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Lab values · Published

卵胞刺激ホルモン

Follicle-stimulating hormone

別名
FSH
臓器系
内分泌・代謝生殖・産婦人科
科目
Internal MedicineObstetrics and Gynecology (Gynecology)
トピック
内科学 E-08:性腺機能異常婦人科 02:続発性無月経婦人科 07:不妊症の検査と治療
関連疾患
機能性視床下部性無月経更年期症状脆弱X関連早発卵巣機能不全男性性腺機能低下症乏精子症卵巣炎

🧠 全体像:はから出る「への指令」である。値そのものより、性ステロイドが低いのにが上がっているかを読むと、障害が性腺側か視床下部・下垂体側かを局在できる。では高値は特異的だが遅れて現れやすく、この用途の主役はすでに周期変動の小さいへ移っている。一方、POIの診断ではが今も軸である。

何を測っているか

はのゴナドトロピン産生細胞から分泌される糖蛋白ホルモンで、視床下部からの拍動により調節される。

対象 主な作用 主な負のフィードバック
卵巣 を刺激し、とエストラジオール産生を支える エストラジオール、
精巣 を刺激し、精子形成を支える
flowchart TD
    A["視床下部<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='gonadotropin-releasing hormone'>GnRH</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulsatile'>拍動性</span>に分泌"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior pituitary'>下垂体前葉</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>を分泌"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ovarian granulosa cell'>卵巣顆粒膜細胞</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicular development'>卵胞発育</span>・エストラジオール"]
    B --> D["精巣<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sertoli cells'>セルトリ細胞</span><br>精子形成・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhibin B'>インヒビンB</span>"]
    C --> E["性腺から負のフィードバック"]
    D --> E
    E --> B

性腺機能が落ちると負のフィードバックが弱まり、下垂体はを増やす。反対に視床下部・下垂体からの刺激自体が不足すれば、性ステロイドが低くてもは低値またはにとどまる。

検体と基準範囲

血清をで測り、通常はIU/LまたはmIU/mLで報告する。は性別、年齢、思春期段階、、妊娠・閉経、測定系で大きく変わるため、単一の正常値は置かず検査室の区分を用いる。

女性の評価では、基礎を月経2〜4日目に測り、エストラジオールと組み合わせて読む1。一方、POIを診断するためのはの特定日に限定されない2。同じ測定でも目的によって採血時期が違う。

⭐ の指標としての基礎は、すでに一線を退いている。 現行の委員会見解は、のほうが感度が高くが上がるより先に低下することを理由に、のとしてはが基礎・エストラジオール測定にほぼ取って代わったと述べ、基礎とエストラジオールはが極めて低い場合に追加情報を与えうる検査として位置づけている1。

高値の意味

状況 解釈 次に確認すること
女性でエストラジオール低値 、自然閉経、・化学療法後など、卵巣側の反応低下 年齢、月経歴、妊娠、薬剤。医原性でないPOIなら全例でとFMR1検査
男性でテストステロン低値、LH・高値 原発性精巣障害 、、、抗腫瘍治療歴など
男性でテストステロン正常でも高値 ・・精子形成の選択的障害を示唆 、、、Y染色体など

40歳未満で4か月以上のまたは無月経があり、FSHが25 IU/Lを超えると(POI)のを満たす。診断が不確実な場合は4〜6週後に再検する2。

⭐ 再検は「不確実なときだけ」に変わった。 2024年版ガイドラインは、前の2015/2016年版からの重要な変更として25 IU/Lを超えるが1回あれば診断に足りることを挙げている。初回値が判定に迷う値だったり臨床像と合わなかったりする場合に限って、4〜6週後の再検や測定を行う2。

診断にあたっては次の点も同じガイドラインが明記している2。

  • 無月経で受診した女性では、まず妊娠を除外する。
  • (経口・注射・長時間作用型の避妊薬を含む)は無月経・を覆い隠したり自ら引き起こしたりし、を下げうる。などは診断を確定する前に中止が必要なことがある。
  • 40歳未満でを受けた女性はそれだけでPOIと診断され、追加の検査は不要である。
  • エストラジオールはそのものではない。ただし低値はを示し、高値と合わせてPOIの診断を補強する。
  • を一次に使わない。の結果が判定に迷うときの確認には有用でありうるが、POIを予測する目的での測定は精度の根拠が不十分なためには行わない。

POIと診断がついたら、医原性でない全例にとFMR1検査を行う(いずれも強い推奨)。⚠️ FMR1は専用の検査でしか検出できず、や次世代シークエンサーでは拾えない2。

低値または不適切正常の意味

状況 解釈 次に確認すること
女性でエストラジオール低値 または下垂体性の 体重減少、、慢性疾患()、プロラクチン、他の、必要時
男性でテストステロン低値 中枢性 LH、プロラクチン、鉄飽和度、薬剤、必要時
体質性遅発か先天性欠乏かを単回値だけでは区別しにくい 、、嗅覚、家族歴、必要に応じ専門的
ホルモン薬使用中 による軸の抑制 製剤・最終投与時期を確認し、必要なら安全に後再評価

⭐ 「正常範囲内」は必ずしも正常反応ではない。 性ステロイドが明らかに低いのにが上昇していなければ、その値は生理的には不適切に低く、中枢性障害を疑う。

卵巣予備能でのAMHとの使い分け

観点
何を反映するか 卵巣からの負のフィードバック低下に対する下垂体反応 発育中卵胞の量
採血時期 基礎値は月経2〜4日目 の影響が比較的小さく随時測定しやすい
早期の低下 高値は特異的だが感度が低い 上昇より先に低下しやすい
主な弱点 周期間・周期内変動、エストラジオールによる見かけ上の正常化 測定系差、ホルモン避妊による低下、妊孕性そのものは予測しない

早期に上昇したエストラジオールは、本来上がるはずのを正常範囲へ押し下げうる。このため基礎はエストラジオールと組み合わせて読む。💡 エストラジオール単独をの低下のスクリーニングに使ってはならない。 この検査の意味は「基礎が正常だった」ときの読み直しにあり、基礎が正常なのにエストラジオールが60〜80 pg/mLを超えているなら、低下による卵巣機能異常を示唆する1。

⚠️ の指標は、不妊のない女性の「妊娠できるかどうかの検査」ではない。 委員会見解は、低下があっても妊娠できないことを意味せず、不妊でない女性・妊孕性が試されていない女性にマーカーを妊孕性検査として用いるべきではないとし、したがって計画的な凍結を勧める根拠にも使わないと述べている。凍結の判断は本人の妊娠計画と年齢に基づくべきで、年齢のほうがよりはるかに強い予測因子である1。はより感度が高く扱いやすいが、どちらも単独で自然妊娠の可否やの質を判定する検査ではない1。

⚠️ 測定・判読上の注意

  • 単回の基礎でを断定しない。 周期間・周期内変動が大きく、正常値でも軽い低下を除外できない。
  • 、閉経、妊娠、ホルモン薬を確認する。 とくにはを下げ、POIを隠しうる2。
  • エストラジオールまたはテストステロンと対で読む。 単独では「適切な反応か」を判断できない。
  • /比でを確定しない。 値は変動し、そのものではない。
  • を確認する。 一部の免疫測定では・を生じうるため、可能性と採血時期を検査室の指示に合わせる3。

評価の進め方

flowchart TD
    A["無月経・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypogonadism'>性腺機能低下</span>を疑う"] --> B["妊娠・薬剤・年齢を確認"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luteinizing hormone'>LH</span>と性ステロイドを同時評価"]
    C --> D{"性ステロイド低値時の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>"}
    D -->|"高値"| E["原発性性腺障害を評価"]
    D -->|"低値・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inappropriately normal'>不適切正常</span>"| F["視床下部・下垂体を評価"]
    E --> G["女性はPOI原因検索<br>男性は精巣・精子形成を評価"]
    F --> H["プロラクチン・他の下垂体機能<br>栄養・運動・薬剤・必要時<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>"]

まとめ

  • はと精巣を刺激し、性腺からの負のフィードバックで調節される。
  • 性ステロイド低値に対して高値なら原発性性腺障害、低値・なら視床下部・下垂体性を考える。
  • POIは40歳未満、4か月以上の、 >25 IU/Lで診断する。現行版では1回の高値で足り、判定に迷うときだけ4〜6週後に再検する。後は検査なしで診断が付く。
  • では基礎を月経2〜4日目に測りエストラジオールと合わせて読むが、現行の委員会見解ではがこの役割をほぼ引き継いでいる。基礎とエストラジオールはが極めて低いときの追加情報という位置づけである。
  • ⚠️ マーカーは、不妊でない女性の妊孕性検査ではない。凍結を勧める根拠にも使わない。年齢のほうがはるかに強い予測因子である。
  • 単回値、/比、ホルモン薬使用中の値を過大解釈せず、年齢・周期・性ステロイド・臨床像と統合する。

出典

  1. 1.Testing and interpreting measures of ovarian reserve: a committee opinion(Fertility and Sterility(American Society for Reproductive Medicine診療委員会)・2020)ASRM公式サイトの本文全文で確認した。基礎FSHは月経2・3・4日目に上昇すること、高値は卵巣予備能低下に対し特異的だが感度が低く周期間・周期内変動のため単回測定の信頼性が限られること、エストラジオール単独をスクリーニングに用いず基礎FSHが正常のときの読み直しに使うこと、早期のエストラジオール上昇が本来高いはずのFSHを正常域へ下げること、基礎FSHが正常でエストラジオールが60〜80 pg/mLを超える場合は卵巣予備能低下による卵巣機能異常を示唆すること、AMHがFSHより感度が高くFSH上昇に先行して低下するためAMHが卵巣予備能のバイオマーカーとして基礎FSH・エストラジオール測定にほぼ取って代わり基礎FSHとエストラジオールはAMHが極めて低い場合の追加情報という位置づけであること、卵巣予備能マーカーを不妊でない女性や妊孕性が試されていない女性の妊孕性検査として用いるべきでなく計画的卵子凍結を勧める根拠にもしないこと、年齢のほうが卵巣予備能より強い予測因子であることを確認した。2026-09-08時点でASRMの診療委員会文書一覧に本2020年版が掲載されており、後継版は認められなかった。閲覧 2026-09-08
  2. 2.Evidence-based guideline: premature ovarian insufficiency(ESHRE, ASRM, CREWHIRL, and IMS Guideline Group on POI・2024)PMC11631070の全文で確認した。POIを40歳未満の卵巣機能喪失と定義し、4か月以上続く自発的無月経または月経不順とFSH 25 IU/L超をもって診断すること、2015/2016年版からの主要な変更として25 IU/L超のFSHが1回あれば診断に足り再検は診断が不確実なときに限ること、POI診断のFSHは月経周期の特定日に限らないこと、無月経では妊娠を除外すること、経口・注射・長時間作用型を含むホルモン療法が月経異常を覆い隠しFSHを低下させうるため混合型経口避妊薬などは診断確定前の中止が必要なことがあること、40歳未満で両側付属器切除を受けた女性は追加検査なしにPOIと診断されること、エストラジオールは診断基準ではないが低値はFSH高値と合わせて診断を補強すること、AMHを一次診断検査に用いず(強い推奨、エビデンスの確実性は非常に低い)FSHが判定に迷うときの確認に限ること、POIの予測目的でのAMH測定は精度の根拠が不十分なため日常的には行わないこと、医原性でないPOIの全例に染色体分析とFMR1プレミューテーション検査を推奨すること(いずれも強い推奨、エビデンスの確実性は低い)、FMR1プレミューテーションは専用検査を要し多遺伝子パネルや次世代シークエンサーでは検出できないことを確認した。閲覧 2026-08-30
  3. 3.Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism(Endocrine Society)・2018)男性性腺機能低下症ではLH・FSHを測定して原発性精巣障害と視床下部・下垂体性を区別すること、免疫測定はビオチン干渉で偽高値・偽低値を生じうることを確認した。閲覧 2026-08-30