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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

陰茎癌

Penile cancer

臓器系
腫瘍腎・泌尿器
科目
UrologyHistopathologyPathology
トピック
泌尿器科学 N-09:陰茎腫瘍組織病理 H2-077B:陰茎扁平上皮癌病理学 C/79:陰茎・陰嚢・精巣上体の疾患
治療薬
メトトレキサートブレオマイシンシスプラチン
原因微生物
HPV 16, 18, 31, 33, 58
症状
外陰部潰瘍
スコア
TNM分類
原因となる疾患
HPV感染症(疣贅・尖圭コンジローマ・子宮頸部異形成)

🧠 全体像の大部分(95%)は扁平上皮癌で、HPV関連経路HPV、特にHPV16が中心。亀頭に多く未分化型の上皮内腫瘍を経る)とHPV非関連経路・慢性炎症を背景に、包皮に多く分化型の上皮内腫瘍を経る)という2つの独立した発癌経路を持つ。小児期・思春期の環状切除は強い予防効果を持ち、環状切除が慣習的に行われる集団ではがほぼ存在しないとされるほどである。診断・治療の中心は可能性と鼠径リンパ節転移の評価を別々に組み立てることで、リンパ節転移の有無がを決める最大の予後規定因子になる。

病態:2つの発癌経路

項目 ①HPV関連経路 ②HPV非関連経路
主な発生部位 亀頭に多い 包皮に多い
未分化型の 分化型PeIN
背景 高リスクHPV(特にHPV16)の などの慢性炎症
危険因子 複数の、喫煙 慢性炎症、不衛生、の長期貯留

HPV関連経路はHPV陽性率が上皮内腫瘍の90%超に達し主に亀頭に生じ未分化型の上皮内腫瘍を経る一方、HPV非関連経路は主に包皮に生じ分化型の上皮内腫瘍・と関連する1は現在すべてとみなされ、病因を反映してHPV関連PeIN/分化型PeINなどに分類する1HPV非関連経路の代表的な背景病変が、BXO)であり、長期の慢性炎症が・分化型PeINを経て浸潤癌へ進展しうる。

flowchart TD
    A["亀頭・包皮の慢性刺激"] --> B{"高リスクHPVの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='persistent infection'>持続感染</span>があるか"}
    B -->|"あり(HPV関連経路)"| C["未分化型PeIN<br>(主に亀頭)"]
    B -->|"なし・慢性炎症主体(HPV非関連経路)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='BXO'>硬化性苔癬</span>・慢性炎症<br>→分化型PeIN(主に包皮)"]
    C --> E["浸潤性扁平上皮癌"]
    D --> E
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary tumor'>原発巣</span>の評価:<br>浸潤深度・海綿体進展"]
    E --> G["鼠径リンパ節の評価:<br>最大の予後規定因子"]

疫学:環状切除の予防効果

は比較的まれな悪性腫瘍で、南米・南アジア・サハラ以南アフリカでが高い(10万人あたり3〜7人)一方、西欧・米国では10万人あたり0.3〜2.1人にとどまる。環状切除が宗教的・文化的慣習としてに行われる集団では、はほぼ存在しないとされる2

では、小児期・思春期の環状切除に浸潤性への強い予防効果(0.33)が示されている。ただし💡 この効果の一部は「そのものを予防する」ことを介している可能性がある——の既往がない集団に限定した解析では、この予防効果が消失した研究もある3。つまり環状切除は、包皮内の貯留・慢性炎症という発癌経路そのものを未然に断つことで効果を発揮すると考えられている。

危険因子は不衛生な陰部環境、性感染症、長期のの長期貯留)、喫煙である。好発年齢は60歳前後の高齢男性だが、HPV非関連経路はという慢性疾患を背景にするため、より若い年代でも生じうる。

病理・転移様式

の組織型は扁平上皮癌が95%を占め、残り5%を肉腫・Kaposi肉腫・悪性黒色腫が占める。米国の陰茎扁平上皮癌症例のレビューでは、原発部位は亀頭34.5%、包皮13.2%、陰茎体5.3%、複数部位にまたがるもの4.5%で、部位不詳が42.5%を占めた1

はまれで、転移がまず表在・深鼠径リンパ節に生じ、続いて骨盤(腸骨)リンパ節へ進展するという一貫した経路をたどる。

前駆病変

リスク 病変 対応
低リスク 切除・環状切除+病理検査
高リスク 、Zoon より積極的な切除・厳重なフォローが必要

臨床像

最も多い訴えは病変そのものであり、皮膚レベルの病変、、紅斑を伴う病変、として現れる。出血、疼痛、分泌物、悪臭を伴うことがあるが、無症状のこともある。

⚠️ 治らない亀頭・包皮の潰瘍や腫瘤を「感染」「の反復」で片付けず、標準治療に反応しない病変は積極的に生検する。 陰茎の皮膚病変・潰瘍・結節・様の皮疹はいずれも、通常の治療で改善しなければ悪性を疑う対象になる1のような慢性炎症性背景病変がある患者では特に、既存病変の性状変化(新たな、色調変化)を見逃さない。として受診した男性でも、治癒しない・非典型な病変は生検で除外する対象になる。

診断

については大きさ・部位・への浸潤の有無を評価し、生検は必須である。リンパ節は生存に関わる最良の予後因子であるため、の詳細な触診が欠かせない。画像検査は骨盤CT(リンパ節転移の評価)、遠隔転移が疑われる場合の・腹部/肺/頭部CTを用いる。病期はで評価する。

治療:原発巣とリンパ節を分けて考える

flowchart TD
    A["生検で浸潤性扁平上皮癌を確認"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary tumor'>原発巣</span>のリスク分類"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carcinoma in situ, CIS'>上皮内癌</span>"| C["保存的治療+厳重な経過観察"]
    B -->|"低〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermediate risk (PE)'>中間リスク</span>"| D["温存戦略:完全切除+断端確保"]
    B -->|"高リスク"| E["部分または全<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penile amputation'>陰茎切断</span>術"]
    A --> F{"鼠径リンパ節の評価"}
    F -->|"cN0・中間〜高リスク"| G["ダイナミック<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sentinel lymph node biopsy, SLNB'>センチネルリンパ節生検</span>"]
    F -->|"転移陽性・高リスクcN0"| H["鼠径リンパ節郭清"]
    G -->|"センチネル節陽性"| H

原発巣

は保存的治療+厳重な経過観察が可能なことがある。低〜では完全切除+即時再建術による温存戦略を優先し、代替として放射線療法・を検討する。高リスクでは部分または全術を基本とするが、選択された症例では手術も検討する。

鼠径リンパ節

所属リンパ節転移の有無が最大の予後規定因子である——の5年90%に対し、所属リンパ節転移が陽性になると50%まで低下する2。中間〜高リスクのcN0症例(pT1G2、pT1〜4G3/G4、陽性のいずれか)には、根治的鼠径リンパ節郭清に先立ってダイナミックを行い、転移が確認された症例に郭清を進める2。高リスク患者では、や年齢を理由に除外される場合を除き、すべての患者に所属リンパ節評価が必要とされる。

全身治療

遠隔転移・進行例では、メトトレキサートシスプラチンを中心としたや、による放射線療法を組み合わせる。

まとめ

  • の95%は扁平上皮癌で、HPV関連経路(HPV16中心、亀頭に多い)とHPV非関連経路(などの慢性炎症、包皮に多い)という2つの発癌経路を持つ。
  • 小児期・思春期の環状切除には強い予防効果があり、慣習的に環状切除が行われる集団ではがほぼ存在しない。効果の一部は予防を介すると考えられている。
  • 治らない亀頭・包皮の潰瘍や腫瘤を感染やの反復と決めつけず、標準治療に反応しなければ生検する。
  • 転移がまず表在・深鼠径リンパ節に、続いて節に生じ、所属リンパ節転移の有無が5年を90%から50%へ左右する最大の予後規定因子である。
  • の治療はかどうかをリスク分類で決め、鼠径リンパ節は中間〜高リスクcN0にダイナミック、転移陽性・高リスク例に鼠径リンパ節郭清を行う。

出典

  1. 1.Penile Cancer and Penile Intraepithelial Neoplasia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)HPV関連経路は上皮内腫瘍の90%超に検出され主に亀頭・未分化型の上皮内腫瘍と関連する一方、HPV非関連経路は包皮に多く分化型の上皮内腫瘍・硬化性苔癬と関連すること。すべての陰茎上皮内腫瘍性病変は現在高異型度とみなされること。標準治療に反応しない陰茎の皮膚病変・潰瘍・結節・亀頭包皮炎・皮疹はいずれも悪性を疑い生検の対象とすべきこと。米国の陰茎扁平上皮癌症例のレビューで原発部位が亀頭34.5%・包皮13.2%・陰茎体5.3%・重複部位4.5%・部位不詳42.5%であったこと閲覧 2026-08-12
  2. 2.Penile cancer: ESMO–EURACAN Clinical Practice Guideline for diagnosis, treatment and follow-up(ESMO Open / European Society for Medical Oncology・EURACAN・2024)環状切除が宗教的・文化的慣習として日常的に行われる集団では陰茎癌がほぼ存在しないとされ、西欧・米国(10万人あたり0.3〜2.1人)と南米・南アジア・サハラ以南アフリカ(同3〜7人)で発生率に地理的な大差があること。所属リンパ節転移の有無で5年生存率が限局病変の90%から所属リンパ節転移陽性の50%へ低下すること。中間〜高リスクのcN0症例(pT1G2、pT1〜4G3/G4、脈管侵襲陽性)には根治的鼠径リンパ節郭清の前にダイナミックセンチネルリンパ節生検を行うべきこと閲覧 2026-08-12
  3. 3.Male circumcision and penile cancer: a systematic review and meta-analysis(Cancer Causes & Control・2011)小児期・思春期の環状切除は浸潤性陰茎癌に対し強い予防効果(オッズ比0.33、95%信頼区間0.13-0.83、3研究)を示すが、包茎の既往がない集団に限定した2研究ではこの予防効果が消失しており、効果の一部が包茎そのものの予防を介している可能性があること閲覧 2026-08-12