組織病理学

組織病理学 · H1-067

高異型度扁平上皮内病変(CIN3)

HSIL – CIN3

描出疾患
子宮頸癌
スコア
子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)分類

🧠 全体像:CIN3は、異型様細胞が上皮全層をほぼ置換する扁平上皮内病変(high-grade squamous intraepithelial lesion:)である。基底膜は保たれ、がない点が浸潤性との決定的な境界となる。

用語の対応

は細胞診()と(分類)の双方で用いられる。2012年の勧告は下部肛門生殖器全体で二段階用語を採用し、必要に応じて括弧内に表記を併記する形にした12。

検査・分類 用語 意味
細胞診 CIN2またはCIN3を疑う細胞診所見
(二段階分類) 組織学的 CIN2・CIN3に概ね対応する
(分類) CIN2 が上皮のおよそ下側3分の2まで及ぶ
(分類) CIN3 からを含み、がほぼ全層を占める
浸潤癌 腫瘍細胞が基底膜を越えて間質へ侵入する

💡 CIN2は独立した生物学的段階ではない。 勧告では、形態でCIN2と診断されてきた病変をで分類しなおすことが推奨されている2。保存的に経過観察されたCIN2を集めた(36研究・3160人)では、24か月時点で50%(95%信頼区間43〜57%)が消退、32%が持続、18%が進展し、30歳未満に限れば消退60%・進展11%であった3。

発生と形態

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carcinogenicity'>発癌性</span>高リスク<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human papillomavirus'>HPV</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='persistent infection'>持続感染</span>"] --> B["ウイルス蛋白E6・E7の持続発現"]
    B --> C["p53・RB経路の抑制"]
    C --> D["細胞周期制御の破綻"]
    D --> E["成熟障害と核異型"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-grade squamous intraepithelial lesion'>HSIL</span>・CIN2"]
    F --> G["CIN3"]
    G --> H["基底膜を越えると浸潤癌"]

標本の読み方

所見 CIN3での特徴
正常上皮との境界 成熟する正常上皮から、異型を示す上皮へ急に移行する
細胞配列 極性を失い、様の小型細胞が全層を占める
核 腫大、、、核形不整
分裂像 数が増え、にも出現し、異型分裂像を伴いうる
著しく低下または消失する
基底膜 を保つ
頸管腺 周囲に存在しうる。腺管内進展とを区別する

⚠️ CIN3の標本で「」を認めるなら、病変は純粋なCIN3ではない。基底膜を越えた不規則な細胞巣、単細胞浸潤、間質反応を確認し、微小浸潤癌または浸潤癌として評価する。

切除標本での確認点

  1. 病変が基底膜内にとどまるかを全周で確認する。
  2. 腺管内へ入り込むを、と誤認しない。
  3. に病変が達しているかを記録する。
  4. 浸潤が疑われる部位では深さ、水平径、を評価する。

CIN3は未治療では浸潤癌へ進展しうるため、妊娠中などの例外を除き治療対象となる。ニュージーランドで治療が差し控えられた歴史的コホートでは、生検のみで管理された143人の30年浸潤癌が31.3%(24か月以内に病変が持続していた92人では50.3%)に達した一方、十分な初回治療と通常の管理を受けた593人では0.7%にとどまった4。一般に切除治療は、浸潤の除外と断端評価を同時に行える利点がある。

まとめ

  • CIN3はの成熟障害、強い核異型、の分裂像を示す。
  • 基底膜が保たれ、がないことが定義上重要である。
  • は細胞診との双方で用いられるため、検査種別を明記してCIN2・CIN3との対応を読む。
  • では浸潤、腺管内進展、を系統的に確認する。

出典

  1. 1.The Lower Anogenital Squamous Terminology Standardization Project for HPV-Associated Lesions: background and consensus recommendations from the College of American Pathologists and the American Society for Colposcopy and Cervical Pathology(Archives of Pathology & Laboratory Medicine・2012)米国病理学会(CAP)と米国コルポスコピー・子宮頸部病理学会(ASCCP)が2012年に合意した LAST 勧告は、下部肛門生殖器のHPV関連扁平上皮病変の組織診断用語を全部位で統一し、バイオマーカーの適切な使い方を併せて定めた閲覧 2026-08-24
  2. 2.Revised terminology for cervical histopathology and its implications for management of high-grade squamous intraepithelial lesions of the cervix(Obstetrics & Gynecology・2012)LAST勧告は外陰・腟・子宮頸部・陰茎・肛門周囲・肛門のすべてで低異型度/高異型度扁平上皮内病変(LSIL/HSIL)の二段階用語を用い、必要に応じて括弧内にCINなどの intraepithelial neoplasia 表記を併記する。この用語はBethesda細胞診報告の用語と対応する。従来CIN 2と診断されていた形態の病変の分類と、HSILと良性の類似病変との鑑別にp16免疫染色を推奨している閲覧 2026-08-24
  3. 3.Clinical course of untreated cervical intraepithelial neoplasia grade 2 under active surveillance: systematic review and meta-analysis(BMJ・2018)保存的に管理されたCIN 2を集めた36研究・3160人のメタ解析で、24か月時点の消退率は50%(95%信頼区間43〜57%)、持続32%、進展18%。30歳未満の1069人に限った部分解析では消退60%、持続23%、進展11%であった閲覧 2026-08-24
  4. 4.Natural history of cervical neoplasia and risk of invasive cancer in women with cervical intraepithelial neoplasia 3: a retrospective cohort study(The Lancet Oncology・2008)ニュージーランドでCIN 3の治療が差し控えられた歴史的コホートで、punch/wedge生検のみで管理された143人の30年浸潤癌(子宮頸部または腟断端)累積発生率は31.3%(95%CI 22.7〜42.3)、24か月以内に病変が持続していた92人では50.3%。初回治療が十分と判断され通常の管理を受けた593人では0.7%にとどまった閲覧 2026-08-24