疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 運動器 · 外傷

踵骨骨折

Calcaneal fracture

別名
calcaneus fracture
臓器系
運動器
科目
Traumatology and Orthopedics
トピック
外傷学 34:踵骨骨折と治療
鑑別疾患
pilon骨折距骨骨折
合併症
コンパートメント症候群骨髄炎
症状
疼痛腫脹圧痛

🧠 全体像:は・と同じ高エネルギーで生じる骨折で、⭐ ・踵の高さと幅・後方皮膚の3つを同時に評価することが要になる1。Sanders分類(での骨片数)とBöhler角(X線でのの程度)は見ているものが違い、⚠️ どちらか一方だけでを決めない。高所では同じが・・脊椎へ同時に伝わるため、を見つけたらを必ず探す1。

疫学と受傷機転

は全の約60%を占め、全骨折の1〜2%にとどまる。好発年齢は30〜50歳で、男性に有意に多い1。が70〜75%、関節外骨折が25〜30%を占め、両側性のは5〜10%に生じる1。

⭐ 主な機転は高所からの落下と交通事故による負荷である。 建設労働者・屋根職人に多く、足がで地面に着地したとき、がへ楔のように打ち込まれる1。低エネルギー機転として・直接損傷・損傷のほか、ランナーやに生じるストレス骨折もある1。

分類——Sanders分類とEssex-Lopresti分類

flowchart TD
    A["高エネルギー<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axial load'>軸圧</span><br>高所<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flying-falling'>転落</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='road traffic injury'>交通外傷</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='talus'>距骨</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcaneus'>踵骨</span>後方関節面へ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='wedge-shaped'>楔状</span>に打ち込まれる"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intra-articular fracture'>関節内骨折</span>(70〜75%)"]
    B --> D["関節外骨折(25〜30%)"]
    C --> E["Sanders分類(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coronal plane'>冠状断</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>)<br>I〜IVで骨片数を評価"]
    C --> F["Essex-Lopresti分類<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tongue-type fracture'>舌状骨折</span> / 関節<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retraction'>陥没</span>型"]

Sanders分類はに基づき、後方関節面の骨片数で評価する1。

型 定義
I 非転位または最小限の転位
II 後方関節面が2骨片(A/B/C亜型)
III 中央を伴う3骨片(AB/AC/BC亜型)
IV 4骨片以上の高度

型が重いほど整復率・臨床成績が低下することは、Sandersらの転位120例の検討で示された2。

⭐ Essex-Lopresti分類は「後方皮膚が危ないかどうか」を見る分類である1。

型 定義 皮膚へのリスク
後方隆起の垂直+後方への水平 ⚠️ による近位牽引で後方皮膚が緊張し、のリスクが高い
関節型 Gissane角を通る単一垂直 後方皮膚へのは低いが、関節面の不規則性が高い

Böhler角とGissane角

Böhler角は隆起最高点から後方関節面最高点への線と、前方突起最高点から後方関節面最高点への線がなす角で、正常値は20〜40度である1。20度以下は骨折の有無判定において高い診断精度を持つ有用なスクリーニングツールである(25度未満で感度100%・特異度82%、21度未満で感度99%・特異度99%)3。ただし⚠️ Böhler角(の程度)とSanders分類(での骨片数)は評価している軸が異なるため、Böhler角だけで手術適応まで決めない。5度未満は手術適応、15度超は予後良好とされる1。

Gissane角(critical angle)の正常値は130〜145度である1。

診断——合併損傷を探す

⚠️ 患者の約70%に追加損傷を合併する1。⭐ 高所ではの精査が必須であり、同じ機転で・対側のも併存しうる1。足部は最大10%に発症し、初期評価での疼痛増悪から疑う1。

治療

保存治療の対象は、Sanders I型、大多数の関節外骨折、手術に不適な医学的状態の患者である1。手術適応は、の全例、Böhler角5度未満、関節面を伴う、骨折、関節面の25%超に及ぶ前突起骨折、有意な突出である1。

⭐ 手術のタイミングは「皮膚の皺が戻ったか」で決める。 受傷後5〜10日を目安に、血液・漿液性水疱が完全に上皮化するまでする——の「皮膚のしわが戻ってから」と同じ発想である。軟部組織腫脹の消退に21日を要することもある1。

⚠️ で後方皮膚の蒼白化・テント状変形を認めれば整形外科的緊急事態であり、直ちにで固定する1。

合併症

合併症 頻度
最大37%
感染(外側広汎アプローチで最多) 最大20%
損傷(手術例) 最大15%
不安定性 16.7%(では99.1%に関連)

1

⚠️ 炎による晩期固定術は、非手術例で手術例の最大6倍、Sanders III型はII型の4倍のリスクがある1。

💡 予後を分けるのは、患者側の因子である。 良好な因子は女性・若年・身体的負荷の少ない職業と初期Böhler角15度超、不良な因子は・・精神疾患・受傷時の失業、術後の喫煙・糖尿病・である1。機能回復は受傷後約18か月まで進むが、2年時点でも大多数が持続的な悪影響を報告する1。

鑑別・合併しうる損傷

損傷 見分け方・関係
⚠️ 同じ機転で併存しうる。 高所墜落では・・脊椎を通しで評価する
同じ機転で併存しうる
⚠️ 患者の約70%に追加損傷があり、脊椎の精査は必須

まとめ

  • は全の約60%を占め、高所・によるで生じる。が70〜75%。
  • ⭐ Sanders分類(・骨片数、I〜IV)とEssex-Lopresti分類(/関節型)は見ている軸が違う。 は後方皮膚の緊張という緊急性を、Sanders分類は整復の難易度を表す。
  • Böhler角(正常20〜40度、5度未満で手術適応)とGissane角(正常130〜145度)は診断補助だが、⚠️ 正常角だけで骨折を除外しない。
  • 患者の約70%に追加損傷があり、⭐ ・・対側を必ず探す。 足部は最大10%。
  • 治療は保存(Sanders I型など)と手術(全例、Böhler角5度未満など)に分かれ、⭐ 手術は皮膚の皺が戻ってから(5〜10日、時に21日)行う。で皮膚が脅かされれば緊急整復。
  • 合併症は最大37%・感染最大20%・損傷最大15%。⚠️ 炎による晩期固定術は非手術例で手術例の最大6倍。 機能回復は18か月まで進むが2年後も多くに悪影響が残る。

出典

  1. 1.Calcaneus Fractures(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)NCBI Bookshelfで閲覧した記事。踵骨骨折が全足根骨骨折の約60%、全骨折の1〜2%を占め好発年齢が30〜50歳で男性に有意に多いこと、関節内骨折が70〜75%・関節外骨折が25〜30%を占め両側踵骨骨折が5〜10%に生じること、主な受傷機転が建設労働者・屋根職人に多い高所からの落下と交通事故による軸圧負荷であり足が背屈位で着地した際に距骨が踵骨へ楔状に打ち込まれること、低エネルギー機転として捻挫・直接損傷・内反損傷やランナー・新兵に生じるストレス骨折があること、Sanders分類が冠状断CTに基づきI型(非転位・最小転位)・II型(後方関節面が2骨片、A/B/C亜型)・III型(中央陥没を伴う3骨片、AB/AC/BC亜型)・IV型(4骨片以上の高度粉砕)に分けられること、Essex-Lopresti分類が舌状骨折(後方隆起の垂直骨折線と後方への水平骨折線からなりアキレス腱による近位牽引で後方皮膚が緊張し皮膚壊死のリスクが高い)と関節陥没型(Gissane角を通る単一垂直骨折線で後方皮膚への脅威は低いが関節面の不規則性が高い)に分けられること、Böhler角の正常値が20〜40度で測定は隆起最高点から後方関節面最高点への線と前方突起最高点から後方関節面最高点への線がなす角であり5度未満は手術適応・15度超は予後良好とされること、Gissane角(critical angle)の正常値が130〜145度であること、患者の約70%に追加損傷を合併し高所転落では脊椎圧迫骨折の精査が重要であること、足部コンパートメント症候群が最大10%に発症し初期評価時の疼痛増悪で疑うべきこと、保存治療の対象がSanders I型・大多数の関節外骨折・手術に不適な医学的状態の患者であること、手術適応が舌状骨折全例・Böhler角5度未満・関節面陥没を伴う関節内骨折・脱臼骨折・関節面25%超に及ぶ前突起骨折・有意な外側壁突出であること、手術のタイミングを決める皮膚の皺サイン(wrinkle sign)が受傷後5〜10日を目安に出現し血液・漿液性水疱が完全に上皮化するまで待機すべきであること(Sandersの報告では軟部組織腫脹の消退に21日を要することもある)、舌状骨折で後方皮膚の蒼白化・テント状変形を認めれば整形外科的緊急事態として直ちに足関節底屈位でのスプリント固定を要すること、創部合併症が最大37%・感染が最大20%(外側広汎アプローチで最多)、腓腹神経損傷が手術例の最大15%(より下方を通るL字切開で減少)、非手術例の距骨下関節炎による晩期固定術が手術例の最大6倍でIII型はII型の4倍のリスクであること、腓骨筋腱不安定性が16.7%で骨折脱臼では99.1%に関連すること、良好な転帰の因子が女性・若年・身体的負荷の少ない職業と初期Böhler角15度超であり不良因子が多発外傷・アルコール乱用・精神疾患・受傷時の失業・術後の喫煙/糖尿病/末梢血管疾患であること、機能回復が最大で受傷後約18か月まで進みその後2年時点でも大多数が持続的な悪影響を報告することを確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Operative treatment in 120 displaced intraarticular calcaneal fractures. Results using a prognostic computed tomography scan classification(Clinical Orthopaedics and Related Research・1993)冠状断・横断CTに基づき関節内踵骨骨折を非転位のI型、2分割のII型、中央陥没を伴う3分割のIII型、4片以上の高度粉砕であるIV型へ分類し、型が重いほど整復・臨床成績が不良であることを示したこと閲覧 2026-09-06
  3. 3.The diagnostic accuracy of Böhler's angle in fractures of the calcaneus(The Journal of Emergency Medicine・2013)骨折の無い群のBöhler角平均が29.4度であること、Böhler角25度未満が骨折の中等度の予測因子(感度100%・特異度82%)、23度未満が高い予測因子(感度100%・特異度89%)、21度未満が骨折を強く示唆する所見(感度99%・特異度99%)であり、20度以下が骨折の有無判定において最も高い診断精度を示す有用なスクリーニングツールであることを確認した(Europe PMCの抄録で確認。全文は未取得)。閲覧 2026-09-06