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Lab values · Published

ジヒドロテストステロン

Dihydrotestosterone

別名
血清DHTテストステロン/DHT比
臓器系
内分泌・代謝生殖・産婦人科
科目
Medical Physiology
トピック
生理学 7.7:性成熟の内分泌生理・男性生殖生理

🧠 全体像:血清は「測ればアンドロゲン作用の強さが分かる」検査ではない。は内でテストステロンから局所的に作られて働くホルモンで、循環血中濃度は組織内でのアンドロゲン作用からほぼ独立している——前立腺組織内濃度は血中濃度の6〜10倍に達するが、血中が変動してもが同じ比率で動くとは限らない1。だからこそ臨床での主な用途は、単独の絶対値ではなくテストステロン/比(の診断)と、投与時の抑制度(・薬効の)という、限定された2つの文脈に絞られる。血清テストステロンがアンドロゲン産生全体を映すのに対し、は「テストステロンが末梢でどれだけ活性化されたか」というただ1点を映す検査だと理解する。

何を測っているか

は、(前立腺・外性器の皮膚・毛包など)に主に発現する2型が、テストステロンを基質として変換して作る、より強力なアンドロゲンである。はへのがテストステロンよりも約2倍高く、受容体からのも約5倍遅いため、同じ受容体を介してより強力に作用する2。この酵素はテストステロン自体で分化する由来の(精巣上体・・)には発現せず、外性器の男性化・前立腺の発達・体毛の成長・という依存の分業を担う(詳細はを参照)。

基準値と単位

⚠️ 測定法によって値が大きく変わるため、施設・アッセイのを確認する。 による健常成人男性の血清は、18〜59歳で14〜77 ng/dL(0.47〜2.65 nmol/L)、65歳未満の地域住民コホートで23〜102 ng/dL、71〜87歳の高齢男性で14〜92 ng/dLという複数の報告があり、単位換算はおよそ1 nmol/L≒29 ng/dLである1。女性・小児など生理的に低濃度の集団では測定自体の精度がさらに落ちる。

高値の意味

血清高値そのものを目的に測定する場面は少ない。・・など活性が関与する表現型は、通常は臨床診断で進め、血清の絶対値を診断や治療開始の根拠にはしない——組織内作用と血中濃度が乖離するためである1。女性の高アンドロゲン症の一次評価は血清テストステロンで行い、を第一段階の検査に用いない。

低値の意味

⭐ 低そのものより「テストステロン/比の上昇」が診断的である。 のの古典的指標は、基礎時または負荷後のテストステロン/比の上昇(目安10〜20以上)であり、単独の低値ではない32。⚠️ この比が正常域であっても診断を除外できない——部分的な酵素活性が残る症例ではその限りではなく、「測定の役割はこれまで過大評価されてきた」とした報告もある。既報143例のレビューでは95%でSRD5A2の2つの病的variantが同定されており、比の上昇はスクリーニングの手がかりにとどまり、確定診断はに委ねる4。

⚠️ 測定上の注意

  • (RIA・)は低濃度域で精度が低い。 に対する抗体の特異性不足とテストステロンとのにより、と比較して最大25〜40%高い値を示しうる。低濃度が問題になる女性・小児・治療中の患者では、可能な限りでの測定を優先する1。
  • 血中濃度は組織内アンドロゲン作用のにならない。 前立腺内濃度は循環血中濃度の6〜10倍に達し、血中値の変動と組織内の作用の強さは必ずしも比例しない1。単回の血中値だけで「アンドロゲン作用が強い/弱い」と判定しない。
  • の内服は血清を大きく抑制する。 採血前の内服状況(・など)を必ず確認する。

経時変化とモニタリング

⭐ 主なは、(・)投与時の抑制効果の確認である。 ただし血清の低下幅は前立腺組織内の低下幅より小さい——ある男性避妊試験ではテストステロンゲルにを併用すると前立腺組織内が単独時と比べて約90%減少したのに対し、血清の低下は約72%(180 ng/dL→50 ng/dL、プラセボ群相当の値まで低下)にとどまった1。・の治療効果そのものは(、脱毛の進行)で判定し、血清抑制の程度と臨床的な効果の大きさは必ずしも比例しない——組織内作用と血中濃度が乖離するという前提が、ここでも当てはまる。の精査では、乳児期はでテストステロン/比を刺激下に測定し、思春期以降は基礎値での比を追跡する。

まとめ

  • 血清は、循環濃度が組織内アンドロゲン作用からほぼ独立しているため、単独の絶対値で解釈する検査ではない。
  • 主なは、の診断におけるテストステロン/比の上昇(目安10〜20以上)と、投与時の血清抑制の確認の2点に限られる。
  • テストステロン/比が正常域でもを除外できず、確定診断はSRD5A2のによる。
  • 測定はが望ましく、は低濃度域で最大25〜40%高値に振れうる。
  • 血清テストステロンがアンドロゲン産生全体の評価に使われるのに対し、は上記の限定された臨床文脈でのみ測定する。

出典

  1. 1.Dihydrotestosterone: Biochemistry, Physiology, and Clinical Implications of Elevated Blood Levels(Endocrine Reviews・2017)全文(PMC6459338)で確認した。LC-MS/MSで測定した健常成人男性の血清DHT基準値として、18〜59歳で14〜77 ng/dL(0.47〜2.65 nmol/L)、65歳未満の地域住民で23〜102 ng/dL、71〜87歳の高齢男性で14〜92 ng/dLという複数のコホートの報告があること、RIA・ELISAなどの免疫測定法はDHTに対する抗体の特異性不足とテストステロンとの交差反応により、LC-MS/MSと比較して最大25〜40%高い値を示しうること、循環血中DHT濃度は組織内アンドロゲン作用からほぼ独立しており、前立腺組織内DHT濃度は循環血中濃度の6〜10倍に達するが血中DHTが上昇しても組織内濃度は必ずしも同じ比率で変動しないこと、ある男性避妊試験のデータでは、テストステロンゲルにデュタステリドを併用すると前立腺組織内DHTがテストステロン製剤単独時と比べて約90%(intraprostatic DHT 6.0→0.7 ng/g)減少した一方、血清DHTの低下幅はそれより小さく(180→50 ng/dL、約72%減少でプラセボ群相当の値まで低下)、血清値と組織内濃度で抑制の大きさが異なることを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Biochemistry, Dihydrotestosterone(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)2023年7月30日改訂版を確認した。5α還元酵素に3つのアイソザイム(1・2・3型)があり2型が標的組織(前立腺・外性器・毛包)に主に発現しテストステロンからDHTへの変換を担うこと、DHTがテストステロンよりアンドロゲン受容体への結合親和性が約2倍高く解離速度が約5倍遅いためより強力に作用すること、5α還元酵素欠損症の診断にテストステロン/DHT比の上昇が有用でhCG負荷により軸を刺激して検査すること、前立腺肥大症・男性型脱毛症の治療標的としてフィナステリド・デュタステリドなどの5α還元酵素阻害薬が用いられることを確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.5-Alpha-Reductase Deficiency(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)既存id・claimを再利用(diseases/5-alpha-reductase-deficiency.mdの出典と同一)。2026年1月10日改訂版を確認した。診断の古典的指標がテストステロン/DHT比の上昇(目安10〜20以上)だがこの比が正常域でも診断を除外できないこと、確定診断にはSRD5A2の両アレルの病的variant同定が必要であることを確認した。閲覧 2026-09-07
  4. 4.Diagnosis of 5α–reductase 2 deficiency: is measurement of dihydrotestosterone essential?(International Journal of Pediatric Endocrinology・2013)既存id・claimを再利用(diseases/5-alpha-reductase-deficiency.mdの出典と同一)。全文(PMC3892203)で確認した。5α還元酵素2型欠損症の生化学的診断の古典的指標が基礎時および/またはhCG負荷後のテストステロン/DHT比の上昇であること、著者らが「DHT値の測定はこの疾患の診断に必須ではなく、この検査の役割はこれまで過大評価されてきた」と結論していること、自施設の12例では遺伝子変異解析でいずれも2つの変異が同定され確定診断に至ったこと、既報143例の文献レビューでも95%で2つの変異が同定されていたことを確認した。閲覧 2026-09-07