小児科学

小児科学 · 06

染色体異常

Chromosomal abnormalities

前提:正常
染色体異常(数的・構造的異常の機序)エピジェネティクス(ゲノムインプリンティング)
疾患
Williams症候群エドワーズ症候群・パトー症候群(18・13トリソミー)ターナー症候群ダウン症候群(21トリソミー)全前脳症
症状
内眼角贅皮

🧠 全体像:染色体異常は「数の異常」と「」に大別され、さらに数の異常は常染色体(Down・Patau・Edward症候群)と(Turner・)に分かれる。顔面形態異常・知的障害・複数臓器奇形・がそろえば染色体異常を疑い、・の合併パターンが症候群ごとの鑑別の手がかりになる。

染色体異常を疑う所見

顔面形態異常、知的障害、運動発達遅滞、複数臓器(中枢神経・顔面・指・心臓)の奇形、(IUGR)がそろえば染色体異常を疑う。

分類 定義
軽微な異常 通常は重大な機能障害を単独では起こさない形態学的な(例:、、)。などの機能的所見は含めない
重大な異常 機能的な影響を伴う

染色体異常の分類

  1. :染色体数の異常
  2. 染色体・ゲノム異常:欠失・重複・挿入・・転座などの、微細欠失・微細重複などの。Angelman症候群やのように・を含む病態もある

常染色体異数性

症候群 核型 特徴的な合併症
21番染色体物質の過剰。多くは遊離型47,+21だが、型・もある(母体年齢とともに遊離型リスク増加)1 心:AV中隔欠損(最多)、心房/、、/消化管:・・肛門閉鎖・/泌尿生殖器:、/その他:、、1型糖尿病、セリアック病、難聴、白血病、知的障害
13番染色体物質の過剰。多くは47,+13だが転座型・もある 、、、・変形、鼻先肥大、、、、/心:、/その他:、、、毛細血管腫、知的障害
Edward症候群 18番染色体物質の過剰。完全型47,+18のほか・部分型がある2 重篤な多発奇形を伴い、が高頻度。、、後頭部突出、、/心:、など/その他:、、、知的障害

では・、、泌尿生殖器奇形を、Edward症候群では指が重なった握りし(第2指が第3指に、第5指が第4指に重なる)と腎・尿管奇形を認めうる。これらは単独では診断的でなく、核型・で確定する。

の顔面所見:、、、小さい口腔、、扁平で幅広い、後頭部扁平、、。四肢・体幹所見:、短く幅広い手、、(第1・2の開大)、、、、肥満、を認めうる。

💡 のパターンは症候群間で異なる:では一般に↓・↓・↑・↑であるのに対し、Edward症候群では4マーカーすべてが低下する(↓遊離、↓、↓、↓β-)。この違いがでの鑑別の手がかりになる。

性染色体異数性

症候群 核型 特徴
X染色体の完全または部分的欠失。45,X、モザイク、など多様な核型を含む3 女性表現型、卵巣機能不全(、、不妊)/、、、低い後頭部、手足の、爪形成異常、短い第4、、、骨粗鬆症/心:、、大動脈拡張・解離、高血圧/その他:、、。Y染色体物質を伴う場合はリスクを評価
典型は47,XXY(男性の代表的原因) 表現型には幅があり、小児期には身体所見が乏しく未診断のこともある。(eunuchoid:・細身・四肢が長い)、、、小さく硬い精巣、・生殖機能低下/中枢神経:言語・学習上の困難/その他:骨密度低下、乳癌・リスク上昇。により生物学的を得られる例もある4

構造異常

症候群 異常 特徴
Cri-du-chat症候群 5番(5p欠失) 猫の鳴き声様の甲高い泣き声、、、顔面形態異常(moon facies、、、両眼開離)、、・、、狭い骨盤・短い/
7q11.23微細欠失(ELNを含む) 知的・学習上の困難、過剰な社交性、に加え、などのELN関連血管病変、高Ca血症を認めうる
Angelman症候群 母由来15q11-q13領域のUBE3A機能喪失(欠失、、、UBE3Aなど) 重度発達遅滞・障害、知的障害、てんかん、、失調、四肢の/体幹の緊張低下、、笑顔・笑いの多い行動特性
父由来15q11-q13領域の発現喪失(父由来欠失、、など) 乳児期の・から、幼児期以降の・肥満へ移行する。、、、、アーモンド様眼、発達遅滞、知的障害、を伴いうる
22q11.2微細欠失。従来、口蓋心臓症候群など複数の名称で記載された表現型を含む5 表現型の幅が広く、胸腺・副甲状腺低形成による易感染性・低Ca血症、口蓋異常、発達・精神症状、顔面形態異常、(、、など)を認めうる

💡 Angelman症候群とはいずれも15q11-q13の特異的発現に関係するが、欠失だけでなくやなどでも生じる。母由来UBE3A機能喪失はAngelman症候群、父由来領域の発現喪失はを来す。

まとめ

  • 顔面形態異常・知的障害・運動発達遅滞・複数臓器奇形・IUGRがそろえば染色体異常を疑う。
  • 常染色体トリソミー(Down・Patau・Edward)はいずれも特徴的な顔面形態異常とを伴うが、合併する消化管・泌尿生殖器・皮膚の異常パターンで鑑別できる。
  • (Turner・Klinefelter)はを共通の軸に持つが、Turnerは女性表現型・・、Klinefelterは男性・が特徴的である。
  • のうちAngelman症候群とは同じ15番染色体領域の異常だが、インプリンティング()の違いで表現型が分かれる好例である。

出典

  1. 1.Down syndrome(Nature Reviews Disease Primers・2020)Down症候群が21番染色体物質の過剰による多臓器性疾患で、表現型と合併症が多様であること閲覧 2026-08-13
  2. 2.The trisomy 18 syndrome(Orphanet Journal of Rare Diseases・2012)18トリソミーが完全型・モザイク型・部分型を含み、多発奇形と高い死亡リスクを伴うこと閲覧 2026-08-13
  3. 3.Turner syndrome: mechanisms and management(Nature Reviews Endocrinology・2019)Turner症候群はX染色体の完全または部分的欠失と多様なモザイク核型を含み、多臓器管理を要すること閲覧 2026-08-13
  4. 4.New Horizons in Klinefelter Syndrome: Current Evidence, Gaps, and Research Priorities(Endocrine Reviews・2025)Klinefelter症候群の表現型と生殖機能障害には幅があり、小児期には未診断例が多いこと閲覧 2026-08-13
  5. 5.22q11.2 deletion syndrome(Nature Reviews Disease Primers・2015)22q11.2欠失症候群が従来複数の症候群名で記載された、表現型の幅が広い染色体微細欠失症候群であること閲覧 2026-08-13