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Microbe Atlas · ウイルス

HPV 6, 11

ヒトパピローマウイルス6・11型

分類
パピローマウイルス / Papillomaviruses
性状
エンベロープなし NakeddsDNA
科目
Medical Microbiology
トピック
3/18: Papilloma and Polyomaviruses (BK, JC)
原因となる疾患
Buschke-Löwenstein腫瘍HPV感染症(疣贅・尖圭コンジローマ・子宮頸部異形成)子宮頸癌反復性呼吸器乳頭腫症

🧠 全体像: 6・11型は粘膜に住み着く点でと同じ「」に属しながら、はほぼ持たない「」という対照的な立ち位置にある。肛門()の約90%1、のほとんどがこの2型による——が病変を“進行させる”のに対し、この2型は病変を“増やす”方向に働くとイメージすると位置づけが掴みやすい。

ウイルスの構造とゲノム

構造(エンベロープなし・・)は他の型と共通するため皮膚型のノートを参照。6・11型はと同じに属するが、E6・のp53・Rbへのがより著しく低いことが、に分類される分子的な根拠になっている——「低リスク」は臨床的な観察だけでなく、E6/E7のの弱さという機序的な裏づけを持つ分類である。

病原性の仕組み

性器・喉頭の粘膜に感染し、細胞の異形成ではなくの(の増殖)を起こす。免疫が排除しきれず基底層に居座ることが、他の型と同様に病変の再発・慢性化につながる。

⚠️ 「低リスク」はゼロリスクではない。 きわめてまれに、がの強い()へ進展し、へ移行しうる。大半の病変は良性の経過をたどるが、急速に増大する巨大病変では悪性化の除外が必要になる。

感染経路と疫学

  • 性的接触がの主要な伝播経路
  • 母子感染が小児の(若年発症型)の原因と考えられている。ただし経路が・周産期(産道通過)・出生後のいずれなのかは完全には分かっておらず、帝王切開で防げるかも不明なため、米国はの伝播予防だけを目的とした帝王切開を行わないとしている1。成人発症型はを介した感染が関与すると考えられているが、経路はさらに不明な点が多い
  • 免疫抑制患者ではが大型・多発・難治性になりやすい

起こす疾患

臨床像の全体は感染症(疣贅・・)を参照。

疾患 特徴
(肛門) 柔らかい・の丘疹。・陰茎・陰嚢・会陰・肛囲に好発し、約90%が6・11型による(16・18型などが同時に検出されることもある)1
喉頭を主体にに乳頭腫が多発。若年発症型(母子感染と考えられ、乳幼児期に発症し嗄声・をきたしうる)と成人発症型に分かれ、いずれも再発を繰り返し反復手術を要することが多い

診断

は通常、で臨床診断する。診断が不確実な場合、標準治療に反応しない・治療中に増悪する場合、色素沈着・・下床への・出血・潰瘍といったな所見がある場合には生検を行う(免疫不全者では特に)。検査は診断にもにも役立たないため勧められない1。鑑別には梅毒第2期の(血清学で診断する)、、がある。は・生検で診断する。

治療と予防

いずれの治療も目に見える病変を除去するだけで、の感染性を減らしてもはしないとみられ、再発しうる。未治療でも1年以内に自然消退することがある1。

米国(2021)の外性器病変への推奨レジメンは次のとおりで、どれが他より優れるという決定的な証拠は無く、病変の大きさ・数・部位、患者の希望、費用、副作用で選ぶ1。

:患者が塗布する治療 :医療者が行う治療
3.75%または5%、0.5%液・ゲル、15% などによる、外科的切除(の切除・・レーザー・)、または80〜90%

⚠️ 国によって使える外用薬と妊娠中の扱いが違う。

項目 米国( 2021) 日本
患者が塗布する外用薬 ・・の3種を推奨1 5%(ベセルナ)が(外性器または肛門周囲に限る)の効能で承認されている。週3回・就寝前に塗布する2
妊娠中 ・ポドフィリン・は使わない。はリスクが低いとみられるが、データが揃うまで避ける1 の電子添文は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用」としている2

尿道口・腟・子宮頸部・肛門内の病変では、米国の推奨レジメンは・外科的切除・などの医療者が行う治療に限られ、子宮頸部・肛門内は専門診療科と相談する1。日本のの電子添文も、尿道・腟内・子宮頸部・直腸・肛門内への使用を禁忌としている2。免疫抑制患者では病変が大きく多発し、治療反応が悪く再発しやすい1。

は外科的(切除)の反復が治療の中心で、根治的な治療は確立していない。難治例ではなどのが検討される(詳細は)。

⭐ 6・11そのものを標的にした治療が米国で承認された。 2025年、成人のに対し、 6・11感染細胞に発現するウイルス蛋白の一部を抗原として発現させ、それらに対するT細胞応答を誘導する免疫療法(ゾパポゲン・イマデノベック)が承認された。切除で病変を最小限にしたうえで12週間に4回皮下注射する。過去12か月に3回以上の切除を要した成人のでは、推奨用量35例中18例(51%)が投与後12か月間手術を要しなかった3。比較対照の無い試験の結果であり、小児(若年発症型)は対象に入っていない。

予防: ワクチンはすべて16・18型を含むが、6・11型を含むのは4価()と9価(シルガード9)で、2価ワクチンには含まれない4。4価・9価はによる癌だけでなくそのものも予防でき、米国などワクチンを導入した複数の国で、青年・若年女性・異性愛男性のが減っている1。

まとめ

  • 6・11型はに属しながらがほぼない「」で、E6・E7のp53/Rbへのがより弱いことが分子的な根拠になる。
  • の約90%、のほとんどがこの2型による。
  • は母子感染と考えられる若年発症型と成人発症型に分かれ、いずれも反復手術を要しやすい。米国では2025年に成人例への 6・11標的免疫療法が承認された。
  • 治療は病変の除去にとどまり潜伏感染はできない。日本では5%が外性器・肛門周囲の病変に承認されている。米国は妊娠中に・を使わず、も避けるとする。
  • 6・11型を含むのは4価・9価のワクチンで、癌予防だけでなくの予防効果も持つ(2価は含まない)。

出典

  1. 1.Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021(Centers for Disease Control and Prevention(MMWR Recommendations and Reports)・2021)PMC全文(PMC8344968)の「Anogenital Warts」の節で、肛門性器疣贅の90%が非発癌性のHPV 6・11型によること、6・11型は結膜・鼻・口腔・喉頭の疣贅とも関連すること、診断は通常視診で、非典型病変(色素沈着・硬結・固着・出血・潰瘍)や診断不確実・標準治療に無反応・治療中の増悪では生検を行いHPV検査は勧めないこと、外性器の推奨レジメンが患者自身が塗布するイミキモド3.75%または5%クリーム・ポドフィロックス0.5%液またはゲル・シネカテキン15%軟膏と、医療者が行う液体窒素などの凍結療法・外科的切除(接線方向切除・掻爬・レーザー・電気外科)・トリクロロ酢酸またはジクロロ酢酸80〜90%であること、どの推奨治療も他より優れる決定的な証拠は無く治療はHPVの感染性を減らしても根絶はしないとみられること、妊娠中はポドフィロックス・ポドフィリン・シネカテキンを使わず、イミキモドはリスクが低いとみられるがデータが揃うまで避けること、HPV 6・11は乳幼児・小児の呼吸器乳頭腫症をまれに起こすが感染経路(経胎盤・周産期・出生後)は完全には分かっておらず帝王切開の予防効果も不明なため、HPV感染の伝播予防だけを目的に帝王切開を行わないことを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.ベセルナクリーム5% 電子添文(添付文書)(持田製薬/PMDA医療用医薬品情報・2023)2023年2月改訂(第1版)を本文表示で確認した。4. 効能又は効果が尖圭コンジローマ(外性器又は肛門周囲に限る)と日光角化症(顔面又は禿頭部に限る)であること、尖圭コンジローマには1日1回・週3回・就寝前に塗布すること、9.5 妊婦の項が「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること」であり、9.1.2 で免疫抑制患者では有効性が確立していないとされること、2. 禁忌に「尿道、腟内、子宮頸部、直腸及び肛門内」への使用が含まれることを確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 3.PAPZIMEOS (ZOPAPOGENE IMADENOVEC) INJECTION, SUSPENSION(U.S. National Library of Medicine(DailyMed、Precigen, Inc.)・2025)DailyMedのSPL(setid 103db7f1-8540-4bea-935e-217d69e7aa01、version 4、2026年3月掲載、文書の effective time 2025年8月12日)で、1. 適応が成人の再発性呼吸器乳頭腫症であること、12.1 で本剤がHPV 6・11感染細胞に発現するHPV蛋白の一部を融合抗原として発現させる非複製型アデノウイルスベクター免疫療法であること、2.1 で初回投与前に目に見える乳頭腫を外科的に切除して微小残存病変とし、12週間に4回皮下注射すること、14 で過去12か月に3回以上の切除術を要した成人を対象とした単群非盲検試験(推奨用量35例)で、投与後12か月間手術を要しなかった完全奏効が18例(51%、95%信頼区間34〜69%)、24か月では43%であったことを確認した。閲覧 2026-09-27
  4. 4.Human papillomavirus vaccines: WHO position paper (2022 update)(World Health Organization(Weekly Epidemiological Record 97(50):645-672)・2022)IRISの全文PDFで、多くのHPV型が肛門性器疣贅を起こしうるが6・11型が全症例の最大90%を占めるとされること、すべてのHPVワクチンが16・18型のウイルス様粒子を含み、9価ワクチンはさらに31・33・45・52・58型を含み、4価と9価ワクチンは6・11型に起因する肛門性器疣贅を防ぐウイルス様粒子を含むこと、HPV感染は肛門性器疣贅と呼吸器乳頭腫症にも関連することを確認した。閲覧 2026-09-27