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Symptoms · Published

高アンドロゲン血症

Hyperandrogenism

別名
高アンドロゲン症アンドロゲン過剰hyperandrogenism
臓器系
内分泌・代謝生殖・産婦人科
科目
GynecologyPathophysiology
トピック
婦人科 37:男性化と多毛症病態生理学 1-25:女性ホルモン調節の異常病態生理学 1-20:急性・慢性副腎皮質機能低下症;先天性副腎過形成
関連疾患
クッシング症候群先天性副腎過形成多嚢胞性卵巣症候群副腎皮質癌

🧠 全体像:高アンドロゲン症は「臨床的高アンドロゲン症(という見た目の所見)」と「生化学的(テストステロン・という数値の異常)」という別々の軸でできている。両者は一致しないことが多く、片方だけを見て判断すると見落としや過剰診断につながる。さらに、この2軸とは別に「男性化」というより重い状態がある——・嗄声・増加・を伴えば、単なるとは扱いが変わる。急速発症に男性化が重なったときはアンドロゲン産生腫瘍を積極的に疑う——ここが本ノートで最も外してはいけない一点である。

定義と用語の整理

本ノートの見出し語「」は本来は生化学的な血中値の異常を指す語だが、臨床の場では「高アンドロゲン症」とほぼ同義に使われることが多い。本ノートでは臨床的な軸・生化学的な軸の両方をまとめて扱う。

  • 臨床的高アンドロゲン症で評価する男性型分布の増加()、など、でとらえる所見。スコアは上口唇・顎など9部位を0〜4点で評価する合計点で、診断閾値は民族差を考慮して用いる。
  • 生化学的:総テストステロン・(または)、という血中値の異常。
  • 毛包の活性や感受性にはがあるため、血中値が正常でもが強い例(特発性)や、逆に生化学的異常があっても症状に乏しい例がある1。どちらか一方の評価だけで「正常だから高アンドロゲン症ではない」と除外しない。
  • 男性化は、よりアンドロゲン作用が強く長期に働いた結果であり、(長径10 mm超または面積35 mm²超)、嗄声、増加、を伴う状態を指す1単独と男性化を伴う状態は、鑑別のも検査の進め方も異なる。

⚠️ 測定上の注意:総テストステロンは4〜10日目の早朝に、など精度の高いアッセイで測定する。は直接測定のが低いため、測定した総テストステロンとSHBGから計算で求めることが推奨されている2

採血のタイミングとアッセイの選び方を誤ると、生化学的を偽陰性・偽陽性のどちらにも見誤る。

病態生理

の原因は、アンドロゲンがどこで・どう過剰になるかという機序で群に分けると整理しやすい。卵巣・副腎いずれの群でも、による肝SHBG産生低下は遊離アンドロゲンをさらに押し上げるとして働く。このを踏まえたうえで、産生の主座がどこにあるかで4群に分ける。

代表疾患・状態 機序
(PMOS、旧PCOS)、卵巣男性化腫瘍(など のテストステロン産生増加、によるSHBG低下で遊離アンドロゲンがさらに増加
副腎性 欠損など)、Cushing症候群 酵素欠損による前駆体のアンドロゲン合成経路へのシャント、または腫瘍によるアンドロゲンの自律産生
末梢での感受性亢進 特発性 血中アンドロゲン値は正常。毛包の活性・感受性がとして亢進している
医原性 など)、バルプロ酸 外因性アンドロゲンそのものの作用、または卵巣・副腎でのアンドロゲン産生の直接刺激

💡 頻度としてはのPMOS(旧PCOS)が圧倒的に多く、生殖年齢女性の緩徐進行するの大半を占める。インスリン抵抗性・を強く伴う重症表現型はと呼ばれる。腫瘍・非CAH・Cushing症候群は頻度こそ低いが、次節の理由で優先して除外する。

💡 「どちらのホルモンが優位に上がっているか」は原因臓器の推定に使える。卵巣は主にテストステロンを、副腎は主にを産生するため、テストステロン優位ならまずを、優位ならまず副腎性を疑う手がかりになる。ただしこれはな区分ではなく、臨床像・画像と統合して判断する。

⚠️ 緊急・見逃してはいけない疾患

⚠️ アンドロゲン産生腫瘍(卵巣・副腎):数か月以内の急速発症に男性化を伴う高アンドロゲン症は、卵巣・副腎のアンドロゲン産生腫瘍を積極的に疑う所見であり、画像検査を急ぐ。目安として、テストステロン(5 nmol/L超で精査、10 nmol/L超は卵巣男性化腫瘍をPMOSより強く示唆)は腫瘍を疑う手がかりになる1。一方でについては、副を示唆する確立した単一の閾値はなく、であることそのものを手がかりにする1

⚠️ を含む欠損):思春期以降に緩徐な高アンドロゲン症状で気づかれることがあり、PMOSと臨床像が似て見逃されやすい。早朝の血清17-OHPでスクリーニングし、200 ng/dL未満(6 nmol/L未満)は除外、1,000 ng/dL超(30 nmol/L超)は診断的、その中間は境界域としてで確認する3

⚠️ Cushing症候群Cushing症候群、とくにによるものはコルチゾール過剰とが同時に起こりうる。など他の特異的所見を伴えば、高アンドロゲン症状だけを追わずコルチゾール評価を並行する。

⚠️ 閉経後の新規発症:PMOS(旧PCOS)は生殖年齢での発症が前提であり、閉経後に新たに出現した・男性化は上記の腫瘍性病変を優先して考える対象になる。「加齢のせい」で片付けない。

鑑別の進め方

では次を確認する。

  • 発症年齢と進行速度(緩徐か急速か)
  • 月経の状態、体重の変化、妊娠希望の有無
  • ・バルプロ酸などの薬剤歴
  • 家族歴・民族的背景(Ferriman-Gallweyスコアの解釈に影響する)

これらを踏まえたうえで、次の順序で絞り込む。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypertrichosis (excess hair growth)'>多毛</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acne'>痤瘡</span>・脱毛など高アンドロゲン症状を認める"] --> B{"発症は緩徐か急速か"}
    B -->|"緩徐(年単位)"| C{"月経不順・肥満を伴うか"}
    C -->|"該当"| D["PMOS(旧PCOS)を第一に評価"]
    C -->|"該当しない"| E["特発性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypertrichosis (excess hair growth)'>多毛</span>・非<span class='jp-term jp-term-diagram' title='classic form'>古典型</span>CAHなどを評価"]
    B -->|"急速(数か月以内)"| F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clitoromegaly'>陰核肥大</span>・嗄声・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle mass'>筋肉量</span>増加など<br>男性化を伴うか"}
    F -->|"あり"| G["アンドロゲン産生腫瘍を強く疑う"]
    F -->|"なし・軽度"| H["Cushing症候群・医原性などを考慮"]
    D --> I["総・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free testosterone'>遊離テストステロン</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='DHEA sulfate'>DHEA-S</span>を測定"]
    E --> I
    G --> I
    H --> I
    I --> J{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='markedly elevated'>著明高値</span>か"}
    J -->|"はい"| K["骨盤超音波・副腎CTで局在診断"]
    J -->|"いいえ・境界域"| L["早朝<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicular phase'>卵胞期</span>17-OHPなどで他疾患を除外"]

で発症速度と月経・体重変化を確認し、身体所見で男性化の有無を判定してから生化学検査に進み、・境界域という結果に応じて画像検査の要否を決めるという順序を守る。

対症療法の考え方

高アンドロゲン症状そのものへの対応は、原因治療と症状緩和のどちらを優先するかという軸で整理する。

⚠️ はいずれも催奇形性の懸念があり、確実な避妊なしに単独で使わない。妊孕性を優先する場合はこれらを避け、原因治療を優先しつつ、PMOSによるが主体ならを検討する対象になる。

まとめ

  • 高アンドロゲン症は「臨床的(・脱毛)」と「生化学的(テストステロン・)」という別々の軸で捉え、両者は一致しないことが多い。
  • 男性化(・嗄声・増加・)はより重い状態であり、急速発症と重なればアンドロゲン産生腫瘍を積極的に疑う。閉経後の新規発症も同様に優先して考える。
  • 機序は(PMOS・卵巣男性化腫瘍)、副腎性(・Cushing症候群・)、末梢での感受性亢進(特発性)、医原性(・バルプロ酸)に群分けして考える。テストステロン優位か優位かは原因臓器推定の手がかりになる。
  • テストステロンの17-OHP・Cushing症候群は、頻度は低くても優先して除外すべき鑑別である。
  • 総テストステロンは4〜10日目の早朝に精度の高いアッセイで測定し、はSHBGからの計算値を用いる。測定のタイミングとアッセイ選択を誤ると偽陰性・偽陽性のもとになる。
  • 鑑別は発症速度→男性化の有無→生化学検査→画像という順に絞り込む。
  • 対症療法は原因治療(腫瘍摘出・ステロイド補充)と症状緩和(・美容的処置)の関係として捉え、妊孕性を優先するかどうかで選択薬が変わる。

出典

  1. 1.Society for Endocrinology Clinical Practice Guideline for the Evaluation of Androgen Excess in Women(Society for Endocrinology・2025)臨床的高アンドロゲン症と生化学的高アンドロゲン血症は一致しないことが多い、男性化(陰核肥大=長径10 mm超または面積35 mm²超など)の定義、テストステロン著明高値(5 nmol/L超で精査、10 nmol/L超は卵巣男性化腫瘍を示唆)、DHEA-Sには腫瘍を示唆する確立した閾値がないこと閲覧 2026-08-02
  2. 2.Congenital Adrenal Hyperplasia Due to Steroid 21-Hydroxylase Deficiency: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society・2018)非古典型を含む先天性副腎過形成のスクリーニングは早朝卵胞期の血清17-OHPで行い、200 ng/dL未満は除外、1,000 ng/dL超は診断的、その間はACTH負荷試験で確認する閲覧 2026-08-02
  3. 3.Evaluation and Treatment of Hirsutism in Premenopausal Women: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society・2018)総テストステロンは月経周期4〜10日目の早朝に質量分析法などの精度の高いアッセイで測定し、遊離テストステロンは直接測定でなくSHBGから計算で求めることが推奨されている閲覧 2026-08-02