婦人科学

婦人科学 · 02

続発性無月経

Secondary amenorrhea

前提:病態
成長ホルモン・プロラクチン過剰分泌甲状腺機能低下症の発症機序と症状
前提:正常
女性性内分泌学
疾患
シーハン症候群スポーツにおける相対的エネルギー不足機能性視床下部性無月経子宮内癒着症卵巣炎頸管狭窄
症状
希発月経無月経
検査値
卵胞刺激ホルモン

🧠 全体像:では、まず妊娠を除外し、・プロラクチン・・エストラジオールで「甲状腺/高プロラクチン」「卵巣」「視床下部・下垂体」を整理する。は子宮内膜、卵巣、の手掛かりを早期に与える。

定義

⚠️ 「3か月以上」ではなく「3か月を超えて」である。 米国生殖医学会の原文は absence of menses for >3 months で、3か月ちょうどは定義に含まない1。不規則だった場合の6か月には不等号が付かない、という非対称もそのまま写す。

月経が1週間遅れただけでも、妊娠可能性があれば妊娠検査を行う1。⚠️ の評価は妊娠の除外から始めるというこの順序は、米国生殖医学会の診療委員会意見(2024年版。2008年版を置き換えたもの)が示す診断的評価の原則にあたる1。

💡 どこで止まりやすいかには重心がある。 同委員会意見が挙げるの原因の内訳は、視床下部35%・17%・卵巣40%・と子宮7%・その他1%で、卵巣と視床下部で4分の3を占める1。⚠️ ただしASRM自身が留保を付けている——の病因調査の多くは古く、の拡大と肥満の増加により、今日はより多くがに分類されうるとしている1。順位の感覚として使い、割合そのものを覚えない。 との比較は無月経にまとめてある。

主な原因

部位・機序 代表例 手掛かり
生理的 妊娠、授乳、閉経 β-、産後歴、年齢・症状
視床下部 体重減少、摂食障害、過度の運動、心理的ストレス、慢性疾患 ・低値〜正常、エストラジオール低値
下垂体 、、、 、頭痛、、歴
甲状腺 甲状腺機能低下症・亢進症 異常。原発性機能低下では増加を介してプロラクチンが上がりうる
卵巣 (PMOS、旧PCOS)、(卵巣機能不全) 、高値、エストラジオール低値
子宮・流出路 、、 子宮内操作後、内膜菲薄化、
薬剤 抗精神病薬、、オピオイド、、化学療法、ホルモン製剤 開始時期と月経停止の時間関係

重要病態

高プロラクチン血症

  • プロラクチンはを抑制し、・低下からを生じさせる。
  • 軽度上昇では薬剤、妊娠、、を確認し、再測定する。逆にでのとき、免疫測定が偽の低値を示すにも注意する。2
  • 持続高値ではを行う。治療が必要なではを用い、一般にが第一選択となる。が制御され妊孕性も回復し、3分の1では治癒して投薬を中止できる。妊娠と閉経は自然なプロラクチン低下を促し、中止時期を早めうる。2

シーハン症候群と下垂体卒中

原発性卵巣機能不全

  • 40歳未満で卵巣機能が低下する病態。現行のガイドラインは、この病態を指す呼称としてPOIを用いるよう推奨しており、40〜44歳での卵巣機能の停止は「」と呼び分けている。3
  • は従来考えられていたより高い。⚠️ 3.5%という値は、ガイドライン本文では「非医原性POI」(手術・化学療法・放射線などによらないもの)について述べられている——古い研究の約1%に対し近年の報告が3.5%まで示す、という文脈である。要旨のほうは母集団を限定せず「POIの3.5%」、はさらに「3.5〜3.7%」と書いており、同じ文書の中で3通りに割れている。3
  • 診断は40歳未満で4か月以上続く自発的な無月経またはに >25 IU/L の上昇を確認して行う。2024年版では、の上昇は1回確認されれば足りる。⭐ 反復測定を求めていたのは2015/2016年版で、今は臨床像と併せた1回の測定で診断に足り、再検は診断が不確実なときに限る——簡略化の狙いは早く診断して治療を早く始めることにあるとガイドライン自身が述べている。3
  • 血清エストラジオール濃度でPOIを診断しない。 ただしエストラジオール低値はを示し、高値と併せれば診断の追加的な裏づけになる。3 に入らない以上、エストラジオールが低くないことだけを理由にPOIを否定することもできない。
  • 診断が不確実なときは4〜6週後の再検やAMHの測定を行う。⚠️ はPOIの一次として用いない——の結果でが出ないときの確認に使うもので、POIを予測する目的でに測定することも推奨されていない。3
  • ⚠️ 診断を確定する前に3つを確かめる。 ①無月経では妊娠を除外する ②(経口・注射・長時間作用型の避妊薬を含む)は無月経やを隠しもすれば生じさせもし、を下げうるので、などは診断確定前に中止が必要なことがある ③40歳未満でを受けた女性は、それ自体がPOIの診断で追加の検査は要らない。3

原因検索。 ⭐ 遺伝学的検査は「適応に応じて考慮」ではない。非医原性POI(手術・化学療法・放射線などによらないもの)と診断したら、全例にとFMR1検査を行う(いずれも強い推奨)。⚠️ FMR1は専用の検査を要し、や次世代シークエンサーは検出に有用でない。 などの追加の遺伝学的検査のほうは条件つき推奨である。3

  • 原因不明のPOIにはをスクリーニングする(強い推奨)。⚠️ 一方、は自己免疫性POIの診断に用いない(強い推奨)。3
  • 診断時にTSHを測り、以後5年ごとまたは症状が出たときに繰り返す。3
  • 診断時に全例でによるを行う(強い推奨)。3

説明と治療。

  • ⚠️ 自然妊娠が完全に不可能とは限らない。 非手術性POIでは卵巣活動が起こりうるので、妊娠を避けたいなら避妊を勧める(いずれも強い推奨)。⚠️ は避妊にならないことも併せて説明する。3
  • 禁忌がなければ、通常の閉経年齢までを続けて骨・心血管を保護する。⚠️ 症状の有無にかかわらず推奨される——罹病・死亡のリスクを下げるとしての位置づけである(強い推奨。ただしエビデンスの確実性は非常に低い)。3
  • ⚠️ 子宮がある全例にを併用する(強い推奨)。エストロゲン単独では・のリスクが上がるためで、閉経後のホルモン補充と同じ理屈である。3

子宮内癒着症

  • 妊娠関連の、胎盤遺残処置、手術などで基底層が損傷し、を生じる。
  • 無月経・、不妊、の原因となる。
  • やで診断し、下を行う。

診断手順

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary amenorrhea'>続発性無月経</span>"] --> B["妊娠検査"]
    B -->|"陽性"| C["妊娠部位・経過を評価"]
    B -->|"陰性"| D["病歴・診察・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>・プロラクチン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>・E2"]
    D --> E{"プロラクチン持続高値"}
    E -->|"はい"| F["薬剤・甲状腺・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macroprolactin'>マクロプロラクチン</span>を確認後<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>"]
    E -->|"いいえ"| G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>高値かつE2低値"}
    G -->|"はい"| H["40歳未満ならPOIを評価<br>妊娠除外・ホルモン薬の影響・必要なら再検"]
    G -->|"いいえ"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pelvic ultrasound'>骨盤超音波</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='signs of hyperandrogenism'>高アンドロゲン徴候</span>を評価"]
    I --> J["PMOS/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional hypothalamic amenorrhea (FHA)'>機能性視床下部性無月経</span>/子宮内病変を鑑別"]

黄体ホルモン消退出血試験の位置付け

  • 投与後に出血すれば、エストロゲン作用と流出路が保たれたを示唆する。
  • 出血しない場合はと内膜・流出路障害のどちらでも起こる。
  • 偽陽性・偽陰性があるため、単独で病変部位を決める検査ではない。・エストラジオールと超音波を組み合わせる。

治療原則

  • 原因疾患を治療し、低エストロゲンが長期化する場合は骨量低下を予防する。
  • で子宮内膜が持続的にエストロゲンへ曝露される場合は、周期的や配合ホルモン薬で内膜を保護する。
  • 妊娠希望では原因に応じて、治療、を選択する。

まとめ

  • 定義は規則的だったなら3か月を「超えて」(3か月ちょうどは含まない)、不規則だったなら6か月。では妊娠を最初に除外し、・プロラクチン・・エストラジオールとで評価する。
  • 高値はPOI(40歳未満なら >25 IU/Lの1回確認で診断。反復測定を求めていたのは2015/2016年版。エストラジオールももではなく、は一次に用いない)、低値〜正常・低エストラジオールは視床下部・下垂体性を示唆する。
  • ⭐ POIと診断したら検査はそこで終わらない。 非医原性なら全例にとFMR1検査、原因不明なら、そして診断時にと。治療は通常の閉経年齢までのを症状の有無によらず続け、子宮があればを併用する。
  • 試験は補助的検査であり、無出血だけで内膜障害と断定しない。

出典

  1. 1.Current evaluation of amenorrhea: a committee opinion(Fertility and Sterility(American Society for Reproductive Medicine 診療委員会)・2024)原発性・続発性無月経の診断的評価について臨床医向けの原則と方針を示した委員会意見。2008年版の同名文書を置き換えるもの。⚠️ 続発性無月経の評価について、原文が "The possibility of pregnancy must be at the forefront of differential diagnoses for secondary amenorrhea. Once pregnancy has been ruled out, a stepwise approach to evaluation is recommended" と述べ、Figure 2 の最上段を "Rule Out Pregnancy" としていることを確認した。⭐ 2026-09-13の実行で、ASRM公式サイトが公開している本文PDF(asrm.org の globalassets 配下の current_evaluation_of_amenorrhea.pdf。表紙の書誌は Fertil Steril 2024;122:52-61 で本idのDOIと一致する。全10ページ)を取得し、続発性無月経の定義を逐語で確認した——"Secondary amenorrhea, defined as the absence of menses for >3 months in girls or women who previously had regular menstrual cycles or 6 months in girls or women who had irregular menses, requires investigation."。⚠️ 規則的だった場合の閾値は「3か月以上」ではなく「>3か月」であり、3か月ちょうどは含まない。あわせて、規則的な周期の女性では1週間の遅れでも妊娠の除外を要しうること("In women with regular menstrual cycles, a delay of menses for as little as 1 week may require the exclusion of pregnancy.")、妊娠・授乳・閉経によらない無月経の有病率が約3〜4%であること、続発性無月経の原因の内訳(Table 2)が視床下部35%・下垂体前葉17%・卵巣40%・生殖器流出路と子宮7%・その他1%であり、生殖器流出路と子宮の枠に挙がるのが頸管狭窄と子宮内癒着の2つであることを確認した閲覧 2026-09-13
  2. 2.Approach to the Patient With Prolactinoma(The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism・2023)プロラクチノーマの診断が単回のプロラクチン測定と下垂体画像で進むが、**「フック効果」とマクロプロラクチン**という検査上のアーチファクトが診断を難しくしたり遅らせたりしうること。治療の第一選択がドパミン作動薬、主にカベルゴリンであり、病勢制御と妊孕性の回復をもたらし3分の1では治癒して投薬を中止できること。妊娠と閉経は自然なプロラクチン低下を促し、カベルゴリンの中止を早めうること閲覧 2026-08-21
  3. 3.Evidence-based guideline: premature ovarian insufficiency(ESHRE, ASRM, CREWHIRL, and IMS Guideline Group on POI・2024)PMC11631070(Human Reproduction Open掲載のガイドライン要約論文。145の推奨を本文に再掲している)の全文をEurope PMCから取得して確認した。①診断基準の逐語は「The guideline group recommends the following diagnostic criteria: disordered menstrual cycles (spontaneous amenorrhea or irregular menstrual cycles) for at least 4 months and an elevated FSH concentration > 25 IU/l. FSH assessment should be repeated after 4–6 weeks if there is diagnostic uncertainty.」(GPP)で、不等号は「>」、単位は IU/l、再検は診断が不確実な場合に限られること。②⚠️ 反復測定を求めていた旧版は「2015年版」ではなく「2015/2016年版」である——考察の逐語は「the 2015/2016 guidance recommended FSH assessments on two occasions to diagnose POI. However, a single FSH assessment in combination with the characteristic clinical picture is now considered sufficient for POI diagnosis, and a second FSH assessment is only required in case of diagnostic uncertainty」であり、続けて「This change in guidance should facilitate the rapid and efficient diagnosis of POI, which is particularly important in ensuring prompt commencement of treatment」と簡略化の狙いを述べていること。③AMHをPOIの一次診断検査として用いないこと(STRONG ⊕◯◯◯)、FSHが判定に迷うときの確認には有用でありうること(GPP)、予測目的の日常的なAMH測定は精度の根拠不十分により行わないこと(GPP)。④血清エストラジオール濃度でPOIを診断しないが、低値はエストロゲン欠乏を示しFSH高値と併せれば診断の追加的な裏づけになること(GPP)。⑤診断上の留意点として、無月経では妊娠を除外すること、ホルモン療法(経口・注射・長時間作用型の避妊薬を含む)が無月経・月経不順を隠しまたは生じさせFSHを下げうるため診断確定前に中止が必要なことがあること、40歳未満で両側卵管卵巣摘出術を受けた女性はそれ自体がPOIの診断で追加検査は不要であること(いずれもGPP)。⑥原因検索として、非医原性POIの全例に染色体分析とFMR1プレミューテーション検査を推奨すること(いずれもSTRONG ⊕⊕◯◯)、FMR1は専用検査を要し多遺伝子パネルや次世代シークエンサーは検出に有用でないこと、次世代シークエンシング等の追加の遺伝学的検査は条件つき推奨(CONDITIONAL ⊕⊕◯◯)であること、原因不明例に21-水酸化酵素抗体のスクリーニングを行うこと(STRONG ⊕◯◯◯)、抗卵巣抗体を自己免疫性POIの診断に用いないこと(STRONG ⊕◯◯◯)。⑦診断時にTSHを測り以後5年ごとまたは症状出現時に繰り返すこと。⑧診断時に全例でDXAによる骨密度測定を行うこと(STRONG ⊕⊕◯◯)。⑨非手術性POIでは卵巣活動が起こりうること、妊娠を避けたい場合は避妊を勧めること(いずれもSTRONG)、ホルモン補充療法は避妊にならないと説明すること(GPP)。⑩ホルモン療法を、エストロゲン欠乏症状の有無にかかわらず通常の閉経年齢まで一次予防として行うこと(逐語は「HT is recommended for women with POI until the usual age of menopause for primary prevention to reduce the risk of morbidity and mortality, whether there are estrogen deficiency symptoms or not.」STRONG ⊕◯◯◯)、子宮を有する全例にプロゲストーゲンを併用して内膜増殖・内膜癌を防ぐこと(STRONG ⊕⊕◯◯)。⑪有病率の書き方が同一文書内で3通りに割れていること——要旨は母集団を限定せず「New data indicate a higher prevalence of POI, 3.5%, than was previously thought.」、GDG statement は非医原性POIに限定して「The reported prevalence of non-iatrogenic POI varies from ∼1% in older studies to 3.5% in recent publications.」、考察は「Of importance are new data indicating a higher prevalence of POI, 3.5–3.7%」である閲覧 2026-09-13