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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 腫瘍

卵巣顆粒膜細胞腫

Ovarian granulosa cell tumor

別名
顆粒膜細胞腫granulosa cell tumorGCT
臓器系
生殖・産婦人科腫瘍
科目
Obstetrics and Gynecology (Gynecology)Pathology
トピック
婦人科 27:卵巣腫瘍の病期・治療・病理病理学 C/75:卵巣腫瘍
上位概念
卵巣癌
鑑別疾患
莢膜細胞腫
合併症
子宮内膜増殖症思春期早発症
治療薬
ブレオマイシンエトポシドシスプラチン
症状
無月経異常子宮出血
検査値
抗ミュラー管ホルモン(AMH)インヒビンB

🧠 全体像:は、卵巣ののうち最も一般的な悪性型である。核心は2点——①エストロゲンを産生する(・というもここから来る)こと、②悪性でありながら進行が緩徐で、治癒切除後も数年〜数十年を経て再発しうることにある。「悪性=早期に転帰が決まる」という通常の腫瘍のイメージが通用せず、生涯にわたる長期の経過観察を要する点が、姉妹病態である(大部分良性)との決定的な違いである。

病態

は、卵巣ののうち発育卵胞のに類似した細胞から成る腫瘍で、全の約5%、の約70%を占める、この群では最多の組織型である1。

⭐ 成人型と若年型の2病型に分かれ、発生する自体が異なる。

成人型 若年型
頻度 大多数 全体の約5%
好発年齢 〜閉経後(平均診断年齢50歳) 思春期前〜若年女性(平均診断年齢20歳、45.5%が)
FOXL2変異 95〜97%に陽性 約10%にとどまる
再発の時期 数年〜数十年後の遅発性再発 早期(3年以内)に再発する傾向

病理組織学的には、が萎縮した核や好酸性の液体を囲んでに配列するが約30%の症例にみられ、核に縦走する溝が入るが特徴的な所見である1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulosa cell'>顆粒膜細胞</span>に類似した<br>細胞が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transformation'>腫瘍化</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulosa cell tumor'>顆粒膜細胞腫</span>"]
    B --> C["成人型(大多数)<br>FOXL2変異 95〜97%"]
    B --> D["若年型(約5%)<br>FOXL2変異 約10%"]
    C --> E["数年〜数十年後の<br>遅発性再発"]
    D --> F["早期(3年以内)の再発"]
    B --> G["約70%が機能性<br>エストロゲンを産生"]
    G --> H["無月経・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abnormal uterine bleeding, AUB'>異常子宮出血</span>・<br>思春期<span class='jp-term jp-term-diagram' title='early'>早発</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endometrial hyperplasia'>子宮内膜増殖症</span>"]

💡 なぜ「悪性なのに緩徐」なのか。 のや核異型は、他の多くの悪性腫瘍と異なり臨床転帰と相関しない1。予後を規定するのは組織学的な悪性度ではなく、腫瘍径15 cm超・両側性・・FOXL2変異といった別の因子である1。この「悪性度の指標が転帰を予測しない」という性質こそが、通常の腫瘍学の直感が通用しない理由であり、画像・病理所見だけで安心せず長期のマーカー経過観察が必須になる根拠でもある。

臨床像

  • エストロゲン産生による症状(約70%が機能性):閉経後は、閉経前は・として現れる。持続的なエストロゲン刺激によりを25〜50%に、を5〜10%に合併する1。
  • 若年型では、の女性にエストロゲン産生による(・性器出血など偽性の像)を来す。
  • 骨盤腫瘤による・腹痛を伴うこともある。
  • ⚠️ 閉経後やを見た場合、原因検索の対象として本症を念頭に置く(も同様のエストロゲン産生性腫瘍として鑑別に挙がるが、の大部分は良性である点が異なる)。

診断

として、・が上昇し、の方が精度が高いとされる1。()は原発・で有意に上昇し腫瘍径と正相関する。解析では 0.92(95%信頼区間0.88〜0.95)、肉眼的病変の検出感度92%・特異度81%と報告されており、と組み合わせることで再発検出能がさらに向上する2。

画像検査(・)でのとして描出されるが、確定診断は摘出標本の病理組織診断による。病理では・を確認し、免疫染色で陽性を示す。にはFIGO 2014分類を用いる1。

治療

治療の中心は外科的切除であり、では手術単独で十分な例が多い1。のある若年女性で早期・片側性であれば、患側のみで妊孕性温存を図ることができる。

⭐ (FIGO II〜IV期)では術後を検討し、40歳未満には・・シスプラチン(レジメン)、40歳超には・が用いられる1。ただしI期でのが再発を予防するという根拠は無く、早期例に一律のは行わない1。

経過観察

⚠️ 遅発性再発という特徴ゆえに、長期にわたる経過観察が不可欠である。 再発は最大25%の症例に生じ、時に治癒切除から数十年を経て起こる。ひとたび再発すると致死率は約80%に達する1。この経過観察には、AMH・という非侵襲的なが、腫瘍径と相関し再発の早期発見に有用である2。

まとめ

  • はの中で最も一般的な悪性型で、全の約5%を占める。
  • ⭐ 成人型(〜閉経後、FOXL2変異95〜97%)と若年型(約5%、思春期前後、FOXL2変異約10%)に分かれ、成人型は遅発性再発、若年型は早期再発の傾向を示す。
  • 病理所見は(約30%)・。・核異型は転帰と相関せず、腫瘍径15 cm超・両側性・破裂・FOXL2変異が予後不良因子となる。
  • 約70%が機能性でエストロゲンを産生し、無月経・・・(25〜50%)・(5〜10%)の原因となる。
  • は・。は解析で 0.92と高い診断能を示し、治療後の経過観察・再発の早期発見に用いる。
  • ⚠️ 治療は手術中心。にはを検討するが、I期への一律のは根拠が無い。再発は最大25%・数十年後にも起こりうるため、生涯にわたる長期の経過観察を要する。

出典

  1. 1.Granulosa Theca Cell Tumors of the Ovary(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)顆粒膜細胞腫が全卵巣腫瘍の約5%、性索間質性腫瘍の約70%を占めること、成人型(周閉経期・閉経後に好発、平均診断年齢50歳)と若年型(全体の5%、平均診断年齢20歳で45.5%が初経前)の2型に分かれること、Call-Exner小体は約30%の症例にみられコーヒー豆様核(縦走する核溝)が特徴的な核所見であること、約70%が機能性でエストロゲンを産生し、閉経後不正出血・閉経前の過多月経を来し子宮内膜増殖症を25〜50%、子宮内膜癌を5〜10%に合併すること、インヒビンB・インヒビンAが上昇しインヒビンBの方が正確なマーカーであること、AMHが再発検出に有用であること、FOXL2変異が成人型の95〜97%に見られ若年型では約10%にとどまること、再発は最大25%で生じ数年〜数十年後の遅発性再発が特徴で再発後の致死率は約80%に及ぶこと、腫瘍径15cm超・両側性・腫瘍破裂・FOXL2ホモ接合体変異が予後不良因子であること、核分裂像・核異型は臨床転帰と相関しないこと、治療は手術単独で足りる例が多く進行期(II〜IV期)では40歳未満にブレオマイシン・エトポシド・シスプラチン、40歳超にパクリタキセル・カルボプラチンを用いる術後化学療法を考慮すること、I期での術後化学療法が再発を予防するというエビデンスは無いこと、FIGO 2014分類を用いることを確認した。閲覧 2026-09-08
  2. 2.The clinical utility of serum anti-Müllerian hormone in the follow-up of ovarian adult-type granulosa cell tumors—A comparative study with inhibin B(International Journal of Cancer(Färkkilä A, Koskela S, Bryk S, et al.)・2015)成人型顆粒膜細胞腫患者123例・追跡血清560検体を用いた縦断的コホート研究で、血清AMHが原発・再発の顆粒膜細胞腫で有意に上昇し腫瘍径と正相関したこと、AMHのROC解析でAUC 0.92(95%信頼区間0.88〜0.95)、肉眼的病変の検出感度92%・特異度81%であったこと、インヒビンBと組み合わせることで再発検出能がさらに向上したことを確認した。閲覧 2026-09-08