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Microbe Atlas · ウイルス

HPV 16, 18, 31, 33, 58

ヒトパピローマウイルス16・18・31・33・58型

分類
パピローマウイルス / Papillomaviruses
性状
エンベロープなし NakeddsDNA
科目
Medical Microbiology
トピック
3/18: Papilloma and Polyomaviruses (BK, JC)
原因となる疾患
HPV感染症(疣贅・尖圭コンジローマ・子宮頸部異形成)陰茎癌外陰癌子宮頸癌頭頸部癌肛門管癌

🧠 全体像:この5型は粘膜に住み着く高リスク(発癌性)HPVの代表株で、(6・11)皮膚型(1〜4)とは運命が完全に分かれる。発癌の正体はE6・E7という2つのウイルス蛋白が、p53とRbという細胞周期の2大ブレーキを同時に外すという一点に尽きる——このE6/p53、E7/Rbという対応関係を押さえれば、なぜ「一過性の感染」ではなく「」が発癌の必要条件になるかも説明がつく(免疫が速やかに排除すればブレーキが外れ続ける時間が生まれない)。16型が突出して重要で、の約半数、HPV関連の大半を占める。

ウイルスの構造とゲノム

エンベロープを持たないという皮膚型HPVと共通するため、詳細はそちらを参照。この5型は性器・肛門・口腔咽頭などの粘膜を標的とする「」に属し、疫学的に癌との関連が確立していることから「」に分類される。他のとして35・39・45・51・52・56・59・68型なども知られる。

病原性の仕組み

性行為(性器−性器、口腔−性器)を介してに感染し、免疫が排除できずにへ移行した場合にのみ発癌のリスクが生じる——多くの感染は1〜2年以内に自然消退し、癌化するのはごく一部の例に限られる。

flowchart TD
    A["高リスクHPVが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transformation zone (prostate: transition zone)'>移行帯</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tonsillar crypt'>扁桃陰窩</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cell layer'>基底細胞層</span>へ感染"] --> B{"免疫で排除できるか"}
    B -->|"はい(多くの症例)"| C["自然消退・検出不能"]
    B -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='persistent infection'>持続感染</span>"]
    D --> E["E6がp53を分解・不活化"]
    D --> F["E7がRbを不活化"]
    E --> G["アポトーシス・G1<span class='jp-term jp-term-diagram' title='checkpoint'>チェックポイント</span>の喪失"]
    F --> H["E2F遊離→S期への<br>無制御な移行"]
    G --> I["細胞周期制御の破綻・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Genomic instability'>ゲノム不安定性</span>"]
    H --> I
    I --> J["異形成(LSIL→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Heaviness of Smoking Index'>HSI</span>L)"]
    J --> K["浸潤癌"]

E6はp53を、E7はRbを不活化する——この対応を逆にしない。 p53は細胞にダメージがあれば増殖を止める・アポトーシスへ導く「損傷チェック役」、Rbは細胞周期のG1からS期への進行を抑えている「ブレーキ役」。E6・E7はこの2つの独立したブレーキを同時に外すことで、DNA損傷を蓄積しながら増殖を続ける細胞を作り出す。

💡 がHPV関連癌のになる理由もここにある。 E7によるRb不活化がp16の負のフィードバックを外すため、HPV駆動性の腫瘍ではp16がする——HPV検査を直接行わなくても、病理でp16陽性を確認すればHPV関連である可能性が高いと判断できる。

感染経路と疫学

  • 性的接触(性器−性器、口腔−性器)が主要経路で、周産期の母子感染はまれ
  • 免疫抑制状態(HIV感染症・AIDS、臓器移植後など)では・病変進展のリスクが上昇し、HPV関連癌はAIDS指標疾患の一つに数えられる
  • 喫煙は子宮頸部の発癌リスクを独立して押し上げる。初交年齢の若さ・複数のは曝露機会そのものを増やす

起こす疾患

は複数部位の・癌に関与する。それぞれの臨床像・・治療の詳細は各疾患ノートに譲る。

部位 関連疾患 特記事項
子宮頸部 から(CIN)を経て浸潤癌へ。16・18型で症例の大半を占める
扁平上皮癌の主要な発癌経路。16型が中心
HPV関連型(vulvar L由来)の原因。にはHPV非依存の発癌経路も別に存在する
・舌根に好発。16型が大半を占め、若年・非喫煙者にも生じうる

18型は腺癌との関連が16型より強い。 子宮頸部の腺癌は頸管内から発生するため細胞診で見つけにくく、扁平上皮癌中心の検診体系の“死角”になりやすい点が実務上の注意点になる。

診断

  • Pap smear(スクリーニング): 核が腫大しした
  • hrHPV検査: DNA/mRNA検出による一次スクリーニング。現行のリスクベース管理では細胞診と組み合わせて使われることが多い
  • HPV駆動性腫瘍の。特にで用いる
  • PCR: 血清型の同定

治療と予防

・浸潤癌それぞれの治療(、放射線・など)は各疾患ノートに譲る。

9)が6・11・16・18・31・33・45・52・58型を標的とし、この5型のうち16・18・31・33・58型はすべてカバーされる(45・52型も含まれるが本ノートの対象外)。既存感染・既存病変は治療しない点に注意し、ワクチン接種後も年齢・地域に応じた検診を継続する。

まとめ

  • 16・18・31・33・58型はHPVのうち発癌性が確立した「」で、だけが発癌リスクとなる(多くの感染は自然消退する)。
  • 発癌機序はE6によるp53不活化とE7によるRb不活化——2つの細胞周期ブレーキを同時に外す点が核心。
  • 16型が最重要で、の約半数、HPV関連の大半を占める。18型は腺癌との関連が相対的に強い。
  • (HPV関連型)・)など複数部位の癌に関与し、免疫抑制下ではリスクがさらに上昇する。
  • 診断はPap smear()・hrHPV検査・を組み合わせる。9価ワクチンがこの5型すべてをカバーするが、既存感染・病変は治療できない。