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Drug Atlas · B33 Antineoplastics / 抗腫瘍薬

トポテカン

topotecan

分類
Antineoplastics / 抗腫瘍薬
商品名(日本)
ハイカムチン
商品名(EU)
Hycamtin
科目
Pharmacology
トピック
B33: Drugs used in cancer treatment III (Topoisomerase inhibitors. Inhibitors of mitotic spindle)
承認適応
肺癌卵巣癌子宮頸癌
副作用
骨髄抑制悪心嘔吐下痢
監視検査値
絶対好中球数血小板数

🧠 全体像:はと同じだが、対比の軸が2つある。①はで加水分解による活性化が必要だが、はそれ自体がで酵素的活性化を要さない。②のは下痢だが、のは骨髄抑制(好中球減少)である——同じ標的・同じ機序でも、代謝経路と主要な副作用が対照的な代表例として理解する。

薬効群の中での位置づけ

比較軸
活性化 。で加水分解されSN-38になって初めて効く ではない。そのものが-複合体に結合する
主な排泄経路 胆汁排泄が主体(はUGT1A1で) が主体(静注後9日間で尿中約51%を回収)1
下痢(急性は、遅発性はSN-38の腸粘膜傷害) 骨髄抑制(好中球減少)。として明記される1
遺伝的 UGT1A1*28多型がを左右する 添付文書上、特定のとの関連は確立していない
代表適応 大腸癌()・() ・再発卵巣癌・(シスプラチン併用)

⭐ 「同じなのに、なぜ副作用の顔つきがこれほど違うのか」という問いへの答えが、この2剤を並べる意味そのものである。 の下痢はコリンエステラーゼ阻害構造とSN-38の性というに固有の性質から生じ、の骨髄抑制はの高い増殖速度が阻害の標的になりやすいことに由来する、より「素直な」である。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topotecan'>トポテカン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active moiety'>活性本体</span>そのもの)"] --> B["酵素的活性化は不要"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topoisomerase I'>トポイソメラーゼI</span>-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>複合体に直接結合"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='single-strand break'>一本鎖切断</span>の再結合を阻止"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='replication fork'>複製フォーク</span>が切断部に衝突"]
    E --> F["修復不能な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='double-stranded DNA'>二本鎖DNA</span>損傷・アポトーシス"]
    G["酸性pH(≤4)"] -.->|"閉環ラクトン型(活性型)が優位"| A
    H["生理的pH"] -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ring opening'>開環</span>ヒドロキシ酸型(低活性)が優位"| A

💡 との最大の違いは「活性化のステップが要らない」ことである。 はによる加水分解という一段階を経て初めてSN-38になるが、は投与された分子構造自体が-複合体に結合できる。ただしにも薬理学的な可逆平衡があり、を持つ閉環ラクトン型と、不活性なヒドロキシ酸型がpH依存的に相互変換する——生理的pHでは型が優位になるため、投与後は速やかに一部が不活性化される1。

薬物動態

項目 値・特徴
蛋白結合率 約35%
2〜3時間
主な排泄経路 (静注後9日間で尿中に総として約51%、糞中に約18%を回収)1
代謝 主に代謝を受けず未変化体のまま排泄される(N-はごく少量)
阻害 In Vitroで主要分子種を阻害しない(のようなを介した相互作用は想定しにくい)1
の影響 40〜60mL/分で33%低下、20〜39mL/分で65%低下1

⭐ が「・UGT1A1多型」でを説明するのに対し、は「・腎機能」でを説明する薬という対比がの軸になる。患者では初回投与量を半量に減量する2。

適応

領域 使いどころ
呼吸器 初回化学療法開始後60日以上経過してから増悪した白金感受性小細胞肺癌の1
婦人科 初回または前治療の化学療法後に増悪した転移性卵巣癌の1(「を含む化学療法施行後」という限定は国内添付文書に固有の規定で、白金感受性を考慮したうえで他の治療法を慎重に検討してから投与する2)/の対象とならないStage IVB・再発・遺残へのシスプラチン併用療法1
小児腫瘍(国内独自) 他の抗悪性腫瘍剤との併用による小児悪性固形腫瘍。米国添付文書にはない国内独自の適応である2

用法・用量

米国添付文書では卵巣癌・に1.5mg/m²を5日間連日し21日サイクルで反復、にはシスプラチン併用で0.75mg/m²を3日間連日する1。⚠️ 国内の用法・用量は適応ごとに細かく異なり、は1.0mg/m²(米国の1.5mg/m²より少ない)を5日間、卵巣癌は1.5mg/m²を5日間、はシスプラチン併用で0.75mg/m²を3日間、いずれも投与後16〜18日以上する2。(20〜39mL/分)時の減量の規定は国によって異なる。米国添付文書はに対し20〜39mL/分で0.75mg/m²/日という固定用量への減量を規定するのみで「半量」とは書かれておらず、シスプラチン併用のには適用されない1。国内添付文書は効能共通の規定として、初回投与量を通常用量の半量とする2。実際の用量は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • :骨髄抑制。 初回サイクルは好中球数1,500/mm³以上・100,000/mm³以上の患者にのみ投与する1
  • 禁忌(国内):重篤な骨髄抑制のある患者、重篤な感染症を合併している患者、妊婦又は妊娠している可能性のある患者、過敏症の既往歴のある患者2
  • 禁忌(米国):に対する重度過敏症の既往歴のある患者。アナフィラキトイド反応を含む反応が報告されている1
  • ⚠️ は致死例が報告されている。 確定した場合は永続的に投与を中止する1
  • ⚠️ により重篤な組織障害を来しうる。漏出時は直ちに投与を中止し推奨される処置を行う1
  • のリスクがあり、投与中・投与後は適切な避妊が必要

副作用

頻度 内容
高頻度(、Grade3-4) 好中球減少・貧血・血小板減少・(いずれも卵巣癌・・に共通)1
高頻度(非) 悪心・嘔吐・疲労・下痢・呼吸困難(卵巣癌)/無力症・呼吸困難・肺炎・腹痛・疲労()1
重篤・まれ (致死例あり)、による組織障害

まとめ

  • はと同じだが、ではなく酵素的活性化を要さない点が最大の違い。
  • は骨髄抑制(好中球減少)で、の下痢とは対照的。として好中球数1,500/mm³以上・100,000/mm³以上の確認が求められる。
  • 主な排泄経路は(の胆汁排泄・UGT1A1多型と対比)で、では減量が必要。
  • 適応は白金感受性・再発卵巣癌・(シスプラチン併用)。国内では小児悪性固形腫瘍という独自の適応があり、用法・用量も適応ごと・国ごとに細かく異なる。
  • は閉環ラクトン型に限られ、生理的pHでは不活性なヒドロキシ酸型との間で可逆的に平衡する。

出典

  1. 1.HYCAMTIN (topotecan) for injection — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration・2019)添付文書PDFを取得して確認した。枠組み警告が骨髄抑制であり初回投与は好中球数1,500/mm3以上・血小板数100,000/mm3以上の患者にのみ行うこと、適応が①初回または前治療の化学療法後に増悪した転移性卵巣癌の単剤療法(§1.1の原文は"after disease progression on or after initial or subsequent chemotherapy"のみで、白金製剤による前治療への限定は記載されていない)、②初回化学療法開始後60日以上経過してから増悪した白金感受性小細胞肺癌の単剤療法、③根治的治療の対象とならないStage IVB・再発・遺残子宮頸癌へのシスプラチン併用療法であること、機序(トポイソメラーゼI-DNA複合体に結合し一本鎖切断の再結合を妨げ、複製フォークとの衝突で二本鎖DNA損傷を生じる)、薬物動態(蛋白結合率約35%、終末相半減期2〜3時間、静注後9日間の総回収率が尿中51%±3%・糞中18%±4%、In Vitro試験でCYP1A2・2A6・2C8/9・2C19・2D6・2E・3A・4Aを阻害しない)、腎機能障害患者ではクレアチニンクリアランス40〜60mL/分で血漿クリアランスが33%、20〜39mL/分で65%低下すること、§2.6の用量調整は単剤療法に対しクレアチニンクリアランス20〜39mL/分で0.75mg/m²/日という固定用量へ減量する規定のみで「半量」とは書かれておらず、シスプラチン併用(子宮頸癌)には適用されないこと、禁忌がトポテカンに対する重度過敏症の既往歴のある患者(アナフィラキトイド反応を含む反応が報告されている)であること、間質性肺疾患(致死例あり、確定時は永続中止)・血管外漏出・胎児毒性の警告、卵巣癌における高頻度(5%超)血液毒性有害事象が好中球減少・貧血・血小板減少・発熱性好中球減少症、非血液毒性有害事象が悪心・嘔吐・疲労・下痢・呼吸困難であることを確認した。閲覧 2026-09-05
  2. 2.ハイカムチン注射用1.1mg(ノギテカン塩酸塩)添付文書(日本医薬情報センター(JAPIC。承認番号21900AMX00902)・2023)添付文書PDFを取得して確認した。国内の用法・用量が、小細胞肺癌に1日1回1.0mg/m²を5日間連日点滴静注し16日以上休薬、がん化学療法後に増悪した卵巣癌に1.5mg/m²を5日間連日点滴静注し16日以上休薬、小児悪性固形腫瘍に他の抗悪性腫瘍剤と併用で0.75mg/m²を5日間連日点滴静注し16日以上休薬、進行・再発子宮頸癌にシスプラチン併用で0.75mg/m²を3日間連日点滴静注し18日以上休薬、というように**適応ごとに用量・投与日数が異なる**こと、腎障害(クレアチニンクリアランス20〜39mL/分)患者では初回投与量を通常用量の半量とすること、禁忌が重篤な骨髄抑制・重篤な感染症合併・妊婦又は妊娠している可能性・過敏症の既往歴であること、小児悪性固形腫瘍が米国添付文書にはない**国内独自の適応**であることを確認した。閲覧 2026-09-05