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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 先天性疾患

ターナー症候群

Turner syndrome

別名
45,XUllrich-Turner症候群
臓器系
生殖・産婦人科全身
科目
Internal MedicineMedical Genetics and Immunology (Genetics)Pediatrics
トピック
内科学 E-08:性腺機能異常遺伝学 2.2:染色体異常小児科 3-60:生存可能な染色体数的異常と代表的構造異常小児科 06:染色体異常
鑑別疾患
Noonan症候群アンドロゲン不応症ミュラー管無形成混合性腺異形成症
続発疾患
甲状腺機能低下症骨粗鬆症胎児水腫
関連疾患
クラインフェルター症候群ダウン症候群(21トリソミー)左心低形成症候群大動脈縮窄二尖大動脈弁馬蹄腎
治療薬
ソマトロピンエストラジオール
症状
リンパ浮腫伝音難聴難聴内眼角贅皮
検査値
染色体検査

🧠 全体像:は、表現型が女性でありながらX染色体の一方が完全または部分的に欠損する、ヒトで唯一出生まで生存しうるである。核型は45,Xの単一パターンから、モザイク(45,X/46,XX)、X染色体の(欠失・・)まで幅広く、残存するX染色体物質が多いほど表現型は軽症化するという量的な相関が全身の所見を貫く軸になる。はXp上のSHOX遺伝子の、(線維化した)はの加速的な閉鎖が本態で、心血管(・・)と腎()のを伴いやすい。診断はで確定し、その後は→エストロゲンによるという時間軸に沿った管理と、生涯にわたる多臓器(心血管・甲状腺・骨・聴覚・)が中心になる。

概要

  • =表現型が女性で、X染色体の一方が完全または部分的に欠損することにより生じる異常症候群。頻度は生児女児約1/2,000〜2,500人(人口10万あたり約40人)で、生存する異常の中では頻度の高い部類に入る。
  • ヒトで唯一、出生まで生存しうるである(常染色体は例外なく子宮内致死)。45,Xのの大部分(推定約99%)はに至り、実際に出生に至る例はごく一部にとどまる——つまり出生後に診断される頻度は、レベルでの本来の発生頻度を大きく過小評価している。
  • 、による無月経・不妊、・などの特徴的な身体所見に加え、心血管・腎・・骨密度低下など多臓器にわたる合併症を伴う。知能は正常範囲にとどまることが多いが、など特定領域の学習困難を伴いうる。

病態

核型パターンと表現型の量的相関

⭐ の核型は一様ではなく、どれだけのX染色体物質が残存するかで重症度が変わる。核型ごとの頻度は国際合意ガイドラインの一覧による1。

核型パターン 頻度の目安 機序 表現型との関連
45,X(完全) 約40〜50% 減数分裂時のにより、X染色体の一方を完全に欠く(欠失する染色体は父が多い) 最も典型的で重症な表現型。・・心血管/の頻度が高く、自然思春期はまれ
モザイク 45,X/46,XX 約15〜25% 受精後のにより、正常46,XXと45,Xが同一個体内に共存 46,XX細胞の割合が高いほど表現型は軽症化しやすく、自然思春期・自然妊娠がみられることがある
X染色体の(i(Xq)・idic(Xp)、r(X)、Xp欠失など) i(Xq)・idic(Xp)が約15%、環状X染色体やX-常はまれ X染色体の一部のみが欠失・再構成する 欠失部位で表現型が偏る:Xp欠失(SHOX領域を含む)は優位。⚠️ Xq24より遠位の欠失はに含めず、として扱う1
モザイク 45,X/46,XY 約10〜12% Y染色体由来の(多くはSRY遺伝子断片を含む)を有するが共存 性腺は〜精巣様まで多様。線維化したにを生じるリスクがあり、性腺の評価を要する

なぜ低身長になるのか:SHOX遺伝子のハプロ不全

X遠位のに位置するSHOX遺伝子は、X・Y染色体の両方に存在するため通常2コピー発現する。ではX染色体の欠失によりこのSHOX遺伝子のが生じ、の増殖が障害されてを来す。💡 Xp欠失に限局する(SHOX単独欠失)ではのみが前景に立ち、性腺機能やは保たれることがある——これが単独の症例と、多を伴う典型例を分ける鍵になる。

なぜ性腺機能不全になるのか:性腺異形成(索状性腺)

には卵巣にが正常に形成されるが、2本のX染色体がそろっていないとを長期間維持できず、妊娠中期以降にの加速的な閉鎖(アポトーシス)が進行する。出生時までにほとんどの卵胞が消失し、卵巣は線維性のに置き換わる。

💡 これは「卵巣が形成されない」のではなく「一度形成された卵胞が的に失われる」病態である。モザイク例で46,XX細胞の割合が高いほど卵胞の温存が良く、自然思春期・自然妊娠がみられることがある(数%程度)。

45,X/46,XYモザイクと性腺芽腫リスク

Y染色体由来の物質(多くはSRY遺伝子を含む断片)を含むが混在する例では、線維化した内にを生じるリスクが上昇する。⚠️ でや由来不明の断片がみつかった場合はY染色体由来物質の有無を等で確認し、陽性なら性腺のリスク評価につなげる。

リンパ浮腫・翼状頸の機序

のリンパ管形成不全によりが生じ、これが吸収される過程で余剰皮膚のひだがとして残る。同じリンパ管形成不全が出生時の手足のの原因にもなる。

臨床像

臓器・系統 主な所見
成長 (SHOX遺伝子のが主機序)、思春期発育スパートの欠如
生殖・内分泌 ()、、、低下・不妊、インスリン抵抗性・2型糖尿病リスク増加
頭頸部・リンパ 、(幅広い胸郭)、が低い、、出生時の手足の、多発性母斑
心血管 (14〜40%。一般人口の約50倍で、25%超に検出されるとされる)、(4〜15%)1、など染色体異常に合併しうる、大動脈拡張・解離のリスク、高血圧
腎泌尿器 先天性(約1/3、が代表的)
聴覚 反復性中耳炎による、加齢に伴う進行性の感音難聴
自己免疫・消化器 甲状腺機能低下症を来すなどの、セリアック病のリスク増加
骨・筋骨格 、短い第4、骨密度低下・骨粗鬆症リスク
精神・発達 知能は正常範囲だが、・非言語性の学習困難を伴うことがある

⚠️ 大動脈拡張・解離はの中でも見逃すと致死的である。やは単独の危険因子だが、これらを伴わない例でも大動脈壁の内在的な脆弱性により拡張・解離が生じうるため、心血管所見が乏しくても画像評価を省略しない。

診断

出生前後の契機

  • 出生前:でXが疑われる、またはで・・が指摘された場合。⚠️ NIPTはXに関してが比較的高く単独では確定診断にならないため、必ず・による核型確認を行う。
  • 出生後:の手足の・・低い、小児期の原因不明の・からの逸脱、思春期の欠如・で疑う。

核型検査による確定診断

を用いたで確定する。標準的には30細胞以上をすることで、約10%程度のを95%の信頼度で検出できる1。臨床的にが強く疑われるにもかかわらず標準的なで正常46,XXと判定された場合は、別の組織(等)での検査や、より多数の細胞のを検討する。やY染色体由来物質が疑われる場合はで確認する。

診断確定後の必須ベースライン評価

  • 心エコー+:大動脈径・・を評価する。年長児・成人では(aortic size index:ASI=大動脈径 / )やを用いて評価し、新規診断の年長児・成人では診断後12か月以内にを行う1。
  • :などのを確認する。
  • 聴力検査:診断時に加え、加齢に伴う進行性感音難聴があるため定期的に反復する。
  • 甲状腺機能・自己抗体(TSH、TPOAb)、セリアック病スクリーニング。
  • 股関節・脊椎の評価、年齢に応じた骨密度評価。
  • 発達・学習面の評価。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='short stature'>低身長</span>+特徴的表現型(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neck webbing'>翼状頸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shield chest'>盾状胸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cubitus valgus'>肘外反</span>など)から臨床的に疑う"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='karyotyping'>核型検査</span>で確定診断<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral blood lymphocyte'>末梢血リンパ球</span>30<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metaphase'>分裂中期</span>以上を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='counting'>計数</span>)"]
    B --> C{"Y染色体由来物質を検出?"}
    C -->|"あり"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gonadoblastoma'>性腺芽腫</span>リスクを評価し性腺摘出を検討"]
    C -->|"なし"| E["必須のベースライン評価<br>心エコー+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac MRI'>心臓MRI</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal ultrasound'>腎超音波</span>・聴力検査・甲状腺機能・股関節/脊椎・骨密度"]
    D --> E
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth failure'>成長障害</span>が明らかなら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth hormone therapy'>成長ホルモン療法</span>を開始<br>(早ければ2歳から、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epiphyseal closure'>骨端線閉鎖</span>まで継続)"]
    F --> G["11〜12歳頃、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>高値かつ自然思春期兆候がなければ<br>エストロゲンによる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pubertal induction'>思春期誘導</span>を開始"]
    G --> H["生涯にわたる長期<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surveillance'>サーベイランス</span><br>心血管(大動脈画像)・骨密度・妊孕性/妊娠リスクの評価を継続"]

治療

成長ホルモン療法

  • が明らかであれば早ければ2歳から()療法を開始できる。は目安として45〜50 μg/kg/日(1.3〜1.5 mg/m²/日)、反応が不十分なら最大68 μg/kg/日(2.0 mg/m²/日)まで増量する1。
  • が閉鎖するまで継続する。後に継続する生理学的根拠はない。
  • 早期開始・十分な治療期間により、未治療の場合と比べて成人身長を数cm改善しうる。

エストロゲンによる思春期誘導

  • 自然思春期の徴候がなく、高値を2回の連続測定で確認した場合、11〜12歳頃から低用量エストロゲン(エストラジオール)補充を開始し、成人補充量まで2〜4年かけて緩徐に漸増する1。
  • を第一選択とし、経口エストラジオールは第二選択とする1。
  • (多くはエストロゲン開始後18〜24か月ごろ出現)がみられた時点で、周期的な(200mgを月10〜12日間投与など)を追加し、子宮内膜の増殖を防ぐ。
  • 骨密度・心血管保護の観点から、禁忌がなければ自然閉経相当年齢まで性ホルモン補充を継続する。

妊孕性と妊娠管理

  • 大半はによる原発性卵巣機能不全のため自然妊娠は困難で、妊娠を希望する場合は提供を用いたが主な選択肢となる。モザイク例で自然思春期がみられる患者では自然妊娠の可能性もあるが、頻度は限られる。
  • ⭐ 妊娠はのリスクを著明に高め、はにおける妊娠関連死亡の主要な原因である。妊娠を計画する前2年以内にまたはによる心血管画像評価を行い、(ASI)が2.5 cm/m²を超える(大動脈身長係数AHI>25 mm/m、>4に相当)など高度な大動脈拡張がある場合は、自然妊娠・のいずれも回避することが提案されている1。なお拡張の判定閾値そのものはASI>2.0 cm/m²(AHI>20 mm/m、>2.5)で、これを超えるか、あるいは・・高血圧・急速な径増大という解離の危険因子を1つでも持てば(拡張が無くても)多職種による周産期管理の対象になる1。
  • 妊娠が進む場合は、産科・循環器内科など多職種による周産期管理が必須である。

性腺芽腫リスクへの対応

Y染色体由来物質を有する例ではのリスクを評価する。ある研究はY染色体陽性例におけるの発生を7〜10%程度と低く見積もり、従来の報告がでリスクを過大評価していた可能性を指摘した(ただし性腺摘出10例中1例という単一研究の推定である)2。⚠️ 国際合意ガイドラインは、の頻度が研究間で0〜100%と大きく割れること、Y染色体全体を有する例はリスクが高いことを明記している1。低い側の数値だけを根拠にしない。国際合意ガイドラインも、・のリスクと性腺機能・妊孕性の温存という利益を比較し、性腺摘出の適否と時期は個別に判断するという立場をとる1。

長期サーベイランス

  • 心血管:心エコー/を診断時に加え、9〜11歳、成長終了時または成人診療への移行時、成人期は少なくとも5〜10年ごと(異常があればより頻回)に評価する。血圧は年1回以上測定する。
  • 甲状腺:定期的にを再評価する(は経過中に発症しうるため)。
  • 聴覚:加齢に伴う進行性感音難聴があるため定期的に評価する。
  • 骨:成人期から骨密度を定期的に評価し、ホルモン補充・カルシウム/ビタミンD・体重負荷運動で骨粗鬆症を予防する。
  • :インスリン抵抗性・2型糖尿病リスクを定期的に評価する。
  • 婦人科:ホルモン補充中の子宮内膜保護、時の相談を継続する。

まとめ

  • はX染色体の完全・部分欠失またはモザイクによる異常で、ヒトで唯一出生まで生存しうるである。残存X染色体物質量と表現型の重症度には量的な相関がある(45,X完全が最重症、モザイクやは軽症化しうる)。
  • はSHOX遺伝子の、()はの加速的な閉鎖が本態で、45,X/46,XYモザイクではリスクを評価する。
  • 診断は(30細胞以上の)で確定し、確定後は心血管(大動脈画像)・腎・聴覚・甲状腺・骨のベースライン評価を行う。
  • 治療はがあれば2歳からの、11〜12歳頃からのエストロゲンによるという時間軸に沿って進め、生涯にわたる心血管・骨・甲状腺・のを継続する。
  • 妊娠はという致死的合併症のリスクを高めるため、妊娠計画前の心血管評価と、高度大動脈拡張例での妊娠回避の判断が重要である。

出典

  1. 1.Clinical practice guidelines for the care of girls and women with Turner syndrome(European Journal of Endocrinology・2024)2023年Aarhus国際ターナー症候群会議に基づく国際合意ガイドライン(2017年Cincinnati版の改訂)。核型別頻度(45,X 40〜50%、45,X/46,XX 15〜25%、45,X/46,XY 10〜12%、i(Xq)/idic(Xp) 15%、環状X・X-常染色体転座はまれ)、診断は染色体分析で最低30分裂中期を計数し約10%のモザイシズムを95%信頼限界で検出できること(R1.6)、成長ホルモンは成長障害・低身長があれば2歳から開始可能(R2.1)で開始量45〜50 μg/kg/日(1.3〜1.5 mg/m²/日)・反応不十分なら最大68 μg/kg/日(2.0 mg/m²/日)まで増量(R2.3)、骨端線閉鎖後に継続する生理学的根拠はないこと(R2.2)、FSHが2回以上連続して高値なら11〜12歳で低用量エストロゲンを開始し成人量まで2〜4年かけて漸増(R3.2)、経皮17β-エストラジオールを第一選択・経口を第二選択(R3.4)、破綻出血(多くは無拮抗エストロゲン曝露18〜24か月後)が生じたら微粒化プロゲステロン200 mgを月10〜12日追加(R3.5)、新規診断の思春期以降例には12か月以内に心臓MRIを行うこと(R4.10)、大動脈拡張の指標(ASI>2.0 cm/m²・AHI>20 mm/m・Zスコア>2.5、高リスクはASI>2.5 cm/m²・AHI>25 mm/m・Zスコア>4)、妊娠計画・生殖補助医療の2年以内に心臓MRIまたはCTを行うこと(R4.32)、高度大動脈拡張(ASI>2.5 cm/m²等)では自然妊娠・生殖補助医療の回避を提案すること(R4.34)、Y染色体物質陽性例の性腺摘出は性腺芽腫・未分化胚細胞腫のリスクと性腺機能・妊孕性の利益を比較して個別に判断すること(R7.40)を確認した。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Occurrence of gonadoblastoma in females with Turner syndrome and Y chromosome material: a population study(The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism・2000)デンマークのターナー症候群女性114例をPCRでY染色体物質についてスクリーニングした集団研究。Y染色体物質は14例(12.2%、95%CI 6.9〜19.7%)に検出され、うち7例は核型からは示唆されなかったこと、卵巣摘出された10例のうち性腺芽腫は1例のみで、"the occurrence of gonadoblastoma among Y-positive patients seems to be low (7-10%), and the risk may have been overestimated in previous studies, perhaps due to problems with selection bias" と述べていることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04