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Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 疾患

反復性呼吸器乳頭腫症

Recurrent respiratory papillomatosis

別名
再発性呼吸器乳頭腫症喉頭乳頭腫症若年発症型再発性呼吸器乳頭腫症RRPJuvenile-onset recurrent respiratory papillomatosis
臓器系
耳鼻咽喉科感染症呼吸器
科目
OtorhinolaryngologyPathologyPathology (Histopathology)Medical Microbiology
トピック
耳鼻咽喉科 56:喉頭の変性疾患・良性腫瘍、喉頭浮腫、遺伝性血管性浮腫病理学 C/29:鼻腔・上咽頭・喉頭の腫瘍組織病理 H1-069:喉頭乳頭腫(HE染色)組織病理 H1-074:喉頭乳頭腫(肉眼標本)微生物学 3/18:パピローマウイルスとポリオーマウイルス(BK・JC)
鑑別疾患
気管支喘息声門下狭窄
治療薬
ベバシズマブシドフォビルアルファインターフェロン
原因微生物
HPV 6, 11
症状
嗄声吸気性喘鳴咳
原因となる疾患
HPV感染症(疣贅・尖圭コンジローマ・子宮頸部異形成)

🧠 全体像:⭐ 同じウイルス(HPV 6, 11)が、まったく違う2つの疫学を持つ。 若年発症型は分娩時の(母体の)で乳幼児に発症し、成人発症型は性的接触による感染が想定される。に乳頭腫が多発し、⚠️ 組織学的には良性なのに気道を塞ぐため致死的になりうる——だから治療は「癌を治す」のではなく「気道を開け続ける」ことが目的になる。切除しても潜伏したウイルスは残るので根治しない。⭐ 唯一の根本的な対策はワクチンによるである。

ウイルスと2つの発症型

原因はの 6・11で、から検出されることはまれな型である。ウイルス学の詳細はHPV 6, 11、疾患全体の枠組みは感染症(疣贅・・)に譲る。

若年発症型 成人発症型
感染経路 分娩時の産道通過による 性的接触(など)が想定される
発症年齢 乳幼児期 成人期
経過 診断時年齢が低いほど侵襲的で手術回数が増える 若年発症型より穏やかなことが多い

⭐ 「同じウイルス型で2つの疫学」がこの疾患の骨格である。 下気道へ進展した122例のコホートでは若年発症型45%・成人発症型55%で、診断時の平均年齢は若年発症型4歳・成人発症型54歳と大きく離れていた1。同一のウイルスが、感染の時期と経路の違いだけで50年隔たった2つの疾患像を作る。

米国での推定は小児4.3/10万人、成人1.8/10万人である2。

症状と診断の遅れ

⚠️ 小児では嗄声が唯一の初発症状になる。 乳頭腫は声帯に好発するため、まず嗄声・泣き声の変化として現れる。病変がを狭めて初めて・呼吸困難が加わる。

⚠️ 喘鳴をと読み違えて診断が遅れる。 小児の喘鳴は喘息の頻度が圧倒的に高いため、が試され、効かないまま時間が過ぎる。吸気性の喘鳴であること、先行して嗄声があったこと、に反応しないことが、上気道のを疑う手がかりになる。本症は小児の喉頭で最も頻度の高い良性腫瘍であり、小児の嗄声の第2の原因でもある2。

flowchart TD
    A["小児の持続する嗄声"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchodilator'>気管支拡張薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhaled corticosteroid, ICS'>吸入ステロイド</span>への反応"}
    B -->|"反応しない"| C["上気道の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organic lesion'>器質的病変</span>を疑う"]
    B -->|"喘鳴が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='expiratory'>呼気性</span>で反応する"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchial asthma'>気管支喘息</span>として管理"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laryngeal endoscopy'>喉頭内視鏡</span>で声帯・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Supraglottic'>声門上</span>を直視"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='papillary'>乳頭状</span>病変を確認"]
    F --> G["生検で組織診断<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='papillary architecture'>乳頭状構築</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrovascular core'>線維血管性芯</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='koilocyte'>コイロサイト</span>)"]
    G --> H["気道確保を最優先に外科的切除を計画"]

診断はと生検による。組織学的にはをが覆う良性の腫瘍で、基底膜は保たれる。

治療

⭐ 繰り返す外科的切除が治療の中心で、根治はしない。 目的は病変のではなく、気道の開存との維持である。やレーザー(CO₂・KTPなど)で乳頭腫を減量し、声帯粘膜のを避けるため深く削らない。⚠️ 潜伏したウイルスは正常に見える粘膜にも残っているため、切除は再発を前提とした反復治療になる。

補助療法をいつ足すか

⭐ 12か月に4回を超える手術が必要な場合、または病変が喉頭外へ及ぶ場合が、補助的薬物療法を検討する目安である2。

位置づけ
を標的とする抗体。全身投与とがある
病変内注入。抗ウイルス薬としての使用は適応外
古くから用いられる。効果は限定的で有害事象が多い

系統的レビュー(15研究64例)では、全身投与のを受けた患者の95%で治療後の手術間隔が明らかに延長し、平均21.6か月の追跡期間中に半数以上が手術を要さなかった。での延長は62%にとどまり、著者らは全身投与が第一選択となりうるとづけている3。⚠️ ただし対象は64例で、長期追跡の前向き研究が必要とされている段階である。

悪性転化

まれだが、扁平上皮癌への転化が起こりうる。⚠️ 下気道へ進展した122例という選択された集団では、42例(34%)が気管(6例)または肺(36例)の扁平上皮癌へ転化し、と関連した唯一の因子は肺病変の存在だった1。⚠️ この34%を本症全体のと読まない。 下気道進展例だけを集めた集団の値である。のなかでも 11型がと関連するとされる。

予防

⭐ はワクチンである。 4価以上のワクチンは6・11型を標的に含む。米国の19年コホート(1854例)では、若年発症型の受診ベースが2006年の10万人あたり3.1から2024年の1.1へ65.2%低下し、この低下はワクチン接種率の上昇と関連していた4。

💡 母体のワクチン接種が児の疾患を防ぐという構図になる。 で起こる若年発症型は、接種世代が母になることで供給源そのものが減る。⚠️ ワクチンは既存の乳頭腫を治療するものではない。

まとめ

  • は 6・11によるので、若年発症型()と成人発症型(性的接触)という2つの疫学を持つ。
  • 小児では嗄声が唯一の初発症状で、喘鳴をとして診断が遅れやすい。・先行する嗄声・無効が手がかりになる。
  • 治療は気道開存と音声維持を目的とした外科的切除の反復で、根治しない。12か月に4回を超える手術や喉頭外進展が補助的薬物療法の目安になる。
  • 全身投与のは手術間隔を延長するとして報告されているが、症例数が限られ長期の前向き研究が必要である。
  • まれに扁平上皮癌へ転化し、 11型が関連するとされる。下気道進展例に限った集団での高い転化率を全体の値と混同しない。
  • はワクチンで、の上昇とともに若年発症型のは大きく低下している。

出典

  1. 1.Recurrent respiratory papillomatosis in adults with lower respiratory tract involvement: a retrospective study of the OrphaLung and GETIF networks(European Respiratory Journal・2025)下気道進展を伴う反復性呼吸器乳頭腫症122例のうち若年発症型45%・成人発症型55%。診断時平均年齢は若年発症型4歳、成人発症型54歳。42例(34%)が気管(6例)または肺(36例)の扁平上皮癌へ悪性転化し、悪性転化と関連した唯一の因子は肺病変の存在だった閲覧 2026-08-24
  2. 2.Recurrent respiratory papillomatosis: a review(The Laryngoscope・2008)反復性呼吸器乳頭腫症はHPV 6・11によって起こり、小児の喉頭で最も頻度の高い良性腫瘍かつ小児嗄声の第2の原因である。米国での推定発生率は小児4.3/10万人、成人1.8/10万人。小児例は感染した母体からの経腟分娩時の垂直感染と関連し、診断時年齢が低いほど侵襲的な経過をとって手術回数が増える。12か月に4回を超える手術が必要な場合や喉頭外に病変が及ぶ場合は補助的薬物療法を検討する。組織学的には良性だが制御が難しく、重い合併症や死亡をきたしうる閲覧 2026-08-24
  3. 3.Bevacizumab as treatment option for recurrent respiratory papillomatosis: a systematic review(European Archives of Oto-Rhino-Laryngology・2022)15研究64例を対象とした系統的レビューで、全身投与のベバシズマブを受けた患者の95%で治療後の手術間隔が明らかに延長し、平均21.6か月の追跡期間中に半数以上が手術を要さなかったこと、病変内投与では手術間隔の延長が62%にとどまったこと、著者らが全身投与を第一選択となりうる治療と結論づけ長期追跡の前向き研究を要すると述べていることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-02
  4. 4.Juvenile-Onset Recurrent Respiratory Papillomatosis and Human Papillomavirus Vaccine Uptake: A 19-Year Retrospective Cohort Study(Otolaryngology–Head and Neck Surgery・2026)米国の19年コホート(1854例)で若年発症型反復性呼吸器乳頭腫症の受診ベース発生率は2006年の10万人あたり3.1から2024年の1.1へ65.2%低下し、HPVワクチン接種率の上昇と関連した閲覧 2026-08-24