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血清テストステロン

Serum testosterone

別名
テストステロン
臓器系
内分泌・代謝生殖・産婦人科
科目
Obstetrics and Gynecology (Gynecology)Internal Medicine
トピック
婦人科学 37:男性化と多毛症内科学 E-08:性腺機能異常
関連疾患
5α還元酵素欠損症Sertoli-Leydig細胞腫アンドロゲン産生腫瘍妊娠黄体腫乏精子症卵巣過剰莢膜症莢膜細胞腫

🧠 全体像:血清テストステロンは、男性では「性腺機能が保たれているか」、女性では「アンドロゲン産生源に異常がないか」を映す指標だが、測り方を誤ると解釈そのものが崩れるという共通の弱点を持つ。・食事の影響を受けるため早朝空腹時に測定し、境界域やの異常が疑われる状況では総テストステロンだけで判断しない——この2点が測定値を読む前提になる。

何を測っているか

血清テストステロンは、男性では主に精巣の、女性では卵巣(間質・)と副腎皮質から分泌される主要な男性ホルモンの血中濃度である。血中では大部分がSHBG()とアルブミンに結合し、生物学的に作用するのは結合していない遊離型と分(バイオアベイラブルテストステロン)である。

⭐ 総テストステロンには結合型と遊離型がまとめて含まれるため、SHBG濃度が変化する病態では総テストステロン単独の解釈が誤りうる。 肥満・2型糖尿病・ステロイド使用などSHBGを変動させる病態を伴う患者では、総テストステロンが正常範囲でもが異常なことがある1。

基準値と単位

  • 早朝空腹時の総テストステロンを測定する。標準化プログラムに基づく健康な非肥満若年男性の下限値は264 ng/dL(9.2 nmol/L)で、200〜400 ng/dLは判定が難しい境界域とされる1。
  • 女性ではが男性よりはるかに低く、高アンドロゲン症の評価では5 nmol/L超でによる確認と卵巣・副腎の画像検索を含むさらなる精査を行う2。結果は年齢別および閉経前後で区分した、エビデンスに基づくに照らして解釈する。臨床像と噛み合わない値も、そのままで確認する2。
  • ⚠️ 単位換算に注意する。 ng/dLとnmol/Lが混在して使われ、1 nmol/L ≒ 28.8 ng/dLで換算する。文献・検査室ごとにどちらの単位を使っているか確認する。

高値の意味

女性でこの検査を出す入口——多毛・痤瘡・女性型脱毛・男性化

⭐ 英国内分泌学会2025年指針は、高アンドロゲン症のや疑いをもって受診した女性では、・・女性型脱毛(FPHL)・男性化の4つを評価すべきとしており、血清テストステロンの測定はその生化学的評価の第一段階である2。だけが入口ではない点に注意する。

⭐ は、それ単独でもこの検査の入口になりうる。 同指針は「は他の高アンドロゲン症の所見を欠いて生じうる一方で、のある女性の50%超でアンドロゲン高値が同定される」という報告を引いている(同指針自身の結果ではなく引用文献の値である)2。

⚠️ ただし「単独」の予測力については、文書によって書き方が違う。 2023年の国際PCOSガイドラインは、単独は生化学的とPCOSを予測する所見とみなすべきとする一方(推奨1.3.1)、女性型脱毛とが単独で(を伴わずに)ある場合は生化学的の予測因子としては相対的に弱いと認識してよいとしている(推奨1.3.2。いずれも賛成の条件付き推奨、エビデンスの質は非常に低い)3。同ガイドラインも診察そのものはを含めて行うべきとしている(推奨1.3.3。合意推奨・強い推奨)ので、「でも診察・はする、ただしだけを根拠にを強く見込まない」が両文書の重なる線である。

の出方 同指針の記述 テストステロン測定の位置づけ
思春期の治療抵抗性 高アンドロゲン症を示唆することが多い 標準治療で改善しないことを高アンドロゲン症の手掛かりとして扱う
成人まで持続する・成人発症の・思春期に一度軽快してした いずれもアンドロゲン関連のとしてありうる出方である 発症時期だけでを除外しない
閉経後の まれである。重症な所見を伴う場合は速やかにアンドロゲン値を評価する ⚠️ 閉経後はの使用も必ず除外する

⚠️ この指針が扱っているのは「高アンドロゲン症として受診・精査される女性」である。 そのものの診療(・・などの選択)を規定する文書ではないので、の一般診療における内分泌検査の適応は側の指針とあわせて判断する(→)。副腎由来か卵巣由来かの判別にはDHEA-Sを併せて測る。

⭐ 女性における高値の解釈は、上昇の程度と進行の速さで枝分かれする。 PMOSでは軽度〜中等度の上昇が緩徐な経過で生じるのに対し、は著明な高値(目安5 nmol/L超、10 nmol/L超はより腫瘍を示唆)を示す点で対照的である。ただし進行速度は腫瘍の種類によって異なり、は通常3〜6か月という急速な経過をとる一方、卵巣のの進行速度は一定しない(男性化所見は卵巣の50%にみられる)2。でも10 nmol/Lを超えることがあり、この閾値は確率を傾けるだけで鑑別を確定しない。⚠️ 10 nmol/L超が比較しているのは卵巣とであって、PMOSとの対比ではない(PMOSは典型的には5 nmol/L未満の軽度〜中等度上昇)2。

低値の意味

男性における低値は、原発性(精巣性)と中枢性(視床下部・下垂体性)に分けて考える。LH・FSHが高値であれば原発性(等)、低値〜正常であれば中枢性(下垂体・視床下部疾患)を示唆する。⭐ 単回の低値だけでと診断しない——症状・徴候に加え、別の朝に測定した2回の低値がそろって初めて診断する1。

⚠️ 測定上の注意

  • が大きい。 テストステロンは早朝に最も高く、日中にかけて低下すると日差変動の両方を示す。必ず早朝空腹時に測定する1。
  • 食事・グルコース負荷で一過性に抑制される。 採血前の食事は避ける。
  • 測定法によって精度が異なる。 法はより特異度・感度・精度が高く、とくに女性・小児など低濃度域ではでの確認が望ましい12。
  • ⚠️ 直接アナログ法によるは精度が低く、使用すべきでない。 が必要な場合は平衡透析法、またはアルブミン・SHBG値を用いた計算式による推定を用いる1。
  • 境界域(200〜400 ng/dL)やSHBGを変動させる病態(肥満・糖尿病・ステロイド使用等)では、総テストステロンだけで判定せずを併せて評価する1。女性でも、臨床的にがありながら総テストステロンが正常な場合はとくに、の指標で評価する2。
  • ⚠️ を服用中は値が読めない。 ゴナドトロピン刺激の低下とSHBGの上昇で循環中の性ステロイドが下がるうえ、大半のテストステロンは配合(例:)としてテストステロンを過大評価しうる。生化学的検査の前に少なくとも3か月は中止することが推奨されている2。
  • ⚠️ (FAI=テストステロン/SHBG比)は、SHBGが低いと使えない。 SHBG 30 nmol/L未満ではFAIの精度が落ち、遊離アンドロゲンを過大評価しうるため、SHBG低値での孤立したFAI高値だけを根拠に生化学的と判定しない2。
  • 女性の採血は朝8〜10時、一晩絶食で行い、可能なら早期に採る(周期が乱れている・無い場合は現実的でないことが多い)。💡 による変動は、で測る限り有意ではないと2025年指針が述べている——「従来の定説に反し」と明記されている。一方ではのほうが有意に高い2。

経時変化とモニタリング

診断確定後の治療効果判定・補充療法のモニタリングでは、同じ早朝空腹時という条件をそろえてに測定し、単回値の変動に振り回されない。など腫瘍性疾患の治療後は、テストステロン値の低下を治療の指標として追跡し、治療後も低下しない、あるいは一旦低下した値がする場合は腫瘍の遺残・再発を疑う手がかりになる。

まとめ

  • 血清テストステロンは、男性では精巣、女性では卵巣・副腎に由来する主要な男性ホルモンの血中濃度で、SHBG結合型と遊離型からなる。
  • 健康な若年男性の下限値は264 ng/dL(9.2 nmol/L)、200〜400 ng/dLは判定境界域。女性の高アンドロゲン症評価では5 nmol/L超が男性化との関連の目安になる。
  • 女性でのはを、緩徐な軽度上昇はPMOSを示唆するが、進行速度は腫瘍の種類(は急速、卵巣は一定しない)で異なり、閾値も確率を傾けるだけで鑑別を確定しない。
  • 女性でこの検査を出す入口はだけでなく、・女性型脱毛・男性化を含む4所見である。治療抵抗性・成人発症・閉経後の重症なは、それ単独でもアンドロゲン評価の対象になる。
  • 必ず早朝空腹時(女性では朝8〜10時・一晩絶食、可能なら早期)に測定し、境界域やSHBG変動病態では総テストステロンだけで判断せずを確認する。は検査の3か月前から中止する。
  • 法が望ましく、直接アナログ法の免疫測定は精度が低く用いない。

出典

  1. 1.Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism)・2018)男性の性腺機能低下症の診断を症状・徴候に加え「一貫して低い」総テストステロン濃度の確認に限ること、初回検査を早朝空腹時の総テストステロン濃度測定とし正確で信頼できるアッセイを用いること、テストステロン濃度が日内変動・日差変動を示し食事・グルコース負荷で抑制されうるため別の朝に2回測定して確認すること、CDC標準化プログラムに基づく健康な非肥満若年男性の総テストステロン下限値が264 ng/dL(9.2 nmol/L)であり200〜400 ng/dLが判定の境界域とされること、LC-MS/MS法が高い特異度・感度・精度を持つためCDC Hormone Standardization Program認証アッセイの使用が望ましいこと、総テストステロンが正常下限付近またはSHBG濃度を変化させる病態(肥満・糖尿病・ステロイド使用等)がある場合は平衡透析法による遊離テストステロン測定、またはアルブミン・SHBGを用いた計算式による推定を行うべきこと、直接アナログ法による遊離テストステロン免疫測定法は精度が低く使用を推奨しないことを確認した。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Society for Endocrinology Clinical Practice Guideline for the Evaluation of Androgen Excess in Women(Society for Endocrinology・2025)PMC12413683の全文XMLで次を逐語確認した。①Table 3 推奨1「Women presenting with clinical features or suspicion of androgen excess should be assessed for hirsutism, acne, female pattern hair-loss and virilisation.」——入口は多毛症だけではない。②5.1.1 Acne「Treatment-resistant acne is often indicative of hyperandrogenism in puberty. Androgen-related acne may continue into adulthood (persistent acne), may occur for the first time in adulthood (adult-onset acne) or may re-present after resolution in adolescence (recidivant acne). Postmenopausal acne is uncommon, and where severe features of this occur, a prompt assessment of androgen levels should be undertaken」「Whilst it may occur in the absence of other features of androgen excess, elevated androgen levels are identified in over 50% of women with acne [123]」——⚠️ 50%超は文献123の値であって同指針自身の結果ではない。5.1.2 は「up to 30% of adult women with acne also have hirsutism」。③6.2 推奨「Exclude the use of exogenous testosterone, for example, in postmenopausal women.」「All results should be interpreted against evidence-based reference ranges. These should be categorised as either age-specific and/or pre- and post-menopausal.」「A diagnosis of biochemical hyperandrogenism should be evaluated with an index of free testosterone, particularly if total testosterone is normal in a patient with clinical androgen excess」「Testosterone concentrations > 5 nmol/L warrant further investigation including validation with LC-MS/MS and follow-up with ovarian and/or adrenal imaging as appropriate. Testosterone concentrations that do not otherwise align with the clinical picture should be validated with LC-MS/MS.」。④6.1「Contrary to previous dogma, serum testosterone levels do not appear to fluctuate significantly during the menstrual cycle when measured by LC-MS/MS methods」「Conversely, luteal phase A4 levels appear to be significantly higher than those measured in the follicular phase.」「where possible specimens should be collected during the follicular phase at 8:00-10:00 h following an overnight fast」「Most testosterone immunoassay methods are also prone to cross-reactivity with progestogenic components of the combined pill (e.g., norethisterone) that could over-estimate testosterone concentrations」、推奨「It is recommended that the COCP is stopped for a period of 3 months before undertaking biochemical investigations.」。⑤6.3.2「at low SHBG concentrations (< 30 nmol/L) the FAI becomes less accurate and may overestimate free androgens」。⑥Table 1 は卵巣男性化腫瘍を「Virilisation present in 50% / onset Variable / Increased serum T usually > 5 nmol/L / T > 10 nmol/L more likely VOT than OHT」、卵巣過剰莢膜症を「sometimes > 10 nmol/L」、PMOSを「typically < 5 nmol/L」、副腎皮質癌を「Usually rapid (3-6 months)」とする——⚠️ 10 nmol/L の対比相手は卵巣過剰莢膜症(OHT)であってPMOSではない。閲覧 2026-09-13
  3. 3.Recommendations From the 2023 International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism・2023)PMC10505534の全文で次を逐語確認した。推奨1.3.1 EBR ❖❖❖ ⊕◯◯◯「The presence of hirsutism alone should be considered predictive of biochemical hyperandrogenism and PCOS in adults.」、推奨1.3.2 EBR ❖❖❖ ⊕◯◯◯「Healthcare professionals could recognize that female pattern hair loss and acne in isolation (without hirsutism) are relatively weak predictors of biochemical hyperandrogenism.」、推奨1.3.3 CR ❖❖❖❖「A comprehensive history and physical examination should be completed for symptoms and signs of clinical hyperandrogenism, including acne, female pattern hair loss and hirsutism in adults, and severe acne and hirsutism in adolescents.」。凡例(Table 1・Table 3)は EBR=エビデンスに基づく推奨、CR=合意推奨、PP=実施上の注意、❖❖❖=賛成の条件付き推奨、❖❖❖❖=強い推奨である。⚠️ 1.3.2 の「相対的に弱い予測因子」は、痤瘡が**単独で(多毛症を伴わずに)**現れた場合についての記述である閲覧 2026-09-13