病態生理学

病態生理学 · 1-20

急性・慢性副腎皮質機能低下症;先天性副腎過形成

Adrenocortical insufficiency (acute/chronic); congenital adrenal hyperplasia

応用トピック
糖質コルチコイド欠乏と過剰副腎不全男性化と多毛症内分泌疾患 症例2
疾患
Waterhouse-Friderichsen症候群原発性副腎不全三A症候群先天性副腎過形成
症状
高アンドロゲン血症
検査値
17-ヒドロキシプロゲステロンデヒドロエピアンドロステロン硫酸

🧠 2つのホルモンが足りない病気。 (コルチゾール)不足 → 低血糖・低血圧・ストレス耐性ゼロ、(アルドステロン)不足 → Na/水喪失・高K⁺。Primary(腺の問題)では ↑ で皮膚が黒くなる(色素沈着)のが決め手。

HPA軸とコルチゾール

  • CRH → → コルチゾール(副腎皮質)。はエピネフリン合成も促進。
  • 💡 の2つの副作用: 高濃度の は MC1R に結合 → 。またの アンドロゲン を駆動(負のフィードバックなし → コルチゾール欠如時に → 副腎過形成)。

糖質コルチコイド・鉱質コルチコイド作用

  • ():
    • 抗炎症/免疫抑制
    • ↑、↑、↑、インスリン抵抗性↑ → 血糖↑(ストレス燃料)
    • にに作用(CO/BP維持)
    • GFR↑
    • 骨形成抑制
    • CNS覚醒
  • :
    • Na⁺/↑
    • K⁺/H⁺分泌↑
    • 調節:レニン(低BP/交感神経)と

副腎皮質機能低下症

💡 皮質はが高く、約90%破壊されて初めて症状が出る。

💡 続発性ではは保たれやすい。 はの産生不足によるもので、アルドステロンを動かすには影響しない2。もを支えるので低下はありうるが、分泌がなくなるわけではない。このためや著しい脱水は主に原発性の所見になり、が低いので色素沈着も出ない。

⚠️ 甲状腺ホルモンより先にを補充する。 と中枢性甲状腺機能低下症を合併する患者(下垂体障害では両軸が同時に落ちうる)で、を補充せずにだけを先行させると、代謝が亢進してコルチゾール必要量・クリアランスが急増し、副腎が不十分なまま需要だけが増えてを誘発しうる。必ず副腎系を先に補充してから甲状腺ホルモンを開始する。

アジソン病 — 症状

(G)+(M)の慢性欠乏:

  • 体重減少・脱力・身体的/精神的疲労(原因):
    • 体液喪失(M)
    • (M→細胞外K⁺↑でが浅くなり慢性脱分極→骨格筋の興奮性↓)
    • 食欲↓(G。は本来食欲を高める)
    • 低血糖(G。糖新生の低下と、アドレナリン・への許容作用の低下)。⚠️ 米国内分泌学会(ES)2016年ガイドラインは、慢性の副腎不全のとしては低血糖を「まれ」に分類し、疑うべき所見としてはとくに小児で挙げている(ではに挙がる)2
    • CNS活動↓(G欠乏によるうつ、M欠乏のアシドーシスによる混乱、ストレス耐性の低下)
  • :とともに副腎不全の代表的なに挙げられる2。
  • 悪心/嘔吐/下痢(M、アシドーシス)— 下痢はクリーゼを誘発。
  • 脱水・低血圧・・虚脱(体液喪失〈M〉、の低下〈G。への血管・心臓の反応性低下、の不全〉、心拍出量の低下〈G〉)
  • 色素沈着(手掌線・口腔粘膜・瘢痕・肘膝など、↑)。⚠️ 原発性に特異的で、続発性(↓)では通常みられない——これが両者を分ける臨床上の決め手になる。
  • ホルモン:
    • アルドステロン↓
    • コルチゾール↓
    • ACTH↑
    • ↑(アルドステロンの作用がなくなるため)
  • 治療: ()+()補充。
    • ⚠️ : 発熱・嘔吐・下痢・手術など身体的ストレス時はグルココルチコイドを増量する。ES 2016は発熱時の在宅管理として、補充量を38℃超で2倍、39℃超で3倍にして回復まで(通常2〜3日)続けるとする2。英国 2024(NG243)は、16歳以上で身体的ストレスが大きい期間に経口を少なくとも40 mg/日(2〜4回に分割)とする書き方をとる3。嘔吐・下痢で経口摂取できないときは非経口(筋注・静注)に切り替える。は、内服後30分以内に吐いたら治まってから2倍量を飲み直し、再び吐いたら筋注して救急受診するとしている3。日常の心理的ストレスや軽い運動だけでは増量しない。
    • : ステロイド緊急カード(医療識別票)を常時携帯し、本人・家族に/筋注の手技を指導したうえで緊急用注射キットを携行させる2。

急性副腎クリーゼ

疾患ノートのの救急管理も参照。

  • 原因:
    • (Waterhouse-Friderichsen)
    • 外傷/手術
    • GI感染
    • 慢性副腎不全患者でのステロイド急な中止・増量の未実施
  • 症状(急性の塩-水/循環不全):

⚠️ はであり、検査確定を待ってはならない。 疑ったら、朝のコルチゾール・同時測定やの結果を待たずにを直ちに投与する。可能であれば治療開始前に(後日の原因診断に使うため)採血だけは済ませておくが、その結果を待つことで治療を遅らせてはならない2。

  • 初期対応の骨格:
    1. 採血(コルチゾール・・電解質・血糖)は行うが、結果を待たない。
    2. 100 mgを直ちに静注または筋注する。
    3. 0.9%で急速輸液する。量の書き方は資料で異なる:ES 2016は最初の1時間に1000 mLをし、その後は個々の必要に応じてする2。英国内分泌学会(SfE)2020は、の所見がなければ500 mLを15分でし、24時間で3〜4 Lを目安に再する4。 2024は1 Lを30分で投与し、以後は血行動態と電解質を見ながら安定するまで続ける3。いずれも心・腎機能や脱水の程度に応じて調整する。
    4. 低血糖があればブドウ糖を追加投与する。
    5. その後は200 mg/24時間の持続静注、または50 mgを6時間ごとに投与する4。ES 2016は翌日に100 mg/日へ減らすとしている2。
    6. 感染などの誘因を検索・治療しながら、血圧・尿量・電解質・血糖を頻回に監視する。

💡 高用量のにはそれ自体十分ながあるため、急性期にを別途追加する必要は通常ない。

先天性副腎過形成

💡 論理は1本: コルチゾール合成酵素が欠ける → コルチゾール↓ → ↑(負のFBなし)→ 副腎過形成+中間体がアンドロゲンへ流れて過剰 → 男性化。が出るか否かは欠損酵素しだい。詳細な病型別の鑑別・治療はを参照。

flowchart TD
  D["コルチゾール合成酵素の欠損"] --> C["コルチゾール欠乏 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenocorticotropic hormone'>ACTH</span>↑"]
  C --> H["副腎過形成"]
  D --> SH["中間体がアンドロゲンへシャント → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='androgen excess (hyperandrogenism)'>アンドロゲン過剰</span>"]
  SH --> V["男性化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='premature adrenarche'>早発アドレナーキ</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hirsutism'>多毛症</span>・不妊"]
酵素欠損 特徴
(CYP21A2、全体の90%以上(約95%)を占める) コルチゾールもも作れない。。
・・:が著明に欠乏し、生後2〜4週で(脱水・低Na血症・・ショック)
・・:明らかな塩喪失は来さないが出生時から
・非古典型:小児期以降の緩徐な高アンドロゲン症状(・)で顕在化し、と紛らわしい
(~4〜5%) 、コルチゾール欠乏、活性↑(前駆体DOC蓄積)→ Na/(高血圧)、K⁺排泄↑で
(まれ) コルチゾール+欠乏、 → Na・水の再吸収↓で脱水、K⁺貯留で

⭐ 診断の要は()高値。 21水酸化酵素の基質であるが変換されずに蓄積するため、血清高値が診断の中心的な検査になる。でも出生後数日以内にでを測定し、とくに・をのが顕在化する前に拾い上げる(早産児・ではストレスにより偽陽性になりやすい)5。

  • 分泌の結果:
    • 男性化
    • (・の早期発現)
    • 無月経
    • 不妊
    • 精子形成↓

💡 無月経・不妊・精子形成低下が起こるのは、過剰なアンドロゲンが ・・ の分泌を抑えるためである。

まとめ

項目 要点
軸 CRH → → コルチゾール。過剰はMC1Rを介して色素沈着を起こし、のアンドロゲンも駆動する(アンドロゲンは負のフィードバックをかけない)
原発性・慢性() 自己免疫・結核/・低形成・転移。皮質の約90%が壊れて症状が出る。G+M欠乏で体重減少・低血圧・・・色素沈着、↑・↑
続発性 長期投与後の急な中止、下垂体障害。↓なので色素沈着なし、は保たれる
慢性期の管理 +。の増量、経口不能なら非経口、緊急カードと注射キットの携行。甲状腺ホルモンより先にを補う
・外傷/手術・・ステロイド中止が誘因。検査結果を待たず100 mg、0.9%食塩液の急速輸液、ブドウ糖
コルチゾール合成酵素欠損 → ↑ → 過形成+。が大半で、は高血圧・、は脱水・。診断の要は

出典

  1. 1.European Society of Endocrinology and Endocrine Society Joint Clinical Guideline: Diagnosis and Therapy of Glucocorticoid-Induced Adrenal Insufficiency(European Society of Endocrinology / Endocrine Society・2024)慢性の外因性グルココルチコイド投与後にHPA軸抑制・続発性副腎不全が疑われる場合、生理量を上回る範囲では比較的速く、生理量域に入ってからは緩徐に減量するのが原則であり、離脱症状が副腎不全の症状と重なるため急な中止を避けるべきことを確認した。閲覧 2026-08-14
  2. 2.Diagnosis and Treatment of Primary Adrenal Insufficiency: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society・2016)副腎クリーゼが疑われる急性期の患者では診断確定を待たず低い治療閾値で対応すべきこと、慢性期の患者にはシックデイの増量指導とともにステロイド緊急カード・非経口投与用の糖質コルチコイド製剤(緊急注射キット)を携行させるべきという推奨を確認した。あわせて全文(PMC4880116)で、表3が発熱時の在宅管理としてヒドロコルチゾン補充量を38℃超で2倍、39℃超で3倍に増やし回復まで(通常2〜3日)続けるとし、急性副腎クリーゼでは最初の1時間に等張食塩液1000 mLを急速投与したのち個々の患者の必要に応じて持続投与し、ヒドロコルチゾン100 mgを直ちに静注して200 mg/日の持続投与を24時間、翌日は100 mg/日へ減らすとしていること、表1が副腎不全の検査所見に低ナトリウム血症・高カリウム血症を挙げ、低血糖を「まれ(Uncommon)」の欄に置いていること(副腎クリーゼの行では低血糖が検査所見に挙がる)、推奨1.1が低血糖を「とくに小児で」の所見として挙げていること、続発性副腎不全はACTH産生不足によるもので、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系には影響しないと述べていることを確認した。閲覧 2026-08-14
  3. 3.Adrenal insufficiency: identification and management(National Institute for Health and Care Excellence (NICE), guideline NG243・2024)推奨ページ(2024年8月28日公開)で確認した。推奨1.4.2は16歳以上で身体的ストレスが大きい期間に経口ヒドロコルチゾンを少なくとも40 mg/日(2〜4回に分割)、またはプレドニゾロンを少なくとも10 mg/日投与するとし、推奨1.4.5は内服後30分以内に嘔吐したら嘔吐が治まってから元の2倍量を再服用し、再び30分以内に嘔吐すればヒドロコルチゾン筋注を行って救急部門を受診させるとする。推奨1.7.1は副腎クリーゼが疑われたら直ちにヒドロコルチゾンを静注または筋注するとし、推奨1.7.3は0.9%食塩液1 Lを30分かけて静注し、推奨1.7.6は血行動態が安定するまで血行動態と電解質を指標に0.9%食塩液の投与を続けるとする。閲覧 2026-09-24
  4. 4.Guidance for the prevention and emergency management of adult patients with adrenal insufficiency(Society for Endocrinology・2020)全文(PMC7385786)で確認した。副腎クリーゼの初期対応としてヒドロコルチゾン100 mgの静注・筋注を直ちに行い、その後200 mg/24時間の持続静注または50 mgを6時間ごとに投与する。補液はBox 1で、低ナトリウム血症の所見がないことを条件に0.9%食塩液で急速に補液し、まず500 mLを15分でボーラス投与したのち電解質の不足を補い、24時間で3〜4 Lの0.9%食塩液で再水和して電解質と水分出納を注意深く監視するとしている。診断の確認を待って治療を遅らせてはならないとする。閲覧 2026-08-14
  5. 5.Congenital Adrenal Hyperplasia Due to Steroid 21-Hydroxylase Deficiency: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society・2018)先天性副腎過形成の約90〜95%(原文ではCYP21A2変異による約95%)が21-水酸化酵素欠損症によること、新生児マススクリーニングの一次検査には在胎週数別基準を用いた17-OHPアッセイを用いるべきという推奨を確認した。閲覧 2026-08-14