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Lab values · Published

メチラポン試験

Metyrapone test

別名
メチラポン負荷試験metyrapone test
臓器系
内分泌・代謝
科目
PharmacologySurgery
トピック
薬理学 B13:ミネラルコルチコイド・外用グルココルチコイド・副腎皮質拮抗薬及びステロイド合成阻害薬外科学 B/01:副腎の外科的疾患

🧠 全体像は、にコルチゾール合成を止め、それに対して視床下部-下垂体がACTHを増やして応じられるかをみるである。コルチゾールそのものではなく、コルチゾールが下がったときに下垂体がどれだけACTHを出せるかというを映すため、実質的にはを評価する検査に位置づく。合成を止める薬を使う以上、うまくいけばいくほど(=阻害が効くほど)コルチゾールは下がり、の危険と隣り合わせになる——安全性の管理がこの検査の成否を左右する

何を見る試験か

は副腎皮質の(CYP11B1)を阻害し、コルチゾール合成の最終段階(→コルチゾール)を止める。この結果、コルチゾールは低下し、その一段階手前のが蓄積する。視床下部-は血中コルチゾール低下を感知して負のフィードバックを解除し、健常であればACTH分泌を代償性に増やす。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metyrapone'>メチラポン</span>を投与"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='11-beta-hydroxylase (CYP11B1)'>11β-水酸化酵素</span>(CYP11B1)を阻害"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='11-deoxycortisol'>11-デオキシコルチゾール</span>→コルチゾールの<br>最終変換が止まる"]
    C --> D["コルチゾール低下"]
    D --> E["視床下部-下垂体の負のフィードバックが外れる"]
    E --> F["ACTH分泌が代償性に上昇<br>(HPA系が健常な場合)"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='11-deoxycortisol'>11-デオキシコルチゾール</span>が蓄積・上昇"]

つまりこの検査が最終的にみているのは、「コルチゾールが落ちたときに下垂体が応じられるか」というHPA系の、とりわけ下垂体のである。

検査 刺激の向き みているもの
外因性ACTHで副腎を刺激 副腎皮質のコルチゾール産生
内因性コルチゾールを低下させ下垂体を刺激 下垂体の(≒中枢の反応性)

両者は刺激する場所が逆であり、どちらも「」という言葉でまとめると混同する。

手技・プロトコル

現在実際に行われるのは(単回投与法)がほとんどで、古典的なは歴史的な位置づけにとどまる。

項目 (単回投与)
投与量 30 mg/kg 経口、上限3 g1
投与時刻 深夜0時ごろ、・ヨーグルトや軽食とともに内服(悪心対策)1
採血時刻 翌朝7時30分〜8時1
測定項目 、コルチゾール、ACTH
採血直後の対応 を内服させ、阻害が継続することによる副腎不全を予防する運用がある2

古典的なは、基礎の24時間尿中採取とを別日に行ったうえで、成人では750 mgを4時間ごとに計6回(小児は15 mg/kgを同様に6回)投与し、翌日の尿中が基礎値の2〜4倍に増える反応をみる、数日がかりの日程である3の直接測定が一般化した現在では、この尿中を追う古典法を選ぶ理由は乏しく、実施されるとしてもほぼである。

⚠️ 検査を始める前に、副腎自体が外因性ACTHに反応できることを別途確認しておく。 は「副腎はコルチゾールを作れる」ことを前提に下垂体側の反応をみる検査であり、副腎自体に産生能がなければも上昇せず、下垂体の問題なのか副腎の問題なのか区別できなくなる1

判定

判定は2段階で行う。順序を守らないと「反応が乏しい」のか「そもそも薬が効いていない」のか区別できない。

順序 指標 基準 意味
① 阻害の確認 8時のコルチゾール 5 µg/dL(138 nmol/L)未満 が十分に阻害されたことの確認1
② 反応の判定 8時の 7 µg/dL(約200 nmol/L)を超える HPA系(下垂体の)が健常であることを示す正常反応1

⚠️ ①を確認せずに②だけを見てはならない。 コルチゾールが十分下がっていない状態でが低ければ、それは「下垂体が反応できない」のではなく「の阻害自体が弱かった」だけかもしれない。吸収不良や代謝のでも起こりうるため、コルチゾールの抑制を先に確認してからを解釈する。

血漿ACTHも補助的に測定されるが、正常反応のは報告により75〜200 ng/Lと幅があり、単一の検査で確立したがない2。ACTH単独ではの代わりにならず、両者を併せて解釈する2

⚠️ 安全性

は「にコルチゾール合成を止める」検査であるため、を誘発しうる。

  • は禁忌。 もともとコルチゾール産生能が乏しい患者にさらに合成を止める薬を投与すると、急性副腎不全を誘発する1
  • 原則として入院・監視下で行う。 を直ちに使えるを整え、採血後にを内服させて阻害の遷延に備える運用もある2
  • 悪心・嘔吐、めまい、低血圧などが起こりうる。症状が強ければ中止し、必要に応じてを投与する。
  • などのは結果に影響する。 フェニトインのような薬剤は自体の代謝を早め、阻害が不十分になって偽陰性(見かけ上コルチゾールが下がりきらない)を招きうる1

適応と適さない場面

中枢性(続発性)副腎不全の評価が中心的な適応で、とくに次の限界を補う位置づけにある。

⚠️ 現在は実施頻度が下がっている。 自体の入手性、測定が多くの検査室で標準化されていないこと2を誘発しうる安全性の懸念が背景にある。現行のガイドラインも、副腎不全の診断でをルーチンに行うことは推奨せず、朝のコルチゾール測定を第一選択に位置づけている4教科書的には重要な検査だが、実際に行う機会がある施設は限られるというのが現状に即した理解である。

もう一つ、のACTH依存性の鑑別(下垂体性か異所性か)にも歴史的に用いられてきたが、現在この役割はCRH刺激試験(IPSS)に置き換わっている。過剰の有無などのスクリーニングで先に確認しておくべきで、はその後の鑑別のではない。

代替・関連する検査

検査 見ている軸 との違い
副腎皮質のコルチゾール産生 副腎そのものを刺激する。の発症早期は正常反応を示しうる限界があり、はここを補う
低血糖ストレスに対するACTH-コルチゾール軸とGH軸の 生理的ストレスで軸全体をみる。GH評価も同時にできるが心血管疾患・痙攣歴では禁忌
CRH刺激試験 外因性CRHに対するACTH反応 主目的はのACTH依存性鑑別。副腎不全評価での感度はに劣るとされる
でACTH-コルチゾールを抑制できるか のスクリーニング。とは逆に「抑制できるか」をみる
高用量でACTHが抑制されるか のACTH依存性鑑別。が担っていたこの役割は現在ここに置き換わっている

「使えるか」より先に、副腎側のを見たいのか、下垂体側のを見たいのか、の有無をみたいのか鑑別をみたいのかを区別してから選ぶ。

まとめ

  • を阻害してコルチゾールを下げ、下垂体がACTHを増やして応じられるかをみる、の評価に位置づくである。
  • (30 mg/kgを深夜内服、翌朝採血)が現在の標準で、古典的なは歴史的な位置づけにとどまる。
  • 判定は必ず2段階で行う。コルチゾール5 µg/dL未満で阻害が十分かを確認してから、7 µg/dL超で下垂体の反応を判定する。
  • コルチゾール合成をに止めるためを誘発しうる。は禁忌で、原則入院・監視下、をすぐ使えるで行う。
  • 現在は薬剤・測定系の入手性、安全性の懸念から実施頻度が下がっており、現行ガイドラインものルーチン施行を推奨していない。
  • のACTH依存性鑑別に使われた時代もあったが、その役割は現在CRH刺激試験・・IPSSに置き換わっている。

出典

  1. 1.METOPIRONE (metyrapone) capsule — prescribing information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2023)一晩法のプロトコル(メチラポン30 mg/kgを深夜に内服、上限3 g、翌朝7時30分〜8時に採血)、11-デオキシコルチゾールが70 µg/L(7 µg/dL)を超えればHPA系は健常という判定、原発性副腎不全が禁忌であること、検査前に副腎自体が外因性ACTHに反応できることを別途確認しておくべきという注意、抗けいれん薬などが結果に影響しうるという記載を確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Evaluation of plasma ACTH in the metyrapone test is insufficient for the diagnosis of secondary adrenal insufficiency(Frontiers in Endocrinology・2022)11-デオキシコルチゾール7 µg/dL未満・コルチゾール5 µg/dL未満(阻害が十分かかったことの確認)という判定、ACTHカットオフが文献間で75〜200 ng/Lと一致せず自験例のROC至適値は147 ng/L(感度73.2%・特異度83.9%)だったこと、103例中重篤な有害事象はなく悪心・嘔吐で中止した例が2例あったこと、採血直後にヒドロコルチゾンを内服させる安全策、11-デオキシコルチゾール測定が多くの検査室で標準化されていないこと、部分的なACTH分泌不全ではACTH刺激試験より鋭敏な場合があることを確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.European Society of Endocrinology and Endocrine Society Joint Clinical Guideline: Diagnosis and Therapy of Glucocorticoid-Induced Adrenal Insufficiency(European Society of Endocrinology / Endocrine Society・2024)副腎不全の診断において動的検査(メチラポン試験を含む)をルーチンに行うことは推奨せず、朝のコルチゾール測定を第一選択とする現行の推奨(勧告2.8)を確認した。閲覧 2026-08-03
  4. 4.Metyrapone(WikiDoc)古典的な複数回投与法(成人はメチラポン750 mgを4時間ごとに計6回、小児は15 mg/kgを同様に6回投与し、前後に基礎尿中17-OHCSの採取とACTH刺激試験を挟む数日がかりの日程)と、尿中17-OHCSの正常基礎値・正常反応(2〜4倍への増加)の記載を確認した。閲覧 2026-08-03