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Drug Atlas · B33 Antineoplastics / 抗腫瘍薬

パクリタキセル

paclitaxel

分類
Antineoplastics / 抗腫瘍薬
商品名(日本)
タキソール
商品名(EU)
Taxol
科目
Pharmacology
トピック
B33: Drugs used in cancer treatment III (Topoisomerase inhibitors. Inhibitors of mitotic spindle)
副作用
知覚異常筋痛低血圧
監視検査値
絶対好中球数血小板数
相互作用
シスプラチン
解毒薬
ヒアルロニダーゼ
対象疾患
カポジ肉腫胃癌胸腺腫子宮体癌子宮頸癌食道癌乳癌肺癌卵巣癌肛門管癌膵癌
原因となる疾患
薬剤の血管外漏出

🧠 全体像の原型で、微小管を「固めて動けなくする」薬である。同じ(微小管)を標的にするが重合そのものを止めるのとは正反対の発想で、どちらも最終的にはで細胞を止めて死なせる。もう一つの顔は溶媒問題——Cremophor EL(ポリオキシエチレンヒマシ油)に溶かして投与するため、とはな過敏反応が起こりやすく、が必須になる。

薬効群の中での位置づけ

B33で扱うは「のどの装置を壊すか」で4つに分かれる。

標的 系統 代表薬 やっていること
DNA一本鎖の再結合 Topo I阻害薬 切断した鎖を戻せなくする
DNA二本鎖の切断・再結合 Topo II阻害薬/ 二本鎖を切ったまま固定する
微小管の重合 重合そのものを止め、を作らせない
微小管の 一度できた微小管を固定し、分解させない

は「同じを狙って正反対のことをする」対比が最重要。 ビンカは重合を阻害して微小管を作らせずそのものを作れなくする。は逆に微小管を安定化しすぎて(分解)できなくする。どちらもを奪う点は共通で、結果として中期で染色体分離が進まずに捕まって細胞死に至る。

3剤の中での位置づけ。

薬剤 溶媒・製剤 主な適応 差別化点
Cremophor EL 乳癌・卵巣癌・肺癌など の原型。過敏反応が最も知られる
乳癌・前立腺癌・肺癌・胃癌・など 適応が広い。骨髄抑制がやや強い
後の P糖蛋白の基質になりにくくを回避

💡 (nab-)はCremophor ELを使わない設計。 をアルブミンナノ粒子に結合させることで溶媒そのものを排除し、なしで投与できる。腫瘍組織への移行もアルブミン輸送経路(SPARC等)を介して高まるとされる。ただし別製剤であり、本ノートの用量・注意点はそのまま当てはまらない。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paclitaxel'>パクリタキセル</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-tubulin'>βチューブリン</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='taxanes'>タキサン</span>結合部位に結合"] --> B["微小管を過剰に安定化"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='depolymerization'>脱重合</span>(分解)できなくなる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dynamic instability'>動的不安定性</span>を失った<br>硬い微小管が蓄積"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitotic spindle'>紡錘体</span>が正常に機能せず<br>染色体を分離できない"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitotic checkpoint'>有糸分裂チェックポイント</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='M phase'>M期</span>に長時間停止"]
    F --> G["Bcl-2のリン酸化などを介し<br>アポトーシスへ(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitotic catastrophe'>有糸分裂破綻</span>)"]

💡 ビンカ結合部位と結合部位は別の場所。 のビンカ結合部位に、はそれとは別の結合部位(微小管の内腔側)に結合する。結合部位が異なるためは限定的だが、どちらもを標的にする点は共通する。

薬物動態

項目 値・特徴
製剤 Cremophor ELに溶解(非水溶性のため)
分布 高い蛋白結合率。組織移行は良好だが中枢へはほぼ移行しない
代謝 主にCYP2C8(水酸化)、一部CYP3A4
排泄 大部分が胆汁・糞便へ。はわずか
半減期 投与時間・用量で変動する(Cremophor ELのが関与)

との投与順序が重要。 シスプラチン・より先に投与する。逆順(を先に)にするとのクリアランスが低下し骨髄抑制が増強することが分かっている。

適応

領域 使いどころ
乳腺 乳癌後の逐次投与、術前・術後)
婦人科 卵巣癌との併用が標準)、
呼吸器 肺癌
消化器 胃癌(nab-+

用法・用量

代表的には1回175 mg/m²を3時間かけて3週ごと、または1回80〜90 mg/m²前後を週1回投与する。過敏反応予防のが必須(投与前夜・当日または直前)+H1拮抗薬(など)+H2拮抗薬を投与30〜60分前に行う。と併用する場合はを先に投与する。実際のレジメン・投与順序・内容は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌・慎重投与:重度の骨髄抑制、Cremophor EL含有製剤への重篤な過敏症の既往
  • ⚠️ 過敏反応はIgE非依存性のことが多い。 Cremophor ELがの直接を引き起こすため、初回・2回目の投与中(多くは投与開始後数分〜十数分)に起こりやすい。をしていても完全には防げない
  • 相互作用:CYP2C8・CYP3A4を強く阻害する薬剤でが増加しうる。シスプラチンとの投与順序は上記のとおり厳守する

副作用

頻度 内容
高頻度 脱毛(ほぼ必発)、(末梢神経障害)、筋痛・関節痛(投与後2〜3日にピーク)
注意 骨髄抑制(好中球減少のは投与後8〜10日)、
重篤・まれ 過敏反応(低血圧)、一過性の徐脈・(投与中)

まとめ

  • の原型。に結合して微小管を過剰安定化し、を止めてに固定する。
  • とは同じ標的で正反対の作用(=固める、ビンカ=重合させない)。
  • Cremophor EL製剤ゆえの非IgE性過敏反応が特徴。(ステロイド+H1+H2)が必須。
  • CYP2C8・CYP3A4で代謝。より先に投与しないとクリアランスが低下し骨髄抑制が増強する。
  • 末梢神経障害・脱毛・筋痛が高頻度。nab-はCremophor ELを使わずが不要な別製剤。
  • 乳癌・卵巣癌・肺癌など幅広いに用いられる。