占めうることも同文献で確認した。生存期間中央値3〜14.5日、1年生存率5〜10%という値も記載されている。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Population-based analyses of mortality in trisomy 13 and trisomy 18(Pediatrics・2003)抄録で、米国アトランタの集団ベース先天異常登録(1968〜1999年出生、13トリソミー生存出生70例・18トリソミー114例)における生存期間中央値が13トリソミー7日(95%CI 3〜15日)・18トリソミー14.5日(95%CI 8〜28日)であり、いずれの症候群でも児の91%が生後1年以内に死亡したこと、米国の死亡診断書データ(1979〜1997年、13トリソミー5,515例・18トリソミー8,750例)では死亡時年齢の中央値がいずれも10日で、5.6%が1歳以降に死亡していたこと、心奇形の有無は生存期間に影響しないようにみえたこと、著者らが「5〜10%は生後1年を越えて生存する」と結論していることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-04
  3. 3.Ten-year survival of children with trisomy 13 or trisomy 18: a multi-registry European cohort study(Archives of Disease in Childhood・2023)抄録で、EUROCATの13登録(西欧9か国)に登録された1995〜2014年出生の生存出生児(13トリソミー252例・18トリソミー602例、転座型・モザイク型を含む)について、生存率が13トリソミーで4週34%(95%CI 26〜46%)・1年17%(11〜29%)・10年11%(6〜18%)、18トリソミーで4週38%(31〜45%)・1年13%(10〜17%)・10年8%(5〜13%)であったこと、生後4週まで生存した児に限った10年生存率が13トリソミー32%(23〜41%)・18トリソミー21%(15〜28%)であったことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-04
  4. 4.Population-Based Analysis of Secular Trends in Age at Death in Trisomy 18 Syndrome in Japan from 1975 to 2016(Neonatology・2021)抄録で、日本の人口動態統計(1975〜2016年、主死因が18トリソミーの死亡例)を用いた解析において、外科的介入を受けた患者の生存期間中央値が1995〜2005年の61.5日から2006〜2016年には182.5日へ3倍に延びたこと、外科的介入を受けた患者の割合が1995年の3.8%から2016年には全体の24.1%へ増えたこと、生後24時間以内の死亡の割合が4.0%(1975〜1980年)から21.9%(2011〜2016年)へ、1歳以降の死亡の割合が8.9%から17.7%へ増えたこと、生存期間中央値が女児・在胎37週以降の出生児・外科的介入を受けた児で長かったことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-04
  5. 5.The American Association for Thoracic Surgery (AATS) 2023 Expert Consensus Document: Recommendation for the care of children with trisomy 13 or trisomy 18 and a congenital heart defect(The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery・2024)抄録で、AATS Congenital Heart Surgery Evidence-Based Medicine Taskforceの多職種作業部会が500編を超える文献の検討とDelphi法により9つの推奨を作成したこと、推奨の強さはおおむねClass IIa(中等度の有益性)でエビデンスの質はlevel C(限られたデータ)であったこと、結論として「手術の判断はトリソミーの存在のみに基づくべきではなく、心疾患の重症度と他の合併奇形の有無を考慮して症例ごとに行うべきである」としていることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-04
  6. 6.Guidance for Caring for Infants and Children With Trisomy 13 and Trisomy 18: Clinical Report(Pediatrics(American Academy of Pediatrics)・2025)抄録で、これらの症候群が長らく一様に致死的と記述されてきたにもかかわらず、心臓手術など適応のある介入を行った場合に罹病率・死亡率が改善することを複数の研究が示していること、13・18トリソミーという遺伝学的診断のみを理由に一律に異なる扱いをすることには倫理的な正当化が無いこと、どの医学的・外科的介入を提示・拒否・要求するかは最良の利用可能なエビデンスに基づいて個々の臨床状況に合わせるべきで施設間で大きく異ならせるべきではないこと、出生前から生涯にわたる共同意思決定と家族支援を求めていることを確認した。本文は未取得(publications.aap.orgの記事ページとCrossrefが示すPDF直リンクの双方が403を返した)。本文に何が書かれているかは確認していない閲覧 2026-09-04