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Disease Atlas · 感染症 · 症候群

Waterhouse-Friderichsen症候群

Waterhouse-Friderichsen syndrome

別名
WFS
臓器系
感染症内分泌・代謝
科目
PathologyHistopathologyPathophysiologyMedical Microbiology
トピック
病理学 A/29:播種性血管内凝固症候群組織病理 H1-046:副腎出血(肉眼標本)病理学 C/88:副腎の機能異常・腫瘍病態生理学 I-20:急性・慢性副腎皮質機能低下症・先天性副腎過形成微生物学 2/7:髄膜炎菌・非病原性ナイセリア属
合併症
循環性ショック
続発疾患
原発性副腎不全
関連疾患
播種性血管内凝固
治療薬
ヒドロコルチゾンセフトリアキソンバンコマイシンノルアドレナリン
原因微生物
Neisseria meningitidisStreptococcus pneumoniaeHaemophilus influenzaeStaphylococcus aureusStreptococcus pyogenes / GAS
症状
発熱点状出血皮疹低血圧意識障害
検査値
低ナトリウム血症カリウム血糖コルチゾール
原因となる疾患
細菌性髄膜炎

🧠 全体像は、劇症型敗血症が両側副腎のを起こし、急性副腎不全がされて死に至る病態である。最多の起因菌は髄膜炎菌だが「髄膜炎菌に特異的な病名」ではなく、内毒素による全身炎症とを起こしうる劇症感染症であれば起こりうる。学習の幹は一本:・DIC→副腎という「出血しやすい解剖」が標的になる→両側→コルチゾール・アルドステロン欠乏→輸液・に反応しないショック。この最後の一段があるからこそ、確定診断を待たずを先行投与する。

概要・病態生理

は、劇症型細菌性敗血症に伴って両側副腎がに陥り、急性のを来す症候群である。副腎は複数の動脈から豊富な流入を受ける一方、静脈流出路は限られるという解剖学的特性を持ち、でACTH分泌とともに副が増加すると、が重なってを起こしやすい。ここに敗血症性DICによるが加わることで、片側の限局出血にとどまらず両側性・広範なへ進展する。

⚠️ の中心はエピネフリン欠乏ではなく、両側によるコルチゾール・アルドステロン欠乏である。片側性のでは対側が代償し得るが、両側性・広範な破壊はそのものであり、のショックが重畳する。

flowchart TD
    A["劇症型細菌性敗血症<br>(髄膜炎菌など)"] --> B["内毒素による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Systemic Inflammation'>全身性炎症</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial injury'>血管内皮傷害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue factor'>組織因子</span>放出"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='DIC'>播種性血管内凝固</span>"]
    B --> E["副<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal blood flow'>腎血流</span>増加・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous stasis'>静脈うっ滞</span><br>(ACTH刺激下の充血)"]
    D --> F["両側副腎の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhagic necrosis'>出血性壊死</span>"]
    E --> F
    F --> G["コルチゾール欠乏"]
    F --> H["アルドステロン欠乏"]
    G --> I["血管反応性低下・低血糖"]
    H --> J["Na喪失・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypovolemia'>循環血液量減少</span>・高K血症"]
    D --> K["血小板減少→点状出血・紫斑"]
    I --> L["輸液・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasopressor'>昇圧薬</span>に反応しない<span class='jp-term jp-term-diagram' title='circulatory collapse'>循環虚脱</span>"]
    J --> L
    B --> L
    K --> L

💡 「なぜ輸液・に反応しないショックになるのか」は、の機序(血管拡張・)にの機序(コルチゾールによる血管の反応性の維持が失われる)が重なるためである。への血管反応性そのものがコルチゾール依存性であり、これが枯渇すると通常量のでは血圧が保てなくなる。

起因菌とリスク因子

最多の起因菌はNeisseria meningitidisであり、)の過剰産生と菌体表面からのの出芽がとDICを同時に駆動する。ただし本症候群は髄膜炎菌に限らず、他の劇症型感染症でも起こりうる。

起因菌 特徴
Neisseria meningitidis 最多の古典的原因。の過剰産生が劇症化の中心機序
Streptococcus pneumoniae 例で重症化しやすい
Haemophilus influenzae 特にb型、ワクチン未接種児で報告される
Staphylococcus aureus 類縁の劇症例で報告される
Streptococcus pyogenes / GAS の一部として起こりうる

鎌状赤血球症など)と(C5〜C9)欠損症は、莢膜化細菌の排除機構(脾臓での貪食、による)を欠くため、髄膜炎菌をはじめとする莢膜化細菌の劇症感染・本症候群のリスクが上昇する。補体経路を的に遮断するなどの補体の使用者も、終末と同じ機序で髄膜炎菌感染のリスクが高く、事前のワクチン接種が特に重要視される集団である。

臨床像

急激な発熱に続き、点状出血が急速に拡大して紫斑・となり、輸液・に反応しない(ショック)と意識障害を来す。数時間の経過ですることが特徴で、・頭痛)を伴うこともあるが、髄膜炎を合併せず菌血症・敗血症のみで劇症化する例も少なくなく、の有無で本症候群を除外してはならない。

⚠️ の治療で通常反応するはずの晶質液急速輸液・ノルアドレナリンなどのに反応しない、あるいは反応が乏しいは、の重畳を積極的に疑う所見である。

検査所見

  • ・低血糖:アルドステロン・コルチゾール欠乏を反映する電解質異常
  • コルチゾール低値(ストレス下で本来上昇すべき値が不適切に低い)
  • DIC所見:血小板減少、延長、・FDP上昇、
  • 血液培養・(可能なら)髄液培養:起因菌の同定と感受性確認に必須
  • 副腎CT:両側副腎腫大・を確認できることがあるが、治療開始の前提条件にはしない

診断

診断は臨床像(劇症型敗血症+難治性ショック+紫斑)からの強い疑いが出発点であり、確定検査を待つ姿勢そのものが致死的な遅れになる。血液培養を採取したうえで、経験的抗菌薬とを同時並行で直ちに開始し、電解質・コルチゾール値・DIC所見・画像は治療開始後も継続して評価する。

flowchart TD
    A["劇症型敗血症を疑う所見<br>(急激な発熱・紫斑・難治性ショック)"] --> B["血液培養を直ちに採取"]
    B --> C["結果を待たず経験的抗菌薬を開始"]
    B --> D["同時に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenal crisis'>副腎クリーゼ</span>を疑い<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrocortisone'>ヒドロコルチゾン</span>を直ちに投与"]
    C --> E["晶質液の急速輸液・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasopressor'>昇圧薬</span>"]
    D --> E
    E --> F{"輸液・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasopressor'>昇圧薬</span>に反応するか"}
    F -->|"反応不良"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenal crisis'>副腎クリーゼ</span>の重畳を再確認し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrocortisone'>ヒドロコルチゾン</span>継続"]
    F -->|"反応良好"| H["DIC・電解質・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood/culture results'>培養結果</span>に応じて<br>治療を継続・調整"]
    G --> H

治療

本症候群を疑った時点で、診断確定(・画像所見)を待たずを先行投与する。 が重畳している可能性を前提に治療を組み立てることが転帰を左右する。

  • :疑った時点で速やかに静注し、以後は持続静注またはで継続する。検査結果を待って投与を遅らせない。
  • 抗菌薬:血液培養採取後、直ちに広域の経験的抗菌薬(セフトリアキソン±バンコマイシン)を開始する。髄膜炎菌が確定すればセフトリアキソン単剤へ化できる。
  • 循環管理:晶質液の急速輸液に加え、反応不良な場合はノルアドレナリンなどのを用いるが、コルチゾール欠乏が是正されるまで単独では血圧が保てないことを念頭に置く。
  • DICへの対応:活動性出血や高リスク手技があれば血小板・を補充する(DICの項を参照)。
  • 全身管理:低血糖の補正、電解質モニタリング、での臓器支持を並行する。

予防

、両者をまとめた5価ワクチン)は、・終末・補体使用者などのハイリスク群を含め、本症候群の起点となる劇症型を減らすの中心である。発症者とのには、発症後できるだけ早くリファンピシンまたは(妊婦などにはセフトリアキソン筋注)によるを行う。

まとめ

  • は、劇症型敗血症に伴う両側副腎のにより急性のを来す症候群である。
  • 最多の起因菌は髄膜炎菌だが、肺炎球菌・・黄色ブドウ球菌・でも起こりうる。
  • 機序は内毒素による全身炎症とDIC、および副腎特有の血管構築(豊富な動脈流入・限られた静脈流出)とACTH刺激下の充血が重なり、両側に至る一本の流れである。
  • 臨床像は急激な発熱・紫斑()・輸液やに反応しない・意識障害で、髄膜炎を伴わずに劇症化することもある。
  • (C5〜C9)欠損症、補体など)使用者は髄膜炎菌の劇症感染リスクが高く、ワクチン接種が重要である。
  • 治療の要は、診断確定を待たずを先行投与することであり、これに・輸液・・DICへの対応を組み合わせる。