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インヒビンB
Inhibin B
- 別名
- inhibin B
- 臓器系
- 生殖・産婦人科内分泌・代謝
- 科目
- Medical Physiology
- トピック
- 生理学 7.8:女性性内分泌学生理学 7.7:性成熟の内分泌生理・男性生殖生理
- 関連疾患
- 卵巣顆粒膜細胞腫
🧠 全体像:インヒビンB inhibin B インヒビンB(inhibin B) inhibin B(インヒビンB) は、女性では発育中の卵胞の顆粒膜細胞granulosa cell顆粒膜細胞(granulosa cell)granulosa cell(顆粒膜細胞)、男性ではセルトリ細胞Sertoli cellsセルトリ細胞(Sertoli cells)Sertoli cells(セルトリ細胞)という、AMHと同じ細胞系列から分泌されるホルモンである。どちらの性でも「今どれだけ機能する生殖細胞系の組織があるか」を映す点はAMHAMH(anti-Müllerian hormone)と共通するが、インヒビンBinhibin B インヒビンB(inhibin B)inhibin B(インヒビンB) は古くから使われてきた指標であり、卵巣予備能ovarian reserve 卵巣予備能(ovarian reserve)ovarian reserve(卵巣予備能) の評価では感度・安定性に勝るAMHへ主役を譲りつつある一方、男性不妊male infertility 男性不妊(male infertility)male infertility(男性不妊) の精子形成マーカーとしては今もなお中心的な位置を占める。
何を測っているか
インヒビンBinhibin B インヒビンB(inhibin B)inhibin B(インヒビンB) はインヒビン inhibinインヒビン(inhibin) inhibin(インヒビン)・アクチビンactivin アクチビン(activin)activin(アクチビン) ファミリーに属する糖蛋白ホルモンで、α鎖alpha chain α鎖(alpha chain)alpha chain(α鎖) とβB鎖からなる二量体である。
- 女性では発育過程にある卵胞の顆粒膜細胞 granulosa cell 顆粒膜細胞(granulosa cell) granulosa cell(顆粒膜細胞) が産生する。
- 男性では精巣のセルトリ細胞 Sertoli cells セルトリ細胞(Sertoli cells) Sertoli cells(セルトリ細胞) が産生する1。
いずれの性でも、下垂体前葉anterior pituitary 下垂体前葉(anterior pituitary)anterior pituitary(下垂体前葉) からのFSH分泌に対して負のフィードバックをかける。インヒビンBinhibin B インヒビンB(inhibin B)inhibin B(インヒビンB) は下垂体のゴナドトロピン産生細胞に作用してFSHFSH(follicle-stimulating hormone)分泌を抑制する糖蛋白ホルモンである1。
flowchart TD
A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior pituitary'>下垂体前葉</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>を分泌"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ovarian granulosa cell'>卵巣顆粒膜細胞</span><br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sertoli cells'>セルトリ細胞</span>"]
B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhibin B'>インヒビンB</span>産生"]
C --> D["下垂体へ負のフィードバック"]
D --> A
基準値と単位
pg/mLで報告されることが多いが、測定系・検査室によって基準範囲 reference range 基準範囲(reference range) reference range(基準範囲) が異なる。年齢・性周期・思春期段階によっても値は変動するため、単一の正常値を置かず検査室の基準範囲 reference range 基準範囲(reference range) reference range(基準範囲) を用いる。
用途1:男性不妊での精子形成マーカー
インヒビンBinhibin B インヒビンB(inhibin B)inhibin B(インヒビンB) は機能するセルトリ細胞 Sertoli cells セルトリ細胞(Sertoli cells) Sertoli cells(セルトリ細胞) の量を反映するため、精子形成そのものの間接マーカーとして使われる。無精子症azoospermia 無精子症(azoospermia)azoospermia(無精子症) の評価では、FSHとインヒビンB inhibin B インヒビンB(inhibin B) inhibin B(インヒビンB) を組み合わせることで、侵襲的な診断的精巣生検の適応をある程度絞り込める。
41例の無精子症 azoospermia 無精子症(azoospermia) azoospermia(無精子症) 患者を対象にした横断研究 cross-sectional study 横断研究(cross-sectional study) cross-sectional study(横断研究) では、生検で精子が確認できた症例は全例でインヒビンB inhibin BインヒビンB(inhibin B) inhibin B(インヒビンB) 100 pg/mL超かつFSHが正常上限 upper limit of normal (ULN) 正常上限(upper limit of normal (ULN)) upper limit of normal (ULN)(正常上限) の2倍未満であった一方、インヒビンBinhibin BインヒビンB(inhibin B)inhibin B(インヒビンB) 100 pg/mL未満の症例の多くは精巣線維化またはセルトリ細胞 Sertoli cells セルトリ細胞(Sertoli cells) Sertoli cells(セルトリ細胞) のみパターンを示した。著者らは、FSHが正常上限 upper limit of normal (ULN) 正常上限(upper limit of normal (ULN)) upper limit of normal (ULN)(正常上限) の2倍未満であればインヒビンB inhibin B インヒビンB(inhibin B) inhibin B(インヒビンB) を測定し、100 pg/mL未満であれば不必要な診断的精巣生検のおよそ半数を回避しうると述べている1。
⚠️ この検査だけで生検の要否を確定できるわけではない。 同じ研究の著者らは、閉塞性無精子症 azoospermia 無精子症(azoospermia) azoospermia(無精子症) と不完全な精子形成成熟停止 maturation arrest 成熟停止(maturation arrest) maturation arrest(成熟停止) の鑑別が十分にはできず、インヒビンBinhibin B インヒビンB(inhibin B)inhibin B(インヒビンB) とFSHの組み合わせでも生検の結果を正確には予測できないという限界を明記している1。触知できない性腺の評価においては、思春期前の精巣組織の存在を示す直接的マーカーとしてAMHとともに第一選択に位置づけられる2。
用途2:女性の卵巣予備能マーカー
女性では、発育中卵胞の顆粒膜細胞 granulosa cell 顆粒膜細胞(granulosa cell) granulosa cell(顆粒膜細胞) 量を反映する指標として、FSH・AMHとともに卵巣予備能 ovarian reserve 卵巣予備能(ovarian reserve) ovarian reserve(卵巣予備能) 評価の一角を占めてきた。⭐ ただし現在この役割の主役はAMHへ移っている。 AMHは月経周期 menstrual cycle 月経周期(menstrual cycle) menstrual cycle(月経周期) を通じて比較的安定して測定できるのに対し、インヒビンBinhibin B インヒビンB(inhibin B)inhibin B(インヒビンB) は周期内変動が大きく単独での評価には限界がある。触知できない性腺の評価などAMHと組み合わせて使う場面が中心になっている2。
用途3:卵巣顆粒膜細胞腫のモニタリングマーカー
卵巣の成人型顆粒膜細胞腫 granulosa cell tumor 顆粒膜細胞腫(granulosa cell tumor) granulosa cell tumor(顆粒膜細胞腫) は顆粒膜細胞 granulosa cell 顆粒膜細胞(granulosa cell) granulosa cell(顆粒膜細胞) 由来の腫瘍であり、インヒビンBinhibin B インヒビンB(inhibin B)inhibin B(インヒビンB) を含むインヒビン inhibin インヒビン(inhibin) inhibin(インヒビン) 産生を特徴とすることが多い。123例・追跡血清560検体を用いた縦断的コホート研究 cohort study コホート研究(cohort study) cohort study(コホート研究) では、AMHが原発・再発の顆粒膜細胞腫 granulosa cell tumor 顆粒膜細胞腫(granulosa cell tumor) granulosa cell tumor(顆粒膜細胞腫) で有意に上昇し腫瘍径と正相関し(ROCROC(receiver operating characteristic)解析でAUCAUC(area under the curve) 0.92、肉眼的病変の検出感度92%・特異度81%)、インヒビンBinhibin B インヒビンB(inhibin B)inhibin B(インヒビンB) と組み合わせることで再発検出能がさらに向上したと報告されている3。単独マーカーとしてよりも、AMHと併用して経過観察の感度を高める位置づけである。
⚠️ 測定・判読上の注意
- 単独の閾値で診断を確定しない。 男性不妊male infertility 男性不妊(male infertility)male infertility(男性不妊) の生検要否の目安、女性の卵巣予備能 ovarian reserve卵巣予備能(ovarian reserve) ovarian reserve(卵巣予備能)、腫瘍マーカーtumor markers 腫瘍マーカー(tumor markers)tumor markers(腫瘍マーカー) のいずれの用途でも、他の検査(FSH・AMH・画像・臨床像)と組み合わせて解釈する。
- 周期内変動を考慮する。 女性でのインヒビンB inhibin B インヒビンB(inhibin B) inhibin B(インヒビンB) 測定は月経周期 menstrual cycle 月経周期(menstrual cycle) menstrual cycle(月経周期) の影響を受けやすく、AMHほど安定していない。
- 測定系間の互換性に注意する。 検査室・アッセイが変わると基準範囲 reference range 基準範囲(reference range) reference range(基準範囲) や閾値(100 pg/mLなど特定の研究で報告された値を含む)をそのまま流用できない可能性がある。
経時変化とモニタリング
- 男性不妊male infertility 男性不妊(male infertility)male infertility(男性不妊) の評価では、単回のインヒビンB inhibin BインヒビンB(inhibin B) inhibin B(インヒビンB)・FSH測定で生検適応の絞り込みに用いるが、確定診断には生検所見を要する1。
- 卵巣顆粒膜細胞ovarian granulosa cell 卵巣顆粒膜細胞(ovarian granulosa cell)ovarian granulosa cell(卵巣顆粒膜細胞) 腫の経過観察では、治療後のインヒビンB inhibin B インヒビンB(inhibin B) inhibin B(インヒビンB) 推移そのものが再発監視に意味を持ち、AMHと組み合わせることで検出感度が高まる3。
まとめ
- インヒビンBinhibin B インヒビンB(inhibin B)inhibin B(インヒビンB) は女性では顆粒膜細胞 granulosa cell顆粒膜細胞(granulosa cell) granulosa cell(顆粒膜細胞)、男性ではセルトリ細胞 Sertoli cells セルトリ細胞(Sertoli cells) Sertoli cells(セルトリ細胞) が産生し、下垂体のFSH分泌に負のフィードバックをかける。
- 男性不妊male infertility 男性不妊(male infertility)male infertility(男性不妊) では精子形成の間接マーカーとして、FSHと組み合わせて診断的精巣生検の適応を絞り込む目的で使われるが、単独で生検の要否を確定できるものではない。
- 女性の卵巣予備能 ovarian reserve 卵巣予備能(ovarian reserve) ovarian reserve(卵巣予備能) マーカーとしての役割は、より安定して測定できるAMHへ主役を譲りつつある。
- ⭐ 卵巣顆粒膜細胞ovarian granulosa cell 卵巣顆粒膜細胞(ovarian granulosa cell)ovarian granulosa cell(卵巣顆粒膜細胞) 腫のモニタリングでは、AMHと組み合わせることで再発検出能が向上する。
- ⚠️ いずれの用途でも単独の閾値で確定診断とせず、他の検査・臨床像と統合して解釈する。
出典
- 1.Does inhibin-B help us to confidently refuse diagnostic testicular biopsy in azoospermia?(Iranian Journal of Reproductive Medicine(Moradi M, Alemi M, Moradi A, Izadi B, Parhodah F, Torkaman Asadi F)・2012)PMC4165968の本文で確認した。インヒビンBがセルトリ細胞から分泌され下垂体のゴナドトロピン産生細胞に対しFSH分泌を抑制する糖蛋白ホルモンであること、41例の無精子症患者を対象に血清FSH・インヒビンBと両側精巣生検所見を対比した横断研究で、生検上精子が確認できた症例(29%)は全例でインヒビンB 100 pg/mL超かつFSHが正常上限の2倍未満であったこと(p=0.001)、インヒビンB 100 pg/mL未満の症例の多くが精巣線維化またはセルトリ細胞のみパターンを示したこと、FSHが正常上限の2倍未満であればインヒビンBを測定し100 pg/mL未満なら不必要な診断的精巣生検の約半数を回避しうると著者らが述べる一方、閉塞性無精子症と不完全な精子形成成熟停止の鑑別は十分にはできず生検の結果を正確には予測できないと限界を明記していることを確認した。閲覧 2026-09-08
- 2.Anti-Müllerian hormone, testicular descent and cryptorchidism(Frontiers in Endocrinology(Rey RA, Grinspon RP)・2024)AMHタンパクの発現がセルトリ細胞の粗面小胞体とゴルジ装置に限られること、循環AMH値が機能するセルトリ細胞の量に見合い精巣機能のバイオマーカーとして有用であること、触知できない性腺の評価において思春期前の精巣組織が存在することを示す直接的なマーカー(AMH・インヒビンB)が第一選択となっていることを確認した。閲覧 2026-08-28
- 3.The clinical utility of serum anti-Müllerian hormone in the follow-up of ovarian adult-type granulosa cell tumors—A comparative study with inhibin B(International Journal of Cancer(Färkkilä A, Koskela S, Bryk S, et al.)・2015)成人型顆粒膜細胞腫患者123例・追跡血清560検体を用いた縦断的コホート研究で、血清AMHが原発・再発の顆粒膜細胞腫で有意に上昇し腫瘍径と正相関したこと、AMHのROC解析でAUC 0.92(95%信頼区間0.88〜0.95)、肉眼的病変の検出感度92%・特異度81%であったこと、インヒビンBと組み合わせることで再発検出能がさらに向上したことを確認した。閲覧 2026-08-28