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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 先天性疾患

5α還元酵素欠損症

5-alpha-reductase deficiency

別名
5α還元酵素2型欠損症SRD5A2欠損症Guevedoces
臓器系
生殖・産婦人科内分泌・代謝小児
科目
Medical PhysiologyUrology
トピック
生理学 7.7:性成熟の内分泌生理・男性生殖生理泌尿器科学 U-03:尿道・男性外性器の発生異常
上位概念
性分化疾患
鑑別疾患
アンドロゲン不応症
続発疾患
尿道下裂停留精巣
症状
小陰茎
検査値
血清テストステロン染色体検査

🧠 全体像:2型欠損症は、テストステロンと()の「担当領域の違い」が患者の身体でそのまま表現型として現れる疾患である。SRD5A2遺伝子の変異により、この酵素が触媒するテストステロン→変換ができなくなる1。(精巣上体・・)と思春期の男性化はテストステロン依存で正常に進むのに対し、のだけが依存で障害される——だからこそ出生時は女性様〜男性化不十分な外性器で生まれても、思春期にテストステロンサージが起これば急激に男性化が進行しうる。ドミニカ共和国の集団でこの現象は「グエベドセス」として知られてきた1。

病態・機序

は2つのを持ち、外性器の男性化に主に働くのは2型(SRD5A2遺伝子、2番にコード)である。この酵素がテストステロンを——への親和性がテストステロンより高く、より強力に作用するアンドロゲン——へ変換する1。

flowchart TD
    A["SRD5A2遺伝子の変異(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autosomal recessive'>常染色体劣性</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-alpha reductase'>5α還元酵素</span>2型の活性低下"]
    B --> C["テストステロン→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dihydrotestosterone'>DHT</span>変換障害"]
    C --> D["外性器(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dihydrotestosterone'>DHT</span>依存)の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='undermasculinization'>男性化不全</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='micropenis'>小陰茎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypospadias'>尿道下裂</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Labia'>陰唇</span>陰嚢<span class='jp-term jp-term-diagram' title='failure of fusion'>癒合不全</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal genitalia'>内性器</span>(テストステロン依存)は正常に分化<br>精巣上体・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ductus deferens'>精管</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='seminal vesicle'>精嚢</span>"]
    F["精巣からの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-Müllerian hormone'>AMH</span>分泌は正常"] --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mullerian duct (paramesonephric duct)'>Müller管</span>は退縮<br>子宮・卵管は欠如"]
    H["思春期のテストステロンサージ+1型酵素の関与"] --> I["自然な男性化が進行しうる<br>陰茎増大・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='testicular descent'>精巣下降</span>・変声・体毛増加"]

💡 「・思春期の男性化=テストステロン、外性器の男性化=」という分業が、そのままこの疾患の表現型を説明する。精巣は正常に発生してを分泌するためは退縮し、由来のはテストステロンにより男性型に分化する。障害されるのは、が必須となる胎生8〜12週のだけである1。

臨床像

出生時の外性器は女性様外観から近男性外観までの連続的なスペクトラムを示し、、、陰嚢、として現れうる1。は男性型が保たれ、子宮・卵管など由来構造は存在しない。

⭐ 思春期には自然な男性化がしばしば生じる。 テストステロンの分泌増加、1型酵素の活性上昇、残存する2型活性が組み合わさり、陰茎増大・・変声・体毛増加が進む1。⚠️ この男性化に、通常はを伴わない——では思春期のをほぼ必発とするのに対し、では通常みられない点が、この2つの46,XY DSDを鑑別する重要な手がかりになる1。

診断

診断の古典的指標は、基礎時またはテストステロン/DHT比の上昇(目安10〜20以上)である。⚠️ ただしこの比が正常域であっても診断を除外できない——特に部分的な酵素活性が残る症例ではその限りではなく、測定の役割はこれまで過大評価されてきたとする指摘もある2。

確定診断にはSRD5A2の両アレルの病的variant同定が有用で、外性器がな新生児で早期の精密診断を支える。既報の症例集積では95%で2つの変異が同定されている2。で46,XYであることを確認し、の一般的な評価(超音波・内分泌検査)と組み合わせて進める。

⚠️ との鑑別が最も重要である。 は受容体レベルでアンドロゲン作用に抵抗するのに対し、は受容体機能自体は正常で産生だけが障害される。臨床的には、思春期のの有無(不応症でほぼ必発、本症では通常欠如)が鑑別の手がかりになる1。

性自認と性別違和

⭐ 転帰は一様ではない。 1970年代にこの疾患が最初に報告されたドミニカ共和国の原コホートでは、女性として養育された1817人が思春期またはその後に男性の性役割へ移行したと報告された。一方でフランスの症例集積では12.5%、欧州多施設データでは約13%が性別移行を経験したにとどまり、頻度は民族・文化的慣行・宗教的背景・地域の性別規範によって大きく異なる1。

💡 「グエベドセス」はよく知られた現象だが、普遍的な転帰として一般化しない。 全体で強調されるとおり、外性器の男性化の程度そのものは選ぶべき性別や性別違和の生じやすさを予測しない。この疾患でも、の性別割り当てにあたってチームによる評価を経ることが原則になる。

治療・管理の考え方

⭐ 管理は個別化され、の評価を前提とする——が強調する原則がそのまま当てはまる1。

  • 女性として養育する方針の場合:思春期前に性腺摘出を行い自然な男性化を防止し、その後エストロゲン補充を行う。
  • 男性として養育する方針の場合:アンドロゲン刺激療法で陰茎発育を促したうえで、生後2年以内を目安に修復・などの外科的再建を行う。

⚠️ 確定的な外科的・ホルモン的介入は、十分なを経てからのみ行うべきである1。性自認の転帰が一様でないことを踏まえ、の性別割り当てを急がず評価を先行させるという、全般のが特に重要になる領域である。

まとめ

  • 2型欠損症はSRD5A2遺伝子の変異により、テストステロン→変換が障害される46,XY DSDである。
  • ・思春期の男性化はテストステロン依存で保たれる一方、のだけが依存で障害される——この分業がそのまま「出生時は女性様〜男性化不十分、思春期に急激に男性化」という経過を説明する(ドミニカ共和国の「グエベドセス」)。
  • ⚠️ 思春期の男性化にを通常伴わない点が、ほぼ必発のとの鑑別点になる。
  • 診断はテストステロン/比の上昇(目安10〜20以上)が古典的指標だが正常域でも除外できず、SRD5A2の同定が確定診断となる。
  • 性別移行の頻度はドミニカ共和国の原コホート(17/18)から欧州の約13%まで幅があり、民族・文化的背景に影響される。外性器の男性化の程度は性別違和を予測しない。
  • 管理はによる個別化評価が前提で、確定的な外科的・ホルモン的介入は十分なの後にのみ行う。

出典

  1. 1.5-Alpha-Reductase Deficiency(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)2026年1月10日改訂版を確認した。5α還元酵素2型欠損症がSRD5A2遺伝子(2番染色体短腕2p23.1)の変異による常染色体劣性遺伝疾患で120を超える変異(大半がミスセンス変異)が報告されていること、同酵素がテストステロンをより強力なアンドロゲンであるジヒドロテストステロン(DHT)へ変換すること、DHTが妊娠8〜12週の外性器男性化に必須である一方でWolff管由来の内性器(精巣上体・精管・精嚢)はテストステロン自体で分化すること、出生時の外性器は女性様外観から男性に近い外観までの幅を示し小陰茎・尿道下裂・陰唇陰嚢癒合不全・停留精巣を呈しうる一方でMüller管由来構造(子宮・卵管)は欠如すること、思春期にテストステロンサージ・1型酵素活性の増加・残存する2型活性により自然な男性化(陰茎増大・精巣下降・変声・体毛増加)がしばしば生じること、この男性化に女性化乳房を通常伴わない点がアンドロゲン不応症との鑑別点であること(アンドロゲン不応症では思春期の女性化乳房をほぼ必発とする)、診断の古典的指標がテストステロン/DHT比の上昇(目安10〜20以上)だがこの比が正常域でも診断を除外できないこと、両アレルの病的variant同定が確定診断となり外性器非典型を呈する新生児での早期診断に有用であること、1970年代のドミニカ共和国で近親婚による地理的な集積が最初に記録され当該集団では女性として養育された症例が思春期に男性の性役割へ高頻度に移行したこと、フランスの症例集積では12.5%、欧州多施設データでは約13%が性別移行を経験したと報告され転帰が民族・文化的慣行・宗教的背景・地域の性別規範に影響されること、治療は個別化された多職種チームで進め女性として養育する方針では思春期前の性腺摘出後にエストロゲン補充を行い男性として養育する方針ではアンドロゲン刺激療法で陰茎発育を促したうえで生後2年以内を目安に尿道下裂修復・精巣固定術などの外科的再建を行うこと、確定的な外科的・ホルモン的介入は十分な心理社会的評価を経てからのみ行うべきであることを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Diagnosis of 5α–reductase 2 deficiency: is measurement of dihydrotestosterone essential?(International Journal of Pediatric Endocrinology・2013)全文(PMC3892203)で確認した。5α還元酵素2型欠損症の生化学的診断の古典的指標が基礎時および/またはhCG負荷後のテストステロン/DHT比の上昇であること、著者らが「DHT値の測定はこの疾患の診断に必須ではなく、この検査の役割はこれまで過大評価されてきた」と結論していること、自施設の12例では遺伝子変異解析でいずれも2つの変異が同定され確定診断に至ったこと、既報143例の文献レビューでも95%で2つの変異が同定されていたこと、自施設15例の尿中ステロイドプロファイルでは特徴的な5α/5β還元代謝物比の低下がみられたことを確認した。閲覧 2026-09-07