薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B32 Antineoplastics / 抗腫瘍薬 · 必修

ブレオマイシン

bleomycin

分類
Antineoplastics / 抗腫瘍薬
商品名(日本)
ブレオ
科目
Pharmacology
トピック
B32: Drugs used in cancer treatment II (cytotoxic agents targeting DNA)
禁忌疾患
特発性肺線維症
対象疾患
ホジキンリンパ腫リンパ管奇形陰茎癌精巣腫瘍
原因となる疾患
間質性肺疾患薬剤性肺障害

🧠 全体像に分類される薬で、他のDNA標的抗がん薬と違いでDNA鎖そのものを切断するという壊し方をする。骨髄には比較的優しい(骨髄抑制が少ない)代わりに、分解酵素であるの活性が低い肺と皮膚に選択的に毒性が集中するという一点が、この薬のすべての注意点を説明する。のリスクを直接決めるため、「今回で何単位目か」を意識する薬である。

薬効群の中での位置づけ

B32の軸で言えば「④DNA鎖を切る:によるDNA鎖切断」に分類されるで、「⑤DNAに挟み込む:」に分類されると並び、とは異なる壊し方をする。

系統 代表薬 DNAへの作用 骨髄抑制 特徴的な臓器毒性 細胞周期依存性
DNA鎖切断型 生成→鎖切断 少ない G2/特異的
に挟み込みRNA/DNA合成阻害 あり 非特異的

はこのB32グループの中で唯一「骨髄に優しい」薬。 他のDNA標的抗がん薬が骨髄抑制を共通の弱点とするのに対し、は骨髄での活性が高く速やかに不活化されるため、時に骨髄抑制を積み増さずに済む「都合の良い一枠」として重宝される。その代わりに肺という別の弱点を持ち込む。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bleomycin'>ブレオマイシン</span>が鉄イオン(Fe2+)と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chelation'>キレート</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='coordination complex'>錯体</span>を形成"] --> B["酸素分子と反応し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reactive oxygen species (ROS)'>活性酸素種</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free radicals'>フリーラジカル</span>)を生成"]
    B --> C["DNA鎖に結合し一本鎖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='double-strand break'>二本鎖切断</span>を起こす"]
    C --> D["修復が追いつかずG2/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='M phase'>M期</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell cycle arrest'>細胞周期停止</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apoptosis induction'>アポトーシス誘導</span>(G2/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='M phase'>M期</span>特異的)"]
    F["肺・皮膚は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bleomycin hydrolase'>ブレオマイシン加水分解酵素</span>活性が低い"] -.->|"不活化されず薬剤が蓄積"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary fibrosis'>肺線維症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cutaneous hyperpigmentation'>皮膚色素沈着</span>"]
    H["骨髄は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bleomycin hydrolase'>ブレオマイシン加水分解酵素</span>活性が高い"] -.->|"速やかに不活化"| I["骨髄抑制が少ない"]

💡 酸素投与がを悪化させうる。 の作用機序そのものが性の生成であるため、周術期などで高濃度酸素を投与すると肺障害が増悪するリスクがある。治療歴のある患者では、麻酔科医に投与歴を申告し不必要な高濃度酸素投与を避けることが重要。

薬物動態

項目 値・特徴
IV/IM/SC(ではも行う)
代謝 による加水分解不活化。肺・皮膚はこの酵素活性が低く薬剤が蓄積しやすい
排泄 主に(未変化体)。腎機能低下で毒性が増強する
半減期 約2〜4時間(腎機能正常時)
生涯に上限があるリスクが投与総量に依存するため)

適応

領域 使いどころ
リンパ腫 (ABVDレジメンの構成薬。中間PET陰性例ではを省略できる場合がある)
(BEPレジメン:シスプラチン
その他 のコントロール。抗腫瘍目的ではなくとして使用)

用法・用量

IV/IM/SC。に基づく投与だが、生涯に上限があり、これを超えるとのリスクが急激に上昇する。 投与前に:DLCO)を確認し、治療中も定期的にモニタリングする。ABVDレジメンでは2サイクル後の中間PET-CTが陰性(Deauville 1〜3)であれば、以降はを省略してAVDとする——RATHL試験で3年PFS・OSに差が無くだけが減ることが示され、NCCNガイドラインもこの運用を採る1。実際の投与量・上限は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:既存の高度肺疾患(など既存のがあるとが増強する)、過敏症
  • ⚠️ 依存性。 (特にDLCO低下)と胸部画像で早期に気づく。喫煙・高齢・腎機能低下・放射線治療歴・高濃度酸素曝露が追加のリスク因子。パターン分類ととしての位置づけはを参照
  • ⚠️ 周術期の高濃度酸素投与を避ける。 投与歴のある患者は必ず麻酔科・外科チームへ申告する
  • 骨髄抑制が少ないため他のと組み合わせやすく、レジメンの「骨髄温存枠」として使われる

副作用

頻度 内容
高頻度 発熱、
注意 Raynaud現象様の血管障害、爪の変化
重篤・まれ 、不可逆的になりうる)、アナフィラキシー様の急性反応(特にリンパ腫患者で頻度が高い)

まとめ

  • 。鉄とのを介してを生成し、DNA鎖を直接切断するG2/特異的な薬。
  • 骨髄抑制が少ない代わりに、活性の低い肺・皮膚に毒性が集中する。
  • に依存し、生涯の上限を意識した投与設計が必須。
  • 周術期の高濃度酸素投与で肺障害が悪化しうるため、投与歴の申告が重要。
  • (ABVD)・(BEP)という2つの高治癒率レジメンの構成薬。

出典

  1. 1.Adapted Treatment Guided by Interim PET-CT Scan in Advanced Hodgkin's Lymphoma (RATHL)(New England Journal of Medicine・2016)ABVD 2サイクル後の中間PETが陰性(Deauville 1–3)なら以降ブレオマイシンを省略してAVDとしてよい。3年PFSはABVD 85.4%対AVD 84.5%、3年OSは97.0%対97.5%で差がなく、肺毒性は減る。NCCNガイドラインもこの運用を採る閲覧 2026-08-03