組織病理学

組織病理学 · H1-065

子宮頸部扁平上皮化生

Squamous cell metaplasia – CERVIX

🧠 全体像:は、付近の円柱上皮が、へ置き換わる良性の適応反応である。生殖年齢に伴う内分泌環境、酸性腟内環境、炎症などに反応して生じるが、関連異形成そのものではない。

移行帯で起こる変化

子宮頸部では、のと頸管内の円柱上皮がで接する。その位置は年齢やホルモン環境により変化し、新旧の接合部の間がとなる。

flowchart TD
    A["頸管円柱上皮が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Exocervix'>外頸部</span>側へ露出"] --> B["酸性環境・炎症・内分泌変化"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reserve cells'>予備細胞</span>が増殖"]
    C --> D["未熟<span class='jp-term jp-term-diagram' title='squamous metaplasia'>扁平上皮化生</span>"]
    D --> E["成熟した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stratified squamous epithelium'>重層扁平上皮</span>"]
    C --> F["腺開口部が覆われる"]
    F --> G["粘液が貯留"]
    G --> H["Naboth嚢胞"]

標本の読み方

所見 読み方
円柱上皮 頸管側を覆い、淡明な細胞質や粘液を示す
を覆い、表層へ向かって成熟する
円柱上皮領域がへ連続的に置換される
二種類の上皮が切り替わる境界
腺 間質内に残る腺
Naboth嚢胞 化生上皮が腺開口部を覆い、分泌粘液が貯留した良性嚢胞

未熟化生では細胞が小型で核細胞質比が高く見えることがあるが、表層への秩序ある成熟、核の均一性、異常分裂像の欠如を確認する。HE染色だけで決めにくい場合は免疫染色が助けになる。未熟化生の増殖細胞はCK17陽性・p16陰性、CIN3の異形成細胞はp16一様陽性・CK17陰性という相反する染色態度をとり、「異型未熟化生」とされた20例中17例がこの2抗体で化生とCIN3へ振り分けられたという報告がある1。

異形成との区別

組織診断名は2012年の(Lower Anogenital Squamous Terminology)勧告により、外陰・腟・子宮頸部・陰茎・肛門周囲・肛門のすべてで/扁平上皮内病変(/)の二段階へ統一され、必要に応じて括弧内に表記を併記する形になった23。

項目
本態 良性の上皮置換 感染に伴う病変 持続性高リスクに関連する病変
成熟 保たれる は概ね残る 成熟が強く障害される
核異型 目立たない 軽度 中等度から高度
分裂像 基底層付近に限られる 下層中心 にもみられ、異型分裂を伴いうる
基底膜 保持 保持 保持

💡 は関連病変の好発部位だが、「化生がある」ことと「である」ことは同義ではない。異形成は核異型、成熟障害、分裂像の分布で判断する。なお好発部位である理由については、に固有の形態と遺伝子発現をもつ細胞集団が存在し、そのマーカーが関連のとに高率に発現する一方、・のや非関連病変ではまれであること、このが切除後の新しい接合部では再生されないことが示されている4。

感染による病変は H1-066:感染と、の病変は H1-067:・CIN3 で確認する。

まとめ

  • 子宮頸部は、で円柱上皮がへ置換される良性変化である。
  • 円柱上皮、化生扁平上皮、接合部、頸管腺を連続して追う。
  • 腺開口部の閉塞と粘液貯留によりNaboth嚢胞が形成される。
  • 関連異形成とは、成熟、核異型、分裂像の分布で区別する。

出典

  1. 1.CK17 and p16 expression patterns distinguish (atypical) immature squamous metaplasia from high-grade cervical intraepithelial neoplasia (CIN III)(Histopathology・2007)未熟化生の増殖細胞はCK17陽性・p16陰性、CIN IIIの異形成細胞はp16一様陽性・CK17陰性という相反する染色態度を示し、異型未熟化生(AIM)とされた20例中17例がこの2抗体で化生10例とCIN III 7例に振り分けられた。AIMは記述用語であって最終診断名にすべきでない閲覧 2026-08-24
  2. 2.The Lower Anogenital Squamous Terminology Standardization Project for HPV-Associated Lesions: background and consensus recommendations from the College of American Pathologists and the American Society for Colposcopy and Cervical Pathology(Archives of Pathology & Laboratory Medicine・2012)米国病理学会(CAP)と米国コルポスコピー・子宮頸部病理学会(ASCCP)が2012年に合意した LAST 勧告は、下部肛門生殖器のHPV関連扁平上皮病変の組織診断用語を全部位で統一し、バイオマーカーの適切な使い方を併せて定めた閲覧 2026-08-24
  3. 3.Revised terminology for cervical histopathology and its implications for management of high-grade squamous intraepithelial lesions of the cervix(Obstetrics & Gynecology・2012)LAST勧告は外陰・腟・子宮頸部・陰茎・肛門周囲・肛門のすべてで低異型度/高異型度扁平上皮内病変(LSIL/HSIL)の二段階用語を用い、必要に応じて括弧内にCINなどの intraepithelial neoplasia 表記を併記する。従来CIN 2と診断されていた病変の振り分けと、HSILと良性の類似病変との鑑別にp16免疫染色を推奨している閲覧 2026-08-24
  4. 4.A discrete population of squamocolumnar junction cells implicated in the pathogenesis of cervical cancer(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America・2012)扁平円柱上皮接合部には固有の形態と遺伝子発現プロファイルをもつ細胞集団が存在し、そのマーカーは発癌性HPVに関連する高異型度CINと子宮頸癌の高率に発現する一方、外頸部・移行帯のCINや非発癌性HPV関連病変ではまれである。この免疫表現型は切除後に形成される新しい接合部では再生されない閲覧 2026-08-24