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ACTH刺激試験

ACTH stimulation test

別名
迅速ACTH刺激試験ACTH負荷試験コシントロピン負荷試験短時間ACTH試験Synacthen試験
臓器系
内分泌・代謝
科目
Internal MedicinePediatrics
トピック
内科学 L-31:副腎不全内科学 E-06:糖質コルチコイド欠乏と過剰小児科 3-16:小児副腎疾患
関連疾患
下垂体機能低下症原発性副腎不全先天性副腎過形成

🧠 全体像は、外因性のACTH()を投与してコルチゾールがどれだけ上がるかをみる検査であり、血中ACTH濃度そのものを測る検査とは別物である。副腎皮質にどれだけが残っているかを直接確かめている点が本質で、の確認からの確認まで幅広く使われる。は測定法(アッセイ)に強く依存するうえ、の発症直後は副腎がまだ萎縮していないため正常反応を示しうる——「正常だから副腎不全ではない」と早合点しないことが最大の注意点になる。

何を調べる検査か

外因性のACTH(、合成ACTH(1-24))を投与し、コルチゾールをどれだけ上昇させられるかをみる。これは、血中のACTH濃度そのものを測定する検査とは目的が異なる。ACTH値は「視床下部―下垂体がACTHをどれだけ出しているか」を映し、は「副腎がその刺激にどれだけ応じられるか()」を映す。両者は組み合わせて初めて原発性・中枢性の鑑別に使える情報になる。

検査 見ているもの
血中ACTH測定 下垂体からのACTH分泌量(内因性刺激の強さ)
副腎皮質がその刺激にどれだけコルチゾールで応答できるか(

副腎皮質はが高く、平常時のコルチゾール産生が保たれていても、大きな刺激に応じきれるかどうかは別問題である。はこの「余力」を人為的に最大刺激して確かめる検査である。

適応と使いどころ

主に次の場面で用いる。

適応 使う場面
の確認 を疑うが、朝コルチゾールが中間域で判定できないとき
のスクリーニング など下垂体・視床下部疾患で副腎軸のを確認したいとき
の確認 早朝17-OHPが判定困難域(200〜1,000 ng/dL)のとき、刺激後17-OHPで確定する1

朝コルチゾールが明らかに低ければ、あるいはACTHとの組み合わせで診断が確定的であれば、刺激試験を追加する必要はない。逆に反応を判定するにはピーク値のが必要になるため、次節の実施法と結果の解釈をセットで理解する。

なお、Cushing症候群でACTH依存性の起源(下垂体性か異所性か)を鑑別する場合は、ではなくなど全く別の検査を用いる。「コルチゾール系を調べる検査」という共通点だけで両者を混同しない。

検査の流れ

用量は標準(250 µg)と低(1 µg)がある。Endocrine Societyは低を「標準用量が入手できない場合など」に限る補助的な位置づけとし、両者の診断性能に明確な優劣はないとしている2

項目 標準(250 µg) (1 µg)
位置づけ 第一選択 標準用量が入手困難な場合などの代替2
静注または筋注 静注(希釈調製が必要)
採血時点 0分・30分・60分 0分・20〜30分
実施上の注意 調製が容易で広く検証されている 希釈濃度が低く、保存・調製の精度が結果を左右する

検査時刻は朝に限定されない。絶食も不要で、を疑う緊急時にも施行できる——ただし、治療を遅らせてまで検査結果を待つことはしない(後述)。

flowchart TD
    A["副腎不全を疑い判定困難"] --> B["基礎コルチゾール・ACTHを採血(0分)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cosyntropin'>コシントロピン</span>を静注または筋注"]
    C --> D["30分後にコルチゾールを採血"]
    D --> E["60分後にコルチゾールを採血"]
    E --> F{"ピークコルチゾールが<br>アッセイ別<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cut-off'>カットオフ</span>を超えるか"}
    F -->|"はい"| G["副腎不全の可能性は低い"]
    F -->|"いいえ"| H["副腎不全を支持"]
    H --> I["血漿ACTHで原発性・中枢性を鑑別"]

など免疫測定にする製剤を使用中は、可能であればへ一時的に切り替えるか、してから採血する(詳細は後述の偽陽性の項)。

結果の解釈

まずピークコルチゾール(30分と60分の高い方)を確認する。

時点 従来の閾値(免疫測定) 現行の目安(モノクローナル法/
30分または60分のピーク 18 µg/dL(500 nmol/L)未満で副腎不全を示唆2 アッセイにより約14〜15 µg/dL(386〜414 nmol/L)まで低下3

⚠️ この閾値はアッセイ依存である。 現行のモノクローナル抗体法やは旧来の法より値が2〜3割低く出るため、従来の18 µg/dLをそのまま新しいアッセイへ当てはめると偽陽性(過剰診断)が増える3。歴史的な単一の閾値を、測定法の異なる別施設へそのまま移植せず、各検査室が採用しているアッセイに応じたを確認する。

では逆に反応が大きいことが診断的で、刺激後60分の17-OHPが1,000 ng/dL(30 nmol/L)を超えれば診断的とされる1

肥満、加齢、の変化なども反応の大きさに影響しうるため、境界域の結果は臨床像や他のの所見と統合して判断する。

⚠️ 偽陰性・偽陽性

⚠️ 最も見逃しやすい偽陰性は、の発症早期である。 下垂体手術直後、後などの急性期は、ACTH分泌が急に落ちても副腎皮質はまだ萎縮しておらず、外因性ACTHに対して正常反応を示しうる。「刺激試験が正常だから副腎不全ではない」と判断すると、発症間もないを見逃す。臨床像が強く疑わしい急性期には、正常な検査結果だけで安心せず、他のや経過をみて再評価するか、必要に応じて治療を先行させる。

このほかにも解釈を誤らせる状況がある。

状況 何が起こるか
妊娠、 増加により総コルチゾールが高めに出る
、重症疾患 低下により総コルチゾールが低めに出て、を過小評価しうる
投与中 免疫測定にし測定値を歪める。検査前にするかへ一時的に切り替える

⚠️ を疑う状況では、この検査の結果を待って治療を開始してはならない。可能なら採血だけ済ませて直ちにを投与し、刺激試験そのものの判定は後から行う。

代替・関連する検査

検査 何をみるか 使いどころ・注意点
低血糖ストレスに対するGH・コルチゾール反応 の総合評価に有用だが、心血管疾患・痙攣歴では禁忌が多い
外因性CRH投与に対するACTH反応 専門施設限定で標準化に乏しく、実施できる施設は限られる
でコルチゾール合成を止め、代償性のACTH上昇をみる を誘発しうるため入院管理下で行う
朝コルチゾール単独 随時(早朝)のコルチゾール値 明らかな高値・低値では刺激試験を省略できるが、中間域は

いずれも禁忌・入院要否・標準化の程度が異なる。「使えるかどうか」より先に、どの軸(副腎そのものか、下垂体を含めた全体か)を確認したいのかを明確にしてから選ぶ。

まとめ

  • は外因性ACTHへのコルチゾール反応をみる検査で、血中ACTH濃度の測定とは別の情報を与える。
  • 標準用量(250 µg)が第一選択で、低用量(1 µg)は入手困難な場合などの代替にとどまる。
  • ピークコルチゾールのはアッセイ依存で、現行のモノクローナル法/では旧来の18 µg/dLより低い値が使われる。
  • 最大の落とし穴は、の発症早期に副腎がまだ萎縮しておらず正常反応を示すことである。
  • コルチゾールの変化やも解釈を歪める。
  • を疑えば、検査結果を待たず治療を開始する。

出典

  1. 1.Diagnosis and Treatment of Primary Adrenal Insufficiency: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society・2016)標準用量250 µg法での30・60分ピークコルチゾール500 nmol/L(18 µg/dL、アッセイ依存)未満という副腎不全の判定基準と、低用量1 µg法は標準用量が入手困難な場合などに限る代替で感度・特異度の上乗せはないとする推奨を確認した。閲覧 2026-08-02
  2. 2.New Cutoffs for the Biochemical Diagnosis of Adrenal Insufficiency after ACTH Stimulation using Specific Cortisol Assays(Journal of the Endocrine Society・2021)現行のモノクローナル免疫測定法(Elecsys Cortisol IIやAccessなど)やLC-MS/MSでは、ACTH刺激後ピークコルチゾールの正常下限が旧来のポリクローナル法に基づく18 µg/dL(500 nmol/L)より低い、約14〜15 µg/dL(386〜414 nmol/L)になることを確認した。閲覧 2026-08-02
  3. 3.Congenital Adrenal Hyperplasia Due to Steroid 21-Hydroxylase Deficiency: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline(Endocrine Society・2018)早朝血清17-OHPが200〜1,000 ng/dLの判定困難域にある場合はACTH刺激試験を行い、刺激後60分の17-OHPが1,000 ng/dL(30 nmol/L)を超えれば非古典型先天性副腎過形成の診断的所見とする基準を確認した。閲覧 2026-08-02