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Microbe Atlas · ウイルス

HPV 1, 2, 3, 4

ヒトパピローマウイルス1・2・3・4型

分類
パピローマウイルス / Papillomaviruses
性状
エンベロープなし NakeddsDNA
科目
Medical Microbiology
トピック
3/18: Papilloma and Polyomaviruses (BK, JC)
原因となる疾患
DOCK8欠損症HPV感染症(疣贅・尖圭コンジローマ・子宮頸部異形成)

🧠 全体像: 1・2・3・4型は皮膚だけに住み着く「皮膚型」パピローマウイルスで、性器・咽頭に病変を作る・低リスクとは棲み分けが異なる。への感染と免疫からの隠れ方という戦略は共通しているが、この4型が起こすのは疣贅(いぼ)という良性の角化病変だけで、は持たない。もう一つ押さえておきたいのは、現行のワクチンがこの4型をカバーしていないという点1——ワクチン接種歴があってもは防げない。

ウイルスの構造とゲノム

Papillomaviridae科に属する、エンベロープを持たないウイルス。は主要L1で構成され、直径約55nmと小型である。

⚠️ の「型」は血清型ではなく遺伝子型である。 型番は塩基配列に基づいてInternational Reference Centerが付与しており、候補クローンを再・再して確認できたものに番号が与えられる。確立された型はHPV202番まであり、5属49種に分類される2。診療ガイドラインも「200型超が同定されている」と記載する3——「血清型が75種類以上」という古い言い方は、数も分類の根拠も現在と合わない。

型は、皮膚に留まる「皮膚型」と性器・口腔咽頭粘膜に住み着く「」に大別される——1・2・3・4型は前者の代表株で、 6・11・ 16・18・31・33・58はいずれも後者に属する。

病原性の仕組み

皮膚の(すり傷・咬爪など)からに感染し、感染細胞が分化して表層へ移動するのに伴ってウイルスも複製・成熟する。基底層に持続的に潜伏することで免疫系からの排除を免れ、これが疣贅の慢性化・再発の理由になる。

flowchart TD
    A["皮膚の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microtrauma'>微小外傷</span>から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human papillomavirus'>HPV</span>侵入"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cell layer'>基底細胞層</span>に感染・持続潜伏"]
    B --> C["感染細胞の表層への分化に伴い<br>ウイルスも複製・成熟"]
    C --> D["表皮の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperkeratosis'>過角化</span>・過形成"]
    D --> E["疣贅(いぼ)形成"]
    B -->|"免疫から隠れ続ける"| F["慢性化・再発"]
型 主な病変 好発部位・特徴
1 荷重で内向性にし、深く疼痛を伴いやすい
2・4 手指・に好発する。表面のはした毛細血管
3 顔面・に好発する、平坦で境界明瞭な

⚠️ 型と病型は一対一に対応しない。 診療ガイドラインはの主な原因を 1・2・4・27・57型、の主な原因を 3・10・28・41型としている3。上の表は「どの型を見たらどの病変を思い出すか」という当たりの付け方であって、病変から型をする根拠にはならない。臨床上もは不要である。

感染経路と疫学

  • 直接接触(皮膚同士の接触)、(・による拡散、手による拡散)、下着やプールの共用床など間接接触()を介して伝播する3
  • 疣贅のは7〜12%と報告される。がの約70%を占め主に小児に生じ、・はやや高い年齢層に多い3
  • 小児・若年成人に多く、免疫が健常であれば免疫応答による排除で1〜2年以内に自然消退することが多い。ただし経過は幅広く、軽い困りごとで済むものから難治・慢性化するものまである4
  • 移植患者などの免疫抑制状態では病変が多発・巨大化し、治療に抵抗性を示しやすい

起こす疾患

臨床像の全体は感染症(疣贅・・)を参照。この4型が起こすのはいずれも皮膚に限局した良性の角化病変である。

疾患 特徴
ざらついた。点状のは毛細血管
で内向性に増殖し圧痛を伴いうる
平坦で境界明瞭、多発しやすい

診断

臨床診断が基本。急速な増大・潰瘍・色素不整・を伴う場合や、免疫抑制患者で治療に反応しない場合は、などの悪性腫瘍を除外するために生検を行う。は疣贅の診断・治療選択には通常用いない。

💡 この4型にはないが、「疣贅らしい病変」を癌と見誤らない配慮は要る。 皮膚の感染はほとんどが良性の増殖性病変にとどまる一方、まれにへ発展すると記載されており3、臨床像が典型を外れたときに生検へ進む判断が診断の要点になる。

治療と予防

免疫正常者では自然消退することが多く、無症状であれば経過観察も選択肢になる。自体を排除する抗ウイルス薬は無いため、治療はいずれも病変を物理的・化学的に除去して免疫の排除を助ける手段である3。

疼痛・機能障害・整容的負担がある場合の第一選択はの外用とである3。

治療 根拠の強さ
外用 に比べ全部位の治癒を有意に増やす(RR 1.56、95%CI 1.20〜2.03)。手(RR 2.67)のほうが足(RR 1.29)より効きやすい4
には推奨(1B)、には提案(2B)3。ただしとの比較では全部位で有意差が出ていない(RR 1.45、95%CI 0.65〜3.23)4
+の併用 単独より有効(RR 1.24、95%CI 1.07〜1.43)4
や凍結に耐えられない(とくに多発例)に提案(2C。平均44℃・30分を反復)、にも提案(2B)3
10% 5-ALA(1B)、またはカンジダ抗原の(1B)3
難治・再発の ・・のを提案(2B)3

💡 小児ではを選びにくい。 疼痛と水疱を生じ、しかも反復を要するためである3。強く凍結すれば有効性は上がるが有害事象も増え(RR 1.90、95%CI 1.15〜3.15)、施行間隔を2週・3週・4週と変えても治癒率は変わらない4。

治癒したと言えるのは、4週時点で病変が完全に消え、少なくとも6か月再発しないときである(1B)3。再発しやすい疾患なので、1回の消退で終診としない。

⚠️ ワクチンはこの4型をカバーしない。 現行で最も型の範囲が広い9価ワクチンでも中身は 6・11・16・18・31・33・45・52・58型のL1由来であり1、皮膚型の1・2・3・4型は含まれない。接種歴があってもは防げない。

まとめ

  • 1・2・3・4型は皮膚だけに感染する非の「皮膚型」で、(低リスク・高リスク)とは棲み分けが異なる。
  • の「型」は塩基配列で定義される遺伝子型であり血清型ではない。確立された型はHPV202番までで200型を超える。
  • へのと免疫からの回避という戦略は共通するが、起こすのは疣贅という良性病変のみ。
  • 1は、 2・4は、 3はと結び付けて覚えるが、型と病型は一対一ではない(は 1・2・4・27・57型、は 3・10・28・41型が主)。
  • 直接接触・・で伝播し、免疫抑制状態では多発・難治化しやすい。
  • 自体を排除する薬は無い。治療は経過観察または外用・が第一選択で、両者の併用は単独より有効。治癒は4週時点での完全消退+6か月の無再発で判定する。
  • ワクチンはこの4型をカバーしない——9価ワクチンでも 6・11・16・18・31・33・45・52・58型のみである。

出典

  1. 1.GARDASIL 9 (Human Papillomavirus 9-valent Vaccine, Recombinant) — Prescribing Information(Merck Sharp & Dohme LLC(米国添付文書。FDA掲載版)・2025)米国添付文書(改訂表示 Revised 03/2025)の11 DESCRIPTIONで、本剤がHPV 6・11・16・18・31・33・45・52・58型のL1由来ウイルス様粒子から作られていることを確認した。すなわち現行で最も広く型をカバーする9価ワクチンにもHPV 1・2・3・4型は含まれない閲覧 2026-09-27
  2. 2.International standardization and classification of human papillomavirus types(Virology 476:341-344(Bzhalava D, Eklund C, Dillner J)・2015)Europe PMCの抄録(PMID 25577151)で確認した。確立されたHPVの「型」はHPV202番までで、5属49種に分類される。型番の付与と検出の国際標準化はInternational HPV Reference Centerが担い、候補クローンを再クローニング・再シークエンスして確認できたものに型番を与える——すなわち型は血清反応ではなく塩基配列で定義される遺伝子型である。γ属が79型27種で最も多く、α属65型・β属51型を上回る。メタゲノム解析の普及で新型の発見速度が上がっている。Crossrefで著者・誌名・巻頁を照合した。抄録の範囲にとどまる閲覧 2026-09-27
  3. 3.Clinical guideline for the diagnosis and treatment of cutaneous warts (2022)(Journal of Evidence-Based Medicine 15:284-301(Zhu P, Qi RQ, Yang Yら)・2022)PMCのオープンアクセス全文(PMC9825897)で確認した。GRADEと改良Delphi法(合意度80%超)で49の推奨を作成した診療ガイドラインである。「HPV is a double-stranded DNA virus with more than 200 types being identified.」と200型超を明記し、疣贅の有病率を7〜12%とする。尋常性疣贅は皮膚疣贅の70%を占め主に小児に生じ、足底疣贅と扁平疣贅はやや高い年齢層に多い。扁平疣贅は「commonly caused HPV type 3, 10, 28, and 41」、足底疣贅は「infected mostly by HPV types 1, 2, 4, 27, and 57」で、型と病型は一対一ではない。皮膚疣贅の第一選択は「topical use of salicylic acid and cryotherapy」だが、凍結療法は疼痛と水疱を生じ反復を要するため小児では使いにくい。凍結療法は尋常性疣贅に推奨(1B)、足底疣贅には提案(2B)。扁平疣贅には10% 5-ALA光線力学療法(1B)とブレオマイシンまたはカンジダ抗原の局注(1B)が推奨される。難治・再発の尋常性疣贅にはブレオマイシン・5-FU・シドフォビルの局注が提案される(2B)。局所温熱療法は局注や凍結に耐えられない尋常性疣贅(とくに多発例)に提案(2C、平均44℃・30分を反復)、足底疣贅にも提案(2B)。⚠️ 尋常性疣贅と足底疣贅で推奨度が違う(2Cと2B)。治癒の臨床基準は「complete clearance of lesions at 4 weeks and no recurrence for at least 6 months」(1B)。多発疣贅は2個以上(2D)。「So far, there is no effective anti-HPV drug to clear HPV infection.」とHPV自体を排除する薬は無い。皮膚同士の接触・手による拡散・下着や無生物との接触が尋常性疣贅・扁平疣贅・足底疣贅の伝播経路である(2D)閲覧 2026-09-27
  4. 4.Topical treatments for cutaneous warts(2012)Europe PMCの抄録(PMID 22972052、主要な効果指標の数値を含む)で確認した。85試験・8,815人の無作為化参加者を統合し、多くの試験は1つ以上の領域でバイアスリスクが高いと判定されている。サリチル酸はプラセボに比べ全部位の治癒を有意に増やし(RR 1.56、95%CI 1.20〜2.03)、手(RR 2.67、95%CI 1.43〜5.01)のほうが足(RR 1.29、95%CI 1.07〜1.55)より効きやすいことが示唆された。一方、凍結療法とプラセボの比較は全部位でどちらにも有利でなかった(RR 1.45、95%CI 0.65〜3.23)。凍結療法とサリチル酸のあいだに有意差はなく(RR 1.23、95%CI 0.88〜1.71)、サリチル酸に凍結療法を併用するとサリチル酸単独より有効だった(RR 1.24、95%CI 1.07〜1.43)。強い凍結は穏やかな凍結より有効だが有害事象が増え(RR 1.90、95%CI 1.15〜3.15)、2週・3週・4週間隔で治癒率に差はなかった。疣贅は自然消退するものから難治・慢性化するものまで幅があるとされる。抄録の範囲にとどまる閲覧 2026-09-27