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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

子宮頸癌

Cervical cancer

別名
子宮頸がん
臓器系
腫瘍生殖・産婦人科
科目
PathologyGynecologyOncology
トピック
病理学 C/71:子宮頸部の病理婦人科 17:子宮頸癌の病因と前癌病変婦人科 18:子宮頸癌の症候・徴候・検診婦人科 19:子宮頸癌の病期・治療・病理腫瘍学 II-15:子宮頸癌の疫学・病因・組織・病期・症状・診断腫瘍学 II-16:子宮頸癌の放射線・外科・薬物治療
関連疾患
外陰癌肛門管癌
治療薬
シスプラチンパクリタキセルカルボプラチンベバシズマブペムブロリズマブイリノテカン
原因微生物
HPV 16, 18, 31, 33, 58HPV 6, 11
症状
異常子宮出血腰痛骨盤痛出血体重減少浮腫
画像所見
水腎症
スコア
CIN分類
組織像
高異型度扁平上皮内病変(CIN3)浸潤性子宮頸癌子宮頸部扁平上皮癌子宮頸部扁平上皮癌
原因となる疾患
HPV感染症(疣贅・尖圭コンジローマ・子宮頸部異形成)

🧠 全体像は、)における高リスクHPVのが必要因子である。E6がp53を、E7がRbを不活化し、上皮成熟障害からCIN(LSIL/L)を経て浸潤癌へ進む。前癌段階は無症状で、HPVワクチンによるとhrHPV検査を中心とした検診によるが主軸となる。浸潤癌はFIGO 2018病期(画像・病理情報を統合し、リンパ節転移をIIIC1/IIIC2として扱う)で評価し、早期は手術、局所はシスプラチン併用、転移・再発例は全身薬物療法(免疫療法を含む)で治療する。

病態

発生母地とHPVの生物学

子宮頸部は外子宮が扁平上皮、頸管側が円柱(腺)上皮に覆われ、両者が接するが活発に起こる。子宮頸部・癌の大部分はこのに発生する。

高リスクHPV(16、18、31、33、35、39、45、52、58など。うち16・18型が多くを占める)の感染は一般的だが、多くはで自然に排除される。発癌に重要なのはにおけるである。

flowchart TD
    A["hrHPVが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transformation zone (prostate: transition zone)'>移行帯</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cells'>基底細胞</span>へ感染"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='host immunity'>宿主免疫</span>で排除できるか"}
    B -->|"はい(多くの場合)"| C["自然消退・検出不能"]
    B -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='persistent infection'>持続感染</span>"]
    D --> E["ウイルスDNAの宿主ゲノムへの組込み"]
    E --> F["E6によるp53分解促進・E7によるRb不活化"]
    F --> G["アポトーシス低下・E2F遊離によるS期遺伝子活性化"]
    G --> H["上皮成熟障害と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aberrant cell type'>異型細胞</span>増殖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Genomic instability'>ゲノム不安定性</span>"]
    H --> I["CIN(LSIL→HSIL)"]
    I --> J["基底膜を越えて浸潤癌"]

(6、11など)はウイルスゲノムが宿主ゲノムに組み込まれずのままを続けるため、コンジローマ・LSILを来すが浸潤癌にはほぼ結びつかない。

⚠️ 「Lの少なくとも35%が10年以内に浸潤癌になる」という旧来の固定値は、・病理定義・治療の有無で大きく変わる。CIN 3(L)は未治療での長期進展リスクが高い一方、CIN 1(LSIL)は約70%がするという方向性で理解する。

進展を助ける因子

初性交年齢が若い、複数のパートナー、喫煙、免疫抑制・HIV感染、検診未受診などがから・癌への進展を助ける。💡 これらを患者個人の責任として扱うのではなく、ワクチン接種、検診アクセス、禁煙支援、免疫状態の管理という介入可能な要素に結びつけて考える。

組織型

頻度 特徴
扁平上皮癌 約75% ほぼ全例がHPV関連。Lから生じる
腺癌 約20% 大部分がHPV関連()。・胃型などの非HPV関連亜型は進行性で予後不良。頸管内発生のため検診で見つけにくいことがある
など稀な組織型 約5% なども含め予後・治療反応が扁平上皮癌と異なる

臨床像

前癌病変(CIN)

CIN自体は通常無症状であり、細胞診・HPV検査の異常を契機に発見される。

上皮内の広がり 主な意味
LSIL CIN 1 下層約1/3、 HPV産生性感染。が多い
L CIN 2 下層約2/3 真のを含む
L CIN 3(を含む) ほぼ全層、なし 浸潤癌への進展リスクが高い

浸潤癌の症状・進展

典型症状は性交後出血、月経間出血、、持続する水様・膿性・血性である。進行例では、下肢浮腫、排尿頻回、水腎症、便通異常、体重減少、鼠径・リンパ節腫大を来す。では潰瘍性または腫瘤、接触出血を認め、・骨盤壁方向への進展評価に役立つ。

flowchart TD
    A["子宮頸部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary tumor'>原発巣</span>"] --> B["直接浸潤"]
    B --> C["子宮体部・腟・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parametrium'>子宮傍組織</span>・膀胱・直腸"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphatic'>リンパ行性</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pelvic lymphatics'>骨盤リンパ</span>節"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='para-aortic lymph node'>傍大動脈リンパ節</span>"]
    A --> G["血行性"]
    G --> H["肺・肝・骨など"]

⚠️ 肉眼的に異常な子宮頸部、または症状(性交後出血・など)があれば、直近の検診結果が陰性でも検診アルゴリズムを待たず生検を含む診断評価を行う。

診断

一次予防:HPVワクチン

現在の中心は(HPV 6、11、16、18、31、33、45、52、58を標的)で、性的曝露前の接種が最も有効だが、接種機会を逃した人にも年齢・国の制度に応じたキャッチアップ接種を行う。ワクチンは既存感染を治療せず、すべての発癌性HPV型を含まないため、接種後も推奨された検診を継続する。

二次予防:検診

検診法・開始年齢は国の制度で異なる。米国の代表的な平均リスク者向け推奨は以下のとおりである。

年齢 推奨される方法
21〜29歳 単独を3年ごと
30〜65歳 医療者採取の一次hrHPV検査を5年ごとが優先。またはhrHPV+細胞診の併用を5年ごと、hrHPVが利用できなければ細胞診単独
30〜65歳の選択肢 承認検査を用いた自己採取hrHPV検査を3年ごと(結果連絡・追跡が必要)
65歳超 十分な既往陰性歴があり高リスク歴がなければ終了を検討

検体採取ではブラシ・スパチュラで外子宮口周囲と頸管側のを確実に含めることが重要である。「頸管・頸部・腟プールの3検体が必須」という旧手順は現行の一律要件ではない。

⭐ 異常検診結果は、単一結果だけでなく年齢・HPV型・細胞診・既往検査/治療歴を組み合わせた即時CIN 3+リスクに基づく(ASCCP 2019リスクベース管理コンセンサスガイドライン)。「ASC-US+HPV陰性なら12か月後」のような固定フローは旧運用であり、現在はリスクベース指針に従う。

flowchart TD
    A["hrHPV検査・細胞診"] --> B["低リスク"]
    B --> C["所定間隔で再検または通常検診"]
    A --> D["リスク閾値以上"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colposcopy'>コルポスコピー</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transformation zone (prostate: transition zone)'>移行帯</span>を観察し疑わしい部位を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='targeted biopsy'>狙撃生検</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='histology'>組織診</span>に基づき監視・切除・癌精査"]
    A --> G["肉眼的腫瘍・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='warnings'>警告</span>症状あり"]
    G --> H["検診アルゴリズムを待たず生検"]

では全体の可視性を記録する。が見えない場合や頸管病変が疑われる場合に検討するが妊娠中は禁忌である。診と生検結果の不一致、が十分観察できない、または微小浸潤が疑われる場合は診断的を検討する。

浸潤が明らかな場合は、浸潤を評価し、骨盤MRI(腫瘍径・頸部間質・・隣接臓器浸潤の評価に優れる)、CTまたは(リンパ節・遠隔転移の評価)を行い、浸潤が疑われれば・直腸鏡を追加する。細胞診はあくまで検診であり、明らかな癌の確定診断を代替しない。

FIGO 2018病期分類

現行のは臨床診察に加え画像・病理情報を病期決定に利用でき、骨盤・転移をIIIC期として扱う(画像診断ならrならpを付記できる)。IA期にあった水平方向7 mmの上限は廃止された。

病期 定義
IA1 顕微鏡的浸潤、深度 <3 mm
IA2 深度 3〜<5 mm
IB1 浸潤癌で最大径 <2 cm
IB2 最大径 2〜<4 cm
IB3 最大径 ≥4 cm
IIA1/IIA2 上部2/3腟へ進展、浸潤なし。最大径 <4 cm/≥4 cm
IIB へ浸潤するが骨盤壁に達しない
IIIA 下部1/3腟へ進展、骨盤壁には達しない
IIIB 骨盤壁へ進展、または水腎症・無機能腎
IIIC1 節転移
IIIC2 転移
IVA 膀胱・直腸粘膜浸潤、または真骨盤外への直接進展
IVB 遠隔転移

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='histology'>組織診</span>断と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='FIGO stage'>FIGO病期</span>"] --> B["IA〜選択された早期IB"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conization (cone biopsy)'>円錐切除</span>・単純または根治的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hysterectomy'>子宮全摘</span>"]
    C --> D["適格例では妊孕性温存(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conization (cone biopsy)'>円錐切除</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radical trachelectomy'>根治的子宮頸部摘出術</span>)"]
    A --> E["IB3〜IVAの局所進行癌"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='external beam radiation therapy, EBRT'>外部照射</span>+同時シスプラチン"]
    F --> G["画像誘導<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brachytherapy'>小線源治療</span>"]
    A --> H["IVB・再発癌"]
    H --> I["全身薬物療法(±免疫療法)・局所緩和・支持療法"]

早期癌

IA1でがなく断端陰性なら、妊孕性希望に応じまたはを検討する。IA2〜早期IBでは+リンパ節評価、または根治的放射線治療を選ぶ。妊孕性温存では厳密な適格性評価のもとまたは(子宮頸部・・腟上部を切除し子宮体部を腟へ再吻合)+リンパ節評価を行う。

⚠️ LACC試験(2018年):早期では、低侵襲(腹腔鏡・ロボット支援)アプローチがで開腹術よりに劣ることが示された。現在NCCNガイドラインは開腹アプローチを標準として推奨しており、な第一選択ではない。

の切除範囲による区別を整理する。

術式 主な切除範囲
子宮体部。子宮頸部を残す
子宮体部+子宮頸部
子宮、子宮頸部、、腟上部を含む
子宮体部を温存し、頸部・・腟上部を切除

局所進行癌

IB3〜IVA期の中心は、+同時シスプラチン)+腔内・の組合せである。画像誘導(MRI/CTで腫瘍と膀胱・直腸・S状結腸・小腸を描出)でへ高線量を集中することが重要で、転移ではを拡大する。C、メトトレキサート、の一律併用は旧来の考え方で現行標準ではない。

放射線治療の有害事象は時期で異なる。

時期 主な有害事象
急性 下痢、悪心、頻尿、膀胱炎、骨髄抑制、皮膚炎
晩期 腟狭窄・乾燥、直腸/膀胱障害、瘻孔、骨盤骨折、卵巣機能不全、

若年患者ではで散乱線を減らせるが、機能温存を保証せず卵巣転移リスクも考慮する。

遠隔転移・再発

シスプラチン)+を基盤に、、PD-L1発現などに応じを組み合わせる(KEYNOTE-826試験:持続・再発・転移性の一次治療で+化学療法±を有意に改善し、現行の標準治療に位置づけられる)。既治療後にはなどとの併用療法、などを・既治療歴に応じて検討する。症状緩和目的の放射線・手術、も早期から統合する。

⚠️ 「シスプラチン+が常に最良」という固定処方ではなく、PD-L1発現、腎機能、出血・瘻孔リスク、を評価して個別化する。

骨盤除臓術

遠隔転移がなく既内に限局した中心性再発など厳選例のである。前方は膀胱、後方は直腸、では両方を含み、尿路・消化管再建を要する。

まとめ

  • における高リスクHPVのであり、E6/p53・E7/Rb不活化を介してCIN(LSIL→L)から浸潤癌へ進展する。
  • は無症状で、によるとhrHPV検査中心の検診(30〜65歳は一次hrHPV検査5年ごとが優先)によるが柱である。異常結果はASCCP 2019リスクベース指針で管理し、肉眼的病変・症状は検診結果にかかわらず生検する。
  • FIGO 2018病期は画像・病理情報を統合し、腫瘍径でIB1〜IB3を細分、リンパ節転移をIIIC1(骨盤)・IIIC2(傍大動脈)として扱う。
  • 早期癌は(低侵襲より開腹術が標準、LACC試験)または放射線治療、妊孕性温存ではを選ぶ。
  • 局所進行癌(IB3〜IVA)はシスプラチン併用+画像誘導が根治の柱である。
  • 転移・再発例はを基盤に、(KEYNOTE-826)を組み合わせる全身治療が現行標準である。