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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 腫瘍

莢膜細胞腫

Thecoma

別名
卵巣莢膜細胞腫fibrothecoma線維莢膜細胞腫
臓器系
生殖・産婦人科腫瘍
科目
Obstetrics and Gynecology (Gynecology)Pathology
トピック
婦人科 25:卵巣の良性腫瘍病理学 C/75:卵巣腫瘍
上位概念
卵巣機能性嚢胞・良性腫瘍
鑑別疾患
Meigs症候群Sertoli-Leydig細胞腫アンドロゲン産生腫瘍卵巣顆粒膜細胞腫
症状
高アンドロゲン症
検査値
血清テストステロン

🧠 全体像:は、卵巣ののうち(theca cell)に類似した脂質含有細胞から成る、大部分が良性の腫瘍である。核心はホルモン産生性にある——本来はがエストロゲン合成の基質となるアンドロゲンを作る細胞であることを反映し、大多数(約70%)がエストロゲンを産生して・を来す。しかし細胞の一部が化すると産生ホルモンがアンドロゲン優位に傾き、まれに閉経後女性の男性化の原因になる。「=エストロゲン産生性」という理解だけでは、この少数派(約10%)を見落とす。

病態

は、発達過程の卵胞にみられる莢膜(theca interna)に類似した脂質含有細胞から構成される、の一種である1。全体の7%未満を占める稀な腫瘍で、大部分が良性であり予後は良好とされる1。全の中では1%に満たない2。

⭐ 好発年齢は〜閉経後で、若年女性にはまれである2。腫瘍径は通常5〜10 cmで、両側性は3%にとどまり大多数が片側性である2。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='theca cell'>莢膜細胞</span>様の<br>脂質含有細胞が増殖"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thecoma'>莢膜細胞腫</span>"]
    B --> C["大多数(約70%)<br>エストロゲンを産生"]
    B --> D["少数(約10%)<br>細胞が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lutein'>ルテイン</span>化"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postmenopausal bleeding'>閉経後出血</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='endometrial hyperplasia'>子宮内膜増殖症</span>・癌"]
    D --> F["アンドロゲン産生へ傾く"]
    F --> G["男性化<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypertrichosis (excess hair growth)'>多毛</span>・脱毛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clitoromegaly'>クリトリス肥大</span>)"]

💡 なぜホルモン産生の方向が分かれるのか。 は生理的にはアンドロゲンを合成し、これをがアロマターゼでエストロゲンへ変換する「二細胞二ゴナドトロピン説」の片方を担う細胞である。はこのが単独でしたものなので、変換を担う成分を欠く。多くはそれでも下流のを保ちエストロゲン優位になるが、細胞が化()すると能を失いアンドロゲンがそのまま分泌され、男性化に傾く2。

臨床像

診断

血清テストステロンの上昇はアンドロゲン産生型を示唆する所見であり、血清テストステロン高値が男性化症状と組み合わさる場合に本症を疑う2。画像検査(・)でのとして描出されるが、確定診断は摘出標本の病理組織診断による。

病理組織学的には、円形で異型に乏しい核と質を持つ細胞の胞巣を、で異型の乏しい細胞が取り囲む構築を示す(Kaluarachchi 2009の症例に基づく記述)。はまばらである(悪性所見に乏しい)2。免疫染色ではが全般を染め、SF1が最も感度の高いマーカーとされる。FOXL2変異はの約21%に認められる1。

治療

治療の中心は外科的切除である。閉経後女性では悪性腫瘍の可能性を除外する目的も兼ねて、+が行われることが多い2。⭐ アンドロゲン産生型では、腫瘍摘出により血清テストステロンが正常化し、男性化所見も改善する2。良性腫瘍であるため化学療法・放射線療法は通常不要である。

まとめ

  • はの一種で、大部分が良性・予後良好。全の1%未満、の7%未満を占める。
  • 約70%はエストロゲンを産生し・の原因となるが、約10%は化細胞を含みアンドロゲン産生・男性化を来す。
  • ⚠️ 閉経後女性の男性化ではの一つとして鑑別に挙げる。
  • 治療は外科的切除で、アンドロゲン産生型は摘出後にホルモン値・症状が正常化する。

出典

  1. 1.Granulosa Theca Cell Tumors of the Ovary(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)莢膜細胞腫は性索間質性腫瘍の7%未満を占める稀な腫瘍で、大部分が良性かつ予後良好であること。悪性莢膜細胞腫は極めて稀で、悪性化する場合はしばしば顆粒膜細胞の成分を伴うこと。インヒビンは性索間質性腫瘍すべてを染色し、SF1が最も感度の高いマーカーであること。FOXL2変異は莢膜細胞腫の21%に見られること。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Luteinized Ovarian Thecoma in a Postmenopausal Woman Presenting with Virilization(Obstetrics and Gynecology International・2009)莢膜細胞腫は全卵巣腫瘍の1%未満を占め、周閉経期・閉経後女性に好発すること。莢膜細胞腫の70%がエストロゲンを産生し、不正性器出血や子宮内膜過形成・悪性化を来すこと。ルテイン化細胞を含む莢膜細胞腫は全体の10%を占め、この場合にアンドロゲンが産生され男性化を来しうること。腫瘍径は通常5〜10 cmで、両側性は3%にとどまること。アンドロゲン産生莢膜細胞腫の病理組織像は、円形で異型のない核と好酸性細胞質を持つ細胞の胞巣を、紡錘形の異型のない細胞が取り囲む構築を示し、核分裂像はまばらであること。手術(全摘出)によりテストステロン値が正常化し男性化所見が改善すること。※70%・10%の統計値は本論文内でも参照番号付きの孫引き(他文献からの引用)であり、本論文自身の実測値ではない。閲覧 2026-09-05