組織病理学

組織病理学 · H1-066

HPV感染(コンジローマ・LSIL)

HPV infection (condyloma) LSIL

描出疾患
HPV感染症(疣贅・尖圭コンジローマ・子宮頸部異形成)
スコア
子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)分類

🧠 全体像:は、生産性感染による軽度の上皮異型とを特徴とする。多くは自然消退するが、コンジローマとは重なる形態をもっていても同義ではなく、型と病変部位を分けて考える。

HPV感染からみた位置づけ

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human papillomavirus'>HPV</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cells'>基底細胞</span>へ感染"] --> B["上皮分化に伴ってウイルスが増殖"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perinuclear halo'>核周囲空胞</span>と核異型"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='koilocytosis'>コイロサイトーシス</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-grade squamous intraepithelial lesion'>LSIL</span>・CIN1"]
    E --> F["多くは免疫応答で消退"]
    E --> G["高リスク<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human papillomavirus'>HPV</span>が持続"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-grade squamous intraepithelial lesion'>HSIL</span>へ進展することがある"]

標本の要点

所見 意味
核周囲の明瞭なと、腫大・・不整な核をもつ
が上皮表層を中心に増える状態
軽度核異型 主に上皮下層に限局する
分裂像 通常は下層に限られ、の異型分裂像はを疑う
角化層に核が残る不完全な角化
と異なり、概ね保たれる

目立つ核小体だけはの定義にならない。と、腫大・・不整を組み合わせて評価する。

コンジローマとLSIL

6・11はとの原因型で、から検出されることはまれなである1。

項目 子宮頸部
典型的 6・11 を含む複数の型
肉眼 ・病変 肉眼で明らかでないことも多い
組織 増殖、、 CIN1相当の軽度異型、
癌との関係 通常は良性 多くは消退するが、例は経過観察が必要

「」はの細胞診用語として用いられるほか、分類ではにも用いられ、組織学的はCIN1に概ね対応する。勧告の二段階用語はBethesda細胞診の用語と対応する形で選ばれており、では括弧内に表記を併記してよい。従来CIN2と診断されていた形態の病変については、による分類しなおしが推奨されている2。細胞診と/CIN1は検査対象が異なるため、完全な一対一対応とはみなさない。

進展の考え方

が直ちに浸潤癌となるわけではない。多くの感染とCIN1は自然消退し、癌化リスクを規定する中心は高リスクのである。1950年以降の文献を集計した古典的総説では、CIN1のおよそ60%が消退、30%が持続、10%がCIN3へ進展、1%が浸潤癌へ進むと見積もられている3。一方、細胞診が正常でもHPV16陽性であれば12年以内にCIN3以上となる確率は26.7%、2年あけた2回の検査で連続陽性なら47.4%と推定され、検査陰性例の3.0%と大きく開く4。管理は年齢、妊娠、細胞診、型、歴を合わせたリスク評価で決める。

まとめ

  • はと異型核の組合せで認識する。
  • では軽度異型が下層中心で、は保たれる。
  • コンジローマは主に 6・11、子宮頸部はを含む感染と関連する。
  • 多くは消退するが、持続性高リスク感染ではへの進展に注意する。

出典

  1. 1.Chapter 4: Burden and management of non-cancerous HPV-related conditions: HPV-6/11 disease(Vaccine・2006)HPV 6・11は肛門生殖器疣贅(尖圭コンジローマ)と反復性呼吸器乳頭腫症(RRP)の原因型であり、悪性病変から検出されることはまれな低リスク型である。RRPはまれだが致死的になりうる疾患で、反復手術を要する閲覧 2026-08-24
  2. 2.Revised terminology for cervical histopathology and its implications for management of high-grade squamous intraepithelial lesions of the cervix(Obstetrics & Gynecology・2012)LAST勧告は外陰・腟・子宮頸部・陰茎・肛門周囲・肛門のすべてで低異型度/高異型度扁平上皮内病変(LSIL/HSIL)の二段階用語を用い、必要に応じて括弧内にCINなどの intraepithelial neoplasia 表記を併記する。この用語はBethesda細胞診報告の用語と対応する。従来CIN 2と診断されていた形態の病変の分類と、HSILと良性の類似病変との鑑別にp16免疫染色を推奨している閲覧 2026-08-24
  3. 3.Natural history of cervical intraepithelial neoplasia: a critical review(International Journal of Gynecological Pathology・1993)1950年以降の文献を集計すると、CIN 1はおよそ消退60%・持続30%・CIN 3への進展10%・浸潤癌への進展1%、CIN 2は40%・40%・20%・5%、CIN 3は消退33%・浸潤への進展12%超と見積もられる。形態だけでは進展・消退を予測できない閲覧 2026-08-24
  4. 4.Long-term absolute risk of cervical intraepithelial neoplasia grade 3 or worse following human papillomavirus infection: role of persistence(Journal of the National Cancer Institute・2010)デンマークの一般集団8656人のコホートで、細胞診正常かつHPV16 DNA陽性の女性が12年以内にCIN 3以上を発症する確率は26.7%、HPV18で19.1%、HPV31で14.3%、HPV33で14.9%、それ以外の高リスク型で6.0%。2年あけた2回の検査で連続してHPV16陽性だった場合は47.4%に上る一方、Hybrid Capture 2陰性なら3.0%にとどまる閲覧 2026-08-24