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染色体検査

Karyotype analysis

別名
核型分析G分染法karyotyping
臓器系
全身小児
科目
Medical Genetics and Immunology (Genetics)
トピック
遺伝学 2.3:細胞遺伝学 I遺伝学 2.2:染色体異常遺伝学 10.2:出生前遺伝学
関連疾患
5α還元酵素欠損症Pena-Shokeir症候群アロマターゼ欠損症エドワーズ症候群・パトー症候群(18・13トリソミー)クラインフェルター症候群ターナー症候群ダウン症候群(21トリソミー)ミュラー管無形成混合性腺異形成症自然流産性分化疾患先天奇形(分類の枠組み)全前脳症全般的発達遅滞胎児水腫卵精巣性DSD

🧠 全体像:()は、の染色体を1本ずつ並べて数と形を見る検査である。学習の幹は「何が見えるか」より何が見えないかにある——の分解能はおよそ5〜10 Mbで、それより小さい欠失・重複は原理的に写らない1。そのため現在の位置づけは「染色体異常を疑ったらまず核型」ではなく、臨床像から特定の染色体症候群を狙い撃ちできるとき・家系に再構成があるとき・のときに核型を選び、原因不明の発達遅滞や多発奇形では(CMA)を第一選択にするという分業になっている1。それでも核型が置き換えられずに残っているのは、CMAにと低頻度モザイクを検出できないという逆向きの死角があるからである。

何を見ているか

まで進んだ細胞の染色体を、大きさ・の位置・分染パターンで同定し、22対の常染色体とに整理する。測っているのは配列ではなく「形と数」であり、塩基配列レベルの変化(点変異・小さな挿入欠失)はまったく見えない。逆に、配列を読む検査では捉えにくい染色体全体の再配置——転座・・・——は核型でこそ一望できる。標本作製の手順、G分染の原理、バンドは遺伝学 2.3: Iに譲る。

実施法と判定基準

検体は「その組織で分裂している細胞が得られるか」で決まる。

検体 使う場面 押さえどころ
出生後に生まれつきの核型を確認する では分裂していないため、分裂で刺激してから培養する
骨髄 では検体をに用いる2
絨毛(10〜13週)・羊水(15〜18週) 羊水は胎児細胞を培養してから標本にする2
血液で捉えられないモザイクを疑うとき 培養に日数を要する

💡 生まれつきの核型と腫瘍の核型は、同じ検査でも目的が違う。 前者は全身の細胞が共有する構成を見るので末梢血1検体で足りるが、後者は腫瘍細胞に後天的に生じた変化を見るため、病変そのものから採らなければ意味がない。で末梢血の核型が正常でも、骨髄の核型が正常であることを保証しない。

結果はISCNの表記法(46,XY、47,XX,+21 など)で報告する。判定は多数の中期分裂像を観察して行い、モザイクの有無を評価するには観察する細胞数そのものが判定精度を決める。

所見の意味(何が示唆されるか)

核型が答えられるのは「染色体レベルで数か形が変わっているか」という問いだけである。適応は、その問いに答えが出る場面に限られる。

適応 核型で決めたいこと
の評価(、外性器の異形、両側とも触知できない) 構成が表現型と一致するか。と組み合わせ、精巣の機能と染色体の性を別々に確かめる
不妊・ 夫婦いずれかにがあるか(本人は健常で、の段階で不均衡が生じる)
病型分類・・に直結する再構成があるか
の確定。の陽性結果を確定診断に変える
明らかな染色体症候群の確認 ・・のように、臨床像から狙い撃ちできる場合1

⭐ で核型を出す狙いは「異常を見つけること」ではなく「を見逃さないこと」である。 は保因者本人には症状がなく、CMAでも検出されない——を繰り返す背景として核型でしか拾えない代表例で、これが核型を残す最大の理由の1つになっている13。

⚠️ 測定上の注意

⚠️ 最大の落とし穴は分解能である。 微細欠失症候群は、臨床像が典型的でも核型は正常と報告される。核型が正常だったことを「染色体異常はなかった」と読み替えない——やのように、疑ったら標的を絞ったFISHかへ進むべき場面がある。

2つの検査は、見えるものと見えないものが互いに裏返しになっている。

比較軸 G分染核型
分解能 5〜10 Mb(3 Mb程度まで写ることもある)1 をゲノム全体でに検出2
・ 検出できる ⚠️ 検出できない(が変わらないため)13
検出できる だけを読む設計では検出できない(全染色体が一律に増えるため)。⚠️ SNPプローブの遺伝子型情報を解析すれば検出できる3
低頻度モザイク 観察細胞数を増やせば拾えるが核型にも下限がある——標準の20細胞ではモザイク率14%程度まで1 ⚠️ 概ね20〜30%のモザイク率が下限1
分裂細胞 必要(培養に日数を要する) 不要
  • ⚠️ 「CMAが互換」ではない。 の前向き比較でも、は核型が同定した再構成を1例も検出できなかった——が変わらない以上これは原理的な死角である3。核型は分解能で劣る代わりに、ゲノムを「並べ替えの地図」として見る唯一の検査である。
  • 💡 同じ研究で17例のも見落とされているが、こちらは原理の限界ではない。 アレイに載っていたSNPプローブの遺伝子型情報を解析しない設計だったためで、著者らは事後の検討で「SNPデータを解析していれば例は検出されていた」とし、出生前検査用のアレイにはSNPプローブを含めるべきだとしている3。「アレイはを写せない」と暗記せず、そのアレイがSNPプローブの遺伝子型を読む設計かどうかを確かめる。
  • ⚠️ 培養できなければ結果が出ない。 分裂細胞が得られない検体(生存細胞の乏しい流産物・児組織など)では培養不成功となり、に終わることがある。この点でも、分裂細胞を要しないCMAとは失敗の仕方が違う。
  • は核型の弱点を埋めるが、狙った場所しか見ない。 プローブで微細欠失・微細重複や特定の転座を検出できる一方、あらかじめ選んだ配列だけが解析対象になるため、どのプローブを当てるかを臨床側が決められない場面では役に立たない2。
  • を中期で観察するという手技は・検査と共通だが、あちらは形を同定するのではなく損傷や交換の回数を数えるであり、目的が異なる。

検査の選び方

flowchart TD
    A["染色体レベルの異常を疑う"] --> B{"臨床像から特定の<br>染色体症候群を狙えるか"}
    B -->|"狙える(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Down syndrome'>ダウン症候群</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Turner syndrome'>Turner症候群</span>など)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='karyotype analysis'>核型分析</span>を第一選択にする"]
    B -->|"狙えない:原因不明の発達遅滞・多発奇形"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chromosomal microarray'>染色体マイクロアレイ</span>を第一選択にする"]
    A --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recurrent miscarriage'>反復流産</span>・家系内に<br>染色体再構成があるか"}
    E -->|"ある"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='balanced translocation'>均衡型転座</span>はアレイで見えない<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='karyotype analysis'>核型分析</span>を選ぶ"]
    D --> G{"アレイが正常だが<br>臨床像は強く疑わしい"}
    G -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='balanced'>均衡型</span>再構成・低頻度モザイクを核型で確認する<br>SNPプローブの遺伝子型を読まないアレイなら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triploid'>三倍体</span>も"]
    C --> I{"核型が正常だが<br>微細欠失症候群を疑う"}
    I -->|"はい"| J["標的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescence in situ hybridization'>FISH</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chromosomal microarray'>染色体マイクロアレイ</span>へ進む"]

まとめ

  • は染色体の数と形を見る検査で、G分染の分解能は5〜10 Mb。それより小さい欠失・重複は原理的に写らない。
  • 原因不明の発達遅滞・知的障害・・多発ではが第一選択で、診断率は全研究平均12.2%と核型の3%未満を大きく上回る。
  • ⚠️ 逆にはと低頻度モザイク(概ね20〜30%未満)を検出できない。はSNPプローブの遺伝子型情報を解析すれば検出でき、写らないのはそれを読まない設計のアレイである。核型側のモザイク検出にも下限があり、標準の20細胞では14%程度までにとどまる。や家系内の再構成では核型が第一選択のまま残る。
  • 検体は目的で決まる——生まれつきの核型は、は骨髄、出生前は絨毛・羊水。腫瘍の核型を末梢血で代用しない。
  • 核型が正常でも「染色体異常がない」ことにはならない。微細欠失症候群を疑うなら標的かへ進む。

出典

  1. 1.Consensus Statement: Chromosomal Microarray Is a First-Tier Clinical Diagnostic Test for Individuals with Developmental Disabilities or Congenital Anomalies(American Journal of Human Genetics(International Standard Cytogenomic Array Consortium;Miller DT, Adam MP, Aradhya S, et al.)・2010)G分染核型が3 Mb程度の不均衡を検出できることもあるが5〜10 Mbの範囲の不均衡はしばしば見逃すこと、原因不明の発達遅滞・知的障害・自閉スペクトラム症・多発先天奇形における染色体マイクロアレイの診断率が全研究平均12.2%で、ダウン症候群を除いた核型の3%未満を大きく上回るためこれらの患者では染色体マイクロアレイを第一選択検査とすべきこと、真の均衡型再構成と低頻度モザイクは一般にアレイでは検出できず分節性異数性のモザイクは現行プラットフォームで概ね20〜30%のモザイク率までしか検出できないこと、一方で標準的な20細胞を観察するG分染核型分析でも検出できるのは14%程度のモザイク率までと見積もられること(Impact of Balanced Rearrangements and Low-level Mosaicism on Clinical Sensitivity of CMA節)、G分染核型は明らかな染色体症候群(ダウン症候群など)・家系内の染色体再構成の既往・反復流産の既往を持つ患者のために残すべきとしていることを、AbstractとResults節で確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.Genetics, Cytogenetic Testing and Conventional Karyotype(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)従来型核型分析がG分染により5 Mbを超える大きな染色体異常を検出し、それより微細な変化にはより高感度の分子的手法を要すること、急性白血病では骨髄穿刺検体を日常的に核型分析へ供すること、出生前検体として絨毛採取(10〜13週)と羊水(15〜18週、胎児細胞を培養して用いる)を用いること、FISHが蛍光標識プローブにより逆位・挿入・転座・微細欠失・微細重複を検出できる一方、標的とした配列しか解析されないため症例評価とプローブ選択に注意を要すること、染色体マイクロアレイがゲノム全体のコピー数変化を検出しモザイクが疑われる例でとくに有用であることを、Procedures節で確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.Chromosomal Microarray versus Karyotyping for Prenatal Diagnosis(New England Journal of Medicine・2012)29施設で4,406例の絨毛採取・羊水穿刺検体を分割し核型と染色体マイクロアレイを盲検下に併施した前向き比較研究であること、核型が正常であった3,822検体のうち胎児超音波で構造異常を認めた群では755例中45例(6.0%、95%CI 4.5〜7.9)に臨床的意義のある欠失・重複が追加で検出され、高齢妊娠を適応とした群では1,966例中34例、母体血清スクリーニング陽性群では729例中12例であったこと、一方でマイクロアレイは核型が同定した均衡型再構成をいずれも検出できず、本研究に含まれた17例(0.4%)の三倍体もすべて検出できなかったこと、ただしSNPプローブを含むアレイは遺伝子型情報を用いて三倍体を同定できるのに対し本研究はその情報を解析しない設計であったこと、事後の検討でSNPデータを解析していれば三倍体例は検出されていたはずだと述べ出生前検査用のアレイには三倍体を確実に同定できるSNPプローブを含めるべきだと結論していることを、Results節・Table 3・Discussion節で確認した。閲覧 2026-08-20